目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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エンジュシティ

「結局暴走族全員のしちまうハメになったな」

 

 溜息を吐き、スクーターから降り、押しながらエンジュシティへと繋がる関所へと入る。途中で暴走族を撥ねてしまった為に、そこから暴走族グループが集結、暴走族との総力戦へと何故か発展してしまった。まぁ、それでもぶっ飛ばすのにかかった時間は十分程度だ。黒尾を出して夜にして、月光で濃霧をだして、そして後は蛮を出してすなあらしを重複させる。濃霧の中ですなあらしの影響を受けたポケモン達が一体何が起きているのか、それを理解する事もなくドンドンと落ちて行く。耐える連中は闇から奇襲すればそれで良い。

 

 これぞ、圧倒的暴力。

 

 これぞ野戦の神髄。

 

 一方的に蹂躙するのは楽しかった。とりあえず、これでエンジュ周辺の暴走族は死滅した事だろう、適度に恐怖を刻んでおいたので、もう二度と悪さはしないだろうなぁ、なんて事を思いながら漸く古き都、エンジュシティへと到着する。

 

 近代風の建造物も多いが、何と言ってもこのエンジュシティ、”和風建築”があるのだ。街中には武家屋敷の様な家があったり、京都で見る様な舞妓さんまでいるのだ。だからエンジュシティは物凄い楽しみにしていた。また同時に、この光景に軽い懐かしさを覚える。

 

『エンジュシティは鍋料理が美味しいって噂でしたね』

 

『鍋って肉か。肉なんだよな!?』

 

『拙者も鍋は楽しみで御座る』

 

『ウチのパーティには食いしん坊が多いわねぇ』

 

 まぁ、運動でカロリーを消費している分、お腹が空くのはしょうがないと思わなくもない。それに今は色々あって資金は豊富にある、銀行に入っている分と合わせればそれなりに豪遊して生活できる。まぁ、旅を止める事はないのだが。折角エンジュシティに来たのだから、少し位遊ぶのも悪くはないだろう。それにエンジュシティに到着し、嫌でも視界に入る二つの塔、それが気になる。

 

 調査の為に数日時間を取るのは悪くないだろうと思う。

 

「焼けた塔とスズの塔か―――」

 

 焼けた塔は唯一神の呼び名でおなじみのエンテイ、若干影の薄いライコウ、そして熱烈なストーカーが存在する事で有名なスイクンが眠っている塔だ。どっかの資料によると元々は死んでいたポケモンがホウオウによって蘇った結果生まれたのがこの三匹らしい。パーティーコンセプトに一切合わないこの三体だが、重要なのはこの三匹はジョウト地方であれば、縦横無尽に移動する事ができる、という能力を持っている事だ。

 

 ジョウト地方内であれば、おそらく”そらをとぶ”よりも早く、そして安全な移動手段として利用できるに違いない。タンバジムでジョウトの空の移動を解禁―――なんて事を気にする必要もなくなってくるし、前提条件のエンジュジムも後回しにする事ができる。割と重要な意味を持ってくるのだ、これ。まぁ、自分は赤帽子でもなければ孵す者でもない、というかシステム的な主人公ではないのだから、本当にそこらへん捕獲できるかどうかが怪しい。

 

 まぁ、その時はその時、という事だろう。

 

 とりあえずはエンジュシティに到着した。エンジュシティでは元々、ポケモンセンターの宿泊施設で止まるつもりはなく、ポケモンを出す許可の出ているそれなりに良い旅館で過ごそうと決めている。到着したばかりの今の状態で無理にジム戦をする必要もないし、

 

 年中赤く紅葉しているスズの塔の周りの木々を少し遠くから眺めつつ、エンジュシティを歩き始める。

 

 街角から出てくる舞妓さんに軽く頭を下げると、向こうも笑顔で頭を下げ、挨拶を返してくる。ここらへん、日本人っぽいよなぁ、と思いつつエンジュシティの外れの方へ、旅館や宿のある区域へと移動する。エンジュシティは観光でそれなりに収入を得ている都市らしく、此方のエリアにやってくると一気に人口が増える様に感じる。ともあれ、予め泊まる宿は決めてある。スクーターを押したまま旅館を見つけ、それを駐車場に停め、後部に積んでおいたキャリーバッグを降ろし、ロックをかけてからナイトを連れたまま旅館の中に入る。

 

 広く、そして落ち着いた雰囲気の旅館だ。奥の方で浴衣姿が歩いているのを見るからに、おそらくは温泉でもあるのかもしれない。温泉と言えばホウエンのフエンタウンが一番有名だが、エンジュにも地味にだが存在していたりする。今夜は本当に色々と楽しめそうだと思いつつ、受付まで移動する。受付嬢が此方が近づくと軽く頭を下げる。

 

「ようこそ、予約のお客様でしょうか」

 

「いんや、でも三泊四日ぐらいを計画している。部屋が開いているなら泊まりたいんだけど。ポケモンが結構いるから大部屋で」

 

「あ、はい、少々お待ちください……と、部屋の確認が終わりました。大部屋となりますとこれしかなくて……」

 

 そう言って受付の向こう側に会ったパソコンの中に表示されている部屋を見せてくれる。結構良い感じの部屋で、トロピウスとホエルオーを除いた全員をボールから出しても余裕のある広さだ。まぁ、全長20mの自分のホエルオーを出しても平気な部屋とか一度でもいいから見てみたいものだが。料金を確認すれば一泊二日で五万円、三泊四日で大体十二万前後になる。他にも料金とかを見せてもらうが、朝食や夕飯のグレードを上げたりで追加料金が発生しそうだ。

 

「ま、これぐらいなら余裕だな。船の中で勝利する度に三万とか捥ぎ取ったし。んじゃこの部屋でお願いします」

 

「はい、解りました。それでは少々お待ちください」

 

 頭を下げてそう言って部屋を取る受付嬢の姿は前よりも必死になったような気がする―――やはりぽんと十万以上を払える客は上客になるよなぁ、そんな事を考えながらゆっくりと横のナイトの頭を撫でる。

 

 

 

 

 通された部屋はかなり広い。いかにも旅館、という感じの和風、畳の部屋だ。まさか此方に来てからこういう所に泊まれるとは……なんて思ってたりもしたので、軽く感動するところがある。案内をしてくれたイーブイ亜人種に感謝しつつ、広い部屋に到着するのと同時に、ボールの中のポケモン達を部屋の中に解放する。勢いよく出てきたパーティーメンバー達とメタモンが広い部屋に広がり、座布団に座ったり、畳に転がったり、襖を開けて布団や浴衣を探し始める。その動きに一切の遠慮や迷いがない。はぁ、と息を吐きながら自分も座布団の上に座る。

 

「ま、偶にはこんな贅沢も悪くないだろ―――船で贅沢したばっかの様な気もするけど」

 

なーう(いんじゃね)

 

ガウガウガウガーウ(楽が出来るなら何でもいい)

 

「見て、あの野郎共を」

 

「えぇ、贅沢に腐ってますね」

 

 声の方向へと視線を向ければ、既に旅館の水色の浴衣に着替えた三匹の姿があった。まぁ、ポケモンではあるが、見た目は美女、美少女の類なのだ。そういう姿を見るのは実に眼福ではある―――惜しむべきは既にこの三人を見慣れてしまった事や、美少女をボールに入れて調教するという流れに慣れてしまったことだろう。昔は興奮したボディタッチも、ポケモンとのコミュニケーションの一つにスキンシップが割と大事だったりするので、もう慣れてしまったり、反応しなくなってしまった。これが成長なのだろうか、悲しい。

 

「それでは我々は早速温泉に浸かってきますので」

 

「さらばで御座る」

 

「行くぞー!」

 

「ギルガルドを連れてくなよ」

 

 ギルガルドを握ったまま走り出しそうだったサザラからギルガルドだけを回収し、部屋に残す。元々、別々のポケモンであるため、サザラからギルガルドのパーツを両方とも回収すると、本来の合一した形とサイズへと戻る。クルクル宙に浮かびながら回るその姿をしばらくの間眺めていると、ナイトから声がかかってくる。

 

なう()ななーう(どうするんだ)? なななうーなう(此処には伝説がいるんだろ)

 

 焼けた塔の三匹か、或いはスズの塔か、どちらだろうか。まぁ、どっちでもいいだろう。

 

「最初はスルーの予定だったんだよなぁ、ぶっちゃけると。ホウオウもルギアも強力だっていっちゃあ強力なんだよ。ただな、伝説のポケモンってのは良くも悪くも主人を自分で決める連中ばかりなんだよ。強けりゃあいい、って訳じゃなくて性格とかの好みまで混ざってくるからな。そこらへん考慮すると俺の性格とか相性だとギラ子で限界―――」

 

 名前を口にした瞬間、空間が破れて、金髪の小さい頭が真横に出てくる。

 

「呼ん―――」

 

ガオギャァオ(ボックスに帰れ)

 

 蛮が視線を向ける事もなく裏拳でもぐら叩きの如く破れた世界を封鎖した。まるで今の衝突事故がなかったかのように話を続ける。

 

「まぁ、準伝説級はまだいいんだよ。実力さえあれば従えられるから。ただホウオウとルギア、カイオーガとグラードンにレックウザ、ディアルガとパルキア、ああいう純粋な伝説種はマジでトレーナーを厳選して来るから捕まえようとしても多分”運命的に拒否られる”と思う。ただそれとは別に、伝説の力に挑戦するってのは間違いなく良い経験になると思う。ホウオウもルギアも羽がなきゃ本来は出現しない筈だけど、バトルする為に呼び出すってならそう難しくはないと思う。まぁ、つまりホウオウはボコる方向性で」

 

なう(なるほど)なうなううん(じゃあ焼けた塔は)?」

 

「ゲット狙う」

 

 焼けた塔の地下にはエンテイ、ライコウ、スイクンの三匹が封印されている。その封印はおそらく発見されていない事が原因であって、おそらく自分であっても突破する事は可能な筈だ。まぁ、焼けた塔の地下を調べようとする人間がいる筈がない。というか塔が焼けたからその地下を調べる、という発想は普通生まれてこない。ともあれ、

 

「伝説って言われてるけど、エンテイ、ライコウ、スイクンはホウオウとかと比べると”格下”だからな。おそらくは普通のポケモンみたいにボコれば捕まえられると思うぜ。まぁ、一応マスボならシルフからパクったのが一個あるしな。アルセウスは正直、マスボでもどうしようもねぇ感じがあるし、この先ずっと足として使える三犬のどれかをマスボで確実に捕まえるってのはありかなぁー、ってぐらいには思ってる。個人的にはエンテイにフレアドライブを覚えさせてあげたいところ」

 

ガオガオガオ(ジョウトには存在しないからな)ガオーン(フレアドライブ)

 

 悲しすぎるエンテイの技幅事情。あの種族値で最初は全く生かせる事のなかった存在。しかもじしんで出オチする始末。そういう思い出もあって、個人的には一番、エンテイの捕獲に対してノリ気だったりする。まぁ、伝説、準伝説クラスなのだから、ゲームとは違ってレベルは間違いなくオーバー80クラスである事を想定しなくてはならない。ボスと旅をしているときに遭遇したギラティナがオーバーハンドレッド(限界突破)だったし。

 

 まぁ、おそらくホウオウもルギアもオーバーハンドレッドである可能性は高い、そこまでの領域に到達するからこそ伝説と言われるのだろうから。

 

 というか伝説が60とか70その程度のレベルな訳がないだろ。伝説という言葉を舐め過ぎである。

 

「っつーわけで、たぶん三匹の内、一匹とは確実にやり合うとは思うわ。とりあえず明日はそのつもりで動くから覚悟だけはしておいてくれ」

 

ガオガオ(雌陣に言うべきことじゃね)

 

 首を振る。

 

「ぶっちゃけ黒い眼差し、ふういんでナイトを先発にするし、そこからはすなあらしで要塞化した蛮ちゃんでの殴り合いになるから連中の出番はねぇ」

 

なうぅ(ひでぇ)

 

ガオガウガー(準伝説ならいけるのかー)

 

 伝説だったらメンバーを全員出した上でハメ殺し、ゲリラ戦術等を考える必要が出てくるのだが、準伝説級であればそこまでしなくてもいける。寧ろ蛮の肉体作りの為に利用させてもらおうと思える、ちょうど良い相手だ。伝説系統の存在と戦い、経験を重ねれば”伝説殺し”みたいな才能に目覚められないか、そういう期待もあるのだ。

 

 特にサザラと蛮にはそれを期待している。その為、伝説や準伝説には積極的にこの二人をぶつけている。

 

 なにせ、この先ホウエンやらカロス、シンオウとかを旅したときにグラードンやパルキアやらダークライとエンカウントした時、伝説との戦闘経験の有無が命に関わりそうな気がしてくるから。

 

 ま、それはともあれ、

 

「今日はとりあえずお休み。明日は朝から焼けた塔の調査行くよ」

 

ガオー(ういー)

 

なうー(了解ー)

 

 だるそうな二体の声を響かせつつ、目に見えている激戦に備える為にも、とりあえずは休み、風呂にでも入り、良い飯を食おうと思う。




 ポケモンの言語をしっかり覚えれば、会話できるそうです。見てれば解るけどそこまで計画性の高い主人公じゃないので、オニキス君。最終的にその場のノリと勇気と愛で計画変更するタイプ。

 準伝説のレベル80~100
 伝説のレベル”最低”100

 というわけで独自の理論や解説をしつつも旅は続きます。金の名前の少年は未だに旅に出ず、銀の名前の少年もまだ相棒はいない。

 次回、まもるは置いて来た、唯一神だからな。

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