目指せポケモンマスター   作:てんぞー

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四天王キョウ

 喝采は止まない。

 

 声は響く。

 

 熱狂は終わらない―――終わらせない。

 

 フィールドを挟む様に知っている顔と正面から相対する。向こう側に立っているのは忍者服姿の男―――元セキチクジムのジムリーダー、キョウの姿だ。この男との縁は深い。サカキの次に一番世話になったのがこの男なのだから。ロケット団の準幹部、或いは幹部候補としてマチス、そしてキョウには色々と世話になった。ポケモンバトルの搦め手に関してもキョウから教わった部分が根幹になっている。だからある意味、もう一人の師だといっても良い存在だ。四天王へとスカウトされたと言われた時は驚いた。だが、

 

「よぉ、キョウ。漸くここまで来たぜ」

 

「あぁ、しかしここが終着点ではなかろう」

 

「そうだな……チャンピオンを倒して、真のポケモンマスターを倒して、そして漸く俺の恩返しを始める事が出来るんだ。だからここは通過点だ。だから負けない。負ける事が出来ない―――敗北が出来ない」

 

「ファファファ! その言葉、まるで赤帽子にでもなったつもりか! いいだろう、貴様の成長をこのキョウ、見てやろうではないか!」

 

 会場は熱狂する。トレーナーが発する気配に熱狂し、そして更に興奮するのだ。この刹那の勝負に、見ているだけで心を燃やす様な熱さを感じる為に。バトルは戦う者だけで行う訳じゃない。観客がいて初めて完成する”競技”なのだ。それを忘れてはいけない。肌で感じる熱狂。その息を吸い込み、ゴーグルを装着し、そしてモンスターボールを手に取る。やるべき事は解っている。どう戦わなきゃいけないのかもわかっている。重要なのはそれを行えるだけの実力が自分にあるのか。いや、信用しろ。覚悟しろ。信じるんだ、自分自身を。そして自分についてきてくれるポケモン達を。自分で自分を信じなきゃ誰が信じられる。

 

 ―――あぁ、大丈夫さ、俺は、やれる。

 

『第二回戦! ”毒忍”キョウvs”天災”オニキス―――開始ィ!!』

 

 司会の開始の言葉と共にボールから放つポケモンは決まっている。キョウが手裏剣の様にモンスターボールを放つのに合わせ、此方も同じタイミングでモンスターボールを放つ。

 

「行け、フシギバナ!」

 

「出番だ黒尾!」

 

 亜人種の二体がフィールドに立つ。そしてそれと同時にフィールドに変化が出現する。黒尾の特性が夜空を呼び出し、夜の闇を生み出すのと同時に、フィールドに立ったフシギバナは自動的に根を張り、そしてフィールドに草花を生やし始める。整頓されたフィールドは一瞬でフシギバナの影響を受けて、森林へとその姿を変化させて行く。此方が天候を支配した様に、彼方は地形を支配した。そうやってお互いにポケモンを有効に活用する為の領域を形成した。

 

「地の利を味方につけ―――」

 

「―――場を支配した者こそが―――」

 

「―――勝利を制する。基本に忠実に、な」

 

 キョウの姿は見えない。だがお互いに笑みを浮かべている事だけは理解している。

 

 黒尾が狐火を放ち、相手のフシギバナが何かをする。おそらくはキョウの手筋からすると環境を整えようとしているに違いない。だったら間違いなくここで、作りあげた森を破壊―――する事を考えては駄目だ。最優先であのフシギバナを潰したいが、黒尾では殺しきれないのは解っている。だから狐火を使って夜の天候効果を利用し、黒尾をボールの中へと戻し、サイクルを繋げる。

 

「行け―――ダヴィンチ!」

 

「はいはーい、制限入ったダヴィンチ先生ですよーん」

 

 出現するのと同時にダヴィンチが透明のパレットに鈍色の絵具で自身を塗りつぶす。また同時に赤色の絵の具で虚空にバツの字を描き、封印を施す。相手がどんな存在であれ、間違いなく一手だけ、此方がリードが取れたのは真実だ。ダヴィンチの開幕封印能力―――ポケモン協会による判断は”準制限”というものであり、

 

 一試合に登場のタイミングで封印を放てるのは3回まで。

 

 それ以上は反則として失格扱いにされる。故にこれで1回目を消費した。ワイルドパレットでタイプを鋼にした以上、毒は通じない―――相手が耐性破壊を行ってこない限りは。そのタイミングは森が邪魔で計れないが、それでもできる事はある。毒タイプのポケモンの耐久力はそこまで高くはない。キョウのポケモンは全体的に低体力、高回避のポケモンばかりだ。だから、設置技には全体的に弱いという特徴がある。

 

「ステロにまきびし。バラまいてお仕事完了、っと」

 

 ステルスロックとまきびしを同時にばら撒いたダヴィンチがボールの中へと戻って行く。ボールの中へと戻って来たダヴィンチを素早く回収しつつ、次に回すべきポケモンを考える―――ここからが本番だ。キョウも、こっちも、戦う為のフィールドは出来上がっているのだ。だから次の一手から、戦闘の本番となってくる。何をするべきか? それは解っている。

 

「行け、アッシュ!」

 

 ボールから放たれたアッシュが弾ける炎を纏いながらフィールドを焼き焦がし出現する。登場と同時に周辺の草木を焼き払い、それを地に倒して行く。そうやってフィールドに再び良好な視界を生みだし、星空を天に浮かべる。破壊されたフィールドの上に立つ、アッシュと相対する存在は―――ラプラスだった。

 

「なみのり!」

 

「吹き飛ばせ! ブラストバーン!」

 

 ラプラスが波を呼び出す。虚空から出現する大質量の津波がフィールド全体を沈ませるように放たれてくる。それに相対するアッシュは正面からブラストバーンを放つ。究極技と秘伝技が正面から衝突した結果、アッシュを避ける様に津波が割れ、僅かに炎がラプラスに届きながらフィールド全体を水で濡らし、先程の森林と融合し、湿地帯の様な環境が完成される。チ、と舌打ちしながらバトン効果でアッシュをボールの中へと戻して行きながら、それを素早く次のポケモンへと交代する。

 

ギャァーオ(難しい相手だなぁ)……」

 

 蛮を繰り出し、夜の砂嵐へと天候を変化させる。ゴーグルを通して確認するフィールドの中、ラプラスがボールの中へと消えて行く。

 

「ファファファファ―――そろそろ始めるとするか」

 

 同じくポケモンを戻していたキョウが次にボールから繰り出すのは十メートル級の巨大なマルノームだった。ラプラスとは違って原生種のマルノームは出現するのと同時に、その巨大な口の中から紫色の液体を吐きだし、出来上がった湿地のフィールドを汚染する様に暗い色へと汚染する。そうやってそこに立っている蛮が毒に感染したのを理解する。猛毒汚染パ、といった所だろうか。フシギバナ、ラプラス、マルノームと交換すれば完成されるからサイクルカットしてもほとんど意味はないだろう。

 

 つまりここからだ、ここから。

 

「蛮、ストーンエッジでマルノームを潰せ!」

 

「マルノーム、大爆発だ」

 

 迷いのない指令に素早く蛮を後ろへと下げようとするが、近づいた瞬間に放たれた大爆発が蛮を巻き込み、ふきとばし、フィールドの外へと投げ捨てながら戦闘不能に追い込む。キョウへと視線を向ければ笑っているのが見える。やっぱり戦うのが面倒なタイプだと思いながら蛮をボールの中へとねぎらいつつ戻し、黒尾をフィールドへと出す。合わせる様にキョウがフィールドに出してきたのはラプラスだった。

 

 そしてフィールドに出た直後、黒尾が猛毒に感染する。

 

「潜れ!」

 

「潰せぇぃ!」

 

 ラプラスのハイドロポンプが放たれるのと同時に黒尾が闇の中へと―――シャドーダイブを放つ。猛毒のダメージを考えるなら耐久してはいられないし、あまりポケモンを交代したくもない、場に出る時点で感染するならそれにチェインする様な技を保有している筈だ。後半戦でそれを確認するまで、決して主力を晒す事は出来ない。だからここは黒尾で押し切る。

 

 影の中に潜って攻撃を回避した黒尾がラプラスの真下から突き上げる様に出現する。ラプラスの姿を吹き飛ばしながら片手でその姿を掴み、怯んだ隙に追撃のVジェネレートが発動し、ラプラスの姿を一瞬で炎で包みながら焼き尽くす。

 

 ―――その中でラプラスは目を開けた。

 

 同時にVジェネレートを喰らったラプラスがその内側からハイドロポンプを黒尾へと叩き込む。最高レベルのハイドロポンプを喰らった黒尾がその猛毒による体力消費と合わせて一撃で戦闘不能になり、それに合わせてみちづれが発動する。自分を葬ったラプラスに対して怨念が形となって影の腕がラプラスを湿地の中から伸びて貫き、諸共滅ぼした。

 

「お疲れ様黒尾、やっぱこいつ苦手だわ」

 

「ファファファ」

 

 笑い方もウザイ。

 

 ―――完全に相手ペースに持ち込まれている。一旦冷静になって考えるべきだろう。

 

 高速で思考する。思考をクリアに、冷静に、そして時間の流れを緩める様にゆっくりと現実の時間を歪め、高速化した思考の世界の中で考える。

 

 ―――この戦いで一番重要な事は”キョウのポケモンを上から殴る事”だ。キョウは基本的な戦術として相打ちを狙い続けてくる。それは何故か? 最後の1:1の状況になった時点で”キョウの勝利が確定する”からだ。キョウの特技は色々とあるが、その一つが猛毒汚染になる。つまりは今の状況だ。そしてそれと連動する様にキョウの使う必殺技が”アナフィラキシーショック”になる。簡単に言えば”毒殺”という状況であり、猛毒状態のポケモンに対して攻撃を行った場合、そのポケモンを一撃必殺するという限定技だ。

 

 つまりキョウは守って、堪える、見切り、みちづれを運用しながらこっちが猛毒で自滅するのを待ちつつ、隙を見せたら毒殺で一撃必殺すればいいのだから、そりゃあ強い訳だ。ポケモンが少なくなればなる程ポケモンが表に出る回数が増えるのが交代型の戦術であり、それはキョウとは非常に相性が良い。なぜなら場に出るだけで猛毒に感染するのだ、

 

 キョウのアドバンテージが増える一方だ。だからマルノームとラプラスを捨てたのだ。相打ちという形で手持ちのポケモンを4:4の状況まで圧縮した。交代バトン型である以上、絶対にポケモンを交代する必要は出てくる。だから今まで出さなかったポケモンを出さなくてはならない。

 

 こっちの手持ちはタスキダヴィンチ、ラムのみサザラ、モモンのみアッシュ、そしてオボンのみナイトだ。

 

 サザラ、アッシュは1回までだったら猛毒をラムとモモンのみで解除できる。ダヴィンチがタスキ装備なのはダヴィンチが極端に能力が低いという点にある。この中で唯一毒耐性を保有しているのはワイルドパレットで鋼タイプへと変化できるダヴィンチだが、キョウの事だから耐性破壊を用意してあるのには間違いがない。だから重要なのはエースである二体をどこでぶち込むか、だ。

 

 残念だが受けとしてのナイトは今回、活躍し辛い。ポイズンヒール持ちがいれば多少は楽に戦えただろうが、今回はそうもいかない。

 

 おそらくは”マルノームの時がダヴィンチの使い時”だったと思う―――あそこでマルノームを潰せていればこの毒フィールドの展開を多少は妨害出来た筈だ。だがフィールドが完成してしまったこの状況からどうするか? となるとまずはフィールド除去か、或いは相手の戦術に対して真っ向からメタを張って行くしかない。できる事は限られているが、それでもない訳じゃない。なるべく此方がアドバンテージを握った上で、速度差で上から潰す、それが重要な事だ。キョウだって決して無傷ではないのだ。ステルスロック、まきびし、そしてきつねび。相手もフィールドに出る為には大きな代償を払っているのだ。後は速度の上から圧殺出来ればそれで勝てる筈なのだ。

 

 ―――だからこそ時間を稼ごうとキョウはしてくるだろう。そこを利用して潰すしかない。

 

「ダヴィンチ……!」

 

「行け、フシギバナ!」

 

 思考速度を通常の領域へと戻すのと同時にキョウが放ったポケモンは予想通りフシギバナであった。ダヴィンチが場に出るのと同時にフシギバナは毒沼の毒を破裂させる。が、鈍色に染まっているダヴィンチには毒が通じない。耐性破壊はフシギバナではないらしい。心の中でガッツポーズを取りながらダヴィンチが封印を発動させる。残り発動回数一回。だがこれでフシギバナは完全に封じ込めた。最低限交代させないとフシギバナは機能しない。ここで稼ぐ一手が此方の有利へと近づくのだ。

 

「もどれフシギバナ―――」

 

「―――割り込めダヴィンチ、炎の誓い!」

 

 最速行動の指示をねじ込んでフシギバナの交代の前にダヴィンチの行動をねじ込む。フシギバナを焼き払う様に炎の誓いが発動する。湿地を駆け巡る炎は環境と反応し―――融合する。湿地帯を形成していた水と反応し、それを蒸発させながら炎と水が融合し、反応しながら虹を空に描く。水の誓いと炎の誓いを融合して生み出される特殊な環境、”虹”がここに形成される。本来は追加効果の発動率上昇という程度のそれでしかないが、この虹に適応し、技を磨いたポケモンがいる。それをキョウは理解している為、笑みを浮かべながら舌打ちをし、ポケモンを出さざるを得ない。

 

「すまん、モルフォン!」

 

「虹に導かれて進め、サザラぁ―――!」

 

 ダヴィンチが描いた虹のアーチを通ってサザラが出現する。ギルガルドを右手で引く様に握り、キングシールドを前に押し出すように登場したサザラは即座に猛毒によって汚染される。だがラムのみを喰い千切って治療し、そのまま進んだアーチの軌跡をギルガルドに乗せ、登場と同時に七色の軌跡を振るう。複合の斬撃が美しい光を生み出しながら極光となってモルフォンに襲い掛かる。登場するのと同時にモルフォンを沈めたサザラが吠える。竜の咆哮がスタジアムに響き渡り、魂を振るえ上げさせる。己を奮い立たせつつ、サザラがその上昇を引き継ぐようにボールの中へと戻って行く。ボールのバトンを次のポケモンへと渡す。

 

「焼き払えアッシュ!」

 

「流石にこれ以上好き勝手にさせる事は出来んな」

 

 登場と同時にモモンを食べたアッシュの体から猛毒が除去される。それに合わせる様にキョウのフィールドに出現したのは亜人種のベトベトンだった。乾燥した大地に座りこむとやる気のない表情を見せ―――そして笑みを浮かべた。次の瞬間、ガラスの割れる様な音が響き、そしてアッシュの毒耐性が破壊されているのを理解した。そしてモモンで回復した直後だというのに、猛毒に汚染されるアッシュの姿がある。

 

 破壊担当がベトベトンか―――。

 

 ラムのみとモモンのみを消費している以上、もはや猛毒からの回復手段はナイトのいやしのねがいぐらいのものだ。だからその保険としてナイトを戦闘に出す事は出来ない。最終戦でキョウの手持ちを撃破する為に必要な一手なのだから。だから、アッシュは―――このまま戦わせる。

 

「Vジェネレート!」

 

「落とせベトベトン」

 

 爆炎が発生し、フィールド全体を飲み込みながら一瞬でベトベトンの体力を飲み尽くす。それを喰らってベトベトンは一瞬でその体力を蒸発させながらも力を振り絞ってアッシュをみちづれにした。体力に関係なくアッシュがベトベトンによって葬られる。これで状況は3:2へと変動した。キョウの方が一手遅れているのは間違いがない。だけどキョウはそうせざるを得ない。アッシュを自由にさせていたらそのまま蹂躙させられるのが見えているからだ。

 

「ダヴィンチ、行くぞ!」

 

「ここだ、ドクロッグ!」

 

 ダヴィンチが出現し、開幕封印をドクロッグに対して放つがそれを受けたドクロッグは気にする事なくそのまま一直線にダヴィンチの下へと向かい、毒を纏った拳をそのまま、ダヴィンチの腹へと叩き込んだ。ドクロッグの口元を確認すればメンタルハーブを噛んでいるのが見える―――封印が精神的な干渉であり、メンタルハーブで解除できるのはどうやら、バレていたらしい。いや、そもそも最初から知っていたのかもしれない。

 

「耐えろダヴィンチ!」

 

「無駄だ!」

 

 パリン、と破裂する音と共にダヴィンチの毒耐性が破壊されたのを聞く。同時に一撃でタスキが発動し、そして毒手による猛毒の確定発生と合わせ、一気にダヴィンチの体力が割られる。その場で倒れるダヴィンチを素早くボールの中へと回収しつつ、次のボールへとバトンを渡す。こういう搦め手タイプの相手は実にめんどくさい、そう思いながらポケモンを繰り出す。

 

「ナイト!」

 

なーお(託すぜ)!」

 

 ナイトが出現するのと同時にナイトがその体力を全て消費し、次の仲間へと勝利を託す。即座にボールの中へとナイトを戻しながら、キョウを見る。状況は2:1―――逆転されてしまった。だが状況は実にシンプル。必殺される前に必殺しろ。それだけの話だ。こっちは完全に不利という訳じゃない。未だにステルスロックやまきびしによるプレッシャーが残っている。火傷と合わせて、キョウのポケモンはどれも一撃圏内だと考えても良い。

 

「―――どうした」

 

 キョウの声が聞こえる。

 

「通過点ではなかったのか?」

 

 キョウの言葉に笑みを浮かべる。そうだな、負けられないのだ。まだまだ、先へと進むんだ。

 

「俺を勝たせてくれ、サザラ―――」

 

 ボールの中からサザラを放った。フィールドに到達するのと同時にフィールドに溢れた猛毒がサザラを犯さんと襲いかかってくるが、登場と同時にサザラが吠える。

 

「グルルルゥゴギャァァァァォォォ―――!!」

 

 凄まじい声量によって放たれた竜の咆哮が法則を捻じ曲げて、音の振動として毒を吹き飛ばし、猛毒の感染を防いだ。技でも特性でも何でもない、ただの”気合”の一撃だ。それで戦略を、戦術をひっくり返してしまうからこその天賦の才。

 

「お前は、ここで、落チロ―――」

 

 ドクロッグを正面に捉えたサザラが素早く踏み込みながらギルガルドを振るう。反応したドクロッグが回避する事なく、サザラの一撃を受けながらカウンターで毒手をその体へと叩き込み、一撃で瀕死に叩き潰されながら次へと繋げる為に猛毒に感染させる。その猛毒のダメージを気合でやせ我慢しながら挑発する様に次のポケモンをサザラが求める。

 

 その求めに応える様に、キョウの最後のポケモンが放たれた。

 

「これで決めるぞ、クロバット!」

 

 亜人種のクロバットがフィールドに出現した瞬間、しんそくが発動する。一瞬でサザラの背後を取る様に出現したクロバットが二撃必殺の毒撃をサザラへと突き刺そうとする。それをサザラが直感的に回避しながらカウンターの斬撃を叩き込む為に体を捻る。クロバットが回転する様に空中へと上がったところを狙って指示を出す。

 

「当てて貫け、サザラ!」

 

「かわし、突き刺せクロバット!」

 

「らぁぁぁ―――!!」

 

 流星群がクロバットを落とす為に降り注ぎ始める。それを影分身で回避しながら残像と共にクロバットが襲い掛かってくる。直感的にクロバットの進行方向を理解したサザラがステップを取り、クロバットを正面から睨む。何をするかは一瞬で理解できた。

 

「たえろぉぉぉ―――!!」

 

「むっ!?」

 

 サザラが二撃必殺を正面から喰らい、歯を食いしばり、キングシールドを投げ捨てながら片手でクロバットを掴んだ。猛毒のダメージを完全に気合とやせ我慢で耐え抜き、ギルガルドに夜空の光を集め、

 

「落ちろぉぉぉぉ―――!!」

 

 全力で叩き落とした。大地へと埋まる様に必殺の一撃を叩き込んでから、二の撃を追撃としてクロバットへと叩き込み、その姿を一気に沈めた。その衝撃のままに大きくバックステップをサザラが取り、大地にギルガルドを突き刺して、杖代わりに立つ。

 

「はぁ……はぁ……もう無理よ。マジで。これ以上ホント戦えないから……ハァ……ハァ……」

 

 そう言いつつ戦う準備を継続している辺り、サザラもプロフェッショナルだろう。

 

 ―――視線をクロバットへと向け、そしてキョウへと向ける。それを受けてキョウは溜息を吐く。

 

「子供だと思っていた者が先を往くのは、寂しくも嬉しいものだな……あぁ、負けだ。先へ進め」

 

 キョウの敗北宣言と共に、歓声がフィールド内を爆発する様に広がった。

 

 これにて四天王戦、二戦目終了。

 

 数時間の休憩が入り、

 

 マスターズチャンピオンシップ第三戦が開始される。

 

 まだ、四天王との戦いは終わらない。




 偶に自分でも何を書いているかを忘れるぐらいにはポケモンは描写が忙しい。交代、先読み、戦術、能力……書きながら一体どこまで考えればいいんだよこれ……。

 だけどステロまきびしきつねびが先手安定になって来たね。

 そろそろ設置除去持ちを手持ちに仕組んでもおかしくなさそう。

 ダヴィンチに関する制限
・開幕封印は1試合3回までの制限
・メンタルハーブで解除できる(精神効果扱い)

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