これは、とある日の日常風景。
何処にでもある話で、何処にでもいる人のお話。

磁石のプラスとマイナスような二人の青春グラフティ(のはず)

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+- ~プラスマイナス~なふたり

 最初に一言言わしてくれ!

 俺は彼女が苦手だ。

 

 

 ――いつもと同じSHR終わって間もない放課後。生徒は早々にはけて俺一人だ。

 俺はというと、一人教室で悩んでいた。

 学校一のお調子者で馬鹿な問題児で有名な俺は男子からの人望は厚いが、女子からはっきりいってゴミを見るような眼差しを向けられている。

 つか、今更ながら女子ちょい酷くね?

 そんな女子の中で、特に俺を目の敵にするのがクラス委員の仙道あかりだ。

 こいつの性格はまぁ~絵に描いたような委員長キャラで、落ちこぼれの俺が気に入らないのかいつも突っかかってくる。

 はっきりいって俺はこの女が苦手である。

 俺はというとさっきからこの女の対策についてひとしきり考え、結論無理という考えにいたるのを何度も繰り返していた。

 ムムム。頭痛いぜ……。

 ため息混じりに一人で机の上に突っ伏していると、ガララっと教室の戸が開いた。

 俺は殺気のようなものを感じ、顔を恐る恐る上げた。

 げっ、委員長だ。

 はぁぁ……ほらほら、なんかそんなこと脳内会話してたらマジできたよ?

 もぉ~、勘弁してよぉぉ~。

 彼女は目を吊り上げ、口を尖らせつかつかとこっちに歩いてきた。

「ちょっと、神崎君!? 先生からあなただけ進路希望未提出だって言われたんだけど!!」

「あ」

 そういやあったあった。そんなもんが。今は家の机の中だろうか。

「あ~、そのなんだ……悪ぃ。家に忘れた」

 その一言に彼女は噛みついてきた

「はぁ!? 今日が締め切りだって先生行ってたでしょ!? なんで忘れるのよ!!」

 すごい剣幕だ。やべぇマジ切れしてる…

「だ、だから悪かったって、ほらこのとーり!! 明日ぜってーもってくっから!!」

 俺は両手を合わしてぺこりと深く頭を下げた。

「はぁ~そういうわけにはいかないのよ。都合上今日までじゃないと駄目らしいのよ」

「えっ!? マジで?」

「だからあれだけ提出日厳守って言ったのに……。で、どうするつもりなの?」

 委員長が心の底か呆れかえっていた。

「わかった、わかったよ。今からソッコー取りに帰っから。な、それで良いだろ?」

「なに家近いの?」

「ん~片道一時間半くらいかな?」

 そうなんだよなぁ~。俺んち結構遠いからなぁ~。

「はぁ!? すぐなんて無理じゃない。あなた、逃げるんじゃないでしょうね?」

「はっ! 人聞きの悪い。俺は約束は死んでも守るって巷じゃ有名よぉ~」

 これは、マジ話だぜ。なにせ、俺の座右の銘だからな。

 委員長は少し黙った。あ~、やっぱ俺の言ったことだから疑ってんのかな?

 そして、沈黙は破られ委員長は静かに口を開いた。

「……わかったわ。先生にはあたしから行っておくから行きなさい」

「そうだろ。そうだろ。やっぱ俺の言ったことなんて……えぇ~~~!! 信じてくれんの!?」

 嘘! 信じてくれんの? なんで? WHY?

 正直彼女だけには信じてもらえないと思っていた。

「何? 嘘なの?」

 そんな睨み付けないでくださいよ委員長様! スッゲェ怖いっす。

「いえいえ滅相もない! すべて、まるっと真実でございます!」

「だったら、早く行きなさい! 時間ないんだから」

 委員長がつり目で俺を急かす。

「オッス!! サンキュー委員長!」

 俺は教室を飛び出し、自転車置き場まで走り出した。

 はぁ……、本当はこのまま逃げたいけどそれでは俺の信条に反するし委員長も信じてくれてるしなぁ。さぁ~てと、んじゃまここは委員長のためにがんばるとしますかぁ~。

 くだらない事を考えてるうちに、自転車置き場にきた。

 俺は自転車にまたがり、拳を鳴らし両手で頬を叩き、気合を入れた。

「...っしゃあぁ!!」

 ぎゅとグリップを握って力強くこぎ出した。

 自転車で勢いよく校門を飛びだし、坂を下る。

 初夏の蒸し暑い風が、俺の体を包む。

 額の汗を手で拭いながら家へと急いだ。

 

 

 ――そして約2時間半後。

 はぁはぁはぁ……い、息が……。

 自転車本気で漕いだから、予想時間よりは少し早く帰ってこれた。

 その代わりに汗がダラッダラで、めっちゃしんどいです……。

 息も絶え絶えに、俺は職員室へ駆け込んだ。

「し、失礼……します」

 先生は、火の着いてない簡易パイプ付き煙草をくわえ雑務をこなしていた。

「はぁはぁ……せ、先生……。も、持ってきました……」

 俺が近づくと、先生は俺のほうに向きなおる。

「はいよ。ご苦労さん。まぁこれでも飲んでけ」

 先生はそういうと未開封の缶のお茶をくれた。

 たすかったぁ~。喉カラカラだったんだよ。あんたはえらい!! マーベラースッ!! よっ教師の鑑!!

 などとまぁ脳内で先生を讃えながら、一気に飲み干した。

「ぷはー!! 生き返るぅ~。先生あざーっす!!」

「おう。そんじゃ、気ぃつけて帰れよ~。あ、後彼女にも礼言っとけ? ずっとお前を待っててくれてたんだから」

「え、はぁ」

 先生に別れを告げ、職員室を後にした。

 先生の言ってた彼女って誰だ? う~んわからん。

 俺は、頭をひねりながら教室にかばんを取りに戻った。

 俺は教室まで差し掛かって、教室内に誰かがいることを察知した。

 ん、誰かいる?

 だれだぁ~、こんな時間に? もう六時前だぞ。

 俺は恐る恐る教室に入った。

「え?」

 俺の視界には俺の考えが及ばないことが起きていた。

 なんと委員長がいた。

 まさか、ずっと待っててくれたのか……。

 委員長は自分の席で椅子にもたれて眠ってしまっていた。

 眠っている彼女の顔は、とても普段からは創造できないくらいの穏やかな寝顔だった。

 こうしていると意外と委員長もかわいいな。

 ついつい鼻の頭を突いたりしていた。…………って、何してんだ俺はぁぁ!!

「んっ...」

 委員長が目を覚ました。

「お目覚めはいかがですか? プリンセス」

 俺はさっきまでの焦りを消し去るがごとく、まるでエセ英国執事のような挨拶をして見せた。

「ふぁ……おはよう…………え、はうぅぅ!!」

 彼女は俺を見るなりびっくりして飛び上がった。

「い、いい何時からいたのっ!?」

「ついさっき来たとこだけど」

「今たまたま寝てただけだからね!? ほんの一分前まで起きてたからね!? 決して神崎君が行ってからずっと寝てたわけじゃないからね!?」

 あえて言おう。嘘が下手過ぎると!!

 まぁ実際には、言わないけどね♪

「いや、別に良いけどね。寝てたんなら寝てたで。待たせてた俺が悪りぃんだし」

 彼女は赤面しながらこう続ける。

「あ、あのこの事はクラスの誰にも言わないでね!? 委員長がこんな事してたとか思われたくないから……」

「へ!?」

 意味わからん。別にバレても良いじゃん。聖人君主じゃあるまいし、生きてりゃ居眠り位するでしょ? 普通。

「言うの、言わないの!? どっち!?」

 委員長は机をバンッと強くたたいて、切羽つまり気味のキレ口調で言った。

「分っかりましたぁっ!」 

 彼女の剣幕に圧倒され、敬礼して答えてしまった。

 そういえば、彼女の浮いた話はまったく聞かねぇな。

 友達とかも、いなさそうだし。

 まさか、ずっとお堅い委員長キャラを作ってたのだろうか……。

 きっと俺が思ってる以上に結構こいつも大変なんだろうな。

 そう思うと、急に委員長が愛おしく思えた。

 気が付くと俺は無意識のうちに委員長の頭を撫でていた。

 彼女のしなやかな黒い長髪からは甘いいい匂いがする。

 彼女の顔はやさしい顔つきになり、夕焼けのせいか頬が紅潮しているようにも見えた。

「「あっ...」」

 我に返ったお互いはびっくりしたような恥ずかしいような感情でいっぱいになり。次の瞬間赤面して背中合わせになっていた。

 とてもじゃないがお互いに今は相手の顔なんて見られねぇからな。

「い、いきなりなにすんのよ!!」

 委員長はキレていた。きっとまだ顔から火が出るくらい赤面してんだろうなぁ。まさに俺がそうだし。

「す、す、すまん。なんか場の雰囲気にのまれそうになったんだよ!!」

 我ながら苦しい言い訳だよな。おい。

「大体なんでまだ残ってたんだよ? 先帰ってて良かったのに……」

 よし、何とか話をそらせたぞ。

「だ、だって……私委員長だもん……。あなたに取りに帰らせといて、言った本人が帰るって言うのもなんか嫌だったし……」

「は? 別にそんなの俺が悪ぃんだし委員長関係ないじゃん」

 委員長の生真面目さには、ホント頭が上がんないねぇ。

「それに……」

 彼女が恥ずかしそうな口調で続ける。

「あなたのこと信じてたから。嘘はつかないって」

 くぅ~!! かわいいなぁ~。

 いつも自分のことを目の敵にしていたあの委員長様からこんな信頼を寄せられていたなんて、くうぅぅ~!! 涙が流れそうなほどの感動だよ!!

 だんだんと落ち着いてきた俺たちは、お互いに体を向きなおした。

 そして俺は委員長に笑顔を作って、

「ありがとうな。い...優希」

 おもいきった。俺、めちゃ思い切ったよ!! なんか名前で読んじゃったよ! 恋人でもないのに。

 さすがにやりすぎか。これは怒るぞ?

「スンマセンッ! 調子に乗りすぎましたぁっ!!」

 スライディング土下座をしながら、目にも留まらぬ早業で謝った。

「……いい。それより早く……帰ろ?」

「へっ!? あ、ああ……そうだな。帰るか」

 あれ、何も言わない。いいのかな別に? 俺思わず身構えちゃったよ。

 そのまま教室を後にした。

 俺は優希を駅まで送っていった。

 その間は特に会話もなかったな……。

 駅でようやくお互いに口を開いた。

「また明日な」

「うん……また、明日」

 優希のはにかんだ笑顔が眩しいっ!!

 へぇ、あいつこんな顔もするんだな……。

 とか考えていたら、彼女は急に立ち止まり俺のほうに振り返った。

「また……明日。…………み、峰斗君」

「…………へ?」

 あ、あ、あ、あの彼女が!! 俺の天敵とまで言われたあの彼女がですよ? 俺の名を! しかも下の名を呼んだよぉぉぉ~~!!

 ヤベッ。なんか一瞬ドキってしちゃった。

 俺は笑顔で手を振って答えることにした。

「優希。また明日ぁ~!」

 力いっぱいブンブン手を振った。

 彼女は恥ずかしそうに駅の人ごみに消えていった。

「さてと……」

 俺もまた、家に向かって動き始めた。

 それにしても今日はあの委員長の意外な一面を見たかも知れないぜ。

 ガミガミうるさい鉄仮面で苦手な奴だと思ったけど、俺は彼女の見方が変わったかもしれない。

 彼女のやさしさと、時折見せる愛おしさに見せられたのだろうか。

 俺の心の中で委員長が……優希が大きな存在になっていたような気がした。

 だが、まさかお互い名前で呼び合う日が来るとは思わなかったなぁ~。少しは仲良くなれたかな?

 明日からはもう少し楽しくやれるだろうか。

 そうだ、もう少し真面目になろう!

 俺は新たな決意を胸にしながら、夜はふけていった。

 

 

 あっそうそう、閉めに一言!!

 俺は彼女がそんなに苦手じゃないかもしれない。

 




稚拙な文章でごめんなさい!!


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