孫策が抜けても連合軍の攻勢は止まらない。孫権の指揮で引き続き攻撃を行った。
汜水関を抜いた連合軍は虎牢関に迫った。立ち塞がるのは天下無双、中華最強の呂布だ。
虎牢関は堅牢で斜堤、斜面、壕、半月堡、稜堡から成っていた。
(ウォーバン式築城法だと! 何でもありかよ)
呂布の武を前に多大な損害を出し連合軍が攻めあぐねる中、呂布対策が検討された。
勿論、孫策の件も忘れてはいない。色々と策も講じていた。
生きてさえいれば、何度でもやり直しは出来る。『二課の一番長い日』でもそんな事を言っていた。
(いや、あれは生きてりゃ、もう一回ぐらいやれるだったか?)
主君の孫策が捕まったので救出作戦が練られた。
「捕らえた敵の将と交換するのはどうでしょうか? その際、迎え共々、皆殺しにして攻撃も行えば敵の守りを破れると思います」
「交換と言うのは悪くはない。だが、誰か適当な将が居るのか」
董卓軍の名だたる将と言えば華雄を思い出す。
中山靖王の後裔を自称する劉備の家臣、関羽と張飛が二人がかりで華雄を惨殺していた。
(挑発して誘い出してフルボッコか。卑怯で汚くて良いね)
捕らえる価値があるのは残る所で、呂布と張遼。孫策に釣り合う者は居そうにない。
周瑜さんに黄蓋が告げる。
「曹操が董惇亭を捕らえたそうじゃ」
ああ、ピンキー発言の奴か。
(曹操軍の陣地から拐って、董卓軍に取引を持ちかける。無理だな)
俺はそう思ったが、孫権さんは乗り気だった。
「思春頼めるかしら」
「はい、蓮華様」
二つ返事で了承する甘寧。マジか。
そして曹操の陣地から董卓軍の捕虜が拉致されて来た。
(おいおい、曹操にばれたらヤバいだろう。って言うか連合軍の目の前で捕虜交換何てやったら確実にばれるし)
捕虜ってのは生きてると思わせる事で敵の動きを封じる事が出来る。最悪、殺した死体でも構わん。
俺は始末する事を提案したが、孫権は捕虜交換の約束を守ると却下された。
孫策なら躊躇をしなかっただろう。
(甘いな)
俺の言葉を分かってくれたのは周瑜さんだけだ。
孫家の為に泥を被る覚悟が周瑜さんにはあった。
「捕虜の交換の時に呂布を殺っちゃいましょう」
呂布何か生きてられたら俺の将来設計も乱れる。生きた英雄はいらないんだ。
周瑜さんは甘寧と周泰ちゃんを呼んでいた。
上手く殺れると良いが。
結論から言うと、呂布の首を取りました。孫策の救出も成功しました。
孫権は卑怯だと怒っていたが、戦は結果が全てだ。
現に虎牢関も落ちた。
初回の失点もこれで相殺されたと言える。
都を前に董卓軍は何を考えたのか、攻勢に打って出た。張遼に蹂躙される袁術軍の姿は壮観だった。
「冥琳」
「駄目だ」
孫策が口を開くと周瑜さんは切り捨てる様に却下した。
バトルジャンキーで殺しに性的快感を感じる変態な孫策は戦いたがったが、周瑜さんに戒められた。
「敵の攻撃を反らし防備を固めろ。打って出る事は許さん!」
精強さを見せつけた董卓軍だったが、突出した敵は連合軍の人海戦術で押し包まれ殲滅された。
「我々の勝利だ!」
入城する連合軍の秩序は厳正に保たれていたが、義勇兵は別だ。
董卓軍の残党狩りにかこつけて略奪と暴行を行った。
教養が無く倫理観の薄い貧民層上がりの兵卒、経験の少ない指揮官では歯止めが効かなかった。
「劉備は義勇兵の手綱すら握れないのか!」
憤慨する諸侯は都の復興と治安維持を行った。
その過程で孫策は玉璽を手に入れた。
「どうするのよ、これ」
孫家首脳部は思いがけない事態に混乱していた。孫策の言葉に即答出来る者は居なかった。
いきなり核ミサイルを手に入れた様な物だ。使い所を間違えれば自分達が第二の董卓になる。
俺は一同が相談してる間にこっそりと陣を抜け出した。
いよいよ逃避行の再開だ。
「申し訳ありません、御遣い様」
そう言いながら武器を向けてくるのは関羽と張飛。孫策軍の陣を出た直後に拉致された。
「どうか私達に力を貸してください」
そう言って頭を下げるのは劉備玄徳。耳は大きくないが胸は大きい。
武器を突きつけて頼むって、人に物を頼む態度じゃねえぞ。
「どうして俺が御遣いだと?」
諸葛亮が説明してくれた。諸侯の動きを探る中で、孫策の近くに居た俺の存在に注目したらしい。
何と言う情報収集と分析能力の高さだ。
人の善意を信じる劉備のお花畑な思想に共感はしない。どちらかと言うと曹操の弱肉強食こそ正しいと思う。
「悪評を受けた私達には後がありません。どうかお導き下さい」
何、キラキラした目で言ってんの。ま、自分達の悪評に自分で気付けただけでも偉い。
(上手い事、煙に巻くって事は……)
臥龍、鳳雛と呼ばれる諸葛亮と鳳統が居るから下手な誤魔化しも出来ない。
鋭い視線の関羽は嘘偽りを許さないと言う気迫を感じさせた。青龍偃月刀は容赦なく首チョンパしてくるだろう。
(駄目か。だったら──)
ため息を吐くと俺は助言をしてやった。
「劉備様は、少し自分に自信を持って下さい。貴方の万人を幸せにすると言う理想は気高く美しい」
先ずは劉備を褒め称えた。周りの家臣は主君を褒められて警戒心を下げた。下手に反発しても俺が小者臭いだけだ。
友好的な空気を作り出す。そして、ここからが俺の腕の見せ所だ。
「劉備様が漢の再興を目指していらっしゃるなら、まずは益州を取る事をお勧めします。蜀は天然の要害、他国の侵略を拒みます。その地で力を蓄える事です」
誘導をしてやった。史実通りに滅びの道を進む様にな。
蜀は人的資源が北部に比べて少ない。優れた人材と言う意味ではない。人口だ。
劉備に仕える軍師連中にとって人的資源の確保は死活問題と言える。
北伐をすれば国力を衰退させるだけだ。身の丈に合わない奴の末路は知れている。ざまあと笑ってやろう。
益州の州牧である劉璋は今回の董卓討伐に連合軍の一員として参加していた。同じ劉姓と言う事で劉備が取り入る事は簡単だ。客将として迎えてもらい、そのまま母屋を乗っ取る。
(劉備も劉邦と同じ成り上がりの簒奪者だ。良かったな、ご先祖様と同じで)
それが俺の提案だ。説明する途中、鳳統は何度も頷いて賛同していた。
女は男と違い現実を見ると言うが、軍師は特に俯瞰的に物事を見て判断する。学友と言うだけで公孫瓚に寄生して何もかも貰って行った上に、連合軍参加で名を売ろうとした連中だ。今さら遠慮なんてする柄か。
諸葛亮と鳳統から見ても妥当な提案だったのだろう。反対はされなかった。
夢想家よりは、現実を見てる軍師連中と仲良く出来そうだ。
だけどハーレム形成は注意をしないとな。俺は好意に対して鈍感ではないと思う。
嫉妬から不機嫌アピールと暴力のコンボは、現実にやられると勘違い女で鬱陶しいだけだ。そうなる前にも大陸から逃げてやる。