転生して主人公の姉になりました。ダンまち編《凍結》   作:フリーメア

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タイトル適当デス
和葉「...」
無言で刀出さないで


憧れていたこと

「...?」

 

「ん?」

 

一階層と二階層をつなぐ階段を上っている途中、ベルと和葉は立ち止まり下を向いた。

 

「お二人とも、どうしました?」

 

「今、ダンジョンが揺れなかった?」

 

「僕も感じました」

 

そう言って姉弟は二階層に、いやその更に下にある下層に視線を向けた。

 

「揺れ、ですか?リリは何も感じませんでしたが」

 

「気のせいかな?」

 

三人はしばらく下層に意識を向けていたが何も感じないので気のせいということにした、和葉以外は

 

「...」

 

和葉はしばらく下を向いていたが、数秒もせずに前を向きベル達の後を追った。

 

「今日はちょっと長引いちゃったね」

 

「はい。ちょっとどころか、かなり、ですけど。もう夜中の十二時を回りますよ」

 

「えっ、嘘!?」

 

ええ、とリリルカは金色の懐中時計をベルに見せながら応えた。時計の短針と長針が見事に十二に重なろうとしていたのを見てベルはあちゃーという顔をした。

 

「どおりで眠いと思いました。いつもなら寝てる時間ですよ」

 

「最後の方はモンスターに群がられてしまいましたからね」

 

と言っても和葉様とベル様が瞬殺していましたが、と付け加え、それにベルは苦笑し和葉は肩をすくめた。

三人が契約をしてから数日が経とうとしていた。三日目ともなるとリリルカは和葉とベルの暴れっぷりに慣れてきた、というか慣れざるをえなかった。いちいち驚いていたらきりがないからだ。だからリリルカは何があっても、この姉弟は何をしでかしても不思議ではない、と(無理矢理)納得するようにしていた。...サポーターとして、それはいかがなものか。

そして和葉達はリリルカが入ったことによって、モンスターを狩る効率と稼ぎが跳ね上がり、己らの目標へ突き進むための全力疾走態勢が整備された。サポーター一人でこんなに違うものか、とベルはもちろん和葉も驚くばかりである。一方で、駆け出し冒険者ではあり得ないモンスター撃破記録(スコア)を連日叩き出す二人にリリルカは舌を巻いていたが。

 

「それじゃあ、リリ。今日も報酬は稼ぎの山分けでいい?」

 

「...それ聞く意味ありますか?」

 

「ないですね。そもそも契約書に人数分の一と書いてありますから」

 

リリルカの言った言葉を和葉はバッサリと切った。

 

「...そうだとしても、ベル様と和葉様はもう少し物欲と言うものを知った方がいいと思います。有難く頂戴しているリリが言えることではありませんが...」

 

「でもリリはお金が必要なんでしょ?」

 

心底不思議、とでも思っているようにベルは首をかしげた。

 

「そうなんですけど...リリはベル様が危なっかしくて見てられないというか、知人に預けられた(ペット)にハラハラさせられてつい世話を焼き過ぎてしまうというか...。う~、なんだか最近お二人に毒されているような気がしますぅ~」

 

「僕達だから何をしでかしても不思議ではない、と思っている時点でかなり毒されていますよね。もう遅いです」

 

「...たまに和葉様は人の傷をえぐるようなことを言いますよね。それと人の心を勝手に読まないでください」

 

「おや、侵害ですね、リリルカさん。ような、ではなく、えぐっているんですよ。後、読心術は基本ですよね?」

 

「そっちの方が酷いですよっ!?ていうか、サラリと読心術は誰でも出来るみたいな言い方してませんかっ!?普通は誰でも出来るようなものではありませんよっ!?」

 

「なに言ってるんですか?当たり前じゃないですか。そんな誰でも習得出来たら苦労しませんよ」

 

「...和葉様の言っていることが滅茶苦茶でリリはもう疲れてきました...」

 

「滅茶苦茶なのは当たり前ですよ。リリルカさんを弄っているのですから」

 

「...」

 

和葉とリリルカの話を聞いていてベルは、仲良くなってきたなぁ、と思っていた。最初は主人と従者のような関係を一方的に張られていたが、最近はこのように他人行儀の体が崩れつつある。というか、一方的にリリルカが和葉に弄られている。和葉は気に入った人物を弄るのが好きなのだ。(ベルもちょくちょく弄られている)まぁこれは信頼しつつある、ということだが。その証拠に和葉のリリルカの呼び方が《リリルカ・アーデさん》から《リリルカさん》に変わっている。愛称で呼んだときは心から信頼したことになるので、和葉が《リリ》と呼ぶまでそう遠くないだろう。

 

 

三人は襲ってきた(わざわざやられにきた)モンスターを倒しながら上に向かいダンジョンを出た。

 

「うわぁ...すっかり夜になっちゃってるよ」

 

リリルカの言ったとおり中央広場(セントラルパーク)は夜に包まれていた。

 

「バベルって何でこんなに高いんだろう?テナントを貸し出すにも五十階までいくのは大変だと思うんだけど」

 

「ベル様、ギルドがテナントを貸し出しているのは二十階までですよ?」

 

「え、そうなの?」

 

目を丸くするベルにリリルカと和葉は苦笑した。自分だけ知らなかったのは少し気恥ずかしいがベルは素直に尋ねた。

 

「お店がないんだったら、二十階から上はなにがあるの?」

 

「神様達が住まわれているんですよ、ベル様」

 

「神様達が?」

 

「えぇ、僕の知っている限りではオラリアの中でも有数な【ファミリア】の主神ぐらいのようですが、二十階から最上階まで彼等がいるようです」

 

バベルはギルドが管理しているので住むには法外な入居費等を払うことになるがその分、オラリアでも最高級の住み心地を手に入れることが出来る。

 

「へぇ~、ホームに住まないで別の所に住む神様もいるんだ」

 

下界の子(リリ)達と交流することが好きな神様もいれば、孤高が好きな神様もいるということです」

 

なるほど、とベルは頷いた。

 

「ですが、昔はバベルはこれほど巨大ではなかったそうですよ、ベル。ダンジョンを抑える『蓋』としての役割をするためだけにここまで大きくする必要はありませんからね」

 

「じゃあなんでここまで大きいの?」

 

「最初に下りてきた神様達が壊してしまったようです。こう...流れ星みたいに」

 

リリルカの説明を聞いたベルは、わざと壊したんだろうなぁ、と思った。やっと完成した建物を玉砕した神がゲラゲラ笑いながら謝っているのが容易に想像できてしまったベルは乾いた笑いをした。

リリルカが言うにはお詫びということで塔の再建...というよりダンジョンの抑止に大きく貢献したらしい、他ならない『神の恩恵(ファルナ)』によって。

 

「何となくわかったけど...。神様達の話を聞くたび思うけど『天界』ってそんなに暇なのかな?」

 

「お仕事が嫌になって逃げ出してきたのかもしれませんよ?」

 

「仕事?」

 

リリルカの言った聞き慣れない言葉にベルは首をかしげた。

 

「神様達にはやらなければならない義務があると聞きます。主に地上で眠りについた下界の者(子供)達の処理だそうです」

 

「そんなこともするのか...」

 

処理、といってもその者を転生させるか否か、というかんじである。転生出来るかどうかは生前での善悪は関係ない。神によっては天界での生活を許したり、苦痛を与えたり、無意味な重労働をやらされたり、等々例を挙げればきりがない。簡単に言ってしまえば神に気に入られるか、気に入られないか、さらには神の気分によっても変わってしまう、ということだ。

 

「まぁ、最終的にはほとんどの者が転生させてもらえるようです。とにかく、そんなこともあり激減した神様達のために居残り組の神様達がかなり殺気立ちながら穴埋めをしているそうです」

 

ベルはそれを聞いて死にたくない、そんなところに逝きたくないと思った、少なくとも今は。今天界に逝ってしまったら家族が悲しむ...それもあるが、問答無用で(憂さ晴らしとして)地獄に逝かされそうな気がするのだ。それを勘づいたのかリリルカはクスクスと笑っていた。ベルも何だか可笑しくなって笑う。

だからか、リリルカの言った言葉は不意打ちだった。

 

「でも、リリは死ぬことに憧れていた時期もありました」

 

「...え?」

 

「一度神様達の所に還れれば、今度産まれるリリは昔よりマシになっているかなって...」

 

リリルカはそう言ってバベルの、その更に上にある空を見上げ、その大きな瞳は遠い目をしている。まるで黒く染まった夜空を思い焦がれるかのように。

ベルがなにかを言わなきゃと思ったその時、リリルカのすぐ横、耳のそばでキイィンと甲高い音がした。リリルカは勿論、ベルも驚き仰け反った。音の鳴った所を見てみると和葉の手があり指を鳴らした状態になっていた。音の発信源はどうやら和葉の指のようだ。

 

「目、醒めました?」

 

当の本人はニコニコと笑っているだけだが。

 

「いきなり何するんですか和葉様!?」

 

「いえ、ちょっと空気が重くなっていたので吹き飛ばしただけですよ」

 

「それにしたって他にやり方があるよね!?」

 

「あったとしてもやりませんね」

 

「「まさかの即答(ですか)!?」」

 

ズーンと肩を落とす二人に対して陽気にクスクスと笑う和葉。

明らかに盗みを行っていた時より苦労している。

 

(...だけど)

 

今、この二人といるのは悪くない、とリリルカは笑みをこぼしながら思った。




魔法習得するところまで行きたかったのに行けなかったorz
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