ラブライブ!×ゴジラ 破壊神と九人の女神   作:Misma

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こんにちは!サンシャイン!の方、終わりましたね~。
最後のミュージカルには思わず笑ったのですが(笑)、「MIRAI TICKET」、素晴らしい曲でした。でも、Aquarsはここから本当の始まりですね。今までずっとμ’sの背中を追いかけていたけれど、これから自分たちのカタチを追い求めていくのですから。
それはさておき、今回出てくるゴジラは、正確には「シン・ゴジラ」そのものではありません。なんかどこかがびみょーに似ている、別物と思っていただければ。


覚醒

東京都港区、官庁街。

 

 

 

 

 

太陽を、上空に向かって無数の赤黒い光が貫いた。

 

 

 

 

 

ミシミシと音を立てながら、亀裂に覆われていく表面。

徐々に間隔を狭くしてその数を増やす、赤黒い光線。

やがて、特に拡がっていた、太陽の天井のひびが一瞬浮き上がるとー

 

 

 

竜巻のように、黒く赤く渦巻く光の柱が、上空の雲を、そして天を真っ直ぐに貫いた。

 

 

 

 

多くの顔が紅く照らされると同時に途絶える、歓声。応援。祈祷。

そこにあるのはただ、何が起こったのか分からない、分かりたくないという沈黙。

 

 

「―――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

女神達に代わって観衆の耳を支配する、あの重低音。

 

「…」

 

さっきまでμ’sを応援していた数多の人々の興奮は、それによって掻き消された。

人々の表情から笑顔が消えていき、恐怖にすり替わっていく。

 

「…穂乃果さん!! みんな!!」

 

ツバサが観衆の中で唯一対岸に叫び、歩道の柵に乗り出す。

 

「ツバサ、危ない!」

 

「何してるのよ!?」

 

英玲奈とあんじゅが彼女をひき止めようと腕を引っ張る。

同時に周りにいた避難民の中に彼女らA-RISEの存在に気づく者も大勢いたが、ただ沈黙と同情を保って、彼女の行動を見つめているだけであった。

 

そして、全体にひびが行き渡った太陽はー

爆発した。

 

 

「…い」

 

亜里沙や父母が、一瞬身を引く。

 

 

「いやあああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 

手を見つめながら放った雪穂の絶叫が、観衆の中にこだました。

 

「…あの子達が…?」

 

「…………………………!!!!」

 

父母が、放心したように目を見開く。

 

「…高坂さん?」

 

突如後ろから掛けられた小さな声に、二人は振り向く。

 

「…矢澤さん? 南さんに、西木野さんまで…」

 

そこには、にこの母とその家族、音ノ木坂学院の理事長でもあることりの母、そして真姫の母がいた。

 

「そちらの方でも…あの歌、お聴きになりました?」

 

ことりの母が気を遣った口調で聞くと、穂乃果の母は何かを抑えるかのように言葉を繋ぐ。

 

「…はい。あの子達の歌としか思えませんでした」

 

「…やはり、そうでしたか。

私たちも、自衛隊から直接避難指示があって、あの子達にも電話はしたものの全く通じず、ここまで避難させられたんです…でも、まさかこんな事態になっているなんて」

 

「私の方も娘から連絡を受けて、この子達と一緒に何とかここまで逃げて来たんですけれど、あの子達があんなことをするなんて…正直いまだに信じられません…」

 

にこの母が目を伏せると、その服の裾を引っ張りながら、にこの妹であるこころ、ここあが瞳に涙を浮かばせながら問う。

 

「…お母様? お姉様やμ’sの方々は、死んでしまったのですか?」

 

「お母さん!! スーパーアイドルのお姉ちゃん達ならあんな怪物に負けたりなんかしないよね!?」

 

「こころ、ここあ…」

 

「……………………………」

 

矢澤一家の末っ子で、にこの弟である虎太郎は、じっと対岸の燃える街を覆う煙を見つめていた。

すると、突然彼は何かに気づいたように目を見開きー

 

「…ゴジラ…!」

 

怪物の名前を口にする。

 

「…ゴジラ…!?」

 

各々の表情が青ざめる。

 

「……怒ってる…」

 

 

虎太郎の言葉と同時に、視界一面が赤黒い光で満たされる。

そして、その光を上書きするかのように、さらに強力な蒼白い閃光が人間達の目を直撃する。

その中に現れたのは、熱風によって姿がボヤけながら、身動ぎもせずに唯一佇む黒い影。

 

「…」

 

人々は、沈黙を破ることが出来なかった。

 

――――――――――――――

 

真っ青に染まったモニターが、芹沢博士達の視線を釘付けにする。

救出ヘリからの映像は、赤黒い熱線と同時に起きた謎の衝撃波によって途切れてしまったので、現在は当基地からのカメラからの拡大映像となっていた。

だがその画面は実質強烈な蒼い光によって覆われ、全く状況を確認出来ない。

グレアム博士が目を見開き、畏怖と恐怖の混じった声を漏らす。

 

「あの娘達が…負けた…!?」

 

「だが、一体なぜ…? さっきまでヤツは大人しくしていたはずでは!?」

 

ステンツ司令官でさえも予想外の事態に動揺を隠せずにいると、突然慌てた様子でステンツの部下が司令室に駆け込んできた。

 

「き…緊急事態です!」

 

「どうしたんだ! こんな時に!!」

 

ステンツがその部下を睨むと、その男は呼吸でさえもままならない様子で口をしばらく震わせていた。

 

「どうした!! 早く言え!!」

 

「ほ…ほ…本部より、通達が、ありました…」

 

何とかひりだしたその言葉に、室内の全員の視線が彼に一斉に集中する。

 

「…通達…?」

 

ステンツ司令官の表情は、さらに威迫を増す。

本部から派遣軍の長である自分に直接伝えない時点で嫌な予感を感じたが、聞かないことには分からない。

 

「今すぐ言え。あの男は…何と言った?」

 

「じょ…ジョージ=ハンプトンMONARCH太平洋総合本部事務総長の伝言によりますと…

『日本支部からの通達の後の先進諸国のMONARCH支部、国連及び各国政府機関との緊急会議の結果、巨大生物三体による今回の東京での被害は目を余るものがある。

依って、日本支部はもちろん、派遣したMONARCH軍部すら日本支部の制御及び巨大生物の殲滅という使命を果たさずにいるという結論に至った。

この件は重大な事案であり、この状況を放置すれば将来的に人類の永久的平和を乱す恐れがある。

以上の理由を持って、多少の犠牲はやむを得ないと鑑みー』」

 

男の声が、そこで止まる。

彼の顔は下を向いて歪み、そのまま数秒沈黙していたが、やがて。

掠れるような声で呟いた。

 

「『午前3時40分00秒、現在より5分前をもちー

 

東京都に向け中距離弾道核ミサイル、『MK Mark.09』を発射した。』」

 

しんと静まり返る司令室。

男はその報告を述べた後、脱力するように項垂れた。

誰も、口を開く者は居なかった。

 

「『MK Mark.09』…

確か、『Dragon Slayer』シリーズの後に対巨大生物に向け、更なる威力と発生熱量の向上、抜本的な構成元素の見直しを図った『Monster Killer』シリーズの最高峰、とは聞いていたが…実際はどうなんだ?」

 

芹沢博士が、無言でのしかかるこの場の重苦しさを背負いながらも、なるべく冷静にステンツに聞いた。

握りしめられる、ステンツの拳。

表情はニヒルに構えているが、その目は全く笑ってはいない。

 

「『09』…半年前、MONARCHが国連の協力を得て裏予算を注ぎ込んで製造した核兵器…計算上はその被害範囲は1961年にソ連が開発した『Tsar Bomba』の約5.5倍…『東京都がまるごと消し飛ぶ』代物です。

余りにも被害規模が大きすぎるからと、いずれは改修ということでお蔵入りになっていたはず…

どうやら各国の有力者の方々はどうも、怪獣も博士も私も相当お嫌いのようだ」

 

グレアム博士が怒りに震えて机を片手で叩く。

 

「ちょっと待って…まだ避難民は渋谷方面に何百万と残ってるのよ!?

東京都内でも、内陸部には避難勧告すら出ていない!! 彼らは何千万の命を怪獣退治の生け贄にしたいって言うの!?正気とは思えない!!」

 

「あの臆病者は、己の保身が第一なんです。結局は肩書きだけは立派な、大国の操り人形。

あれだけ脅しておけば、少しは時間は稼げると思いましたが…さすが大国の偉いさん方は行動が早いですな。

…おい、着弾までは?」

 

ステンツが本部の通達を報告した部下に問うと、彼は腕時計を見、答えた。

 

「10分です」

 

「…終わった、な」

 

ステンツは激しい感情を押さえつけるようにため息をすると、足を組んで椅子に腰を下ろした。

芹沢博士も肩を落とし、視線を地面に向けた。

 

「…今から避難を始めても、間に合うはずはない。もう女神達も、本当に神の世界に行ってしまった。

我々は、ここで死を待つばかりなのか…」

 

グレアム博士はそうやって意気消沈する二人を見ると、彼らの間に無理やり割り込み交互に睨み付ける。

 

「…大の大人が何を言っているんですか!? あの子達はあの歌を、最期までやり遂げたんです!! 

あの歌…ゴジラに効果が無かったとしても、東京の人々に多くの安らぎを与えました!

彼女達は自分たちに出来ることを全力でしようとした! 

私たちだって少しでも彼女らの努力が無駄にならないよう、避難勧告の指示だけでもすべきです! 出来るかどうかなどは二の次ではありませんか!!」

 

怒りをぶちまける彼女を、ステンツが制止を促すように手をかざす。

 

「グレアム博士。我々はベストを尽くしました。私も本部の命令を蹴ってまで彼女らを信じた。

全員のあの今まで見てきた兵士の中でも見たこともない表情を見て、私は少し賭けてみようと思ってやったが…見事でした。

彼女らは期待に応えようと敢然と奴らに立ち向かい、そして負けたんです。もうそれで良いではありませんか。

…せめて、死ぬ間際くらいはあの虹を思い浮かべながら逝きたい。私も、最期に良い夢を見させてもらいました」

 

そう言って一笑して顔を上げるステンツに、グレアム博士はひそかに肩を震わせる。芹沢博士も、同情するように彼女に顔を向ける。彼女の顔は下に下がっていた。

 

「グレアム博士、気持ちも分かるが、私たちの最後の切り札が効かなかったんだ。あの爆弾ですら効くのか疑わしい。あの九人の勇敢な少女達に感謝しながら、時を待とう」

 

床に数粒の水滴が落ちる。

 

「…そんなの、ただ…諦めているだけじゃないですか…」

 

喉の奥から搾り取ったようなその声に呼応するかのように、最初から暗かった司令室内の空気は、ますます重くなってくる。

遂には耐えきれず、膝まづいて神に祈り出す者、写真を見つめ続ける者までもが現れ始めた。

何人かの咽び泣きが聴こえながらも全体として沈黙を貫く室内は、これから自らを待っているであろう死への恐怖、そしてそれに対する諦感に支配されていた。

 

その時ー

 

突如、人間達の顔を照らしていた光が青から紫へと変わった。

 

泣いていた者も涙を止め、彼らの視線は自然にモニターに向く。 

 

「何だ…?」

 

芹沢博士達も一瞬我を忘れ、画面に見入る。

画面を満たすのは、カメラを通しているのにも関わらず全貌が捉えきれないほどの輝き。

 

「まさかこの光は…」

 

ステンツが初めて畏れと恐怖を込めて呼んだ

 

ー彼の名は。

 

―――――――――

 

「…うぐっ」

 

瓦礫の山の上で、突如射し込んだ紫の光に、倒れた穂乃果が僅かに指を動かす。

 

なんとか目玉を開く。

 

その視界にちらほらぼんやりと入ってくるのは、大切なメンバー達の姿。

どうやら死んではいないようだ。

 

『…私たち、どうなったんだったっけ…? ゴジラとカイザーを鎮めようとした時、突然ゴジラが赤黒く光って…?』

 

その後は覚えていない。

 

『…! 早くゴジラ達を止めないと!』

 

痺れて動かない身体を動かそうとするが、やはり思い通りになってくれない。

その時、メンバーの内の一人が此方に気づく。

 

「…穂乃果!」

 

声で、海未だと分かった。

他のメンバーも何人か目覚めているようで、此方に顔を向ける。

口を無理やりこじ開けるように言葉を絞り出す。

 

「…今、何が起こってるの? みんなは無事?」

 

穂乃果の言葉にことりが、不安そうな顔をして向こうを見ている花陽と凛を一瞥してから頷いた。

 

「うん、モスラさんがなんとか守ってくれたみたいなんだけど…」

 

痺れも少し回復し、目眩がしつつもなんとか立ち上がる。

 

「この光…何?」

 

「それが、最初に真姫が目覚めた時からこうらしいのです。小美人さん達も、全く何の力なのか読めず、ただただ強力なエネルギーを感じる、と…」

 

前方では、三年生組と手を光の方にかざした小美人がなにやら真剣に語り合っていた。

その影をも呑み込まんとし、視界を奪うほどの紫の光に、穂乃果は眼を細める。

 

「まさか、カイザーギドラが遂にゴジラを…!?」

 

彼女は最悪の展開を予想したがー

 

 

「…―――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

それは、一発の咆哮によって全て覆される。

 

「…嘘…!?」

 

穂乃果だけでなく、そこにいる全員が目を見開き、その咆哮が指し示す事実に驚愕した。

 

 

蒼と紅が入り交じったかのように、全てを紫色が支配していた中からー

 

暗闇を悉く照らすかの如く、あらゆる方向に天を衝くかのように。

 

はち切れそうなほどに肥大化した、一つ一つが紫光を放つ剣山を無数に背中から伸ばし。

 

胸にも、首にも、腕にも、脚にも、尻尾にも血管のように光が黒い巨体に充満し。

 

蒸発して真っ黒になった眼球から、そして口から蒸気を立ち昇らせ。

 

その生物は、足元でもがく『皇帝』を踏みつけながら、嘲笑うように佇んでいた。

 

「あれは…

…ゴジラ!?」

 

「信じられません…全く信じられません!!ゴジラの新たな形態です!!」

 

小美人の呆然としながら発した言葉に、にこが思わず振り向いて反駁する。

 

「アイツの一体どこにそんなパワーがあったのよ!? あんなに弱っていたじゃない!!」

 

「そうよ…それに、彼は私たちの歌を聴いて確かに鎮まろうとしていたわ! 何の理由があってあんなことになるのよ!?」

 

絵里が問い詰めると、小美人は上空を見上げた。

 

「皆さん…おそらくですが、彼にエネルギーを与える原因となる『邪魔』が入ったからだと思います」

 

凛が彼女らの言葉に首を傾げる。

 

「…『邪魔』?…どういうこと?

私たち以外に、あそこにはほとんど誰も居なかったはずだよ?」

 

だがメンバーのうちで唯一、空を見ていた者がいた。

 

「………」

 

希である。

彼女はしばらく小美人が見上げる先を見上げた後、確信した表情で彼女らに目線を戻し、口を開いた。

 

「…小美人さん、その『邪魔』と言うんは…

『核』やね?」

 

残りのメンバーが「えっ」と小さく声を上げるが、小美人は二人揃って頷いた。

 

「その通りです」

「ゴジラの破壊への原動力は『光への憎悪』…おそらく今の様子を見るに、それさえあれば例えエネルギーを全て吸われたとしても、何度でも甦ることが出来る…そして今回、その引き金を引いたのが、今此方に向かっているであろう、自らの原点となった『核』なのです」

 

「ってことは、どっかの誰かが核兵器を発射したってこと!?

…まさか、あのステンツのおっさんが…!?」

 

にこが、最も疑わしい人物の名を挙げる。

 

「それはないでしょう? だって、あの人は約束してくれたじゃない、『失敗しなければ』核は撃たないようにって!」

 

「そうね…それに、怪獣滅却が目的なら、わざわざ手間暇掛けて私たちを騙すメリットが分からないわ」

 

真姫と絵里が反論したが、今この場で誰が発射したのかなど、小美人でさえも知るわけがなかった。

 

「誰が発射したのかなんて、今は関係ないよ! 小美人さん、ゴジラは今、どうなってるの!?」

 

穂乃果が口を開いたまま停止しているゴジラを見てから聞くと、小美人のうちの一人が答える。

 

「…私たちも、ゴジラが視力を通さず核エネルギーを感じ取ったのには驚かざるを得ませんが…

とにかくゴジラは今、完全な『兵器』と化しています。『憎悪』以外の感情が感知出来ません。

きっと、あなた達の精神干渉を無効にするために、自身に潜む『恐怖』を奥に閉じ込めているのでしょう。

…もしくは『忘れようとしている』と言っても良いかも知れません」

 

ゴジラの喉奥がぼんやりと紫に染まると、少しずつ中から謎の物体が姿を現し始める。

それは背中の結晶体と非常に似ていて、口腔内と同じ紫の鈍い輝きを放っている。

 

「―――――――――――――……」

 

苦しげに低く唸りながら、ゴジラが上方へと頭を向ける。

彼が仰角を微調整している間に、その結晶体はたちまち十メートルにまで伸長した。

 

「何を…するつもりなの?」

 

今まで見たこともない、槍のように鋭く、無機質な結晶体の紫光に、そう呟いた花陽も含め、μ’sは畏れの感情を抱いた。

鈍く光っていた結晶が、突如中心から強烈な閃光を放つ。

 

キィィィィィィィィン、というエネルギーが蓄積されるようなかな切り声が鳴った後ー

 

…一際、真っ白な光が周囲を包み込み。

 

その『裁きの槍』は。

 

紫の尾を引き、放たれた。

 

―――――――――

 

「…そうだ。私はこれでいいんだ。」

 

真っ黒なモニターを前にして、ジョージ=ハンプトンMONARCH太平洋総合本部事務総長は、自分に言い聞かせるように腕組みをしながら一人だけのプライベートルームで呟き続けていた。

 

「これが成功すれば、私はようやくこの拷問から解放され、先進国の権力者どもの顔を気にせず生きられる。

あの厄介な奴等も始末出来るし、彼の国の首都の消滅は国際経済に対しても損失は大きいだろうが、人類全体の将来を考えれば安いものだ」

 

彼は立ち上がると世話しなく歩き回り、鏡の前で一気にコーヒーを飲み干した。

彼は自分の中のもう一人の自分に向かって独白を続ける。

 

「そうだ、これは人間全体の幸福の為だ。私は賢明な判断をしたのだ。多数の為に少数を犠牲にする。

当たり前のことではないか。それに、ほとんどあれは国連と大国達が決めたことだ。

どうせ私では逆らえなかった。

そうだ! 私はレバーを引くように命じただけだ!

決して私は罪など犯していない!!!!」

 

いきなり大声を上げると、彼はコーヒーカップを床に叩きつける。

カップは割れ、少し残った中身が床を汚した。

 

「はぁ、はぁ…」

 

小太りの顔の中でも、毛穴が目立つ鼻をひくひくさせながら、ハンプトンは息を荒げる。

 

「あの男…いつも私のすることに口出しする度、鼻で私をからかいおって…

東京に取り残された女子高生だと!?そんな愚か者は勝手に野垂れ死んでおけば良い!!

仮にもMONARCHの最高責任者をそんなつまらんことで馬鹿にするとは…

そんなジョークにもならん侮辱をしたから、こうして天罰を受けるのだ、ウィリアム=ステンツ司令官。

せいぜい今までやってきたことを後悔しておるが良いわっ」

 

彼はそう言うと同時にドアを乱暴に開け放ち、廊下へ出た。

中央管制室で、あいつらもろとも、今まで自分を苦しめてきた化け物が消滅する瞬間を見届けてやろう。

彼はそう考えた。

MONARCH太平洋総合本部は巨大な海底基地であり、中央管制室へはいくつもの廊下を経由せねばならない。先程発射じた『MK Mark.09』の着弾時間に間に合わせるために、彼は急ぎ足でエレベーターへと向かう。

その時だった。

 

「総合本部事務総長、ここに居られましたか!」

 

後ろから声がかかる。

 

「…あぁん? 

君は…ラッセル=ノモレス副官。何故ここに?」

 

「…中央管制室へお願いします」

 

不在のウィリアム=ステンツ司令官に代わり、臨時軍部指揮官となっていた彼に連れられ、彼の思い詰めた表情にハンプトンは首を傾げながら中央管制室へと急いだ。

 

 

~中央管制室内~

 

 

「………ちょっと待ってくれ。君、それは本気で言っているのか?」

 

 

慌ただしく報告や連絡が飛び交う中央管制室内。

そんな喧騒に紛れるように壇上の会議机で、ジョージ=ハンプトンは相変わらず堅い表情を崩さないノモレスに問い詰めた。

 

「…はい。ここMONARCH本部より発射された中距離核ミサイル『MK Mark.09』は、上空200kmにおいて…

 

現在より2分前、謎の物体によって撃墜されました」

 

ハンプトンは戦慄した。

怒りと戸惑いと絶望が一斉に彼を襲い、今にも彼を押し潰しそうだった。

中央管制室の奥にある巨大なモニターには、『MK Mark.09』が上空で大爆発し、電磁波障害が起こる直前の様子を収めた衛星画像、そしてもう一方の分割された画面には、別の衛星から捉えられた、黒い物体を中心として紫色に染まる東京の画像が映されていた。

 

「嘘だ…嘘だと言ってくれぇ…」

 

「残念ですが、これは真実です。あの状況下で自衛隊が自力で核ミサイルを撃ち落とした可能性は低く、直前に観測された東京での高エネルギー反応…そしてあの衛星画像から、おそらくはあの巨大生物が関係していると考えられます」

 

両手で頭を抱え、机に突っ伏した。

ノモレスの言葉もほとんど耳に入らなかった。

ハンプトンは、ただひたすらこの真実を否定したくて堪らなかった。今すぐにでもここから逃げ出したかった。

 

「あの黒トカゲ共…どれだけ私を苦しめたら気が済むんだ…!?」

 

その時、一人のオペレーターの男が悲鳴のような声を上げた。

 

「報告!!…通信を回復した衛星からの情報に依りますと現在、『MK Mark.09』の爆発地点より正体不明の物体が急速に高度を落とし、地上へと接近中!

落下予測時刻は、残り3分20秒!!

着弾予測地点は…北緯17.5度、西経171.3度…」

 

最後の言葉で、室内の何人かの動きが固まる。彼も同様だった。

だが…周囲のプレッシャーに負け、彼はついに口を開いた。

 

「……当総合本部の……真上です…!!」

 

一瞬、皆の手が止まった。

一斉にそのオペレーターに視線が行きー

 

沈黙を保った後。

 

「…逃げろ……逃げるんだっ!!」

 

誰かがそう言った瞬間、誰も彼もが仕事をおっぽりだし、押し退けあいながら我先にと中央管制室から飛び出していく。逃げる場所は…考えてもいないだろう。

丁度その時、衛星との通信を回復したために、モニターで衛星画像が更新された。

 

そこに映るのはー

 

地上に向かって彗星の如く尾を引く、紫光の槍。

 

「まさか…あの物体がMark0.9を『貫通』し、その勢いを保ったまま大気圏外からここに向かっているというのか…!?」

 

唯一逃げなかったノモレスは、初めて唖然とした表情を見せた。

足も動かなかったハンプトンは、床へと崩れ落ちる。

 

「終わりだ…みんな終わりだ…MONARCHも…私も…人類も…みんな…みーんな終わりだ…あは」

 

MONARCHの最高責任者としては情けない表情をさらけ出し、終いには―

 

 

「あは…あははハハハはははハハハ―――ッ!!!! ヒィ――――――ッ!! 終わりだ!! 

そうだ! 終わりだ!! 最後の審判だ!! トカゲによる最後の審判だ!!

あははハハハは―――っ!!!!!!!!!」

 

 

床に笑い転げた。

ノモレスが一瞬驚愕し、しかしその後哀れみを伴った表情で彼を見下す。

 

「男も!! 女も!! 子どもも!! 老人も!! 若者も!! 白人も!! 黒人も!! 黄色人も!! 聖人も!! 狂人も!! 女神も!! 畜生も!! 王様も!! 大統領も!! 金持ちも!! 貧乏人も!!

人間みんな、トカゲに裁かれて死んじまう!! トカゲにゃ人間の尊厳なんて、何の価値もねぇ!! ゴミそのものだぁ!!

死んじまえ!! いっそみんな死んじまえ!!」

 

新たに画像が更新される。

そこに映るのは、大気圏に突入して一際輝く紫の光点。

幾層もの雲を突き抜け、ますます速度を上げていく。

 

「ウィリアム=ステンツ司令官…」

 

ノモレスは発狂したハンプトンを他所にして、無機質な天井を見つめた。

 

「我々も、もはやこれまでです。奴に核が通用しないことは、これで確実なものと成りました。

あなたは、芹沢博士とは方向性こそ違うものの、本気で人類の将来を考えていた御方でした。

…いつかあなたが一生を賭けてでも守りたいといった、あなたの故郷、家族が、将来も残っていることを祈ります」

 

そう言って、彼は笑い声だけが響き渡る、がらんどうな中央管制室内で目を瞑った。

やがて、天井から甲高い落下音が近づくように大きくなった後。

 

 

 

 

 

MONARCH太平洋総合本部は、ゴジラが発射した結晶体の核爆発により、午前3時55分を以て消滅した。

 

 

 

 

 




このネタ、他の方で既出だったらどうしよう…(汗)
この次、ヤケに壮大な展開になるかもしれないです…
今の時点で君の名のやたら露骨なオマージュがあるんですけど、やっぱり止めといた方が良かったんですかね…災害に関するという意味で、全く関係ない訳でもないよな、と思ったし、あのシーンは恐ろしさと美しさを兼ね備え、シンゴジに通ずるものを感じたのでこのようなオマージュを入れたのです。
…まぁ、投稿しちゃったものは仕方ないね!
次回は、もっとヤヴァイことになる予定です。それに対するμ’sの動向も含め、お楽しみに。
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