ラブライブ!×ゴジラ 破壊神と九人の女神   作:Misma

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みなさん、お久しぶりです。
今日、やっと…この小説が終わります。
正確に言えば完全に終わるわけではありませんが、μ❜sの戦いは、ひとまずここで区切りをつけます。いつの間にか書き始めてから1年以上経っており、当初の計画よりかなり伸びてしまいました。こんな色物をここまで応援して下さった方々に、万感の思いを込めて感謝致します。コレがどれだけの人に受け入れられるかはわかりませんが、今ここに両方の作品に対しての感謝を込め、物語を終わらせようと思います。
それでは、どうぞ。



終結

憎悪は、輪廻する。

 

この世界でそれが途切れることを期待するのは、ただの時間の浪費に過ぎない。

どんな輝きに満ちた世界でも、必ずその裏に闇は潜んでいる。

当たり前だ。

日が当たれば、何処かに影が出来る。

それは、どうやっても覆すことが出来ない自然の掟。

人間という生物の社会でも、それは同じ。

 

皆は『光』こそが正義と言う。

文明こそが、知性こそが、希望こそが正義と言う。

 

だが、それは単に人間に都合が良いからだ。

自分たちにとって都合が良いので善と見なしただけなのだ。

 

『闇』は、いつでも『光』の背後にある。

『光』が広がれば広がるほど、世界の歪みは酷くなっていく。

無理に押さえつけようとすればするほど『闇』は強烈に膨れ上がってー

いつかは爆発し、全ては混沌に包まれるのだ。

 

ならば、人が何かの『闇』を知った時、どうするべきか。

 

それでも自らの信奉する『光』を信じるのか、それとも『闇』の存在を受け入れるのかー

 

その答えを、この世界は、自然は、教えてはくれない。

 

本来、『光』も、『闇』も、『正義』も、『悪』もない、何の区別も存在しない、この自然は。

 

 

―――――――――

 

 

また、この感覚。

 

もう、二度とあの卑しい生き物たちの策にはかかりたくないと思い、彼はすべての生命を断とうとした。

なのに。

何なのだろう、この身体を包み込む不思議な空気は。

自分が今まであれほど憎んできた光が、今は心地よくすら感じられる。

例えるならそれは、自ら脳の片隅にすでに追いやった、仲間と一緒に生きていた時の感触。

彼はもはや、この世界とは独立した存在、むしろこの世界を滅ぼす存在であるはずなのに。

これからもそうであろうとしていたのに―

 

彼は結局、同じ手にはまってしまった。

 

だが、そのことに何故か怒りも、憎しみも、殺意も湧いてこない。

彼は薄々理解し始めていたのだ。

あの、何度も自分の前に姿を現したあの九匹の小さく軟弱な生き物たちは、自分を殺そうとはしていなかったことに。

彼の怒りの引き金を引いたのは、また別の意思だ。

この小さい生き物たちは、ただ寄り集まって生きているのではない。

それぞれに意思があるのだ。

全ての意思が、自分を殺そうとしているわけではない。

 

今まで彼が目にしてきたのは、数多の光を射出して自らを葬り去ろうとする連中だけだった。

だから、彼はあの小さい生き物たちは、所謂『蟻』のような、『ゴジラを殺す』という目的の元に動く冷徹な生命なのだと認識していた。

しかし、あの九人は違う。

それぞれの意思は独立しながら、この世界を守り、尚且つ彼を『救う』という目的のために動いている。

それを繋げているのは、目に見えないけれども確かにある『絆』という概念だ。

 

「………………」

 

声が聞こえる。

ささやくような、優しい声。

 

「………………」

 

目の前に九つの、光が舞い降りる。

それらはヒトの形になって、彼の顔からそう遠くない場所にやって来る。

オレンジ色の髪の毛の少女が先頭に立って屈み込んで―

 

彼の額に、自分の額をピッタリとつける。

彼女は目をつぶって、何も言わない。

 

何十年ぶりに感じた、直接皮膚から伝わってくる温もり。

 

その温もりは、まもなく九つに増える。

 

見てみれば、それぞれの顔も、表情も、髪の毛の色も違う。

一見無表情な者、柔和な笑みを浮かべている者、額が痛いのか険しい表情をしている者…

だが、伝わってくる暖かい『気持ち』に、変わりはない。

 

「あなたは、数知れない人達を殺した…。沢山の人々の想いを、居場所を踏みにじった」

 

先ほどの少女が、何かを呟く。彼には分かりようがない。

 

「でも、それはあなたも同じ…あなたに多くのモノを奪われた私たちだからこそ、その気持ちがわかる。

だから、あなたを今でもどこかで許せないけれど…それでも…それでも許したいと思いたい」

 

後の八人が、彼女に目を向ける。

額をつけたままの彼女の頬から、涙が零れていた。

 

「あなたにとったら私たちが謝らなきゃいけないんだろうと思う。それも間違ってなんかいない。

でも、今のあなたならきっと分かると思うの。

あなたが奪ったものは、私たちにとっても、とてもとても大事なものだってことが」

 

涙がゴジラの瞳に落ちる。

彼の瞳に、炎の中、我が子を前に咆哮する自分が映る。

 

 

「だから…地上に戻ろう?

そして…本当に幸せになる方法を、見つけよう?」

 

 

蘇りそうになる何かを包み込むように、彼女たちは額を離してまっすぐに彼を見つめる。

濁りのまったくない、澄み切った瞳。

その純粋さに引き込まれるかのように、彼は少しずつ目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

そこにある全てが、彼を安らぎに導いた。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「ゴジラ、核反応中断!!体温急低下!!脳波、停止しました!!」

 

 

モニターに映るゴジラの身体からの発光が止まる。

地球を覆う黒い霧に巣くっていた目玉たちは苦悶の声を上げて潰れていく。

それまで地上を精確に捉えていた無数の『裁き』の槍も、列を乱していく。

背ビレの光は消え、翼のように広がっていた結晶体も砕け散った。

揚力を失った巨体は、そのまま重力に従って落ちていく。

 

 

「…なんだ、これは…」

 

 

ゴジラの突然な活動停止に、指令室内はざわめいている。

芹沢博士たちも、理解の速度が追い付かずにいる。

しばらく彼らは唖然としてモニターを見つめていたが、やがてグレアム博士が口を開く。

 

 

「まさか…成功…したの…!?」

 

 

あの、今まで核をもものともせず暴れ狂い、終いには世界に終焉の幕を引こうとした『神』を―

たった九人の少女たちが止めたのだ。

 

 

「ええ、その通りです」

 

 

後ろからした馴染みのある二つの声に、三人は後ろを振り向く。

芹沢博士は思わず驚きの声を上げる。

 

「小美人…!!」

 

彼女たちは、どこか安堵したような表情で芹沢たちを見上げていた。

 

「ゴジラは今、長年にわたり縛られ続けてきた憎悪から解き放たれました」

 

「彼女たちもまもなくゴジラの精神内から脱出するはずです」

 

彼女たちが指さしたモニターの画面では、大気圏に突入したゴジラが炎に包まれていた。

そこから九つの彗星が飛び出し、地上に向かっていく。

 

「本当に…あの娘たちがやったのか!?」

 

ステンツ司令官が詰め寄ると、小美人は静かに首を横に振り、久しぶりに微笑んだ。

 

「九人だけでやったのではありません。

彼女たちを励ます声全てが…彼女たちを信じる気持ちが…彼を止めるに至ったのです」

 

室内のあちこちから歓声が上がる。

彼らはやがて大気圏を突破し、東京上空へと向かう。

英雄の凱旋とでも言えるその光景を目の当たりにしながら、芹沢博士はふと呟いた。

 

「…これは、我々人類の、彼に対する『勝利』というべきなのだろうか?

もしそうなら、これは記録的な出来事になる」

 

「少なくとも、彼女たちにとっては『勝利』ではないでしょう。

彼女たちは、最終的に相手を打倒することではなく、彼の存在を認め、理解しようとすることを選んだ…

だから彼も彼女たちの存在を認め、攻撃を止めたのです」

 

グレアム博士は画面から目を離し、彼に向かいあった。

 

「むしろ、我々は彼から『赦された』のですよ。九人の少女と、それらを支える人々の助けによって」

 

三人は、再びモニターに視線を戻した。

「状況終了」の合図がなるまでに、それほど長くはかからなかった。

 

―――――――――

 

「…綺麗…」

 

午前5時48分。

 

東京上空、約3km。

 

数日ぶりの朝日を望む。

 

日光を浴び、世界を救った少女たちは帰路に着いている。

花陽はその日常ではよく目にする輝きに、今は心を奪われたように見入っていた。

 

「久しぶりだね…こんな美しい夜明けを見るなんて」

 

「久しぶりって…たった数日しか経ってないわよ?」

 

真姫が茶々を入れると、ことりは感慨深げに目の前の落下する巨体を見つめた。

 

「そっか…彼が来てから、数日しか経ってなかったんだね。

あまりにもいろんなことがあり過ぎて、実感湧かないなぁ」

 

非常に濃い、様々な想いと出来事が入れ混じった数日間だった。

それを表すように、眼下にはついこの前にはありえなかった、混沌とした光景が広がっている。

 

ホットスポットと化した官庁街周辺。

血飛沫がこびりついた港区のビル街。

強烈な衝撃波によってなぎ倒された住宅街。

 

そこで何があったのかは、嫌でも彼女たちの記憶にしかと残っている。

 

「…でも、大変なのはこれからだよね。学校も、家もみんな怪獣たちが壊しちゃったし」

 

凛がそう言って硝煙の上がる街並みを見下ろす横で、海未が目を伏せる。

 

「ええ、本当に…最悪の事態は回避できたとはいえ、彼には、非常に多くのモノを奪われました」

 

そう、やはりどうしても蘇ってしまうことには変わりない。

自分たちの大切なモノを踏みにじられた時の、あの潰れるような想いは。

 

「そうね…私たちがどう思おうと、人間の多くは絶対にコイツを恨むことになる。

きっと、人間とゴジラが永遠に戦わない、てことはほぼないに等しいわ」

 

「憎しみの連鎖、ね…悲しいことだわ」

 

絵里がにこの言葉を聞き、彼がこれから受けるであろう苦難に顔を歪めると、その肩を希が叩く。

 

「それは、うちらにはどうしようもないことや。

あの時届けた気持ちを、彼が受け取ってくれてることを祈るしか、うちらには出来んよ」

 

「…きっと、伝わってるよ」

 

穂乃果はゴジラの眼、そしてその奥を覗くように見つめる。

彼の目に、いまだ光は宿っていない。

 

「私たちの声を聞いて、攻撃を止めてくれたもの。

私たちにも大切なものがあるって、今は分かってくれてるはずだよ」

 

「でも、彼の『光』に対する怒りは消えたわけじゃないわ。

いつ何がきっかけで心変わりするかはわからない。

彼を盲目的に信じるのも危険かもしれないわよ、穂乃果?」

 

若干言いにくそうにしながらも、絵里は穂乃果、そして自分たちに対する戒めの言葉を口にした。

穂乃果はそれに頷きながらも、そっと自分の胸に手を添える。

 

「…あの瞬間に感じた暖かい気持ちは、決して偽りなんかじゃない。

今だけでも、そう信じたいと思ってる」

 

「…そうね」

 

穂乃果の短い言葉に、絵里はそっと僅かに微笑んだ。

 

「あっ!!そういえば!」

 

突然の凛の叫びに、にこは疑問の視線を投げかける。

 

「何よ~、雰囲気壊すんじゃないわよ」

 

「このままゴジラが落下したら…ここってどうなるの?」

 

メンバーの間に沈黙が流れる。

真姫が、緊張した面持ちで、恐る恐る口を開く。

 

「…高度と加速度から考えて、東京…いや、関東全域が消滅するわね」

 

「なあ~~~!?

なんでそんな大事なこと先に言わないのよ!?」

 

にこは真姫の両肩をつかみ、凄まじい形相で揺らす。

 

「し…仕方ないじゃない!今、やっと私も気づいたのよ!

あの時、みんなゴジラを止めるのに必死だったんだから!!」

 

メンバー達がパニックに陥りかけた、ちょうどその時―

 

 

 

「…………………――――――――――――――――――――――――――――…………」

 

 

 

ゴジラの瞳がゆっくりと開かれる。

だが、今まで彼女たちが見てきた、怒りや狂気といった感情は伝わっては来ない。

 

「…ゴジラ…!」

 

彼は目を動かし、自らが置かれた状況を把握するが、動揺する様子はない。

 

「なんで、驚いていないの…?」

 

花陽の問いに答えるように、ゴジラの背ビレが光り始める。

その光はもう底知れない憎悪を含んだ赤黒い輝きではなく、透き通った蒼白い輝きだ。

 

「…そういえば、ゴジラにはあの能力が…!」

 

ゴジラは自身の背中を地上に向けた。

すると、さっき砕け散った翼状の結晶体の根元の部分が、より一層輝きを強める。

気づけば、地上からの距離はもう既に1kmを切っている。

 

果たして、間に合うのか。

 

彼女たちの心配をよそに、ゴジラは全身に力を込めるような動作をした。

直後にジェット機のような音が鳴り、下方に強烈な衝撃波が発せられる。

急激に落下速度が落ちると、μ❜sは万が一の事態に備え、数百mほど彼より上方の位置で降下していく。

そうしているうちにも、地上とゴジラの間の距離はもうすぐそこに迫っていく。

 

衝突まであと、500m、300m、100m、50m、そして―

 

 

 

10m。

 

 

 

無意識のうちに、メンバー達は目をきつく瞑っていた。

だが、いつまで経っても爆発音はしない。

細く、わずかに瞼を開いてみると―

 

ゴジラは、地上まであと数mというところで空中に停止していた。

 

「「「…………」」」

 

一気に彼女たちの肩から力が抜け、大きなため息が一斉に出た。

 

ゴジラが姿勢を調整し、地上に地響きとともに足を下ろすと、同時に何かがひび割れる音がした。

 

「あ…あれって」

 

真姫の反応が指すのは、翼状に連なっていた結晶体に起こった変化だった。

覚醒し、地球を一度滅ぼしかけた彼を象徴するかのように生えていたソレは、もはや原型を留めぬほどに崩れ、唯一残った根元も、先ほどの空中姿勢制御でエネルギーを使い切ったようだった。

ゴジラは背中を確認するかのように首を曲げた後、大きく身体を身震いさせる。

すると、翼状の結晶体だけでなく、他の異常発達した背ビレも同様に砕け散っていき、破片が地上に散らばっていく。

 

「もう、彼には必要ないものなんやろうね」

 

希の言葉とともに、ゴジラは身震いを止めた。

背中にあるのは、三列の整然と並んだ背ビレだけだった。

皮膚を彩っていた生々しい血管も姿を消し、彼は完全に黒い身体となっていた。

μ❜sのメンバー達は少しずつ高度を下げ、やがて地上へと降り立つ。

彼女たちは今までサポートしてくれたフェアリーモスラに各々でお礼を言い、モスラの元へ作戦成功の報告と共に帰還してもらった。

飛び立ってゆく彼らを見送った後、彼女たちはゴジラの方へと振り向く。

 

時はちょうど、午前6時00分。

 

空は、晴天。

 

日の出から少したって昇った太陽が、彼を向こうから照らしている。

 

「………」

 

「………」

 

誰もいない廃墟に、一匹の怪物と、その背中を見つめる九人の学生服姿の美少女。

異様な光景が、沈黙を保ったまましばらく流れる。

何時経った頃だろうか。

遠くから空気を切り裂くプロペラの音が聞こえてくる。

おそらく、外国のTV局か何かだろう。

数分後にはヘリコプターが上空に現れ、彼女たちの存在には気づいていないのか、ゴジラの百mほど周りを旋回している。

 

「………」

 

音を煩わしく思ったのか、それともただの偶然なのか、ゴジラは一歩を踏み出した。

何回も体験した揺れが彼女たちを襲うが、もう既に慣れっこになっている。

少女達はただ、彼が去っていくその姿を見ているだけだ。

報道ヘリは突然の行動に危機感を抱いたのか、ますます彼女たちとゴジラから遠ざかっていく。

だが、ゴジラはそれに構うことなく歩を進めていく。

 

まもなく、ゴジラは海岸に到着する。

舗装されたコンクリートが彼の足に踏み砕かれる。

彼が海へと消えようとしていると分かった時にはすでに、少女達はなぜか彼に向って駆けていた。

彼の行動を止められるわけではないと知りながら。

 

ゴジラがたった数歩で通った道を、彼女たちは全力で走り抜けていく。

アスファルトは踏み抜かれている上に、そこら中に瓦礫やガラスが散乱しているというひどい有様である。

そんなところを走るのだから、当然息も切れ切れだ。

そんな動きもつゆ知らず、そのまま海に足を突っ込むかと思われた時―

 

ふいに彼の歩みが止まる。

 

それに合わせるように、少女達も走るのを止める。

 

晴天に響くのは、プロペラの音ただ一つのみ。

 

 

何故、帰らないのか。

 

 

彼女たちの胸にあるのは、ただその疑問一つだった。

その答えを知ろうとしたのかは分からないが、そこから九人のうち誰も動こうとはしなかった。

 

すると、ゴジラは―

ゆっくりと振り向いて、彼女たちを見つめた。

 

それは、今まで彼が彼女たちに行ってきた『睨む』という行為とは、少し違った。

片目しかこちらに向いていないが、その眼はしっかり開いて彼女たちを視界内に捉えていた。

それに応えるように、九人の少女たちも顔を上げて彼を見つめ返す。

その行為に意味はあるのか。なんのためにこの行為をしているのか。

彼女たち自身も知らず、もしかしたら彼自身も知らないのかもしれない。

 

 

長いようで、短い時間が両者の間に流れた。

 

 

その流れを断ち切ったのは、ゴジラの方だった。

彼は海の方に身体を向け直すと同時に、左足を海水に突っ込ませる。

大きな波しぶきが上がったと思うと、彼は次の一歩を踏み出す。

そうやって、一歩進むごとに海の深みに沈んでいくゴジラを、μ❜sは未だに無言で見送っていた。

半身ほどが海水に沈んだ頃合い、ゴジラは海上に倒れ込むように姿勢を変える。

全身が海水に浸かると、さっきよりも一際大きな波しぶきが上がる。

その中から、三列の剣山が姿を現し、まるで、彼を象徴するかのように輝きながら沈んでいき。

 

トプン、と音をたて、海中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえるのは、海岸に波が打ち付ける音だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目に見える彼が残していったモノといえば、瓦礫の山ぐらいのものだ。

だが、彼の姿は―

人々の心の中に、根強く、生々しく刻み込まれている。

きっとこの先、この街の人々は、常にその恐怖と戦うことを運命付けられるだろう。

 

だが、それでも忘れてはいけない。

 

この出来事を風化させてはいけない。

 

思い切り泣いた後には、お互いに手を取り合って、少しずつでも前を向いて生きていかなければならない。

それは、不可能なことではない。

何故なら、生命は全て自ら復元しようとする力があるのだから。

 

 

「!!!!!!!!!!!」

 

 

後ろを向けば、モスラが彼女らを迎えに来ていた。

 

 

やっと、帰れる。

親しい人達の元に、親しい場所の元に。

 

そんな想いが、九人の胸を満たしている。

 

今は、少しばかり休もう。

立ち上がるのは、十分立ち上がれるようになってからでいい。

 

 

 

 

 

人から『音楽の女神』の名で呼ばれる少女たちは、朝日に背を向けて歩き始める。

それは、新しい日常への歩みの第一歩でもある。

 

 

 

 

 

それを祝うかのように、太陽は空を、海を、街を、少女達を見守るかのように照らしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ねぇ」

 

「なぁに?穂乃果ちゃん」

 

「これから、何しようかな?」

 

「何をする、と言っても…今はとりあえず家族と会う、ということでは…」

 

「海未ちゃん、違うよ~。私が言ってるのは将来の話」

 

「…将来、ですか?」

 

「それって…スクールアイドルとしての話?」

 

「そうだよ、さすが花陽ちゃん!

帰ったら、みんなでまたラブライブやり直したいなー、なんて」

 

「でも、さすがに今決めるのは早とちりじゃない?

今は世間だってスクールアイドルどころじゃないわ」

 

「真姫ちゃんの言う通りだよ!今ライブなんかしたら、いろんなところから怒られそうにゃ~…」

 

「いいや、ここは行くべきよ。こういう時だからこそ、アイドルを必要とする人だっているはず!いつまでも立ち止まってはいられないわ!」

 

「にこは相変わらず情熱的ね…全く、いつになったら休めるんだか」

 

「ふふ…えりち、うちはこういうのも悪くはないと思うで♪」

 

 

何もない街を前にしても、地を踏みしめる少女たちの表情は、どこか明るい。

 

 

 

まだ物語は終わらない。

物語の本当の終わりへの1ページは、今この時やっと始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改めて、今までありがとうございました。
次回、後日談として特別編を投稿する予定です。
その後も、ずっと昔に宣告してほったらかしにしている作品を近々投稿する予定です。
まだまだ物書きは続けていこうと思いますので、機会がありましたらまたよろしくお願い致します。
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