パラオ・キャメロン
性別:男 年齢:40歳 性格:気さく
武器:なし 特技:なし
総司令官グリウズンの側近の一人。似合わない緑髪をしており、メガネを着用している。
見た目に反して高い知能を持ち、ライトレイ王国軍の参謀として活躍している。
「シャインの弟、ちょっといいか?」
「はい」
部屋を出たアキラを呼び止めたのは特攻部隊Y隊長キング・スコードマン。その後ろにはパラオもいる。
「これから始まる第三次試験は、全特攻部隊隊員がモニタリングしている。お前の兄シャインもだ」
「え…? そうなんですか」
「ああ。正直に言って俺はお前に期待している。自分の持つ力を隊員全員にアピールできる最高の舞台だ。思い切っていってこい」
「はい!」
そう言い残すとキングとパラオは、二次試験の会場となった部屋へ戻り扉を閉じた。すると扉は魔法でできていたのか、スーッと消滅する。ついに始まるのだ。特攻部隊入隊試験の最終試験。ここまで残ったのは全志願者615人中156人のみ。部屋から出たアキラ達の目の前に広がっていたのは、金奏城地下五階。部屋の高さは20メートル程はあろうほど高く、部屋全体はかなり広い。目の前にあるのは『A』と書かれた一辺15メートル程の透明のガラスでできた立方体。ガラスの厚みは10センチ程だ。これが決闘の会場となる仮想対戦部屋の一つ、ルームA。これと同じ形状の透明のガラスで囲まれた部屋が合計三つある。この部屋の中で受けた傷などは部屋から出れば回復する仕組みとなっており、さらに中にいる人間の誰か一人でも一定以上のダメージを受ければ全員が強制退出される仕組みだ。いわば練習部屋。ここで特攻部隊は模擬戦などを行っている。
「
またしても騒ぐシスキー。このフロアには、全志願者156人が集まっていた。それぞれの仮想対戦部屋の横には観戦用のベンチが大量に並べられている。156人がいても、同時にできる決闘は3つのみ。おそらく全ての決闘にかなりのギャラリーがつくであろう。
「なんか、緊張してきますね…」
「ストルスの相手、かなり強そうだからな。せめて勝てなくてもお前の良い所はちゃんとアピールしろよ?」
落ち着かないストルスに言うライド。この試験の目的は、一対一というシンプルな勝負において自分の力をしっかりと出せるか、ということをみることだろう。緊張するのも無理はない。対戦相手も自分達と同じように特攻部隊を目指してここまで来たのだ。その時、いつもの機械音声が大きめの音声で流れた。
「「156名全員が集合したのを確認しました。ただいまより、特攻部隊入隊試験第三次試験を開始致します。ルームA、B、Cそれぞれの第一回戦出場者は各ルーム入り口に来てください。なお、次の第二回戦出場者の方もすぐに出場できるように待機をお願いします」」
ざわざわと騒がしくなるフロア全体。アキラはルームAの第二回戦。目の前にあるルームAで次に決闘を行うのだ。準備運動をするアキラと共に、四人はルームAの試合をみれる観客席の最前列の中央へ座った。
「良い席とれましたね。第一回戦をみてどれほどのダメージを与えれば勝利になるのか確認しましょう」
「たしかにそうだな」
その通り。ルールで何度説明されていても、実際に目の当たりにしなければわからないこともあるのだ。勝利の条件である『一定以上のダメージを与える』という曖昧な表現は、どれほどのダメージ量であるのか全員が気になっていた。それぞれのルーム横の観客席には、それぞれ50人程度ずつギャラリーが集まっていた。その時、ルームAの中に第一回戦の出場者である二人が入った。ルーム内の中央にはスタート位置のマークがされており、そこに二人が向かい合い立つ。緊張感が漂う。機械音声が流れる。
「「ルームA第一回戦、マイク VS ジン・リベラスター! 開始」」
スキンヘッドの男マイクは剣を振り回す。対する銀髪の男ジンが持っているのは槍。スタート時の二人の間合いは三メートル。アキラ達も少し緊張した様子で見つめる。マイクが口を開いた。
「おい、ビビってのか、おい!? 来るなら来いよ!」
その言葉に反応したジンは、槍を大きく引いた。そしてため息をついてから言う。
「今の言動、後で恥ずかしがりながら悔やんでろ。イオ!」
「なっ」
ジンが左手から放ったのは爆発魔法。剣を振り回すマイクの腹部を小さな爆発が襲った。爆発と共に手から剣が落下。本人も少し後退しうずくまる。そこへ走るジン。右手の槍は引いたままだ。再び左手に魔力をこめる。それにマイクも気付いていたが、痛みからか反応がかなり遅れていた。
「イオ!」
「ぐああっ」
次の爆発はマイクの顔面を直撃。それと同時にジンは足元に転がっていた剣を足で後方へ蹴り飛ばす。このプレイで観客席は歓声で沸いた。そして槍を持つ右腕に力をこめ、一歩踏み出した時―――
「馬鹿め…! そこは踏んじゃいけねえよ」
「なんだこれは…? 動けない」
―――白く太い蜘蛛の糸がジンの体を縛り上げた。歓声は静まりかえる。
「『クモノ』。世にも珍しい罠型の呪文だよ」
マイクはそう言うと腰に装備していたもう一つの武器、短剣を抜きジンを睨む。ジンの両腕は後ろで括り付けられ、両足は地面にベッタリと粘着している。試合開始と共に足元に罠魔法を仕掛けていたのだ。マイクは短剣を得意気にクルクルと手で回しながら、ジンに近づいた。だが、ジンの後ろで縛られた両手には魔力が集結していた。
「イオ!」
「!?」
ジンの足元が爆発。その反動で軽く上空へ飛ばされたジンの両腕の蜘蛛の糸は、地面から離れたことによって消滅。ジンは槍を引いていた。落下しつつ槍を振り下ろすジンを見てマイクは絶望していた。
(…死んだ)
「終わりだ!」
振り下ろされた槍はマイクの頭部に突き刺さり、血が噴出した。それと同時に二人の体を青い光が包み込み、二人はルームの外に出された。一瞬沈黙はあったものの、観客席は大いに沸いた。
「良い
シスキーも大声で歓声を上げる。次は自分の番。そう思っていたアキラであったが、その頭は意外と冴えていた。口数は減っていたが、それは緊張によるものではなく精神が異常なまでに集中していたからである。
「「ルームA第一回戦、勝者ジン・リベラスター!」」
「よし、行ってくるよ」
「頑張れよ」
機械音声と同時に立ち上がるアキラの背中を叩いたライド。シスキーとストルスもアキラを見送った。勝者ジンは、同じパーティだったであろう三人組に祝われていた。対する敗北したマイクも、パーティの仲間に慰められていた。それを見てライドは言う。
「残酷だな。負けても特攻部隊に入れないわけじゃないとは言っていたが、入れる可能性が大きく落ちるのも事実だ。156人中何人が合格するかは知らないが、とりあえずなんとしてでも勝つしかない! 今回の決闘はまだお互いが良い所をアピールできていたからまだマシだったかもしれないけどな」
それはアキラの勝利を信じていながらも、少し不安になっていたライドの心情そのものであった。シスキーとストルスもその言葉を聞いて少し緊張感が増してきた様子。
(勝て、アキラ。俺も必ず勝つ。お前は俺の最初の友達だ。最初に俺を救ってくれた。友達になってくれた。俺に夢を与えてくれたのもお前だ。だから、こんな所で夢を終わらせるな。頼む…)
ライドの不安は、やがて願いへと変わっていた。仲間の初戦。三人の緊張感は最高潮であったが、当の本人アキラは緊張などしていなかった。ルームA入り口へ行くと反対側の入り口にペドの姿が見える。息を大きく吐き深呼吸したアキラは、誘導に応じて部屋へ足を踏み入れた。ルームの中に入ると、内側から外側は白く曇っていてみることができない作りになっていることがわかる。ルームの中に入ってみれば、その密室感を感じることができた。外の歓声も全く聞こえない。中央にあるマークの片方に足を合わせて立つ。三メートルの距離を空け、もう一つのマークの元にペドが立った。
「よう、アキラっつったけ? お前にはわりーけど、俺が勝つから良いお膳立てを頼むぜ~」
「ペドだっけ? よろしくな」
二人はお互いを睨みつけながら武器を手に取った。ペドは棍をクルクルと回転させる。棍の両端には鋼鉄の装甲がしており、直撃すればダメージはでかいだろう。ペドは第一次試験でパーティを3位でゴールさせたことに大きく貢献していた。オークを数秒で倒す実力者である。事実、現在のペドに対する審査員の評価はかなり高い。
(兄さんも見てる…。クロスさんも、キングさんも。俺の力をアピールできる最高の舞台、か。やってやるよ)
アキラはもう集中モードに入っていた。視線はペドに据えられていた。その視線を感じ、思わずペドは気後れしていたがペドが持つ圧倒的な自信がそれをかき消した。観客席のライド達も息をのみ、見守る。その時機械音声が流れた。
「「ルームA第二回戦、ペド・マーカー VS アキラ・ロドルフ! 開始」」
棍を強く握り、走り出したペド。だが―――
(いない!?)
―――彼の目の前にいたはずの青年の姿は無かった。思わず足を止めたペドの頭上から声が発された。
「降下疾風!!!!」
上を見上げた瞬間に、一本の太刀を横に構えた青年が異常な速さで降下し、ペドの首筋を切り裂いた。
「がっ?!」
落ちる棍。着地するアキラ。二人の体は青い光で包まれた。それは、試合の終了を意味していた。決闘開始からわずか3秒の出来事であった。
「「ルームA第二回戦、勝者アキラ・ロドルフ!」」