ペド・マーカー
性別:男 年齢:17歳 性格:好戦的、感情的
武器:棍 特技:?
入隊試験第三次試験でアキラと対戦し、敗北。その後友情を認め合った。
ピンファー村出身。自覚はないが、魔感を使える。
血を手で拭き、立ち上がるストルス。距離は二メートル。すぐに後退し距離をとる。それと同時に右手で持つ杖に魔力を集める。その様子をみたファンクルーは再び走り出す。詠唱はちょうど完成した。
「ベギラマ!!」
杖先から放たれた眩い灼熱の熱線は、ファンクルーの頬をかすかに掠めた。チッと舌打ちをしたファンクルーは右腕を引いてストルスの前に立つ。拳のグローブは、黒く薄い装甲がしてある。繰り出される拳を前に、ストルスはバチバチという不思議な音を確かに聞いていた。
「電拳!」
「!?」
ファンクルーは拳でストルスの胸部を殴り飛ばした。バキッという不快な音が響いたのと同時に、ストルスは二メートル程後方へ吹っ飛ばされた。痛みと共に彼の身体を軽い『電撃』が襲っていた。胸部を殴られたことによる呼吸の苦しみもあり、ストルスは倒れたまま全く身動きがとれなかった。ファンクルーの拳が纏っていた電撃は、魔法によるものではないことはストルスはわかっていた。
(あの電撃…一体どこから生まれたんだ?)
「ギリギリか? まだ終わらねえぞ」
ファンクルーは言った。呼吸を整え、なんとか立ち上がるストルス。彼が受けたダメージ量は、ほんのわずか試合終了となるダメージ量に達していなかった。それはファンクルーがパンチの威力を弱めていたことに起因する。それはストルスに圧倒的な屈辱を与えていた。生かされているのだ。このままで終わるわけにはいかない。彼の杖には魔力が再び集結されていく。負けてもいい、アピールするんだ。
「俺は『雷臓』を持ってる。『特殊体質』だ。常に身体の中で発電できる」
「らい…ぞう…?」
「次で終わらせる」
ファンクルーはそう言うと、胸の前で両手の指先を合わせた。バチバチバチという音と共に指と指の間を電流が走る。『特殊体質』というのは、主に生まれつきの先天的に内在する能力。人間にはそれぞれ個性があり、ほとんどの人間が特殊体質を持っているといわれているが、それを開花させることができるのはごく一部の人間のみ。それもかなりの時間をかけ、意識的に開花させることでしか発現しない能力。時間をかけても開花するとも限らない。彼は雷臓という電気を作り出す特殊体質を持っていた。ストルスは詠唱を終え、杖先をファンクルーに向け叫んだ。
「デイ―――」
だが、
「―――十電射!!!!」
「ぐああああああああ」
ストルスが唱えた魔法が発現する前に彼の身体を十本の細い電撃が襲った。それはファンクルーの全ての指から放たれたものであった。唱えられることなく消滅する魔力。そしてボロボロになり倒れるストルス。
(少し電気を使い過ぎたか…?)
だがファンクルーも少しふらつき体勢を崩していた。そして機械音声が流れるのと共に二人の身体を青い光が包む。
「「ルームA第十八回戦、勝者ファンクルー・シルヴァリン!」」
ルームの外に出たストルスはしばらく呆然としていた。それも無理はない。相手にほとんどダメージを与えることができず、あまりアピールなどできなかった。ため息を吐き、前を向いた時にはアキラとシスキーが集まってきていた。
「負けちゃいました、ハハハ…」
そう言いながら明らかな作り笑いをしてみせたストルス。すぐにシスキーが言う。
「お疲れさん! よく頑張ったぜ?」
「お疲れ、ストルス。お前がいっぱい魔法を使えることはアピールできてたはずだぞ」
アキラもそう言ってストルスを励ました。ライドは既に自分の対戦会場となるルームCへ向かっていた。そう言いながらも彼らは、ファンクルーとの実力差を感じていた。アキラとシスキーは、自分達がファンクルーと戦っても勝てるかどうかわからないでいた。上には上がいる。わかってはいたものの、ストルスの敗北をまるで自分達の敗北のように感じていたのは事実である。
「さ、ライドさんの試合もう始まりますよね? 行きましょう」
「おう」
そう言ってルームCの観客席へ移動する三人。ルーム内では、ちょうどライドが出場する第二十五回戦目が始まったところであった。ライドの前にいるのは、ミックスという男。持っているのは通常の剣。既にライドによってダメージを少し受けていた。ライドは長剣を構える。
「剣技は得意って面接の時言ってなかったか?」
「ぐっ」
挑発するライドに、言葉が出ないミックス。剣を握りしめ走り出すミックスだが、ライドも同じく走り出す。ガキンと金属がぶつかり合う音が響き、二人は剣を交わらせた。全力をこめて剣でライドの長剣を押すが、ライドは余裕の表情で押し返す。実力差は歴然としていた。押し返され、素早く後退するミックスは口を開いた。
「特攻部隊になるんだ! こんなとこで負けられねぇ!」
「理由はなんだ…? 言ってみれくれよ」
「かっこいいからだ!」
その返答に思わず笑うライド。笑う17歳の青年を見て、激昂する24歳の男ミックス。意味のわからぬ言葉を叫びながら剣を振り上げ、ライドに向かって走り出した。ライドは長剣を持つ右手ではなく、左手に瞬時に魔力を集めた。その時思わず観客席が湧き上がる。魔力を出力するスピードが速すぎる。向かってくるミックスに左の掌を向け、
「メラゾーマ!!!!」
「!!?」
放ったのは巨大な火球。それはミックスに正面から激突し、炎を上げた。無詠唱の魔法であったが、その威力はかなりのもの。試合終了の合図となる、青い光が彼らの体を包み込んでいた。
「「ルームC第二十五戦、勝者ライド!」」
「すごい…」
思わず感嘆の声を漏らしたのは魔法使いストルス。観客席もどよめきが起きていた。
「今の、無詠唱ですよね? まず無詠唱であの魔法を唱えられる事自体すごいっていうのに、無詠唱であの威力! 完全詠唱だったらさっきの倍以上の威力は出るはず…すごい」
「ライドは、昔から魔法の練習ばっかしてたからな~」
アキラはそう言いながら笑った。ストルスはずっと感心していた。そして改めて感じていたのは、アキラ達への称賛であった。アキラ、シスキー、ライドの三人の試合を見て彼らと自分との実力差を思い知っていたのだ。だがそれは決して悲観的な感情ではなく、憧れや対抗心の類の感情であった。
(たぶんこの人達はすごい強くなる…)
そう思っていた時、ライドが戻ってきた。これで四人全員の試合は終了。互いの健闘を称えあう四人。あとは試験の終了を待ち、結果を待つだけ。例年、入隊試験の志願者は200人前後。その中で合格するのは20人程である。基本的に合格者は特攻部隊Aから特攻部隊Gの7部隊のいずかれに配属される。この特攻部隊ABCDEFGは『ビギナー』と総称されている。つまりは、駆け出しの初心者達の部隊。このビギナー部隊で入隊直後の戦士たちは部隊の動きなどを学ぶこととなる。しばらくすると機械音声が流れる。
「「全ての決闘の終了を確認しました。これで全ての試験は終了です! これから合格者の選出、配属部隊の確定作業を行うため1時間程このフロアで待機をお願いします」」
音声の終わりと同時に、フロアのある一面に60分で設定されたタイマーが表示されカウントダウンを開始した。志願者156名全員はそのタイマーの前で話しながら待機を開始する。シスキーが笑いながら言う。
「さて、どの部隊に配属されっかな~! アキラとライドにはわりーけど、俺が一番上の部隊いくからな」
「シスキー、それは無いな。俺が全志願者中トップの部隊にいってやる」
それに対抗するライド。ストルスは不安気な表情をしながら俯いていた。
「ストルス、お前もきっと合格してる! だから諦めるなよ」
「はい。アキラさん、ありがとうございます」
そう言われながらも、ストルスの心の中の不安は決して消えることはなかった。試験開始から三時間と少しが経過していた。
―――午前4時9分。タイマーのカウントがゼロになった。
「「ただいまより、この画面に12217年年度特攻部隊入隊試験の合格者とその配属部隊を掲示します。受験者総数615名中、合格者は『41名』。合格を確認した者はこのフロアに残り、不合格を確認した者はフロア後方にある移動装置で城の外へ出ることをお願いします」」
四人は緊張しながらも、ワクワクしていた。次の瞬間、タイマーの画面が切り替わった。