第十四話 「上を目指していけ」
「僕、必ず! もっと強くなって必ずいつかアキラさん、ライドさん、シスキーさんと同じ戦場で戦います!!」
ストルスはそう叫んだ。アキラ達は微笑みながら頷く。だがシスキーが言う。
「けどよ、その頃には俺らももっと強くなってる! お互い頑張ろうぜ! またなー!」
「はい。ありがとうございました!」
少年ストルスはそう言うと三人に背を向け廊下を走り去って行った。ここは金奏城地上北塔一階、城の正門をくぐった先にまず広がる大きな広間である。城内は白を基調としており、壁や床、テーブルなども主に白色で統一されている。任務に向かう戦士達は毎回この広間に集結し、正門から外に出ていく。広間には護衛部隊の戦士も数人立って警備をしている。一台だけある巨大な液晶画面には、大陸で起きたニュースや特攻部隊の活躍、現在進行中の任務、など様々な情報が絶え間なく表示されている。アキラ達はこの広間にて待機せよ、という命令を入隊式後に受けていたため待機をしていた。広間にいるのは警備とアキラ達のみ。かれこれ30分以上は待っているだろうかと思われた時、一人の男がやってきた。白いマントを着用しており、黒髪でかなりのショートヘアである。マントの背面には『G』という文字が刻まれていた。腰には長剣を一本装備している。
「いやー、お持たせしちゃって悪かった! 俺が特攻部隊G隊長のゲンドウだ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
現れた男ゲンドウは、アキラ達三人の様子をじっくり観察していた。それは数秒間の沈黙を生んでいたが、やがて喋り出す。
「うーん、強そうだなあ! いいね! それじゃ早速特攻部隊Gの部屋に案内するからついてきて!」
ゲンドウはそう言うと、サッと体の向きを変え歩き出した。三人もそれに続いて熱き出す。金奏城は上から見ると田の字をしており、大きく分けて今アキラ達がいる北塔と、南塔、東塔、南塔、中央塔の五つの塔で構成されている。それぞれの塔は奇数階に存在する連絡通路で連結しており、金奏城東西南北の四塔は地上15階建て、中央塔は地上20階建てとなっている。さらに城は地下10階まで存在する。この金奏城に滞在しているのは『司令部』と『特攻部隊全部隊』と『護衛部隊数隊』と『その他雑務係』であり、その総数はおよそ600人程度。決して多くはない。ゲンドウ達は東塔の二階へ上がった。この塔の二階は、特攻部隊Gと特攻部隊Hの部屋があるフロアとなっている。『G』と大きく描かれた扉の前に到着した。
「ここが俺達特攻部隊Gの部屋だ。今は君達を含めて隊員は8人になるかな。全員の紹介をするから、入って!」
少し緊張をしながらもゲンドウに続いて部屋の中に入る三人。部屋の中には大きな机が二つと椅子が10個程、奥にはベッドがある程度の間隔をあけて10個程並んでおり、さらに奥にはトイレと洗面所があった。並べられたベッドといっても、個人としてのスペースが十分確保できそうな様子である。アキラ達が来ることを知らされていたのか、隊員達が中央の机の周りに集まっていた。隊員は計四人いた。
「お、新人きた」
「てか強そうじゃね?」
「……」
「ほうほう」
隊員達がそう言っているのも聞こえた。ゲンドウが言う。
「じゃ三人共、自己紹介よろしく!」
「俺はアキラ、17歳です。よろしくお願いします」
「ライド、17歳だ。よろしく」
「俺はシスキー・スネイド! よろしくお願いしまーす」
隊員達は入隊試験をモニタリングしていたため、アキラ達の事はよく知っている様子。ゲンドウの他の隊員達四人が次々と口を開き自己紹介をする。
「俺様はリンヴァー・キッカー。以後よろしくな」
「あたしはミカンダ。三人共よろしくぅ」
「……僕はエイ」
「わしゃギーカー・ジョス。これからよろしく」
「今は暇だしリンヴァー、三人に城を紹介してやってくれ」
「おっけー、三人共ついてこいや」
リンヴァーという男は20歳。2年前に特攻部隊に入隊。茶髪で短剣を武器として用いる男だ。少し傲慢な性格であるといえるだろう。彼の後に続いて部屋を出るアキラ達三人。ここは東塔二階である。部屋から出て扉を閉めると、口を開く。
「先に言っておくけどよ、早く昇隊してった方がいいぜ? 見た感じお前らならすぐに昇隊が決まるだろーけどさ」
「どういうことだ…?」
リンヴァーの一言に、咄嗟に質問するライド。彼はいつにも増して冷静であった。アキラとシスキーも知りたそうにリンヴァーを見つめる。少し言うのを渋ったが、喋り始めるリンヴァー。
「俺様は二年前に合格して、特攻部隊Aに配属された。コツコツと努力してきたが、ようやくこのGまで上がれた。俺は同期の中でもかなり下の部隊にいる。同期の中では、特攻部隊Rまで行ったやつまでいんのによ。…部屋にいたギーカーって爺さんは入隊してから20年以上経ってる。全盛期は特攻部隊Jにいたらしいけど、もう降隊する一方だ。わかったか?」
前回の入隊試験での合格者は19人。司令部でも、不作の年であったと評判である。特攻部隊隊員である以上優秀であることに変わりないが、その中での落ちこぼれが集まるのがABCDEFGのビギナー部隊であることは事実である。基本的にビギナー部隊は戦争の最前線に向かう機会は皆無。ひたすら鍛錬の日々であり、たまに来る任務も残党処理というのがザラである。つまり昇隊のチャンスも少ないと言える。
「気付いたらもうお前らみてえな次の代の新人が入ってきてよ。初っ端でGに来れるってことはポンポン昇隊してく程優秀だろうし、忠告しときたくてな。こんな所にずっといたら才能が腐る一方だ! どんどん上を目指していけよ」
そのリンヴァーの意気込みが入った言葉は、しっかりと三人に届いていた。それと同時に彼らには特攻部隊隊員なんだ、という自覚が沸きつつあった。もう志願者ではない。上を目指す、という確かな目標を心に秘めた瞬間だった。リンヴァーの表情がパッと明るくなる。
「っと固い話はここまでにして、城を案内してやるよ! 先に言っとくが特攻部隊になったお前らはもう金奏城内の施設を全て使い放題だ。まず、これを渡そう」
リンヴァーがそう言いながら三人に腕章を渡す。書いてあるのは『G』という文字。これは特攻部隊Gの隊員であるという証であり、これからは常に身に着けておかねばならないものである。三人は腕章を腕に巻き付けたのと同時に、少し嬉しそうな表情を見せた。
「ちなみに、部隊の隊長に任命されたら腕章じゃなくてマントになるんだ。マントをしてるやつはその部隊の隊長ってことだな! さ、施設を回るぞ!」
「はい!」
彼らがまず向かったのは南塔の三階。そこに広がるのは巨大な食堂であった。椅子とテーブルが無数に並んでおり、食事をしている者がたくさんいる。食券を発券し、カウンターに注文すると給仕の人達が食事を出してくれるというシステムだ。ちなみに飲み物と食器の片付けはセルフサービスとなっている。
「金奏城の南塔は、全フロアに何らかの施設があるんだ。城内に食堂は合計三つ存在するぜ。ちなみに中央塔の16階以上は許可なしでは立ち入り禁止だ。上には司令部があるからな。それと所属する部隊のグループによって、入れるフロアに規制があるってのも重要だな。『特攻部隊A~Gのビギナー部隊』は地上1階から3階しか立ち入りが許されてない。『特攻部隊H~Nの三流部隊』は地下2階から地上6階まで、『特攻部隊O~Uの二流部隊』は地下5階から地上10階まで…って決まってんのよ。俺らはこの食堂と、中央塔3階にある練習部屋しか使えないんだな」
上の部隊に上がれば上がるほど、自由に使える施設が増えていくという仕組みである。これは昇隊のための意欲を沸かせるためのシステムでもある。上のフロアには、プールやトレーニングジム、武器屋、図書館などなど様々な施設が存在する。アキラ達の目はキラキラと輝いていた。リンヴァーも彼らに教えていて楽しそうであった。そして部屋に戻る途中、アキラが問う。
「その、昇隊とか降隊とかってどのタイミングで、どんな感じで決まるんですか?」
「良い質問だぜ。よく聞いとけいいか、俺達特攻部隊隊員にはそれぞれ王国への貢献度を表す数値として『星』ってのが与えられてる。これが昇隊や降隊を決めるきっかけになる個人の評価の点数と言ってもいいんだが、これはあくまでも参考値。司令部が星の数を参考にして話し合って、昇隊・降隊を一人ずつ決めているんだ。星は任務達成など様々な要因で変動する。いきなり跳ね上がる可能性もあるし、ガクンと落ちることもある。星の数の変化自体、司令部が決めてるんだ。任務が終わるごとに星の数は変わるし、昇隊・降隊はある時いきなり司令部から隊長に話がいって宣告されるのさ」
「なるほど…」
もちろんアキラ達の現在の獲得星数はゼロ。要は星の数は、司令部からの評価と考えていいだろう。リンヴァー達は、特攻部隊Gの部屋へ戻った。すると隊長ゲンドウが嬉しそうな顔をしてこっちを振り向く。他の隊員達も机の上で何かの資料を見ている。
「喜べお前ら! 早速、任務依頼がきてるぞ。任務難易度はD級だ! 任務は明日だ」
==========
任務依頼 対象:特攻部隊G(計8人)
概要:魔物が出現したという噂、確認次第殲滅せよ。
場所:コロプス山脈南西エリア
難易度:D級
==========
任務難易度はSSS級からF級まで存在する。難易度によってもらえる星数も変動する。初の任務に、アキラ達は期待と不安の入り混じった感情をしていた。