ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  グリウズン・エンバルト
性別:男  年齢:120歳  性格:温厚、正義感が強い
武器:覇槍  特技:?
 ライトレイ王国国王兼総司令官。年齢の割にとても元気で動きも衰えていない。
 現役時代、魔王モルドバルを封印した張本人。その槍は全てを貫くという。



第十六話 「呆気なく殺されるだろうな」

 

 

「ご苦労だった! しっかり休んでくれ」

「はい、失礼します」

 

 ゲンドウはパラオにそう言うと、隊員全員に部屋に戻るように指示する。ここは金奏城北塔一階の広間だ。ついに初めての任務を終え、アキラ達にはどっと疲れが出てきていた。帰りのランニングにもなんとかついていくことができた三人だが、城に到着した時には体力は限界であった。

 

「くあ~…俺、腹へった…死ぬ…」

「俺もだ」

 

 そう言うシスキーとアキラ。ライドも何も言わないが、広間にある椅子に座り休んでいる。往復1時間40分のほぼ全速力のランニング。それが体に応えないわけなどなかった。他の隊員達はみんな部屋へ戻っていく。リンヴァーとゲンドウはその場に留まり、アキラ達の方を見ていた。

 

「よくやったぜ、お前ら。お疲れ! 飯でも食いにいこうぜ?」

「話もしたいことだしな」

 

 リンヴァーとゲンドウは彼らにそう言った。アキラ達はすぐに無言で頷いた。南塔の3階にある食堂に向かう五人。時刻は正午少し前。食堂は比較的混んでいた。なんとか端の方の席に座る場所を確保すると、それぞれ交代で席で待ちながら注文をしていく。ライドとゲンドウが席に残り、他三人が注文をしに行った時ライドが口を開いた。

 

「あの、聞きたいことがあるんだが…」

「なんだい? ライドくん」

 

「任務中あんたがやってた、武器に魔力を纏わせるのってどうやってやるんだ?」

「あーあれか。魔力を纏わせる事自体は、難しくないさ。普通に手から魔力を出し、意識を剣の方に集中させればそこに魔力が集結する! 難しいのはそっからさ!」

 

 すぐに言われた事を試したくなったライドであったが、ここが食堂であったことを思い出し武器から手を離す。ゲンドウが続ける。

 

「魔力を纏わせて斬るだけじゃあまり意味はない。その魔力を『呪文に変化』させなきゃいけない。つまり詠唱を行うのさ。俺はさっき『魔獣族の魔物に効果的な属性を剣に宿した』んだ。これはまぁ詠唱を覚えて練習しなきゃいけない技だな」

「効果的な属性…、だからあんなに威力があったのか。なるほどな」

「後で、練習部屋でいろいろ教えてあげるよ。魔力操作技術について」

 

 ゲンドウがそう言った時、アキラ達が戻ってきた。三人共特盛チャーハンを持っている。次いでゲンドウとライドが注文のために席を立つ。スプーンでガツガツと食べ始めるシスキー。一口口に運んで飲み込んでから、リンヴァーがアキラに言う。

 

「さっきゲンドウさんと話したんだけど、お前ら三人にこれから練習部屋で色々教えてやるからな。正直言ってお前らは強いけど、このままだといつか少し格上の敵と戦闘した時に簡単に命を落とすからな…」

「え、ありがとうございます! 今の俺らに、何が足りてないですか?」

「だから、それも含めて教えてやっから早く食え!」

 

 そう言われアキラはシスキーと共に黙々と食べ始める。今の自分達に足りないもの。アキラは静かに考えていたが、経験、実力、多くのことを思いついていた。だがそれをどうやって伸ばすのかがわからない。そのため自分より多くを経験した先輩から教えを受けることは相当貴重な体験である、と思い期待感が高まる。やがてライドとゲンドウも戻って来て、五人で黙々と昼食を食べる。シスキー、リンヴァー、アキラ、ライド、ゲンドウの順に食べ終わると立ち上がる。

 

「さ、練習部屋にいくか!」

 

 

 

 金奏城中央塔3階。ここは練習部屋。フロア全体が仮想対戦部屋となっており、一定以上のダメージを受けると部屋の外の廊下に全回復して追放される仕組みとなっている。五人は中に入ると、隅の方に集まる。フロア内には他の戦士達は数人いる程度である。ゲンドウが口を開く。

 

「お前達、ある程度戦闘の経験を積んでいるようだし実力も技も本物だと思う。だが今のままだと三流部隊でやっていけるかどうか怪しいぞ? 難易度C級の任務も当然のようにやってくる。恐らく呆気なく殺されるだろうな」

「俺らに、何が足りないんだ?」

 

 ライドが問う。対してゲンドウが四本指を立てて言う。

 

「現時点で最低限、お前らに足りないとハッキリ言えるものは『経験』『体力』『防御魔法』『魔力操作技術』の4つ!! この中でも、経験は時間が解決してくれるものとして、残り3つについて教えたいと思う。まず、体力! ここでいう体力とは、スタミナのことじゃない。体の強さだ。体そのものの防御力が足りていない。つまりは筋力だな。アキラくんの同じ威力の攻撃を、ライドくんが受けるのとリンヴァーが受けるのじゃ単純に被ダメージ量が変わってくるんだ。これは日々の鍛練の結果が表れるもので、毎日筋トレをして防御力を底上げしていくしかない」

 

 たしかに、アキラ達の体の丈夫さという点では明らかに他の隊員達に劣るものがある。見た目ではわからない、表皮や筋肉の硬さというものが戦闘時にはダメージ量としてはっきり差が出てくるのだ。さらにゲンドウが続ける。

 

「次が防御魔法。君達、防御魔法使えないだろう?」

 

「まず俺、魔法使えないです」

「俺もだぜー、アキラ」

「メラゾーマしかできない…」

 

 三人のその言葉を聞いて、リンヴァーは絶句していた。ゲンドウは少し苦笑いをする。ライドは、昔からメラゾーマの練習しかしていなかったのでそれしか唱えることができない。しかも詠唱を知らないので、無詠唱でしか唱えられないのだ。つまり三人は魔法についてほぼ無知である。

 

「攻撃魔法もいずれ必要になってくるが、それはまた今度として今回は防御魔法を教えたい。避けることができない攻撃がきた時に役立つのが防御魔法だ。防御魔法にもいくつか種類はあるが、今回は三流部隊以上の隊員は全員が修得している『アストロン』という最も簡単な防御魔法の詠唱を教える。これは『ダメージを吸収する透明な薄い壁』だ。見てろ。…アストロン!!」

 

 ゲンドウは2秒程の詠唱を終え、唱えると目の前にガラスのような薄い壁が現れた。するとリンヴァーが合図を受け、短剣を一本取り出しゲンドウに向かって放り投げた。ガキンと大きな音を立てて、壁に弾かれ地面に落下する短剣。

 

「つまりこれは魔法でできた盾だ。大きさも、強度も使用する魔力量で自在に調節できる。消費魔力も比較的少なく、詠唱時間も慣れれば1,2秒だ。やってみろ」

 

 ゲンドウはアキラ達に詠唱方法を教える。唱える言葉は20文字程度。魔力を手に出し詠唱を終え、魔法の名を言えば魔法を唱えることができる。これが魔法の詠唱から発生までの流れである。ライドは手に魔力を集め、初の詠唱に挑戦する。

 

「…アストロン!」

「おお」

 

 出した掌の前に現れたのは二メートル程の正方形の透明な防御壁。初挑戦で成功。しかも詠唱時間も3秒程度。続けてアキラとシスキーもやろうとするが、まず手に魔力を集めることすらままならない。二人共魔法を唱えた経験などないのだ。リンヴァーが丁寧に教えている間に、ライドが言う。

 

「俺のメラゾーマも、ちゃんと詠唱を唱えられればいつもの倍以上の威力になるってことか?」

「ああ。だが、唱える魔法が強力なものであればあるほど詠唱の文字数は増えて詠唱時間は長くなるんだ。メラゾーマだけじゃなく、メラとメラミの詠唱も一応教えてあげるよ」

 

 深呼吸をして意識を体の中心に集中させ、魔力を体内から手に集めるイメージ。アキラとシスキーは元々の所持魔力量が少ないものの、なんとか手に魔力を集めることができた。そして10秒程度かけた詠唱の末、なんとか防御魔法アストロンを唱えることに成功する。思わず二人はハイタッチする。リンヴァーも拍手をしていた。

 

「これを毎日数回唱えるように練習すれば、咄嗟の状況でもパッと唱えられるようになる。さて、次が最後の魔力操作技術。これは俺らでもあまり上手くはできないし、これだけで分厚い本が一冊書けるほど奥が深い技術なんだけどね! 現時点で武器や体に纏わせるようになれればオッケーだよ」

 

 やり方は先ほどと同様。体内の魔力に意識を集中して、それを移動させ一点に集めるイメージ。集める先を武器に変えたり、全身に変えたりするのだ。魔力を常に全身に薄く纏わせるだけで、微量だが防御力の上昇も狙える。もちろん武器に纏わせれば攻撃力も少し上がるが、それよりそこで詠唱をし魔法を発生させた方がより効果的である。ライドは長剣を持ち、手に集めた魔力をなんとか剣の刃部分全体に纏わせることに成功した。

 

「これで…メラ!」

 

 するとボオッと長剣の刃が小さく燃え上がった。先ほど教えてもらった詠唱を行ったライド。炎魔法を唱えることで剣に一時的に炎を纏わせる事も可能となるのだ。だが、魔力がすぐに手元に戻ってしまい消滅する。難易度はかなり高い。魔力を動かすスピードと力加減、それが絶妙なバランスでなければ武器に纏わせる事などできないのだ。アキラもやってみるが、武器に魔力を纏わせることすらできなかった。シスキーは体に魔力を纏わせてみるが、とても全身を覆うことなどできそうもない。少しでも加減を間違えれば、魔力が体を離れ消滅してしまう。

 

「まぁすぐにできるようになる奴はいない。これと防御魔法、筋トレを毎日欠かさずひたすら反復練習をして初めて自分のものにできるんだ! さ、戻ろうか」

 

 ゲンドウがそう言うと、リンヴァーも部屋の出口へ向かう。だがアキラ達三人は全くその場から動く気配がない。ひたすらに自分の体を見つめている。思わずリンヴァーが問いかける。

 

「どうした? 戻らないのか?」

 

「俺ら、もうちょっと練習していきます!」

 

 アキラはそう言った。初めてみる技術。特攻部隊として生き残るために必要なものをいくつか学んだ彼らは、ただひたすらに試したかったのだ。自分のものにしたかった。自分達の力を上げるため、強くなるために。ゲンドウとリンヴァーは顔を見合わせ、部屋を出た。ライドも初めて教わった詠唱をただひたすらに早口で言ったり、武器に魔力を纏わせる練習をしている。アキラとシスキーは防御魔法の練習、筋トレ、魔力操作技術を練習をしている。全員がただ強くなりたい、という純粋な欲求のままに動いていた。

 

 

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