ゲンドウ
性別:男 年齢:22歳 性格:優しい
武器:長剣 特技:属性斬り
特攻部隊Gの隊長。4年前に特攻部隊に入隊。
一時期は特攻部隊Hにいたこともある。
―――それから一か月が経過した。他の部隊にはちらほらと任務指令が来ている中、特攻部隊Gには全く任務が下されなかった。アキラ達は、この日も金奏城中央塔三階にある練習部屋で鍛錬を行っていた。
「…アストロン!」
そう唱えたアキラの前に、直径一メートル程の円形の薄い透明な防御壁が出現した。この一か月、毎日繰り返し行ってきたトレーニングのおかげで防御魔法を唱える事は苦ではなくなってきていた。だがまだ詠唱には4秒の時間を要する。
「やるな、アキラ~! 俺のも見てくれよ。もうこれ1分
シスキーの全身を1センチ程度ずつの薄い魔力が包み込んでいる。魔力で全身を覆うことによって防御力の若干の上昇を狙える。さらにそれを拳に集めれば、パンチの威力を上げることも可能。魔法自体唱えるのが苦手なシスキーは、ずっとこの練習ばかりしていた。対するライドは、長剣に魔力を纏わせ続けながら、左手に『魔法全書・初級編』を持ち暗記と早口の練習をしていた。アキラとシスキーと比較して、自分には膨大な魔力が存在すると理解したライド。彼が自分に何が足りないか、考えた結果が魔法の詠唱であった。
「ブツブツ…ブツブツ…」
一か月間毎日欠かさずやってきた筋トレ、魔力操作技術と防御魔法の練習。それぞれが重んじたものは違えど、三人共が確実に成長を遂げていた。またそのことを彼ら自身が一番感じていた。日に日に強くなっていると自覚していたのだ。そんな彼らが今一番欲していたものこそが実戦である。その時、隊長ゲンドウが練習部屋に入ってきた。
「あ、ゲンドウさん」
アキラ達がいる場所を理解すると、ゲンドウは小走りで三人の元に到着した。手には一枚の紙。その紙にアキラが見覚えがあった。任務依頼である。ゲンドウがその紙を、三人に見せる。
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任務依頼 対象:特攻部隊G(計8人)
概要:魔連合国が砂漠に侵攻、迎撃の補助をせよ。
場所:バーク砂漠北部
難易度:DD級
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「詳しい話は後でする! 任務開始まであまり時間がない、部屋に戻ってきてくれ」
「了解!」
焦った様子のゲンドウと共に、三人は特攻部隊Gの部屋まで急いで戻った。部屋には既に他の隊員達も戻って来ていた。全隊員は、机の周りの椅子に腰かける。現在の時刻は午前11時15分。机の上に任務依頼書と大陸全土地図を置き、ゲンドウが口を開く。
「つい10分程前に銅爽城から、魔連合国と思われる軍勢が侵攻してきていると連絡があったそうだ。ベガキ樹海からバーク砂漠に南下してきている様子。既に複数の部隊が砂漠に向かってる。そこでその応援として特攻部隊Gに要請がかかった! 11時30分には城を出発したい」
「了解!」
全員はそう返事をするとすぐに準備を開始する。アキラは太刀を抜き、切れ味を確かめた。毎日磨いてはいるが念のためである。リンヴァーがアキラに近づいて言う。
「訓練の成果、見せてもらおうじゃねえか」
「任せてください」
「期待してるぜ?」
淡々と自信ありげに答えたアキラ。一か月間何も任務がなかった分、今回の任務で大活躍したいという気持ちである。無論、ライドとシスキーも同じ考えだ。全員の準備が整ったところで、北塔一階のロビーに移動する。そこにはいつも通りパラオが立っていた。
「きたか、特攻部隊G! 今回は緊急ってことで銅爽城まで魔法転送装置を使って移動してもらう。これだ」
パラオが指差した先にあったのは、入隊試験時にみた魔法陣。これが銅爽城へつながっておりワープできるのだ。出動時間のかなりの短縮ができる。だがこの転送装置は緊急時以外は出されることはない。今回は特例である。通信機を受け取ったゲンドウに続いて全員が魔法陣の中に足を踏み入れる。
「既に、特攻部隊I・J・O・X・Zの五部隊が向かっている。情報によると魔界にある五つの小国の一つ『魔界テイガス国』が侵攻してきているらしい。君達特攻部隊Gには無理はせず、他部隊の援護と残党処理をお願いしたい。では転送を開始する!」
「了解しました!」
ゲンドウの返事と同時に、彼らの体を青い光が包み込んだ。魔界テイガス国。それは魔界五天王の一人ゼトリムが王を務める小国で、魔法というよりは武器を使用する戦闘スタイルの戦士が多いといわれる。他の小国と比べると兵力も多い。アキラ達が転送された先は、茶色い色をした巨大な城の入り口付近。ここが銅爽城である。主に護衛部隊の拠点として使われており、大きさは金爽城より一回り小さいくらいで大きいことに変わりはない。城を観察する暇もなく、ゲンドウは城門を抜け、外に出た。
「うおっ! 暑い…」
目の前に広がっていたのはバーク砂漠。大陸東部中央エリアを占める砂漠である。広がっているのはただの砂。太陽光を反射しジリジリとした暑さが体力を奪う。彼らがいるのは銅爽城の北付近。かなり先にベガキ樹海と思われる森林がかすかに見える。バーク砂漠には特攻部隊の姿も、敵の魔軍の姿もない。
「恐らく、他の部隊がベガキ樹海まで敵を追いやってるんだ。樹海まで行くぞ! 銅爽城は護衛部隊がいるからここにいる必要もない」
「了解!」
返事を確認すると、ゲンドウは走り出した。アキラ達もそれに続く。スピードはいつもと変わりはない。前回の任務時にヒーヒー言っていたシスキーも、体力がついたのか余裕そうな様子。距離的には30分程度走らねばならない。砂の上を走るため、無駄な体力も消耗する。敵の数、戦況が全くわからない中、彼らの前方にある樹海で小さな爆発が起きた。さらにゲンドウの持つ通信機が通信を受け取る。
「「…こちら特攻部隊Z隊長のシャイン。ベガキ樹海北西エリアにて魔界五天王ゼトリムの姿を捉えた! これから殲滅を開始する」」
「「…ザザ…こちら特攻部隊X隊長クロス。中央エリアで交戦中だ! 了解」」
「「特攻部隊O・Iは共に樹海西エリアで交戦中! 了解した」」
「「こちら特攻部隊J隊長のマルチ! 現在樹海東エリア。了解です」」
「こちら、特攻部隊G隊長ゲンドウ。これよりベガキ樹海南エリアに向かいます」
ゲンドウはそう言うと通信機をしまった。それぞれの部隊がそれぞれのエリアを分担して戦闘している。どうやら樹海全域で戦闘が繰り広げられている様子。アキラは興奮していた。兄のシャインと勧誘してくれたクロスが実際に活躍している場面を見る事ができるのかもしれない、と。事実同じ戦場に立っていくわけであるが。ちなみにシャインは特攻部隊Z隊員から隊長へとランクアップしている。
走り出して20分以上が経過。やがて彼らの目の前に広がったのは通常のサイズを大きく上回る巨大な木々。そしてそれが深々と生い茂り、日の光さえも大幅に遮断した巨大な森林、それがベガキ樹海である。いつもよりスピードを上げたおかげで、予定到着時間よりも早く到着できた彼らは、樹海に足を踏み入れる。ここはベガキ樹海南エリア。他部隊がいない場所のため、特攻部隊Gが見回りをする必要がある。
「よし、二手に分かれよう。俺とギーカー、ライド、シスキーの四人で南エリア西部をいく。残りのリンヴァー、エイ、ミカンダ、アキラは南エリア東部をいっていくれ」
そう言ったゲンドウは通信機についている、小さなピンバッチを全員に一つずつ渡した。これは通信の機能はないが、危険が迫った場合などに強く押せば大きな警戒音を鳴らし他の部隊の通信機にも通知がいく仕組みとなっている。アキラはリンヴァー達と共に、右折し南東エリアに向かって進む。常に右手は武器の持ち手に置き、警戒態勢のまま進んでいくアキラ。リンヴァーも短剣を両手に持ったまま静かに歩いて進んでいく。青年エイが持つのは巨大な鎌。ミカンダは武闘家であるため、武器は持っていない。
「ん?」
リンヴァーが足を止めた。同時に三人も歩を止める。アキラ達が感じ取ることのできなかったほんの微かな違和感を感じたリンヴァーは前方の茂みをじっと見つめている。耳をすませば、わずかに草木を踏み歩く音が前方から聞こえる。それは右から左へと移動していた。音の大きさで考えて、そこにいるのは数人。リンヴァーが後ろを向き、エイに合図をしたのと同時にアキラ達の横まで後退した。エイの左手に魔力が集い、手の先を前方の草木へ向けて叫んだ。
「イオラ!!」
放たれた魔力は爆発を起こし、草木をまとめて吹き飛ばした。爆音と煙の中で、向こう側に現れたのは五人の魔戦士。全員が武器を構えてこちらを睨みつけている。先ほどのエイの魔法は明らかな挑発行為であり牽制でもあった。こちらの戦力は四人。先手必勝。そう考えたリンヴァーが足を動かそうとした時、彼を横切り敵に向かった青年がいた。
「―――疾風突き!!」
「ぐあ!」
アキラの太刀は一番左端にいた魔戦士の首筋を斬りつけた。魔戦士は首から血を流したまま、その場に倒れた。その素早さに圧倒されたのは、この場にいた全員であった。それに続いてリンヴァー、ミカンダ、エイも敵に向かって走り出す。同時に残りの敵四人も武器を持ち、応戦の構えを見せる。一番奥にいる魔戦士スピンスケイルが言う。
「テイガス国直轄第三暗黒騎士団の名にかけて、ライトレイ軍を殲滅せよ!」