ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  リンヴァー・キッカー
性別:男  年齢:20歳  性格:大雑把、面倒見がいい
武器:短剣×2  特技:はやぶさ斬り
 特攻部隊G隊員。2年前に特攻部隊に入隊。
 素早い手裁きを得意とする。実力はあるが司令部にあまり認知されていない。



第十八話 「お前は正しい」

 

 アキラは太刀を構えたまま、素早く数歩後退し距離をとった。首を斬られた魔戦士に動く気配はない。リンヴァー、ミカンダ、エイの三人はそれぞれが一人ずつ魔戦士と対峙していた。残った一人の魔戦士が、アキラの方へ走って向かってくる。彼の右手にあるのは木製の丈夫なハンマー。槌の部分は人の顔面を軽く覆える程度の大きさであり、おそらく直撃すればその衝撃はかなりのものであろう。

 

「お前っ! ツォイをよくも! 許さねぇ!!」

 

 魔戦士はそう叫びながらハンマーをアキラに向かって振り払った。素早くジャンプしそれをかわしたアキラは、着地するなり距離をとった。それは仲間を瞬殺された魔戦士の気迫に押されたこともあったが、アキラが実際に敵国の兵士と戦闘することが初体験だったことによる緊張感に起因していたことは間違いない。魔戦士、魔連合国の戦士を直接見たのは初めてであった。魔界に住んでいる人は、人間ではなく『魔人』と呼ばれる人種。アキラ達人間とは、肌の色が違うのだ。目の前にいる魔戦士の肌は薄い紫色をしている。これは生まれ持った魔力量によるもの、魔界で受け継がれる遺伝子によるものなど諸説あるが、一目で人間ではないとわかるほどの違いである。

 

「俺はテイガス国第三暗黒騎士団の団長、スピンスケイルだ! お前の名前を教えてくれよ」

 

(何を言ってるんだ…? 目的があるのか?)

 

 自らをスピンスケイルと名乗ったその魔戦士の、現状況にそぐわない唐突な質問に対してアキラの頭が一時停止したのも無理はない。返答に戸惑うアキラの様子をみて、ハンマーを右肩に担いでスピンスケイルが続ける。

 

「敵国の戦士だろうが、戦う相手には常に敬意をもって接したい。俺の名前は長いから『スピすけ』ってよく呼ばれるよ。名前を教えてくれ」

「…アキラだ」

 

 スピすけの言っている事は事実である、と理解したアキラは答えた。スピすけはそれを聞くとハンマーを大きく後ろに引く。同時にアキラも太刀を強く握り、彼を睨みつけていた。戦闘時における敵への敬意。アキラはこれまで考えたことのなかった新たな価値観を手に入れた瞬間であった。スピすけはアキラに向かって走り出す。

 

「名前を知って、敬意を払う。そうすりゃ、気兼ねなくぶっ飛ばせるからな!!」

 

 向かってくるスピすけに対し、両足に力を入れて膝を曲げ踏ん張る姿勢を見せるアキラ。二人の距離は2.5メートルといったところだろうか。太刀を地面と水平に構え、力強く地面を蹴り、高速でスピすけの目の前に移動し―――

 

「疾風突き……?!」

 

 ―――首を狙い太刀を突き出したが、太刀はハンマーの持ち手部分によって受け止められた。スピすけは先ほどの魔戦士を斬りつけた時のアキラの動きをしっかりと記憶していたのだ。

 

「さっきと同じ手はくらわねーよ、さすがに!」

 

 スピすけはハンマーの持ち手部分で受け止めたアキラと太刀を、そのまま振り払った。地面を転がり、すぐに立ち上がったアキラ。攻撃を受け止められた経験が乏しかった彼にとって、スピすけの言動は素直に心に響いていた。いつもは相手の急所である首を狙っていたアキラであったが、相手もある程度の実力があれば急所である首への攻撃は警戒されやすく、いくら彼のスピードを持ってしても防がれてしまう可能性は高い。攻撃パターンの選択肢の増加、それが今の彼に必要なものである、とアキラは気付いた。

 

「そっか…なら…」

「?」

 

 そう言いながらアキラは太刀をクルクルと回し、再び両足で地面に踏ん張る姿勢を見せた。不思議そうにアキラを見つめるスピすけもハンマーを引き、迎え撃とうと構える。構えは先ほどの攻撃時と全く同じ。アキラは地面を蹴りつけ、スピすけの方に素早く走る。反射的にハンマーの持ち手部分で首筋を防御したスピすけだが、目の前にアキラの姿は無かった。

 

「疾風突き!!」

「ぐあッ」

 

 アキラはスピすけの足元に屈みこみながら、腹部を斬りつけた。思わず体勢を崩したスピすけを前にしてアキラは太刀を素早く後ろに引き、そのまま前に高速で放つ。

 

「ハヤブサ斬り!!」

「!?」

 

 腹部を斬りつけ、瞬時に手首を回し逆方向から再び斬りつけた。高速の二段斬撃である。うめき声を上げながら地面に倒れるスピすけ。太刀を構えたまま後退するアキラ。リンヴァーの手の素早い動きをマネし、練習し続けた結果自分のものとした技であった。荒れる呼吸を整えつつ、倒れたスピすけの様子を伺う。呼吸はまだある様子。スピすけはそっと口を開いた。

 

「…ハァ…ハァ…なんだ!!? トドメをさせよ! 俺は敗けた。なぜトドメをささない!?」

 

 吐血しながらも叫び続けるスピすけ。戦闘というものに誇りを持つ彼にとって、敗けとは死を意味するものでしかなかった。彼は終始アキラのスピードについていけていなかった。スピすけ自身は完全な敗北感を味わっていたのだ。だが、アキラはとどめをさすつもりなど毛頭なかった。

 

「なぁ、スピすけ。俺はお前に戦いの時、どんな相手にも敬意を払うことを教えてもらった。俺は無駄な殺生はしたくないんだ! とどめはささない」

 

「おめぇ…俺はお前に生かされたってことかよ…! 屈辱的だぜ…まぁいい」

 

 スピすけはそう言うと、腹部の出血を抑えながら立ち上がった。その眼にもう戦闘の意志がないことはアキラもすぐに理解した。スピすけがハンマーを背中に装着したのを見て、アキラも太刀を鞘に納めた。

 

「おめぇのことは一生覚えておいてやる。アキラ…次会った時は必ず勝つ!!」

 

 スピすけはそう言いながら草むらの中に素早く逃げ込んで消えていった。敵国の兵士を逃がしてしまったことになるのだが、今のアキラにはどうしても彼を殺すことなどできなかった。対戦相手に敬意を持つ。いくら敵国の戦士であっても、彼らも彼らなりの戦う理由があるのだ。アキラは自分達が本当に正しいのだろうか、と少し思ってしまってもいた。アキラが目指すのは大陸の平和。そのためにはいずれは敵の命を殺めなければいけない瞬間も来るだろう。それは自分でもわかっていながら、極力、命を奪うという行為をしないように大陸平和を目指していこうと彼は思った。命は尊いもの。その価値は人間も、魔人も共に同じであるのだから。

 

「アキラ! 無事か?」

「はい、リンヴァーさん」

 

 リンヴァーの後ろには、戦闘を終えたミカンダとエイの姿もあった。四人は無事魔戦士達に勝利したのだ。リンヴァーは、アキラとスピすけの先ほどのやり取りを見ていたようであった。

 

「アキラ、お前は正しい。相手を殺す事が全てじゃない。殺さずに解決できるなら、それが一番だ。だが、殺すつもりで来る敵の方が多い。その時にお前も迷わず敵の命を奪えるようにしておいてくれればいい」

 

 アキラも頭ではそのことはわかっていた。だが、初めての敵国の戦士との対戦。あまりの緊張感からか殺すことを過剰に恐れていたのも事実である。ミカンダ、エイは軽傷を負っていた。そのためリンヴァーとアキラが包帯などで応急処置を行う。アキラとリンヴァーはほぼ無傷であった。アキラがリンヴァーに問う。

 

「テイガス国とか、暗黒騎士団だとか、魔連合国ってどういう勢力なんですか?」

 

「魔界には小国が五つあって、テイガス国もその一つだ。それぞれに暗黒騎士団ってのが存在して武力を保ってる。小国の王は魔界五天王が務めていて、その魔界五天王の下にはたしか『殺人十三人衆』ってやつらもいる。その下に暗黒騎士団があるって感じだな。複雑すぎて俺達もしっかりと把握はできちゃいねえ」

 

 

 

 アキラ達四人は、ベガキ樹海南エリア東部を探索し終えると最初に二手に分かれた場所まで数分かけて戻る。そこでしばらく待機しているとゲンドウ達四人が戻ってきた。それぞれ軽傷を負っており、戦闘を終えた様子が伺える。リンヴァーが言う。

 

「ゲンドウさん、南エリア東部の魔戦士は全員追い払いました」

「ごくろうさま! 西部にも数人いたから退治しといたよ」

 

 結果的にはベガキ樹海南エリアには8人の魔戦士が潜伏していた。その全てを特攻部隊Gが撃退できたのだ。その時、ゲンドウの持つ通信機が通信を受け取った。

 

「「こちら特攻部隊Z隊長のシャイン、魔界五天王ゼトリムを倒した! もう一度言う、魔界五天王ゼトリムを倒した!」」

 

「まじかよ…!? 魔界五天王の一角を下したか」

 

 思わずゲンドウが驚きの声を上げた。テイガス国王であるゼトリムが倒されたことにより、おそらく魔戦士の士気は低下し撤退していくだろう。やがて金奏城司令部から、任務完了の通信が届く。魔界五天王の一人を倒した任務の補佐をしたことによる評価は高いだろう。

 

「よし! 任務完了だ。城に戻ろう!」

「了解!」

 

 特攻部隊Gはこれまでにないほど結束力が高まっていた。達成感により彼らのテンションは最高潮であった。

 

 

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