【魔力】
魔力とは、全ての生物が生まれながらにして持っている目に見えるエネルギーであり、紫色をしている。主に魔法・呪文を唱えるために必要。魔力量を数値化した場合の単位はMPとなり、魔法ごとに使用するMP量は異なる。最大魔力量は修業や鍛錬によって増やすことができるが、増えやすさは遺伝などの要因により個人差がある。消費された魔力は呼吸をすることにより自然治癒で回復していくものの、最も効果的な回復方法は睡眠である。ポーションや聖水など魔力を多く含んだものを摂取することでも魔力を回復できる。回復速度にも個人差がある。また、杖を回すことにより魔力を生産することも可能。
―――部隊異動当日の午前9時。特攻部隊Gの部屋では異動する者達が荷造りを終えていた。この部隊に残るのはエイとミカンダとギーカーの三人。他の五人は自分の荷物をまとめて持っている。一時的に隊員数は三人になるが、アキラ達が抜ける代わりに他部隊から異動してくる者が四人いる予定だ。隊長の証であるマントを外し、手に持ったゲンドウが言う。
「エイ、これからはお前がこの特攻部隊Gの隊長だ。頼んだぞ」
「……はい。僕なりに精一杯頑張ってみます」
エイはそう返事をすると、白いマントを受け取った。隊長となったエイの表情は、どこか誇らしげに見えた。アキラとライドとシスキーも少ない荷物をまとめて持ち、いつでも出れる態勢に入る。リンヴァーがアキラ達に言う。
「おめえらには、とりあえず期待してるぜ? 活躍してこいよ」
「はい、頑張ります! リンヴァーさんも、ついに三流部隊ですね。頑張りましょう」
「へへっ、おめぇらには抜かされちまったが、いつか追い付いてやるよ!」
そう言うとアキラとリンヴァーは固い握手を交わした。リンヴァーの特技を参考にし、自分のものとしたアキラは彼を尊敬していた。これからはまたそれぞれ別部隊で任務に勤しむ形となるのだが、最初の先輩としてアキラの頭に焼き付いたのは間違いないだろう。ゲンドウとリンヴァーに教わった鍛錬を、これからも毎日続けていくことをアキラ達三人は決めていた。
「じゃ、そろそろお別れだな。行こうか!」
元隊長であるゲンドウがそう言うと、異動する者達は部屋の扉の前に集まる。残った三人も五人を喜びの眼差しで送り出す。
「みんなそれぞれ目標は違うかもしれないけど、これからも頑張ろう! 今までありがとう、そしてまた会おう!」
ゲンドウのその一言で、特攻部隊Gは一時的に解散となった。恐らくこれからも異動は数多くするだろう。常に別れと新しい出会いを繰り返していく。様々な種類の人に多くの事を学べるだろう、とアキラ達は胸が高鳴っていた。ゲンドウから差し出された無言の握手を、アキラ達三人は終えると事前に言われた通り金奏城北塔一階のロビーに移動する。
一階のロビーに行くと、アキラ達を待っていたのは一人の男。紫色の髪をし、腰付近には拳に装着する武器であるツメを二つ装備している。目は鋭く目つきは悪く、長身で1メートル90センチの背を持つ。白いマントの背面には『M』と刻まれている。特攻部隊Mの隊長である。三人が前に行くと、静かに口を開いた。
「……遅い。非常に遅いぞ。9時にここに来るように伝えたはずだが?」
時刻は9時7分。遅刻である。怒った様子の長身の男は、静かにアキラ達を見つめている。それに対してシスキーが口を開いた。
「ごめんなさーい! 俺がトイレで
「……汚い。非常に汚い。…だがそれは人間の生理的現象。致し方ない部分である。許そう」
男はそう言うと咳払いをした。よく理解できないまま、許された三人。アキラはこの男を変わった人物だと認識した瞬間であった。男が両手でマントを翻し、言う。
「…特攻部隊Mの隊長をしている、カイラス・アルフだ。以後よろしく頼む。武器はツメを使用する。年齢は20歳で二年前に入隊した。時間は厳守する性格だ。汚いものも嫌いだ。だがカレーライスはルウとライスを混ぜて食べる派。パスタの半熟卵も、まず潰して黄身を出して混ぜる派だ。基本的に面倒見は良い方ではない。視力はとても良い方。音楽はダンス系が好き。生まれは都市カボル。弟が二人、妹が一人いる。…このくらいか? 質問はあるか?」
(なげぇ…!!)
ライドは話が長すぎて途中で突っ込もうかと思ったがやめた。カイラスの表情は至って真面目。つまりは真面目な性格なのである。シスキーは話を聞きながら欠伸をしていた。アキラも全ての話を聞いていたはずなどない。特攻部隊AからGがビギナー部隊、HからNが三流部隊である。特攻部隊Mは三流部隊の上から二番目となる優秀な部隊。その隊長であるこの男が弱いはずなどないが、アキラ達は正直なめていたのも事実。しばらく沈黙が続き、誰かが返答しなければ終わらなそうであったのでライドが言う。
「質問は、ねえよ」
「……無礼だが、許そう。お前達のデータはもらってる。アキラ、ライド、シスキーだな? 特攻部隊Mにようこそ。今お前達を含めて隊員は6人。…さて、部屋に案内しよう」
特攻部隊Mの部屋は西塔6階にある。三流部隊は金奏城の地下2階から地上6階までを自由に行き来できるようになる。アキラ達は初めてエレベーターを使用し6階まで移動していく。その最中、カイラスから手渡されたのは『M』と書かれた腕章。特攻部隊Mの隊員である証である。これを着けていなければエレベーターにさえ乗ることは許されない。
エレベーターが開き、降りると目の前に現れたのは『M』と書かれた扉が一つのみ。金奏城西塔6階は特攻部隊Mのみが占有しているフロアなのである。その上隊員数はたったの6人。一人に与えられたスペースはかなり広い。これがビギナー部隊と三流部隊の差であった。アキラ達はそのことに気づき言葉を失う。
「…ビギナー部隊は、各フロアに複数の部隊の部屋が窮屈に存在していて狭かったろう? 三流部隊以降は主にこのように、一つの部隊が一つの塔のフロアを占有できる。トイレやシャワールームの設備も豪華になってるはずだから、後で確認しておけ」
「え! じゃあ、あの…ウォシュレットもついてたりすんすか!?」
シスキーがそう質問すると、カイラスは二コリとも笑わずに冷静に答える。
「…シスキー、もちろんだ。俺もウォシュレットを使う派だ。ビギナー部隊のトイレには無かったろう?」
「それなんすよー、ほんとあれはあり得ねーって思いましたわ」
「…安心しろ、ウォシュレット完備だ。三流部隊以上はな。水圧も完璧だ」
「うおっしゃー!」
シスキーが喜びの声を上げまくっているのと同時に、カイラスは扉をコンコンとノックをする。アキラとライドは顔を見合わせ、苦笑いをしていた。扉の向こうからは聞き取れない声で返事のようなものが聞こえた。それを確認するとカイラスは扉を開け、続いてアキラ達も部屋の中に入る。中にはテレビがあり、ソファも一人一つずつ用意されており、ベッドルームも狭い部屋ではあるが一人ずつ部屋が用意されていた。テレビの前のソファに一人、アキラ達の目の前にもう一人の男が立っていた。これが残りの隊員である。
「…紹介しよう、三人共特攻部隊Mから昇隊してきた17歳。アキラ・ロドルフ、シスキー・スネイド、ライドの三人だ。アキラは特攻部隊Z隊長のシャインの弟。シスキーは蛇人族の生き残り。ライドは幼い頃に記憶喪失になっている」
(こいつ、全部言いやがった)
ライドはまたもや突っ込もうとしたがやめた。シスキーもアキラも戸惑いを隠せない様子。部屋にいた二人の隊員も、近くに寄ってくる。三人は隊員達に挨拶する。
「ってことで、よろしくお願いします!」
「よろしく!」
二人も返事をする。右側に立っている男は金髪で少し日焼けをして肌が茶色い。左側の男は対照的に黒髪で肌は真っ白である。金髪の男、黒髪の男の順で口を開く。
「俺はザン・ペッカーマン! ザンって呼んでくれ、19歳だ」
「俺の名前はユース・ゲイル。ザンと同じ19歳だ。よろしくな」
アキラ達が使っていい部屋を言われ、そこに荷物を置く。それぞれに一部屋、ベッドだけがある部屋を与えられた。テレビのある居間に戻ると、カイラス、ザン、ユースの三人が大きな机の横に並べられた椅子に座っていた。アキラ達もそこにかけるように指示される。座るとユースが話し出す。
「さて、三人には三流部隊に入った注意事項を言っておきたいんだ。三流部隊に昇隊するためには星数が50必要だったんだけど、二流部隊に上がるために必要な星数は500! だいぶ必要なんだ。それと任務の難易度も一気に上がる。それぞれの部隊には一応役割ってのがあるんだけど、特攻部隊Mは『潜入』って言って戦場が荒れてきた時に投入されて敵の主戦力に狙いを絞って潰しにいく役割が一応あるんだ。ま、それは戦争時の話なんだけど。だから先に言っておかなきゃいけないのは『単独行動』が多くなるってこと! 6人全員で行動することなんかほとんど無いって覚えておいて。だから個人としての実力が必要になってくる部隊でもあるんだ。そこを意識しておいてほしい」
ユースはそう言うと、金奏城内の案内地図を三人に配った。そこには三流部隊が現在使える施設などが事細かに記載されている。ビギナー部隊の時は練習部屋と食堂しか利用できなかったが、三流部隊になったことでトレーニングジムと図書館と地下の訓練施設と二つ目の食堂も利用できるようになった。ちなみに食堂のメニューは少し豪華になっている。訓練施設が大幅に増えたことが大きいだろう。カイラスが言う。
「…そんなところだな。それじゃ任務指令が来るまでは自由にしてくれ。任務が来たらいつでも行けるように準備もしとけよ?」
「はい! 了解です」
アキラがそう返事すると、カイラスはゆっくりと頷いた。シスキーは真っ先にトイレへと駆け込んでいった。