カイラス・アルフ
性別:男 年齢:20歳 性格:几帳面、神経質、完璧主義
武器:ツメ 特技:タイガークロー
特攻部隊M隊長。2年前に特攻部隊に入隊。中途半端なことを嫌う。
魔感を使える。コミュニケーションをとるのが苦手である。
「よいしょっと!」
特攻部隊M全員が落とし穴から這い上がり、地上へと戻った。アキラとライドとシスキーはカイラスの実力を見せつけられて感動していた。だが、ここは敵地も同然。そう一々落ち着いている暇などない。
「…いくぞ」
カイラスのその冷静な一言が彼らの気持ちを落ち着かせていた。薄暗い一本道を突き進んでいく六人。先程のように罠にかかることのないように慎重に、かつ迅速に彼らは走る。通路の行き止まりには、下のフロアへ降りるための階段が右方向、正面、左方向の三つ。迷っている暇などない。カイラスが即座の判断で六人を三つのグループに分ける。カイラスとライド、ザンとシスキー、ユースとアキラに分かれそれぞれが階段を降りる。
「…何か異常があれば各自ピンバッチを鳴らせ。健闘を祈る」
「了解!」
中央の階段を降りたのはカイラスとライドの二人。地下四階まで存在するこのバーク遺跡の中は迷宮として有名である。二人が降り立った地下二階。そこには何も無い細い部屋が広がっていた。壁や天井、床には何やら解読のできない削られた古代文字が延々と綴られている。だがそんなものには目もくれず、二人は部屋の奥まで駆けた。
「…なんだ、このフロアには何も無いのか?」
奥にはさらに下のフロアへと続く階段と上へ上る階段。カイラスが魔感を研ぎ澄まし、魔力を『サーチ』してみるものの、この部屋にはカイラスとライド以外の魔力を感じられない。上の階へ行く階段は、おそらくまた違う地下一階へと繋がっている。考えれば考えるだけキリがない。ライドはすぐに下の階へ続く階段を降りようとした時、カイラスが制止した。
「…まて。そっちには魔感を僅かにも感じられない。上るぞ」
「そんなことまで感知できんのかよ、すげーな魔感って」
そう呟きながらライドはカイラスに続いて上の階へと移動する。そして地下一階の別の部屋へと足を踏み入れた。左右に分岐する道。そしてその分かれ道の所に立っているのは五人の魔戦士。
「侵入者発見!!」
「チッ」
叫ぶ魔戦士を見た瞬間、長剣を抜くライド。一瞬だけ彼と目を合わすとカイラスは魔戦士達へと向かって走り出した。次いでライドも走る。その二人の無言の殺気に思わず魔戦士達の動きは数テンポ遅れて始動していた。
「タイガークロー!」
カイラスの右腕に装備された三本の鋭利な刃で構成されたツメは、素早く魔戦士を深く斬りつける。その強力な一撃は、体の深くにまでダメージを与えていた。その隣でライドも右手の長剣で敵を斬りつけ、左手で魔法を唱えて攻撃していた。
「メラゾーマ!」
得意の
「…魔戦士がいるということは、この先に何かいるのは間違いない。慎重に進むぞ」
「そうだな」
「…ライド。敬語ってものを使えないのか? 非常に無礼だ」
「今その話必要か? 隊長さん」
「…正論。先を急ぐぞ」
生真面目なカイラスと生意気なライド。この二人は意外と良い組み合わせなのかもしれない。
*****
一方、左方向の階段を降りたザンとシスキーの二人。彼らは現在地下二階にいた。細い通路がクネクネと曲がりくねり、随所で分岐し、行き止まりも存在する迷宮の中に迷い込んでいた二人はイライラしていた。
「うおー! なんなんだよ、人の気配さえしねーじゃねーか!」
「俺ら、出れなくなるんじゃねぇか? ピンバッチ押すか?」
「いやそれは
そう叫びながらシスキーはザンと共に地下二階を走り回っていた。その時、シスキーの足が小さな魔法陣を踏みつけた。それと同時に彼を地面から出現した白い糸が縛り上げる。
「うおおっ」
それは補助魔法のクモノ。何者かがここに罠として設置したのであろう。だがこの糸の力はかなり強力であり、シスキーの四肢の動きを完全に封じ込めた。恐らく術者はかなりの実力者。ザンは直ちに背中に装備してあった斧を抜き、両手で持って構える。大きく振りかぶり、シスキーの足元の糸部分目がけて振り払う。
「真空斬り!!」
風魔法を纏った斧の一撃は、容易くシスキーの足元の魔法陣が書かれた地面ごと破壊した。クモノの呪文は、魔法陣を壊すか対象者が魔法陣から離れることによって解除される。蜘蛛の糸が消滅し、動けるようになったシスキーはザンを見つめてポカンと口を開けていた。
「すげー、今の一撃…」
「大丈夫だったか? シスキー」
シスキーが立っていた地面にはヒビが入り、破片が辺りに散らばっている。それはいつも騒がしいシスキーを黙らせる程の威力であった。ザンは後輩であるシスキーに良い所を見せるために全力で攻撃したのである。その思い通りにシスキーがザンを見る目は、羨望の眼差しになっていた。
「城に帰ったら、色々教えてほしいっす」
「任せろ! とりあえずこの迷宮を抜け出すのが先だけどな」
そう言うと二人は再び迷宮の中を走り始めた。
*****
一方、右方向の階段を降りたユースとアキラ。彼らは地下三階に降り立っていた。慎重に、かつ迅速に進んでいる二人。少しでも怪しいと感じた箇所では、ユースの短剣を投げて罠の有無を確認して進んでいく。二人の前には大きな広間が広がっていた。向こう側には二つの道が見える。
「さて、どっちに進むか」
ユースはそう言いながら広間の中央まで歩いていく。アキラもすぐ後ろについていくが、前に見える二つの道の入り口付近を見つめていてあることに気がついた。
「ユースさん、右側の道の方に明らかに複数人の足跡が見えます」
「ん。ほんとだ! ってことはあっちに魔軍がいる可能性があるな」
二人が向かう先が、右側の道に決定。そっちの方向に歩いていく。その時、二人は異変に気付いて足を止めた。見つめる先の右側の道から、赤いマントを装着した魔戦士が二人出てきたのだ。明らかにただの魔戦士ではない。敵もこちらの様子に気づいて動きを止める。
【魔軍・殺人十三人衆 シルギス】
「おい、ベイカーブ。絶対にこっから先には進ませんなよ?」
【魔軍・殺人十三人衆 ベイカーブ】
「了解ですよ、シルギスさん」
二人が装着している赤いマントには髑髏マークが刻まれている。これは魔界五天王に仕える殺人十三人衆である証。魔界に十三人いるこのマントを持つ者達は、どこの小国にも属すことなく普段は自由行動を許された特権的な魔戦士である。魔界五天王の命令に応じて任務に就く、魔界の中でも実力が認められた十三人。ただの魔戦士ではない。シルギスとベイカーブは、歩き出し広間へと出てくる。それに応じて数歩後退するユースとアキラ。
「アキラ。俺はあっちのノコギリをやる。もう一方を頼むよ」
「…了解です!」
ユースは咄嗟の判断で眼前の魔戦士達の中でも強そうである、ノコギリのような刃である長い鉈を持つシルギスに狙いを定めた。対するアキラの相手となるベイカーブは太い鉄製の杖を持っている。お互いがそれぞれの戦うべき相手を見定め、距離を取り始める。シルギスは、出てきた道ではなく左側の道の方へと少しずつ後退していく。
「おい! こっち来いよ、相手してやる」
そう叫んだのと同時にシルギスは左側の道へと走って入っていく。ユースは瞬時に走り出し追いかける。広間に残ったのはベイカーブとアキラの二人。太刀を構える。思い返せば、このように敵と一対一の状況になるのは初体験であるアキラ。しかも敵は実力者。これまでもそうであったが、当然戦って負ければ殺される。やらなきゃやられる。緊張感漂う広間の中で、ベイカーブがジリジリとアキラへと近づいて距離をつめてくる。
「悪いけど、ここから先は通すわけにはいかない。エルバ様の命令なんだ」
そう言いながら杖先に集結していく魔力。それを見て思わず足に力を入れるアキラ。どう攻める。自分の長所はスピードであると自覚している彼は、その生かし所をいまいち把握し切れていなかった。ただ正面から突っ込んでも、前回のスピすけ戦の時のように防御されて相手に攻撃のチャンスを与えてしまう。勝負を急いで首を狙う必要はない。
「相手がガキだからって容赦はしないぜ? 俺は殺人十三人衆の一人だ!」
そう言いながら走り出すベイカーブ。鉄杖には魔力が十分に集まっている。二人の距離は三メートル程。その時魔戦士が杖先をアキラに向けて魔法を放つ。
「いけ、ドルクマ!!」
放たれたのは漆黒の闇魔法。思わず右方向に避けるアキラだったが、肩をわずかに地獄の雷が掠めていく。太刀を前に構え、
「疾風突き!」
「くっ」
素早く接近しベイカーブの横腹を斬りつけた。血が飛び散る中で、後退しようと両足に力を込めた瞬間―――
「ダークマッシャー!!」
「?!!」
―――闇属性を纏った鉄製の杖が、アキラの頭部を横から殴りつけた。メキメキとグロテスクな音を鳴らしながらアキラは数メートル吹っ飛ばされ、地面を転がる。血を吐きながらアキラはなんとか目を開け、少しずつ歩み寄ってくるベイカーブを睨みつける。頭部に衝撃を受けたことでアキラは完全にふらつき、意識が朦朧としていた。
(こんな所で負けてられない…!)
「おお、直撃したのにまだ立つか…」
しっかりと足を踏ん張り、立ち上がったアキラ。太刀を強く握りしめ、少し後退する。ベイカーブにもアキラの攻撃が直撃している。横腹を斬られたダメージは決して少なくない。出血する横腹をおさえ、杖に魔力を集めていくベイカーブ。対するアキラも左耳の上辺りから出血があったものの、気にせず太刀を構える。
「次で決める…!!」
アキラはそう呟くと、両足に力を込めた。