エルバンドウ
性別:男 年齢:28歳 所属:魔連合国
武器:黒大剣 特技:魔法・剣技
魔界五天王の一人で、魔界リビロ国国王。魔王への忠誠心が高い。
魔界五天王の中でも最強と言われる実力の持ち主で、グレイトドラゴンをペットとしている。
―――時は経ちガンドラ暦12217年から12218年へとなり、アキラ達が特攻部隊に入隊をしてから約一年が経過しようとしていた。この数か月間、いくつか任務はあったものの、戦争などではなく魔物退治などの雑務であった。アキラとライドとシスキーの三人は依然として特攻部隊Mに所属している。ライトレイ国、ラギ帝国、魔連合国の三国は互いが互いを牽制し合い、まるで何かのきっかけを待っているかのように均衡を保ちつつも常に緊張感を持って睨みあうような状況が続いていた。
「ハハッ、一年経つのかー、はえーな!」
アキラ達三人は金奏城内にある巨大浴場のシャワールームにいた。彼らは18歳となっていた。入隊してから一年が経過。彼らは自分達の成長を実感していた。シャワーを浴びながらアキラが言う。
「この一年は、色々あったけどさ…特攻部隊ってものに慣れることができた気がするよ」
「まぁそうだな。だが、近いうちに必ず大きな戦争が起きるのは間違いないだろ。その日のために強くなり続けるしか今はやることがねぇな」
ライドはそう言うと艶のある自らの黒髪をシャワーでバシャバシャと濡らす。そんなライドの腰には黒い刺青のような紋章がみえる。シスキーはそれを見て、言おうか迷った末に口を開く。
「なーライド。
その紋章は握りこぶし程度の大きさであり、黒い円の中に『S』と文字が刻み込まれたもの。汚れなどではなく、それはライドの皮膚に刻み込まれたものだとすぐにわかる。
「ああ、これか。これは俺にもわからねえ。俺が記憶のある7歳の時にはもう既にこれはあったんだ。だから、俺はこれを『過去の記憶の手がかり』の一つだと思ってる。まぁ全くこれにつながる情報は無いんだけどな」
ライドはそう言うと少し笑った。彼は一年経った今でも、過去の記憶の手がかりを一つも見つけられずにいた。本来の特攻部隊に入った目的は、記憶を取り戻す手がかりを見つける可能性を少しでも高めるためであったのだが、現在は少し違ってきていた。
(最近、過去の記憶なんかに囚われることも少なくなってきてる。俺は今、何のために生きているんだ…?)
それは本人でさえ答えが分からない問いであった。彼の中で、今特攻部隊として続けているモチベーションが何であるのか、分からないでいたのだ。シスキーがアキラの左胸にある黒い魔法陣のようなものも見つけていた。アキラはそのシスキーの視線に気づき、口を開く。
「…これ? これは何だっけ? 俺もあんま覚えてないんだけど、10年くらい前に無法地帯で襲われた時にいつの間にかついてたんだよね」
「変な黒いカプセルみたいの食ったからだろ? たしか」
「ああ、そうだったな!」
ライドが情報を付け足す。だがシスキーには全く何のことかわからない。この左胸の黒い魔法陣は、アキラとライドが8歳の時に無法地帯で異様なエネルギーを放った黒いカプセルが落ちていたのを見つけ、アキラが誤飲してしまった時にできたものである。それから彼の身体に全く異常は無いため気にしていなかったのだ。
「ぜってー
シスキーはそう言った。アキラも苦笑いしながら否定もできずにいた。シスキーは疑問が晴れてスッキリした表情を見せる。アキラもライドもシャワーを浴び終えた様子だ。
「さ、部屋に戻ろう」
*****
ここは金奏城地下10階。城の最も低い位置に存在するフロアである。ここに足を踏み入れることは、司令部と特殊部隊しか出来ないとされる。このフロアにあるのは『牢獄』。厳重な警備態勢の中で魔力を封じる力を持つ手錠をつけられて収監されるのは、国内の極悪犯罪者、特攻部隊・護衛部隊で命令を著しく違反した違反者、そして捕獲した敵国の戦士などである。フロアに降り立ったのは特殊部隊隊員であるシャインとクロス。とある一人の収監者の牢屋の前へと辿り着く。現在、この地下10階の牢獄フロアに収監されているのは合計三名。一年前にシスキーとアキラが都市カボルで捕えたデリング・ギリング兄弟の二名と、もう一人―――
「この数か月で、しっかりと裏が取れた。お前の国にスパイを送り込んでみたが、どうやらお前が死んだことになってる事は事実だったようだな」
【元魔界五天王 ゼトリム】
「へっ…やっと信じてもらえたか! だがそんくらい慎重に俺を扱ってもらわなきゃ、俺の命に関わる。で、話を聞く気になったか?」
「ああ。聞かせてもらおう。まだ完全にお前を信頼したわけじゃないがな、ゼトリム」
―――それはゼトリム。元々は魔界五天王の一人であったが、約一年前の任務(第17・18話参照)において特攻部隊Zにより殺されたはずの男である。だが実は、あの時秘密裏にライトレイ軍上層部はゼトリムを殺さずに捕獲していたのだ。魔連合国では彼は死んだ事になっており、それを特殊部隊はスパイを潜入させることによって確認していた。シャインの言葉に少し明るい笑顔を見せ、口を開くゼトリム。
「じゃあまずは礼を言おう。『俺の命を救って』くれて、ありがとう!」
「俺はそこから気になってるんだ。お前を魔連合国にも嘘ついて、生きたまま捕獲したことで何で助かってるんだ?」
「…俺は個人的に魔界五天王の一人、エルバンドウと仲が悪くてな。度々互いの小国の兵士を使って小競り合いを起こしてたんだ」
「内乱ってことか?」
「お前ら光軍にとっちゃ、そうなるわな」
シャインはスッと後ろを振り返り、クロスの顔を見る。それに対してクロスは素早く頷いた。
「んでまず内乱を起こすな、と魔王に怒られる。エルバが治めるリビロ国は問題の種である俺の命を執拗に狙い続け、さらには俺のテイガス国の兵士達も巻き込まれるのが嫌だからって俺を殺して早く次の王を立てよう、って動き始めたんだ。もはや魔界に俺の居場所は無くなっていたのさ!」
「…なるほど。だから俺らライトレイ軍に殺されたフリをして捕まって、生き延びようとしたってわけか」
「ああ。どっちにしろ魔界に帰ったら、直に誰かに殺される運命だった。だからお前らは『命の恩人』なのさ。それで本題はここからなんだが…いいか?」
「ああ」
シャインが度々クロスの表情を伺うのには理由があった。クロスには『特殊体質』があるのだ。それは相手の顔をじっと見つめるだけで、その人物が今どのような心理状況であるかを把握することができる『読心』というもの。つまり今、ゼトリムが本当の事を言っているのか、嘘をついているのかを即座に見破ることが可能である。ここまでゼトリムが言っていることは真実であった。
「魔連合国軍についての情報を、俺が知っている限り全て話したい。だが、条件として俺の命の保障を最優先としてほしい。これまで通り、絶対にスパイがいないお前達上層部だけで情報を留めてほしい、それが条件だ」
「嘘は言ってませんよ、シャインさん」
「…わかった、お前の命の保障はする、ゼトリム。魔連合国の全てを教えてほしい」
*****
午後9時。アキラ達がいる特攻部隊Mの部屋の扉が大きく開き、入ってきたのは隊長のカイラス。その手には一枚の紙。その瞬間、ザンが叫ぶ。
「きたああっ! やっと任務やあ!」
「ついに、来たか」
ライドも思わず呟いた。アキラとシスキーとユースは無言でカイラスを見つめる。カイラスはその紙を部屋の中央のテーブルの上に置いた。全員がそれを覗き込む。
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任務依頼 対象:特攻部隊L・M(計11人)
概要:ラギ帝国へ侵攻開始、侵攻の補助をせよ。
場所:コロプス山脈西部
難易度:CC級
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「…任務開始は明日午前8時。さぁ、戦争だ!」
カイラスがこれほどまでに生き生きとしている姿を誰も見たことはなかった。だが、それによって全員がより一層奮い立たされていた。