ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>> 
  ゼトリム 
性別:男  年齢:28歳  所属:なし(光軍牢獄に収監中)
武器:魔銃  特技:魔法・銃技
 元魔界五天王の一人。世間では死んだことになっているが、秘密裏に光軍に捕獲された。
 自分の命の保障を条件に、光軍上層部に魔軍の情報を流し始める。



第二十六話 「過去の記憶なんかいらねえ」

 

 

 翌日。午前8時の数分前。金奏城には緊迫した空気が流れていた。北塔一階のロビーには特攻部隊Lと特攻部隊Mの姿がある。二部隊は司令部のパラオから説明を受ける。

 

「もう既にいくつかの部隊はイビイ砂漠やワルファ遺跡へと出兵している! 恐らくもうラギ軍も対応し、交戦を開始するころだろう。そこでお前達特攻部隊L・Mには、コロプス山脈南口から山脈内に入り、西口から砂漠に出て戦闘に参加してもらう! これは合同任務となる、しっかりと連携をとって遂行するように」

 

「了解!!!!」

 

 通信機を受け取るカイラスと特攻部隊L隊長。特攻部隊Lには全員で五人の隊員がいる。特攻部隊Mと合わせて合計11人での任務となる。城の門を出た11人。任務開始となる8時よりも少し前に集合した理由としては、互いの名前と武器などを確認し合うためである。幸いにも、お互いに少人数部隊同士であったためそこまで覚えるのに苦労はしないだろう。アキラ達特攻部隊Mが先に自己紹介を終えると、特攻部隊L隊長グリットから自己紹介を始める。

 

「俺が特攻部隊Lの隊長をしてる、グリットだ。武器は長剣、よろしくな!!」

「俺様はタイガー・ラキジーク! 武器は銃。よろしくな~」

「俺はジン・リベラスター、槍を使う」

「アタシはアリッサ、杖を使います。よろしくお願いします」

「…インザグールだ。武器は双剣だ。よろしく」

 

 全員の紹介を終えると、隊長のカイラスとグリットが先頭となりコロプス山脈へと向かって真っすぐ北に走り出した。アキラ達にとって、何人かは聞いた事のある名であった。タイガー、ジン、インザグールの三人はアキラ達と同じ12217年に入隊した新人である。合同任務というものも初体験であり、コロプス山脈内部に入るのも初めてとなる。さらには久しぶりの戦闘任務ということで、アキラ達は興奮していた。

 

(やっと修行の成果を試せる時が来た)

 

 ここ数か月間、アキラとライドとシスキーはそれぞれ別々に訓練を繰り返していた。それは決して喧嘩をしたわけでもなく、三人共がそれぞれ自分の力を伸ばすことに集中するためである。もちろん、他の二人に負けたくないという気持ちも少なからずあっただろう。だが、この任務が彼らにとって経験上最も苦しい任務になることなど誰も想像していなかった。先頭を走るグリットが口を開く。

 

「よう、カイラス。ひさしぶりだな」

「…グリット。2年前の特攻部隊Mの時以来か?」

「そうなるな! お前相変わらず素っ気ないヤツだな。噂には聞いてるぜ? お前が『昇隊を断り続けてる』ってよ。何でだ? お前の実力なら少なくとも二流部隊でも通用するはずだろ?」

「…単純。非常に単純だ。俺にはまだそんな実力は無い。一度そこに行ったことがあるからわかるが、俺は弱い」

 

 そう言うカイラスに、思わずグリットは言葉を詰まらせた。

 

(嘘つけ…カイラス。お前ほんとは怖いんだろ? あの時みたいに仲間を失うのが……だから下の部隊で安定してるんだろ?)

 

 グリットはカイラスの過去を知っていた。カイラスは3年前に特攻部隊に入隊し、良いペースで昇隊していき一時は特攻部隊Rにまで登りつめた。だが、ある任務の最中に自分のせいで仲間を失い、絶望した。それから自ら降隊を望み、特攻部隊Mの隊長として安定していたのだ。彼の心の闇は決して浅くはない。

 

「あんたが噂の『瞬足のアキラ』だろ? 俺はジン、よろしくな」

「へぇ俺そんな呼び方されてるんだ(笑) ジン…『爆槍のジン』って聞いたことあるよ」

「そりゃどうも。どうやら俺ら12217年入隊組はかなり優秀な集団らしいぜ? トップですげえのが『雷闘士』と『水菊』って異名を持つ二人。ま、とりあえずお互い頑張ろうぜ」

「おう」

 

 アキラは何度か『爆槍』という異名は聞いたことがあった。自分が異名を使って呼ばれてる事を知り、恥ずかしい気持ちもあったが嬉しい気持ちが勝っていた。その話を後ろで走りながら聞いていたライドとシスキー。二人は自分達もすぐに成り上がろう、と決意していた。今回の任務は大規模な戦争、つまり星数を稼ぐには絶好の機会(チャンス)であることは周知の事実である。

 

 

 

 二十分程かなりの速度で走っていた一行は、予定よりも早くコロプス山脈の南口へと到着した。コロプス山脈には、東西南北それぞれに一カ所ずつ入り口が存在する。山脈内部は複雑に入り組んでおり、人工的に作られた道も存在するが、常に流動する溶岩のせいで度々内部構造が変化する。ここ数十年は大きな噴火や地震は起きていないものの、火口付近は常に高熱のマグマが流れ出ており、安全とは言い切れない状態であるのは確かだ。

 

「入るぞ」

 

 そこはまるで洞窟。稀にゴゴゴと地響きも聞こえる。事前に渡されたコロプス山脈内の地図を見ながら淡々と進んでいくカイラスとグリット。人間が舗装したため、整った道を地図通り進んでいく一行であったが、数分が経過した時にカイラスが異変に気付いた。

 

「…妙だな。通信機が圏外になりやがった」

「本当だ。コロプス山脈内にはアンテナを張り巡らせて、電波が届くようにしてるはずなんだが」

 

 グリットが言った。通信機は圏外になってしまえば、他のどの通信機とも通信ができなくなる。便利な機械ではあるが、意外にも電波を遮断されてしまえば何の役にも立たないガラクタと化す。全員に緊張が走る。その時、グリットが言う。

 

「おい、タイガー! 『サーチ』を頼む」

「了解で~す」

 

 サーチ、それは魔感による探索技術。使える者はかなり限られる。魔感は言わばオーラのようなものであり、どんな人間でもそれを無意識に放ってしまっている。サーチとは、自分の周囲の魔感を探知することである。魔感の扱いに長けているものでなければできない芸当である。特攻部隊L隊員のタイガーは返事をすると、

 

(魔感『サーチ』!!)

 

 自分を中心とした半径200メートル程のサーチを開始した。グリットの予想は的中していた。タイガーはすぐに大きく目を見開き、叫んだ。

 

「大変だッ! 100メートル先に10人程、50メートル後ろに15人程、150メートル右に10人程の魔感が存在してんぞ」

「何だと…!?」

 

 コロプス山脈内に他にライトレイ軍の戦士はいないはず。となれば、ラギ軍もしくは魔軍のどちらかとなる。サーチの発動・継続は体力を消耗するため、タイガーはサーチを解除する。カイラスが口を開く。

 

「…囲まれてるってことか。恐らく俺らの存在は気付かれてはいないはずだ。手分けして、殲滅に向かうぞ。そうだな、ユースとタイガーはここに待機。あとは適当に3・3・3で分かれるぞ」

 

   チームA:カイラス・シスキー・インザグール → 前方

   チームB:グリット・アキラ・ジン → 後方

   チームC:ザン・ライド・アリッサ → 右方向

   チームD:ユース・タイガー → 待機

 

「通信機もピンバッチも使えない。それぞれ片付けたらここに戻ってくるように! もしあまりにも戻りが遅いとこにはチームDが向かってくれ、以上だ」

「了解!」

 

 

 11人を4つのチームに分け解散。それぞれがそれぞれ向かうべき場所へと動き出した。カイラス率いるチームAは、前方の道を進み続けていく。するとやがて大きな広間のような場所に出た。カイラス、シスキー、インザグールの三人の前にいたのは10人の白装束の男達。武器を構えてこちらを見ている。さらにその男の後ろには、五体の機械系の魔物メタルハンターの姿。白装束は、ラギ帝国軍の証である。科学技術に長けた国であるため、この魔物を製造するのも納得がいく。三人は戦闘態勢に入る。

 

「…危険だ。死ぬなよ、お前ら」

「これはやべーっすね…笑えねーや」

「全部斬る。それだけだ」

 

 【ラギ帝国・第三英雄兵団副団長 ストレン・レグルス】

「光軍だ! やれ!」

 

 白装束の中でも、一番偉そうで白いマントを着用した男ストレンがそう言うとラギ軍の戦士達がカイラス達に向かって走り出した。ライトレイ軍を光軍、魔連合国を魔軍と呼ぶように、ラギ帝国は『無軍』と呼ばれる。それは光軍が大陸平和を望み、魔軍が大陸侵略を望むのと対照的にラギ帝国はいわば中立、いや『全てを無に帰す』という理念のもとに動いていることに大きく起因している。

 

「タイガークロー!」

「ぐああ」

 

 カイラスはツメを高速で振り回し、無戦士を複数回斬りつけて回る。シスキーも炎ブレス、インザグールも双剣で素早く敵を斬りつける。だが、その圧倒的な数の差に劣勢なのはなかなか覆らない。

 

「ピピッ」

「―――ッ?!」

 

 連続した機械音が聞こえたかと思うと、カイラスの肩を数本の弓矢が打ち抜いた。放ったのは奥にいるメタルハンター。左手にボウガン、右手に剣を装備した四本足の魔物。それはまさに無軍の産物であり、機械兵器であった。つい跪くカイラスだったが、矢を素手で引き抜いて立ち上がる。

 

「…厄介。非常に厄介だなこれは。本気でいこう」

 

 

*****

 

 

 一方、チームC。ザン、ライド、アリッサの三人である。彼らも15人程の無戦士と対峙していた。一番奥には白装束に黒いマントを着用した男が言う。

 

 【ラギ帝国・第三英雄兵団団長 ガルーバー・トス】

「邪魔すんなよ! こちとらティガ様に頼まれた用件があんだ! あとちょっとなのによ!」

 

「いくぞ」

 

 ライドはそう言うと長剣に魔力を纏わせた。そしてそれを一瞬で炎に変える。もはやその一連の動作に迷いや狂いは無かった。彼が数か月間積んできた鍛錬の成果が伺える瞬間であった。ザンはそれを見て思った。

 

(あ…こりゃ俺は抜かされたわな)

 

「おうよ、アリッサちゃんは魔法専門だよな? 俺とライドが前行くから援護頼む!」

「了解です」

 

 アリッサがそう返事をしたのと同時に、無戦士達が一斉に襲い掛かってきた。彼らは皆同じ剣のような武器を装備している。するとライドが言う。

 

「…いや、援護はいらない。俺一人で片付ける!」

「てめぇ…!!」

 

(ライド…こいつ何を気負ってやがる!?)

 

 そう思いながらもほんの少し動きを止めたザン。そんなザンに斬りかかってきた無戦士を、無言でライドの左手から放たれた炎球が吹き飛ばす。さらにはライド自身の剣で目の前の数人の無戦士をまとめてぶった斬る。その様はまさに圧巻であった。しかも炎魔法の威力も、斬撃の威力もかなり大きい。思わずアリッサも黙り込んでいた。

 

「俺は力を試したくてウズウズしてたんだ…」

(…そうだ。俺は…何のために生きてるのか、今わかった)

 

「ここは任せろ! ザン、アリッサ」

(過去の記憶なんかいらねえ。鍛えれば鍛える程、面白い程に強くなる自分の無限の強さを楽しんでるんだ…!!)

 

 その発言とは裏腹にライドの心を支配していたのは、強くなりたい、というその意志。自分の面白い程の成長を試し、楽しんでいたのである。彼は今、まさに快楽の中にいるのだ。ライドは思想は、次第に危険な方向に進んでいたことに本人でさえ気づいていなかった。

 

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