アキラ・ロドルフ
性別:男 年齢:17歳 性格:正義感が強い
使用武器:太刀 特技:疾風突き
この物語の主人公。エルド村出身。素早い動きを得意とする。
幼い頃にした父親との誓いを叶えるため特攻部隊入隊を目指して旅立つ。
左胸に謎の黒い魔法陣(刺青のようなもの)がある。
―――翌日。午前五時。森林である無法地帯の小鳥たちの囀りがチュンチュンと聞こえる。村の入り口の小屋から、青年が四人と白いマントの男が一人出てくる。四人のうち二人は少し大きめの荷物を持っている。村の人々も早朝に関わらず、出発する者たちを送るために外に出てきている。快晴。戦士の出発としてこれほどまでに最高のコンディションは無いだろう。村人を代表して、村長がアキラ達の元に近寄る。
「アキラくん、ライドくん。今まで本当にありがとう。盗賊を追い払ってくれたり村の活動も手伝ってくれたね。感謝してもしきれないよ、本当に。そしてエルド村を代表して、君達の旅立ちを心から祝福したい。おめでとう、頑張ってきなさい」
「村長…ありがとうございます。いつか必ず立派な戦士となって、何にも怯えることのない平和な村となったこのエルド村に戻ってきます!」
出発の時となり、アキラとライドの顔には清々しさ、期待感、そして少しの緊張感の様子が伺える。村長は頷き、一歩下がった。アキラとライドはそこまで大きくもないリュックを背負う。中には数日分の食糧と飲料。クロス曰く、ここからライトレイ王国の軍の本拠地までは10日程かかるという。移動手段はクロスが乗ってきた馬車だ。ザムザとバイスが二人に最後の言葉をかける。
「アキラ、ライド。行くんだったらいけるとこまで行って来いよな! 俺らはここでお前らが活躍するのを待ってるからな! あとエルド村のことは任せろよな!」
「僕らは離れてても一生の親友だ。定期的に連絡くれればうれしいよ。行って来い!」
「ザムザ。バイス。見てろよ! 俺とアキラが世界を救ってやる。待ってろ!」
ライドがそういうと、応じてアキラが頷いた。ザムザの目にはうっすら涙が見える。クロスが馬車を呼び寄せ、傍に停車させた。いよいよだ。アキラとライドは荷物を持って、クロスの顔を見る。
「二人とも、準備はいいかな?」
「はい!」
クロスの問いかけに二人は同時に良い返事をする。
「それじゃ、行こう! 出発だ」
クロスがそう呼びかけ、馬車に乗り込む。次いでザムザとバイス、村人に手を振りながらアキラとライドが乗り込んだ。合図をすると馬車の主の老人が小さなしわがれ声で返事をし、馬が高らかと声を上げながら歩を始める。日除けのカーテンをしていても、村の方からはザムザの叫び声が聞こえている。それを聞きながらアキラとライドは笑みを浮かべた。ついに、いよいよ特攻部隊になるための第一歩を踏み出した二人。二人が共に村に帰還することは果たしてあるのだろうか。こうしてアキラとライドはエルド村を出発し、ライトレイ王国中心に位置する特攻部隊の拠点『金奏城』へ向けて進み始めたのであった。
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「もう一度言うね。僕の名前はクロス。ライトレイ王国特攻部隊Xの隊長をしてる。君達の特攻部隊になりたい動機も昨日の夜聞いたことだし…。聞きたいことあるかな?」
「聞きたいこと…。いっぱいありすぎますね。僕達、エルド村と無法地帯から出たことないなので知らないことだらけです」
「あ、そうだったね! そうだな、まずは特攻部隊について説明していくね。ライトレイ王国の最も大きな勢力を誇る軍隊、それが特攻部隊。というかこれと護衛部隊が王国の全勢力だと言っても過言じゃないね。そしてこの特攻部隊と護衛部隊の二つを合わせた全ての軍隊の総司令官が、ライトレイ王国の王でもあるグリウズン様。それで特攻部隊っていうのは全部で26部隊あるんだ。特攻部隊Aから特攻部隊Zまで。特攻部隊Zが一番強いっていうのは知ってるよね。それぞれの部隊は偏りもあるけど、平均して10人いかないくらいかな。それで部隊ごとに課せられる任務をこなしていくっていうのが特攻部隊がやること。ここまでで何か質問あるかな?」
クロスの説明に何とか食いついていくアキラとライド。彼らは特攻部隊Zになる、という目標しかなく中身のことは全くといっていいほど知らない様子だ。ライドが質問する。
「その、例えば特攻部隊Aから特攻部隊Bに上がるためにはどうすりゃいいんだ?」
「昇隊のことだね。上の部隊に上がるためには、任務で結果を残すしかないね。上に行けば行くほど難易度の高い任務になっていくから、弱者はいらない、結果で実力を示して司令部に実力を認めてもらえれば昇隊できるんだ。逆に、降隊もあるよ。あまり結果を残せなかったりすると、下の部隊に降格させられることもある。それと、一つずつ昇隊するっていうのは珍しくて、基本的には一気に二つ、三つ飛ばして昇隊していくよ。まぁ、そこらへんは入ってみればすぐわかるはず!」
「ほんと基本的なところだとは思うんですけど、特攻部隊に入るためにこれから俺らはどうするんですか?」
「そうだね、そこを説明してなかった。今はこの馬車で金奏城に向かってるんだ。実は15日後に金奏城で特攻部隊入隊試験が行われるんだ。少し寄り道をする予定だけど、たぶん10日くらいで着くから間に合うよ。その入隊試験なんだけど、二年に一回しか行われないんだ。毎回試験内容は変化してて、合格率もかなり低い試験になってる。それにたぶん今回はいつもよりも受験人数は多いよ。だんだん戦闘も激化してきてるし、大きな戦争も起こりそうになってるから、王国が各地方から君達みたいな実力者を集めてるんだ。まぁ、君達なら入隊試験には余裕で合格できると思うよ」
「え、寄り道ってどこに?」
ライドがクロスが説明を終えたのと同時に質問した。アキラもそこが気になった様子でクロスを見つめる。クロスはニコッと笑って答えた。
「このまま砂漠を南下していった先にある都市カボルにね。そこにも一人、凄い強い青年がいるって情報があってね。折角だし彼も連れて行こうと思ってね」
大陸最東端に位置するエルド村から海沿いに砂漠を南下していったところにある少し大きな都市カボル。治安が悪く、決して裕福とはいえないような人々が狭くて古ぼけたビルに暮らしている。人口も多いが、犯罪も多く、ライトレイ王国領の中でも比較的危険地帯といえる。というのも、王国の中心地である金奏城は大陸の南部の中央に位置し、極東にある都市カボルはその監視下に置くにはあまりにも距離が離れているためである。もちろん、アキラとライドは都市カボルのことなど知っているわけもない。だが、ライドは一人ウズウズしていた。
(こうやって大陸のいろんな場所を巡ることが、記憶を取り戻すヒントになるかもしれない)
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―――三日後。アキラ達が乗った馬車は予定通りの時間で都市カボルへ到着した。停車した馬車から降りる三人。都市カボルは巨大な正方形の形状をしており、都市への入り口は東西南北の四つにしかない。アキラ達がいるのは都市カボルの東口。海に面している。そのためか、目の前に広がるいくつもの縦に長い建物は潮風で錆ついて茶色くなっているようにみえる。入り口に立ってみて中を見ると、一つ一つの建物自体が密集しており、人口が多いため各建物は階層が多く10階は最低でもあるかのように建物が高い。つまり中に入ってしまえば、見える空はかなり小さく、太陽の光も満足には浴びることはできないだろう。
「さて、こんな街だけど。その凄い強い青年…探してみますか!」
クロスはそう言いながら両手を上げて伸びをした。Xとかかれたその白いマントの背中は、アキラにとってとても大きな存在のように感じていた。いつかこうなりたい。アキラは無意識のうちにクロスに憧れの感情を持っていたのだ。あと10日とちょっとで特攻部隊の入隊試験だと思うと緊張しかしない。クロスはスッとアキラ達の方を振り返って口を開く。
「君達は、馬車で待ってる? それとも一緒に探す?」
「探すよ! …な、アキラ?」
ライドが即答した。アキラもすぐに頷く。
「で、その青年ってどんな人なんですか? それがわかんないと…」
「シスキーって名前で、都市カボルのどこかで便利屋をやってるらしいんだ。それじゃ三人で手分けして探そっか!」
「了解です」
アキラが答える。その時、まだ都市には入っていないが、外から見える場所で一人の男がナイフを持って人々を追いかけているのが三人にはすぐに分かった。足が動いた後にクロスの口が動いた。
「武器は常に持ってて! ここの治安は本当に悪い。それじゃ、シスキーを見つけたらこの馬車に戻って合流って感じで!」
(テキトーだなあ…)
そう思いながらもアキラとライドは武器を携帯し、東口から都市カボルへ入る。建物が乱雑に建設されたこの都市では、細い路地が迷路のように張り巡らされている。すでにクロスの姿はなく、二人の前には左右の分かれ道。顔を見合わせ、アキラは右へ。ライドは左の路地へと走り出した。