ティガ・バーン
性別:男 年齢:23歳 所属:ラギ帝国
武器:太刀 特技:剣技、格闘
ラギ帝国の第三将軍で第三英雄兵団を率いる若き実力者。
計算眼と飛行翼を持ち、安定した強さを誇る。真面目な性格。
一方、ここはコロプス山脈中心部に非常に近い部屋。部屋の中にはライドと第三英雄兵団団長ガルーバーの姿があった。
「…お前が噴火を起こしたのか…?」
息を切らしながら問うライド。逃げるガルーバーを追い、この部屋に追いつめたのである。これまで累計で三回もの爆発が山脈内で起こっている。部屋には入ってきた入り口と、右方向にある出口の二カ所しか穴は無い。
「ああ、そうだよ。ちょうどお前らが現れる数分前に、火口付近に時限爆弾を設置してたんだ! そこまで大きな噴火は起きてはいねぇが、山脈内部を破壊して使い物にならなくするには十分の威力だったぜ」
ガルーバーの言う通り火口をほんの少し刺激しただけであったが、噴出したマグマはコロプス山脈の主要な人工通路を破壊するには十分の量であった。この部屋は標高的には高い位置にあり、マグマが流れ込みにくい位置に存在するため安全であるといえる。
「作戦は成功したんだ、俺は帰りたいぜ。そこどいてくれ」
「やっぱこっちが出口なんだな?」
ニヤリと笑みを浮かべたライドは、部屋の右方向にある出口の前に立ち塞がった。
「俺と会っちまったのが運の尽きだと思って、相手してくれよ」
長剣を抜きガルーバーを睨みつけるライド。深くため息をついたガルーバーは、左右の肩付近を指で強く触る。すると彼の両腕に一本の真っ赤な電気の線が浮かび上がる。ガルーバーは両腕を主に改造しており、肩にあるスイッチを入れることで充電された電気エネルギーを解放し、両の腕力を数倍に高めることができる。
(エネルギー出力、右100%・左100%)
「見た感じお前は強そうだ。初めから『強化腕』使って全開でいくぞ」
「
何の武器も持たないガルーバーはライドに向かって真っすぐ走り出した。それに反応してライドは左腕に一瞬で魔力を集結させ、向かってくる敵に掌を向ける。
「メラゾーマ!」
「ふんっ」
無詠唱で発射された炎球であったが、それを軽々と右腕を振り払い燃焼させたガルーバー。彼の腕は力が強化されただけでなく防御力もかなり高められているため、無詠唱の低威力の魔法程度ならば殴るだけでほぼ無傷で消滅させられる。それに驚き、一瞬動きが固まったライドのすぐ目の前でガルーバーはしゃがみこみ、大きく腕を引いていた。
「飛翔拳!!」
「ぐ?!」
ガルーバーは大きく跳躍しながら拳でライドの胸部をえぐる様に殴り、上空へ吹っ飛ばした。直撃し、ダメージは計り知れない程大きい。肺を圧迫され、大量の吐血をしながら空中で飛びかけた意識を取り戻すライド。長剣はしっかりと握ったままだ。
(こいつ思ったよりも素早い…! なんだこのイカれたパワーは!!)
落下を開始したライドは剣に魔力を込める。だが、彼はガルーバーの姿を見失っていた。パッと見渡した時点ではこの部屋の中のどこにも彼の姿が見つからなかったのだが、その時ライドの頭上から声が轟く。
(エネルギー出力、右180%・左20%)
「んん……トールハンマー!!」
「!!?」
二倍程度に膨れ上がった機械の右腕が、ハンマーの様にライドの背中を勢いよく打ち落とす。瞬く間に地面に正面から激突し倒れた。もはや声も出ないライド。そのすぐ横に両足で着地したガルーバーは、ライドを無視してスタスタと出口へと歩いていく。
「くっそ…逃げるんじゃねぇよ…」
「ん?」
呻きながら立ち上がったライドの声を聞き、振り返るガルーバー。ライドにはまだ立つ気力が残っていた。ライドは思った。
(俺はうぬぼれていた…確実に。こいつは無軍の幹部の手下のはず…俺はまだこんなやつにも勝てねえってのか?)
「まだまだ俺は弱い…!! こんなんじゃダメだ」
そう呟いたライドは目を瞑り、左腕に魔力を集めて詠唱を開始する。彼が自分の力を過大評価していたのは事実である。しかしこの数か月間、アキラやシスキーに負けない様に努力を重ねていたのも事実。ライドの長所である膨大な量の魔力を生かすため、嫌々ながらも魔法書を多く読破してきた。その中で彼が本当に得意とする属性を見つけることができていたのだ。その属性は、
「……ダークフォース!」
闇属性。唱え終えるとライドの身体を漆黒のオーラが包み込む。炎魔法や爆発魔法も覚えたライドであったが、修得が困難とされる闇魔法を得意としていた。目を瞑ったままのライドに向かって、両腕を大きく引いて走り出したガルーバー。均等に膨張した彼の強化腕に直撃すれば、重傷を免れることはできないだろう。二人の距離が二メートル程になった時、ライドは目を見開いた。
「オラアァァ!」
「―――ダークマッシャー!!!!」
殴りかかるガルーバーを、闇魔法を纏った長剣の強烈な一太刀が斬りつけた。切り口からは黒い電撃がガルーバーの全身を走る。倒れたガルーバーの横で、ライドは長剣をしまう。息を切らしながら、自分の身体が纏っている闇魔法を見つめていた。このオーラを纏っているだけで全ての攻撃に闇属性が加わると同時に、ダメージを微細ながら軽減できる。しかし発動時間は短く、まだ覚えたてのライドには30秒が限界であった。
「あ、いた! ライド! 無事か!?」
その声の主はザン。隣にはアリッサもいる。二人共かなりの傷を負っている様子だ。ライドは二人を見て安心した自分を不思議に思っていた。やはり自分一人で戦える程強くない、という事を思い知らされたからであろうか。
「ザン、アリッサ。さっきは俺一人で片付ける、とか言って悪かった…大丈夫か?」
「ハハッ、まさかお前が謝るとはな! 気にすんな、さっきの雑魚兵達は全員ぶっ倒してきた」
「ライドさんこそ大丈夫ですか…? だいぶダメージ負ってますけど」
ザンとアリッサは無戦士達を倒してから突如流れてきたマグマから走って逃げてきたという。とにかく今はコロプス山脈からの脱出が最優先だと意見が一致したとこで、三人は部屋の出口の方に走っていく。部屋から出る所でアリッサが足を止めた。
「あの倒れてる人、まだ生きてるみたいなので一発かまします! ベギラマ!!」
アリッサの杖から放たれた灼熱は倒れているガルーバーに直撃し爆発を起こす。苦笑いのライドとザンを無視し、再び前を向いたアリッサ。そしてライドが言う。
「よし、脱出すんぞ」
*****
一方、こちらはチームA。カイラスとシスキーとインザグールの三人。たたびたすらに逃げる第三英雄兵団副団長ストレンを追いかけていく。距離は少しずつ縮まってはいるものの、追い付く事はできそうにない。意識を失ったままのインザグールを背負ったシスキーは、だんだんと疲れの色を見せてきていた。
「…シスキー、大丈夫か?」
「
「…ご名答だ。悪いな」
カイラスが受けているダメージも非常に大きい。ふと後ろを振り返れば、マグマとの距離はかなり離れている。カイラスとシスキーの意識が少しストレンから離れた瞬間、ストレンは左手の『手銃』をシスキー達の頭上の天井に向け、溜めていたエネルギーを解放した。
「チャージガン! 上は火口に繋がってるぜ?」
「!?」
それは先程まで発射されていたただの弾丸ではなく、一つの大きなエネルギー弾。壁に接触すると小爆発を起こし、岩を破壊してみせた。それによって崩壊を始めた天井から岩がいくつも落下してくる。疲労が溜まっている二人であったが、ストレンを追う事よりも岩を避けることに必死になっていた。落石が終わると、ストレンがかなり離れた通路を走っていくのが見えたシスキー。だが、
「え…? カイラスさん?」
カイラスの姿が見当たらない。シスキーのすぐ背後には落石によって積み重なった岩でできた壁。さらに破壊された天井からは新たなマグマが流れ落ちてきていた。インザグールを背負ったままマグマとのを距離をとり後退するシスキー。すると、積み重なった岩の向こう側からカイラスの声が聞こえる。
「…分断されちまったな。この岩石を全て砕いてマグマを避けてそっちに行くのは難しい。シスキー、お前はインザグールを連れてさっきの奴を追え!」
シスキーとカイラスの間の天井からマグマが発生しているが、カイラスの後ろからもマグマは迫ってきているはずである。このままだとカイラスを見殺しにしてしまう、そう思ったシスキーはなかなか動けずにいた。それを察したカイラスはいつになく大声で叫ぶ。
「…行け! ここにいたらお前らまで巻き込まれる! 俺ならなんとかして脱出するから大丈夫だ、早く行け!!」
(もう仲間を失いたくはないんだ…また俺のせいで仲間を死なせてしまうのだけは絶対に回避する)
「必ず…生きて出てきてくださいよ!!」
「…任せろ」
シスキーは少し涙ぐみながらも、振り返り走り出した。きっとカイラスなら無事に安全な場所に逃げるであろうことを信じて。覚悟を決めたシスキーはインザグールを背負っているとは思えない程のスピードで、ストレンを追っていく。
通路を進んでいくと、だんだんと上り坂になっていたことにシスキーは気付いた。恐らくこのまま進んでいけばマグマが辿り着かない安全な場所があり、そこをストレンは目指していたのだ。やがて部屋の入り口へと到達し、シスキーは中に足を踏み入れる。部屋の中にいたのはストレンただ一人。部屋の奥からは外の光が差す出口が見えた。ストレンは何やら誰かと通信機で連絡を取っているようだ。
「…はい。無事終わりまして…。はっ、ありがとうございます。ティガ様にも伝えておきます。失礼致します―――」
通話を切ろうとした時、シスキーの存在に気付いたストレンは振り返る。背負っていたインザグールを下ろし、壁にもたれ掛けさせた後にシスキーが言う。
「俺らの
「ああ、あんなのアンテナぶっ壊しただけだよ。さ、もう帰らせてくれよ…俺は今アラガーサさんに褒められて気分がいいんだ」
「アラガーサ…だと!?」
ストレンの言葉にシスキーが大きく反応を見せた。それに対してストレンが驚きの表情を見せる。シスキーの脳は混乱していたが、すぐに冷静さを取り戻した。それは彼が知った名前であったからだ。小さく、ストレンに問う。
「アラガーサって『アラガーサ・スネイド』のことか?」
「何だ、知ってんのか? お前何者だ?」
「俺はシスキー・スネイド。同じ
ストレンは何も理解できていない様子であったが、彼の手にあるまだ通話の切れていない通信機の向こう側からは、かすかに驚きの声が漏れていた。
蛇人族の生き残りはシスキーだけではなかったのだ。