ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

31 / 57
<<登場人物紹介>>
  ガルーバー・トス
性別:男  年齢:22歳  所属:ラギ帝国
武器:なし  特技:格闘
 ラギ帝国第三英雄兵団の団長。ティガが最も信頼する部下。
 強化腕という改造能力を持ち、圧倒的な威力のパンチを繰り出す。



第三十話 「かくれんぼ」

 

◇◇◇◇◇

 

 これは今から11年前のガンドラ暦12207年の話となる。これはちょうど魔王モルドバルが謎の復活を遂げた年で、魔王の復活により士気が高まった魔連合国がガンドラ大陸への侵攻を本格的に始めた時期でもある。

 

 【火蛇 シスキー・スネイド 7歳】

「おーい、おめーらこっち来てくれ!」

 

 ここは大陸北部ベガキ樹海とコロプス山脈の中間に位置する『蛇人族(スネイド)の村』。今叫んだのは7歳の少年シスキーだ。この村は非常に小さい集落のようなもので、砂漠と森の狭間に存在する。村の住人は全員で40人程度。高齢化が進んでおり、村人の半分以上は30代後半以上の年齢だ。蛇と人間の両方の血を受け継ぐ彼らは、人間にはない特殊な蛇の能力を一つ身につけている。シスキーは生まれた時から口から火を吐くことができる『火炎(フレイム)』という特殊能力を持つ。

 

 蛇人族達はどの国家にも属さずに生きていくことを規則としていた。彼らは蛇としての特殊能力を持っている生まれながらの戦闘民族であり、個々の戦闘能力が非常に高い。そのため独立して村として生き続けていられるのだ。シスキーに呼ばれた二人の少年と一人の少女は彼の元に駆け寄ってくる。

 

 【毒蛇 アラガーサ・スネイド 7歳】

「何だよシスキー。また長老にイタズラでもすんのか?」

 【分蛇 ナコ・スネイド 6歳】

「前のやつで長老めっちゃ怒ってたから、それはダメだよアラガーサ!」

 【刃蛇 クヴォス・スネイド 8歳】

「今度はどんな下らない事を考えたんだ?」

 

 シスキーと彼ら三人しか村には子供は存在しない。なので彼ら四人は毎日ずっと一緒に遊んでいた。アラガーサが持つ蛇の特殊能力は『(ポイズン)』であり、歯から毒を出すことができる。少女ナコの特殊能力は『分裂(ディヴィジョン)』で、自分の身体を自在に小さな蛇に分裂させたり集めて合体する事ができるもの。四人の中で最も年上のクヴォスの特殊能力は身体の好きな部分をいつでも鋼鉄の刃に変化することができる『刃化(エッジ)』。シスキーが言う。

 

「いやー、暇だからベガキ樹海もアリのかくれんぼしてーなって思ってよ!」

「いいね」

「そうと決まればジャンケンしよう」

 

 反応したのはクヴォス。嫌そうにするナコを無視して、四人は鬼を決めるジャンケンを開始する。負けたのはナコ。かくれんぼを始めようとした彼らの所に、村の大人がやってきて言う。

 

「おいお前ら、遊ぶのはいいけど村の近くだけにしとけよ? 樹海の方にはいかないようにな?」

「はーい。ナコ、1分数えてくれよな! はじめっ」

 

 村人に返事をした三人はそう言うと、目を隠して数え始めるナコを置いてバラバラに散って行った。クヴォスは蛇人族の村の方へ、シスキーとアラガーサはベガキ樹海の方へと走り出した。それを見て村の大人が叫ぶ。

 

「…っておい、人の話聞いてんのか!」

「―――57、56、55…」

 

 一人でカウントダウンをするナコ。村人もその様子を見て諦めの表情を見せ、村へと戻って行った。

 

*****

 

 ベガキ樹海へと入ったシスキーとアラガーサ。この二人は同い年ということもありとても仲が良い親友だ。二人共小さな蛇へと変身した状態で、樹海を突き進んでいく。蛇人族は特殊能力の他にいつでも蛇に変身することができる。

 

「ナコが鬼ってことは、隠れんのくそムズイぞ」

「ほんとだな。ここらへんの木登って隠れようぜ、シスキー」

 

 二人は一本の大木によじ登り、葉が生い茂る枝に身を隠した。高さは20メートル程。下からはかなり見つかりにくい場所であるが、こちら側からは下の様子を常に監視することができる。枝に寝転びながら、下の様子を伺う二人の目は何者かの動きを捉えた。

 

「!」

(何かがいる…)

 

 シスキーとアラガーサの両名が気付き、じっと静かに様子を伺う。木の下には一人の大きくて細身の男が立っていた。黒いマントをしており、いかにも怪しい様子だ。その男は右手に魔力を集結させると、目の前の地面へそれを放った。

 

「ひらけ…」

 

 そう呟いたのと同時に地面に円形の魔法陣が出現する。青い光を放つその魔法陣は、移動魔法でできたものであった。その青い光が突然強く光ると、そこから2メートル程の大きな身長を持つ男が現れる。

 

「よし、ご苦労だったな。ヴィルヴァンダ…」

「お疲れ様です、ドスネイゴス様」

「兵は現場についたら召喚するぞ。よし、行くか」

 

 ドスネイゴスと呼ばれた男がヴィルヴァンダという男を連れて歩いて行った。明らかに異常な雰囲気を漂わせたこの二人の様子と言動は、この時シスキーの頭にしっかりと焼き付いていた。アラガーサと目を合わせると、二人共同時に首を傾げた。

 

「…なんか今のやつら、怪しくねーか?」

「ついて行ってもいいけどここ動いたら、ナコに見つかる危険高まるしな…」

 

 アラガーサがそう言うと、シスキーも同意した。結局二人はここに留まる事を決めたのである。

 

*****

 

 一方、蛇人族の村入り口付近のナコ。60秒のカウントを終え、辺りをキョロキョロと見渡している。先程村人が言っていたことを考慮すると三人の内誰かは樹海の方で隠れている、ということはナコもわかっていた。さらに足音から考えると村の中にも誰か隠れているだろう。

 

「よし、いくよー! 分裂!」

 

 ナコはそう言うと全身に力を込める。すると身体に縦に一本の線が入り、そこで分離する。半分ずつになった身体は、それぞれが小さな蛇へと変身する。さらにその二匹の蛇がそれぞれもう一度分裂を行う。結果的にナコは身体を四つの蛇に変身させることに成功した。ナコは分裂しても、どれか一体を本体としておかなければならない。その本体が司令塔となって他の分裂体を動かすのだ。四匹の蛇はそれぞれ全くの別の場所の捜索を開始した。

 

「あたしが鬼になったらかくれんぼはすぐ終わるよ~」

 

 二匹の分裂体は村の中を素早く探し回る。民家の中や物置の中、家の裏など様々な場所を巡っていく。村のはずれの方にある誰も使っていない巨大な空き家へと入っていく。

 

「絶対ここに一人は隠れてるはず…!」

 

 ナコの確信は正しく、入ってすぐに隠れていたクヴォスを見つけることに成功。

 

「お前ほんとかくれんぼ得意だな。シスキーとアラガーサはベガキ樹海の方に行ったはずだぜ」

「わかった、じゃあ他の三つのあたしで探してみる!」

 

 そう言うとクヴォスを見つけたナコの分裂体はクヴォスの横で休憩をする。これが本体である。本体以外の分裂体がもし仮にダメージを受けても、本体へのダメージさえ無ければ無傷で合体できる。だが本体ではない分裂体の運動能力は非常に低く、ナコの能力では戦う事などできない。その時、この家の外である村の中央付近の方から大きな爆音が響いた。

 

 

「何だ!?」

「え、爆発?」

 

 二人が空き家の扉を開けると、まず目に入ったのは燃え上がる民家。聞こえたのは村人達の悲鳴、そして銃声と叫び声。何が起きているのはクヴォスとナコには理解などできるはずもなかった。この蛇人族の村は平和な村で、誰かに襲撃されたことなど一度もなかったのだ。幸いにもここは村の外れであり、敵の姿は辺りにはない。だが、かなり遠くの方では魔連合国と思われる服を着た兵士が村人を銃撃するのが見えた。するとすぐにナコを抱えてクヴォスが扉を閉める。

 

「魔連合国の襲撃だ…!! たぶんここまで敵が来るのは時間がかかるはず。ここに身を隠しておこう」

「え…じゃあとりあえず分裂体でシスキーとアラガーサに伝えとく!」

「ああ。そうしてくれ! そして遠回りをしてこの空き家に来るように伝えてくれ」

 

 クヴォスには自分がどうすべきなのか判断できる余裕などなかった。無論彼らが魔戦士に立ち向かっても敵うはずなどない。とりあえずはシスキー達と合流するのが先だと考えたのである。

 

*****

 

 一方、ベガキ樹海で隠れているシスキーとアラガーサ。彼らの耳にも爆音が届いており、それがただならぬ事件が起きていることを予感させていた。

 

「村の方から音したよな?」

「ああ。とりあえず村に戻ろう!」

 

 そう意見が一致したとこで、二人は枝から飛び降りて地面に着地した。20メートルの高さから飛び降りた衝撃はかなりのものであったが、今はそれを気にする暇などなかった。走り出そうとした二人の前に一匹のナコの分裂体が現れた。

 

「シスキー、アラガーサ! 大変なの! もうかくれんぼ終わりだから話聞いて! 村が魔連合国に襲われてて…」

「魔連合国か! 今行くから待ってろ」

「今クヴォスと村の外れの空き家にいるから、村をぐるって遠回りして来てほしいの」

「わかった」

 

 それを聞くとシスキーとアラガーサは蛇へと姿を変え、猛スピードで村の方へと進み始めた。ナコの分裂体は液体化し、一目散にナコ本体の元へと戻っていく。村の初めてのピンチに、彼らは焦っていた。だが戦闘民族である蛇人族の大人たちは、そう簡単にやられるような実力ではないことをシスキー達は知っていた。

 

 やがて大きく遠回りして蛇人族の村の反対側の入り口から村に入る。するとほとんど村は壊され、焼かれている状況であった。近くに一人の村人が血だらけで倒れており、そこに駆け寄るシスキー。

 

大丈夫(だいじょーぶ)ですか? 一体、何が…」

「魔界五天王がいた…! ヴィルヴァンダってやつだ。それともう一人恐ろしく強いドスネイゴスって男。この二人によって長老含めてほとんどが殺されてる…お前らは逃げろ!」

 

 そう言うと血を吐き出す村人。シスキーとアラガーサは急いで空き家へと向かおうと走り出す。だが空き家があると思われる場所には炎が燃え盛っていた。

 

「…まじかよ…!! 一体俺らが何をしたってんだよ」

 

 目を大きく見開いたアラガーサ。ついさっきまでの平和な村の姿はどこにもなかった。シスキーは絶望したまま動けなくなっていた。すると二人の後ろから声が聞こえる。

 

「シスキー、アラガーサ!」

「?」

 

 振り向くと、そこにいたのは軽傷を負ったクヴォスとナコ。シスキー達は急いで彼ら二人に駆け寄る。ナコの目には涙も見える。ついに合流した四人。するとクヴォスが言う。

 

「いいか? 俺ら二人ずつに分かれて逃げるしかない! 村のみんなは殺されてる…戦っても勝てる相手じゃねえ!」

「え、けど四人全員で逃げたいよ…」

「ナコ! 全員一緒だと恐らくすぐ見つかって殺されちまう。そのリスクを避けるんだ!」

 

 ナコを強引に納得させ、決意をした四人。すると彼らの背後に一人の男が立ち塞がる。巨大な鎌を持ち黒いマントを着用、黒いフードを頭にかぶったその男が口を開く。

 

 【魔界アステンダーツ国国王・魔界五天王『V』 ヴィルヴァンダ】

「まだガキが残ってたのか…お前らで終わりだな」

 

 その男、ヴィルヴァンダの後ろからドスネイゴスがこちらに向かってきているのが見えた。ヴィルヴァンダの鎌から滴り落ちる血を見て、彼らは覚悟を決めた。クヴォスが叫ぶ。

 

「シスキー、アラガーサ、ナコ、逃げるぞ!!」

「死ぬなよ!」

 

 四人全員は小さな蛇へ変身し、ヴィルヴァンダが驚きの表情を見せているうちにシスキーとアラガーサは左方向へ、クヴォスとナコは右方向へ村を出て突き進み始めた。彼らはこの時逃げることしか考えていなかった。一目散に、とにかく蛇人族の村から離れるために猛スピードで進んでいった。

 

「逃がすかアァァ!!!!」

 

 ヴィルヴァンダの声が響き渡った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。