ヴィルヴァンダ
性別:男 年齢:29歳 所属:魔連合国
武器:大鎌 特技:鎌技・魔法
魔界五天王の一人で、魔界アステンダーツ国国王。残虐性が高い。
蛇人族の村を滅ぼした張本人で、シスキーの復讐の対象となる。
―――丸一日逃げ続けたシスキーとアラガーサは、コロプス山脈南西に位置する銅爽城の近くの砂漠にいた。何度も転び、荒れた道を通ってきたことで体の至る所から血が流れ出てきていた。
「ハァ…ハァ…」
息を切らしながら二人はその場に座り込む。もう村は見えない。だがあの惨劇の様子を、あの爆音を、悲鳴を忘れることなどできなかった。シスキーの目から自然と涙が流れ落ちる。逃げた方向で考慮するとクヴォスとナコは恐らくヴィルヴァンダ達に見つかっているだろう。
「クヴォスとナコのおかげで…俺達は生き延びたんだ…」
アラガーサは声を震わせながらそう言った。シスキーもそれは思っていた事であった。一族を、友を殺された悲しみ。それに対して何もできない自分への悔しさを味わっていた。人間という生き物には不思議な事に順番を守るルールがある。シスキーとアラガーサが次に味わった感情は村を滅ぼした者達への怒り。復讐心だ。
「覚えてるぞ…!! ヴィルヴァンダとドスネイゴス。こいつらの名前はぜってー忘れねー」
「…ああ。忘れたくても忘れられねえよ」
そう言いながら二人はただ涙を流した。蛇人族である彼らの体表は蛇の鱗の性質を受け継いでおり、砂漠の炎天下であっても動じない頑丈さを持っていた。クヴォスとナコの二人に助けられたといってもいい自分達の命をどう扱う事が重要なのか、彼らは考えていた。そしてシスキーとアラガーサにはそれぞれ別の意志が生まれる。
「なぁシスキー。お前はこれからどうするつもりだ?」
「もう俺らには戻る場所がねー。大陸でどの国家にも属さずに一人でやっていくのは厳しい。俺はライトレイ王国にいって軍に入ろうかと思ってる」
彼ら二人にはもう戻る故郷がない。前に進むしかないのだ。シスキーが選択したのはライトレイ王国へ行くこと。それに対してアラガーサは、
「…そうか。俺はラギ帝国の軍に入るつもりだ。ここでお前と喧嘩するつもりはねえよ? ただ直感でそう思っただけなんだ」
「わかった!」
ラギ帝国に行く事を決断した。この時二人は特に揉めることもなく、すんなりとお互いの進路を認め合った。たった一日で色々な事が起きたが、彼らの思考は意外にも冷静であった。シスキーはライトレイ王国へ。アラガーサはラギ帝国へ。二人は立ち上がり、握手を交わす。
「もし軍に入ったら、次会った時はお互い敵
「そうなるな。じゃあ俺行くよ。頑張ろうぜ、シスキー!」
「おう!」
そう言うとアラガーサは砂漠の彼方へと姿を消していった。シスキーは魔法研究所跡地(地図参照)へ向かうとそこから城壁を乗り越えてライトレイ王国へ入国。やがて都市カボルへと辿り着くのである。
◇◇◇◇◇
「俺にはよくわかんねえな」
ストレンはシスキーにそう言った。色々と思い出したシスキーにはある思いが高まってきていた。ふぅと深呼吸をした彼はストレンに問う。
「あいつは今おめーの
「アラガーサさんはラギ軍の四大将軍の一人だ!」
「そーか…アラガーサはもうそんな上まで登りつめてやがんのか」
シスキーを支配した感情。それは負けず嫌いな心。アラガーサと同時に新たな出発をした彼であったが、今ではアラガーサの方が先を行っているようだ。シスキーももっと強くならなければならない。
「ゆっくりなんかしてらんねー。
そう言うとシスキーは口に炎をためこんだ。それを見てストレンも身構える。右手に鉄製の扇を持つと、改造された左手の手銃の銃口をシスキーに向ける。走り出したシスキーに向けて弾丸を放つ。
「オラオラァ!」
弾丸を身体をそらしてかわすと、口から炎を吐き出す。
「激しい炎!!!!」
「!?」
放たれた火炎は範囲が広く、避ける事は困難。ストレンに直撃するが、改造人間。その頑丈さで表面が焦げた程度の傷しかつかない。煙の中でシスキーに向かって踏み込みながら、
「麻痺一閃!!」
改造された電気を纏った扇でシスキーの腹部を真横に斬りつけた。傷は深い。全身を流れる電撃が一瞬の間シスキーの動きを止めた。その隙に左手の手銃を数発発砲する。
「ぐああっ」
肩や胸などに弾丸を受け、血を流しながら後退するシスキー。笑いながらストレンは言う。
「フフフ…まず俺を倒すだ? やれるもんならやってみやがれ!」
「しょうがねー。奥の手使ってやるよ」
シスキーはそう言うと全身に力を込める。彼はこれまでも蛇に変身することが可能ではあったが、蛇人族の真骨頂はその先にある。蛇に変身するその途中で変化を止める、という高度な技術を手に入れることができればまさに二足歩行の蛇人間になることが可能。だがその調整は並大抵の鍛練では使いこなすことなどできない。
「
「!?」
シスキーはこの数か月間でこれを完全に修得していた。二足歩行で蛇の長い尻尾を持ち、背中を中心に全身を蛇の鱗で覆った蛇人間へ変身したのだ。蛇人間の大きな強みはその鱗による防御力の大幅な上昇であろう。さらに長い尻尾を扱えるため、戦術の幅が広がるのも事実だ。だが欠点として、蛇人間でいるにはかなりの体力を消耗するということが挙げられる。
そしてストレンに向かって真っすぐに走り出すシスキー。それと同時に大きく息を吸い込んでいく。肺に大量の空気を吸い込んでおくことで、次に出すブレス攻撃の威力を増大させるというこれも高度な技術となる。向かってくる、異形となったシスキーに恐怖を感じたストレンは手銃を何度も放つ。
「オラオラ!」
だが、それは
「ぐっ…痛ってーな!」
扇を身体から引き抜くと、後ろに投げ捨てる。鱗を纏ったシスキーの拳はまるでグローブをはめたかのような硬度を誇る。尻尾で地面を叩き加速したシスキーは、右腕を素早くストレンの腹部に放つ。
「おぐっ?!」
ストレンの腹部分の鋼鉄が破壊された音が鳴る。続けて左の拳でこめかみを殴りつける。金属の破片のようなものが飛び散る中で、ストレンは大きく横に吹っ飛ばされた。破れた皮膚からはストレンの体内の鉄が見え隠れする。大量の吐血をしながらはっきりと合わない焦点でシスキーを見つめたストレン。
「アラガーサさんは…お前なんかじゃ会う事もできねえよ」
「激しい炎!!!!!」
シスキーの口から放たれた強力な火炎はストレンを巻き込み、空気圧で吹き飛ばした。先程大きく息を吸ったことによりまるで空気砲のような威力もブレスに加わり、容易にストレンを燃やし尽くす。燃え上がりながらも悲鳴を上げ続けるストレンを横目に、元の姿へと戻ったシスキーは寝かせていたインザグールを背負う。
「アラガーサのせいで気持ちが高まってきちまったぜ」
再び復讐への気持ちが高まったシスキーは、明らかに以前よりも強くなっていた。部屋を抜けるとそこはコロプス山脈南口の上であった。下を見下ろすと、南口にはアキラ達の姿が見えた。急いで山の表面を下ろうと歩き出したが、ガクンと膝が曲がり跪く。
(思ってるよりも受けたダメージでけーな…)
シスキーが負ったダメージや疲労は相当なものであった。深呼吸をしてなんとか立ち上がると、滑るように山の表面を下って南口へと降り立った。
「おお、シスキーとインザグール! これでほとんど集まったな」
そこにいたのはアキラ、ジン、グリット、ザン、ライド、アリッサ、タイガー、ユースの8人。全員がなんとかマグマから逃げ切って脱出することに成功していたのだ。残るのは特攻部隊M隊長カイラスのみ。
「隊長…無事に帰ってくりゃいいけど」
特攻部隊L隊長グリットの通信機は圏外から電波圏内へ戻っていた。そこには無軍が撤退していったという内容のメールが司令部から届いていた。つまり任務完了である。するとその時、コロプス山脈南口の中からカイラスがふらふらとしながら現れた。
「カイラス! よかった!」
マントの下半分は溶け、両足を大やけどしているカイラスであったが顔は笑っていた。その理由は誰一人仲間が欠けることなく集まっていたからだ。カイラスはマグマを極力かわしながらなんとかコロプス山脈を脱出してきていた。
「…任務、完了だろ? みんなよく頑張った」
そう言って倒れそうになったカイラスを抱え込んだグリット。コロプス山脈内部に多少マグマを流してしまったが、無軍のティガ達の完全に思い通りにはさせなかった特攻部隊MとLには大きな戦果があったといえる。