▽主な序列関係
皇帝(+側近1人) → 四大将軍 → 英雄兵団(四つ)
▽皇帝と側近、四代将軍と率いる英雄兵団の団長
皇帝: デアディン・デリーグ :皇帝側近 ヤーバル・ルギイ
第一将軍: パリスガルト・ブリークス :第一英雄兵団団長 セカンダ・ドスタイル
第二将軍: ライジン・アブソリューク :第二英雄兵団団長 ハルルド・バーン
第三将軍: ティガ・バーン :第三英雄兵団団長 ガルーバー・トス
第四将軍: アラガーサ・スネイド :第四英雄兵団団長 ラインズ・エドモント
――翌日。金奏城の特攻部隊Mの部屋。
「いやぁ、昨日はみんなお疲れ様! よくやったよ!」
そう言っているのはユース。ユースは先日の任務で全くと言っていいほど結果を残すことができなかった。四大将軍の一人ティガ率いる無軍とほぼ全員が戦っていたが、彼と特攻部隊M隊員タイガーは戦わずに任務を終えたのだ。他の隊員達は今、任務で負った傷を癒すために静かに部屋で休んでいた。ザンが口を開く。
「ユース…なんつーか、その…どんまい」
「!?」
その言葉を聞いて静かに床に倒れこんだユース。それを見て大笑いするシスキーは身体に包帯を巻いている。彼の隣でライドは静かに長剣を研磨していた。アキラはぼーっとテレビを見続けている。さらにザンが言う。
「アキラ、ライド、シスキー。逆に言えば目立った戦果を残したのはお前ら三人だけだぜ? どうだったよ?」
「俺は…正直自分の力を過信してたってことを思い知らされた任務だった。もっと、強くならなきゃいけねえ」
ライドはそう言うと立ち上がった。アキラとシスキーもそっと頷いており、彼と同意見のようである。アキラが言う。
「ただ今回の任務は良い経験になりましたよ。強敵と戦ったことで、俺らは成長できたはず…!!」
「そーだな! とにかく
シスキーがそう言った時、部屋の扉がゆっくりと開いた。そこには両足を大ヤケドしたために車椅子に乗っているカイラスの姿があった。アキラ達でさえその姿を見るのは初めてであった。昨日の任務完了後、城に帰還し全員が治療を受けていた。それから治療が終わった者が次第に部屋へ戻って来ていたのだが、カイラスは現在まで帰って来ていなかったのだ。ユースが起き上がって言う。
「隊長…足は、無事ですか?」
「…問題無い。数日間歩くな、と言われただけだ。すぐに完治するだろう」
「よかったぁ」
車椅子の車輪を両手で回しながら部屋に入ったカイラスは、中央のテーブルのところへ行く。これで特攻部隊Mの6人が揃った。あくびをしながら長剣を鞘に納め、腰に装着したライドが扉に向かって歩き出そうとした時、カイラスが言う。
「…っと、忘れていた。失礼。非常に失礼。明後日に行われる『光軍決闘大会』のエントリー受付が明日の昼までだ。お前ら出るなら忘れるなよ?」
「決闘大会?」
思わずとぼけた声を出したアキラは顔を赤くする。カイラスがユースに教えるように顔で合図を出すと、喋り出す。
「そっか、お前ら初めてか。光軍決闘大会ってのは2年おきに開催される、特攻部隊の中だけの決闘大会。参加できんのは三流部隊(H~N)と二流部隊(O~U)の14部隊の隊員で、一人一回だけ参加できる他部隊の誰かを指名して決闘することができる。その決闘の様子は実況も入って、全員が見ることができるから良い結果を残せば昇隊のチャンスにもなるってこと! んで、その対戦相手を指名するエントリーが明日の昼までだってさ」
「なるほど…」
「ちなみに誰かに指名された場合、たとえ自分が誰かを指名していてもそれはなくなって、指名された人と決闘になる。もし複数の人に指名されていた場合はランダムに一人に選ばれてその人と決闘! その組み合わせを作るために時間が必要なんだ」
要するに昇隊のチャンス。格上となる二流部隊の隊員を指名して見事勝利すれば得られる信頼はかなりのものとなる。だが格下の部隊の隊員に指名される可能性も無いわけではない。成長したアキラ達の実力を披露するための絶好の機会なのである。
「けど誰を
「俺ら二流部隊の人とか知り合いいないしな」
そう悩むシスキーとアキラを後目に、スタスタと歩き出すライド。
「ライド、どこ行くんだよ?」
「―――修行、と二流部隊の調査してくる」
(アキラとシスキーに負けてられない。俺はまだまだ弱い…)
ライドはそう言って部屋を出て行った。シスキーとアキラも部屋の外に出る準備をする。顔を洗い始めたアキラに対し、もう準備を終えて扉の前に立つシスキー。
「んじゃ、アキラお先に俺も誰と戦うか決めてくるぜー!」
「あ、待て」
アキラが顔を拭いた時にはもうシスキーの姿は無かった。ため息をついて歩き出すアキラに、カイラスが言う。
「…俺とザンとユースは出ないつもりだが、これだけは言わせろ。お前らは強い、だが上の部隊のやつも相当強いぞ。決して無理して上の部隊のやつを指名する必要はないからな?」
「了解です」
そうは言ったものの、アキラは二流部隊の中でも上位を指名するつもりであった。彼にもライドやシスキーと同じように、三人の中で負けたくないという強い意志があるからだ。アキラは部屋を出てみたが、どこに行けばいいか考えがなかった。二流部隊の隊員も来る場所といえば、食堂や練習部屋。そこを目指そうと歩き始めたアキラを、誰かが呼び止めた。
「おい、アキラ」
振り返ると、そこにいたのは特攻部隊L隊員タイガーであった。城に戻る時に会話はしたがあまり話したことはなかった人物。するとタイガーが続ける。
「いきなりわりぃな! 一つ、お前に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと?」
「ああ、アキラの父親ってジオレク・ロドルフさんだよな?」
「え、うん。そうだよ」
「俺の父親はパンサー・ラキジークっていって、11年前に特攻部隊Zの隊長をしてたんだけどジオレクさんと一緒に特別な任務をしてたらしいんだ。それで一緒に『神隠し』にあって姿を消した…! 俺は父親パンサーの神隠しの謎を解き明かすために特攻部隊に入った! アキラもそうだろ?」
「うん、それも理由の一つだよ」
アキラの返答を聞くと、再びタイガーが続ける。
「ここまで神隠しを調査してきて、わかった事がほんの少しあるんだ。そこでアキラには俺とこれから協力して神隠しの謎を解き明かして欲しい! 一人ずつよりも二人でやった方が情報も共有できて真実に近づける気がするしよ。どうだ?」
「いいよ。けど俺はまだなんも情報を持ってない…」
「んー、アキラの兄さんから情報聞いてみてくれないか?」
「たしかに兄さんなら何か知ってるはずだ。じゃあ、聞いてきてタイガーに教えるよ!」
「決まりだな! アキラの兄さんからの情報と、俺が調査した情報を共有しようじゃねえか。じゃあまず先に俺が知ってる事を全部教えるぜ?」
ここまでタイガーの言葉に押され続けてきたアキラであったが、彼の言葉には真っ直ぐな信念を感じていた。父パンサーの失踪の謎を解き明かしたい、という強い意志を感じられたのだ。そして父親が神隠しにあう、という同じ境遇の持ち主であったがためにすぐに意気投合していた。タイガーが口を開く。
「まず神隠し、少なくとも『100年以上前』からこの大陸に伝わる伝説。なんの前触れもなく人間が消息不明になること。そして神隠しの現場を見た人はいない。これまでライトレイ王国では『57人』の被害者が出ており、見つかった者もいない。いずれも任務中の神隠しがほとんどで、上位部隊に属す者の割合が非常に多い。近年では被害が少なくなってきている。ジオレクさんと父パンサーの神隠しの時は、同時に彼らを含めて三人が消えている。その人の名はベルグ・エンバルト、総司令官の息子だ。これが俺がわかっている事全てだ!」
「……わかった。ありがとう」
ジオレクとパンサーとベルグの三人が特別な任務を行っていた事にアキラは驚いたが、全てを受け入れた。神隠し、存在が消滅するなんてことはあり得ない。何か消えた理由があるはずなのだ。
「必ず、神隠しの謎を解き明かそう」
「おう! 情報待ってるぜ」
タイガーはそう言い残すと走り去って行った。ジオレクは伝説と言われるほどの実力を持った特攻司令官であった。そう簡単に消えるはずなどないのである。アキラは深く考える前に今やるべきことを思い出し、食堂の方へ歩き出す。
(まずは上の部隊の人を見つけなきゃ。俺が勝てそうな相手で、誰かに指名もされなさそうな人…そんな人いるのか? とにかく結果を残すしかない)
もし自分が指名したとしても、他の誰かも同じ人を指名していた場合、そこはランダム抽選が行われ落選する可能性も十分にある。そうなると今回の決闘大会で結果を残すことはできない。もちろんライドもシスキーもアキラもそんな事はせず、指名されなさそうな人を指名するはずだ。アキラは思考を巡らせながら歩き続けた。