アリッサ
性別:女 年齢:21歳 所属:ライトレイ王国
武器:杖 特技:灼熱魔法(ギラ系統)
特攻部隊L隊員。3年前に特攻部隊に入隊。
任務を共にしてから、ライドの事が気になっている様子。
「お、ライド! おつかれさん」
「どうも」
特攻部隊Mの部屋へと戻ってきたライドを迎え入れるザン。カイラスとユースも笑顔で彼の勝利を称えていた。相手は格下の特攻部隊Kの隊長のゼロであったものの、これまでの試合の中で最も盛り上がりを見せた戦いであった。カイラスはライドの表情を見て、心情を察して言う。
「…ライド、安心しろ。お前にとって不満な点はあるだろうが、存分に実力を発揮できていた。最高の評価を受けているはずだ」
「ありがと…けどもう落ち込んではねえから大丈夫だ。色々と課題が見つかっちまったことを前向きに受け入れるよ」
カイラスは、明らかにライドが1年前よりも精神面でも成長していると確信した。なんだかんだアキラとライドとシスキーの三人組を一年間傍で見てきたカイラスであったが、感心していたのは事実である。その時、ユースがテレビを指差して叫ぶ。
「始まるみてえだぞ! アキラの試合!」
画面には『第七回戦』との文字。映し出されるのは金奏城地下五階のルームA。カメラが数台設置されているようで、細かくカットが切り替えられている。これによって常に様々な角度から観戦することが可能なのだ。
「こんなにちゃんと観られてたのか…恥ずかしいな」
肩を落とすライド。そしてテレビ越しに実況のパラオの声が響く。
『続いて光軍決闘大会第七回戦! まずは1年前に特攻部隊に入隊し、瞬く間に特攻部隊Mへと昇隊した、《瞬足》の異名を持つルーキー! 特攻部隊M隊員アキラ・ロドルフ!!!!』
その声と同時にルームに転送されたアキラ。アキラ本人も、観戦しているライド達も彼の対戦相手が誰かはわからない。アキラは腰に装備された太刀の持ち手を右手で持ちながら、相手の登場を待っている様子だ。するとパラオが続ける。
『彼が指名したのは、3年前の入隊試験に合格し、様々な問題を起こし一時除隊処分を受けた問題児! 現在は特攻部隊Qの隊長を務める《盗賊》ブラク・スファン!!!!」
現れたのは頭に黒いターバンのようなものを巻いた、青年ブラク。顎髭を生やしており、腰回りには無数の短剣が装備されている。これをテレビで見ていたライドが驚きの声を上げる。
「ブラク!! 俺が指名したやつを、アキラも指名してたのか…」
「おいおい、ブラクっていえば仲間も巻き込んじまうような攻撃を躊躇なくやり続け、一度謹慎処分を受けてるやつだぞ。司令部にも逆らったりするし、一筋縄ではいかない相手だ」
「ああ、かなり強いって評判になってるよな」
ユースの解説にザンも同調する。黙ってテレビを観続けるカイラス。そしてライドも自分に落ち着くように促していく。
(アキラなら大丈夫だ。やっちまえ)
*****
「俺様を指名するなんざ、生意気なガキだな~! ナメられたもんだぜ…ったく」
そう言いながら両手に一本ずつ短剣を持つブラク。その瞬間に彼の眼が変わったのも、アキラはすぐに気づいていた。これが格上の気迫。だが負けるつもりなどない。アキラも太刀を構える。
「ブラクさんには悪いけど、俺が勝ちますんで」
『試合開始!!』
そのパラオの声と共に、走り出したブラク。持っている短剣をクルクルと回しながらアキラを睨みつけている。しかしそれを待っていたかのようにアキラは身体を少し屈め、素早く走り出す。
「疾風払い!!」
「ッ?!」
ズバッっと斬撃音が鳴ると、ブラクの右脚から血が噴き出す。アキラはもう既に彼の背後で足を止めていた。素早く振り返り、距離をとるブラク。
(なんだ今の動き、ギリギリ目で追えたが身体が反応して避ける余裕がねえ!)
「へっ…ひさびさに強いヤツと戦う気がするぜ」
太刀についた血を振り払い、ブラクを睨むアキラ。
(今の攻撃、わずかに避けられて少し掠っただけだ…。恐らく次やっても避けられるなこりゃ)
「初見で今の速度に反応してきたブラクさんも、やっぱ違うよ」
アキラの考えは正しかった。この刹那の瞬間だけでブラクは、先程の攻撃が再度来た場合の対処法を考え付いていた。アキラのスピードは確かに超人的なものであるが、ある程度の実力者ならば一度見てしまえばその速度に慣れるのも容易いだろう。アキラの動きから事前に予測することで、攻撃を避ける事が可能になってしまう。アキラも彼自身のスピードに脳がついていっているわけでもなく、動き出した時には攻撃の構えをしている事が多い。
「まぁ俺様も『盗賊』って異名で呼ばれてるぐらいには、素早さには自信があってよ。どっちかっていうと足の素早さよりも、手先の素早さを得意としてるんだが―――」
ブラクはそう言いながら両足に力を込め、両手の短剣を強く握る。その様子を見てアキラも身構える。
「―――お前の足の素早さと、俺様の手の素早さ。いっちょスピード勝負でもしようじゃねえか!!」
「来い!」
そう構えたアキラの前に、瞬く間に移動してきたブラク。振り下ろされた右手の短剣をなんとか太刀で受け止めたアキラであったが、すぐに追い詰められた事に気が付いた。ブラクは魔力を纏った左手の短剣を素早く振り払う。
「真空斬り!!」
「ぐっ」
腹部を斬りつけると同時に、風魔法を生み出しアキラを吹き飛ばす。数メートル転がったアキラはすぐに体勢を立て直し、太刀を構える。するとブラクは腰に装備していた短剣をいくつも両手の指と指の間に挟み込む。両手に四本ずつの合計八本の短剣を持ったブラクは、詠唱を開始する。
それを見て彼に向かって真っすぐ走り出すアキラ。対するブラクは左手に挟んだ一本の短剣をアキラに向かって投げる。それを咄嗟に横に避けようとした時、
「バギマ!」
「!?」
放たれた短剣が風魔法に包み込まれ、小さな竜巻を生み出しアキラを襲う。魔法によるダメージと共に、浮遊する短剣がアキラを斬りつける。さらにブラクが続ける。
「いけいけいけいけえ! バギマバギマバギマバギマバギマ!!!!」
八本の全ての短剣を素早い手首のスナップでアキラに投げるのと同時に、そこに纏わせた魔力から風魔法を唱えていく。この連続魔法は途中から無詠唱であったために威力はそこまでないものの、その数によってアキラを圧倒していた。
「ぐあああああ」
竜巻に包み込まれ、短剣で幾度も斬りつけられたアキラ。風が止み、その場に跪く。ポタポタと血が滴り地面に広がる。息を切らしながらも、なんとか立ち上がったアキラの眼はまだ死んでなどいなかった。無言で両足に力を込め、太刀を横に構える。その様子を見たブラクも、腰に装備された最後の一本となる短剣を抜くと身構える。
「疾風―――」
気を抜いたほんの一瞬の隙にアキラはブラクの足元にいた。先程と同じ攻撃かと思い軽くジャンプしたブラクを、
「―――半月斬り!!」
「?!」
アキラの太刀が下から上へ、180度斬り上げた。ブラクは空中にいたために軽く後方に飛んで倒れる。脚から肩まで一直線に血が噴き出していた。だがアキラも全身から出血をしており、早く決着をつけなければ分が悪くなる一方だ。
『これで両者同じくらい…いや、アキラの方がダメージが大きいかな』
『だが恐らく決着はそう遠くないだろう!!』
パラオとグラナドウの実況が響く。アキラは太刀を強く握り直し、立ち上がるブラクを見つめている。二人共息を切らし、語る言葉も出ない様子。まだ試合が始まって数分であるが、決着は近い。まず動いたのはアキラ。ブラクへ向かって走り出す。しかしブラクの左手には魔力が集結していた。アキラがそれに気づいた時にはもう遅い。
「バギクロス!!!!」
放たれた魔力は、向かってくるアキラを包み込むように強力な竜巻を生み出した。しかしブラクはすぐに異常に感づいた。風が止んだそこには、平然とアキラが立っていたのだ。
「…アストロン」
彼の目の前にあったのは防御魔法による二メートル程の正方形の薄い透明な壁。これによって今の風魔法を回避していたアキラは、壁を避けると素早く走り出した。アストロンは唱えられた空間に固定される。つまりはアストロン自体が動くことは無いといえる。そして唱えた時に使用した魔力量などに応じて自然消滅するのだ。
「疾風突き!」
素早く突き出された太刀を、ブラクはしゃがみこんで避ける。そして右手で持った短剣に魔力を纏わせ、アキラの腹部を斬りつけようとした時にアキラの左の掌がブラクの眼前にあった。
「デイン」
「ぐおわっ!?」
掌で放たれた光魔法の眩い光によって、一時的にブラクの視力は失われ、短剣が地面に落下する。さらにそれと同時にアキラは地面を思い切り蹴って、高く空中へ跳躍した。その超人的なジャンプ力で、観客は多いに盛り上がる。そして地上10メートル程の高さまで到達した時にアキラは、防御魔法を唱えた。
「アストロン」
この防御魔法は地面と平行に、落下を開始しようとするアキラの手がギリギリ届く空中に唱えられた。アストロンは空間に固定される。召喚した薄い防御壁の淵を、太刀を持たぬ左手のみで掴み、そのまま宙に浮いた状態になるアキラ。右手の太刀は上に振り上げ、構える。
「…?」
視力を失ってまだ二秒程度しか経過していないが、なんとか見えるようになったブラクは辺りを見渡すがアキラの姿は無い。アキラは左手で防御壁の淵を掴みつつ、両足を小さく折り畳んで防御壁の表面に接地させる。同時に太刀が纏ったのは光魔法。そしてまるで水泳の蹴伸びのように、彼は防御壁を両足で同時に蹴りつけ、高速で頭から地面へと降下し、
「!!?」
「明流・降下神聖!!!!」
見上げたブラクの首筋から胸まで斜めに、重力と速度も相まった光属性を纏った強力な一撃で斬りつけた。
『決まったァー! 光軍決闘大会第七回戦、アキラVSブラクの戦いを制したのはアキラ・ロドルフ!!!』