ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  『盗賊』ブラク・スファン
性別:男  年齢:21歳  所属:ライトレイ王国
武器:短剣  特技:連撃・風魔法(バギ系統)
 特攻部隊Q隊長。カイラス等と同じく3年前(12215年)に特攻部隊に入隊。一人称は俺様。
 一時はカイラスと共に特攻部隊Rで泥の中の二強と呼ばれていたが、
 幾度に及ぶ違反行為・司令部への反抗を繰り返し一時謹慎処分を受けた問題児。


第三十六話 「バケモノ」

 

 

 青い移動魔法の光に包み込まれ、ルームから追放されたアキラとブラク。ほんの数分の激闘を制したのはアキラであった。

 

(今できる最高の攻撃をできた…けど)

 

 アキラはそう不満を覚えながら地下五階のエレベーターへ向かう。観客達は通過するアキラに見とれていた。1年前に入隊したルーキー達の中でもトップクラスを走るアキラとライドとシスキーの三人の注目度は高いのだ。エレベーターの前につくと同時に逆側の通路から対戦相手であったブラクが現れる。

 

「よう、やるじゃねぇか」

「ブラクさん、俺の最後の一撃に反応できてましたよね? ダメージ量が一定以上になったから試合終了になったけど、本番ならまだ生きてたブラクさんがあの後出血で動けなくなった俺にトドメさして敗けでした」

「……」

 

 ブラクはアキラに返す言葉がなかなか見つからなかった。じっとアキラの表情を見つめると、彼らしくない様子で静かに口を開いた。

 

「確かにその通りだ。けど何事もポジティブに受け取れよ、お前は俺様に試合で勝った。まずは素直に喜べや。それにお前がそう思うんだったら、もっと鍛えろ。恐らくこれからお前は昇隊するだろうが、今のまんまだと二流部隊の任務をこなすのは厳しいと思うぞ、正直な話な」

「…はい」

「さっきの俺様との試合で出た反省点を活かしてもっとお前は成長できるはずだ。若いんだ。伸びしろは無限大。しっかりと自分の長所を見極めて、そこを重点的に伸ばせ。二流部隊以上のやつらはどいつもこいつも曲者ばっかだ。そいつらからどんどん知識や考え方を吸収することも大事だな」

 

 エレベーターが到着し扉が開く。そこにアキラは乗り込んだが、ブラクはエレベーターの外に立ったままだ。

 

「ああ、俺様はここで試合観戦してくから乗んねえよ。がんばれよ」

「ありがとうございます。ブラクさんと戦えてよかったです」

 

 アキラにそう言われ照れた表情を見せたブラク。と同時に扉が閉まる。特攻部隊Q隊長ブラクに勝てたものの、今の自分に足りないものに気付かされた。そして今更ながら試合に勝った喜びが湧き上がってくる。特攻部隊に入隊(12217年)してから一年以上経っているが、その大半の時間を過ごした特攻部隊Mを恐らく数日後には昇隊によって離れる事になるだろう。

 

 特攻部隊Mの部屋へ戻ったアキラ。扉を開けると共にザンが彼を迎え入れる。

 

「いやぁおつかれおつかれ! これでうちの部隊からの出場者は二戦二勝だな」

「…ブラクに勝ったか。よくやったなアキラ。あいつとは親友だからな」

「え、そうなんすか?」

 

 カイラスとザンとユースは3年前(12215年)に特攻部隊に入隊している。ちなみにリンヴァー(第13話参照)もグリットとアリッサ(第26話参照)も3年前に入隊した同期だ。ブラクもその同期であり、この年は『不作の年』と呼ばれている程に優秀な人材が少なかったとされている。アキラの質問にユースが答える。

 

「俺もザンもカイラスさんブラクさんも、同じ12215年入隊組。この不作の年の中で唯一輝いてた存在がカイラスさんとブラクさんの二人で、特攻部隊Rまで2年経たないくらいで昇隊して『泥の中の二強』って呼ばれてたくらいなんだ。けどまぁ色々あってカイラスさんは自ら降格を申請、ブラクさんは問題を起こし過ぎて一時謹慎処分と特攻部隊Qへ降格をくらって今に至るって感じかな」

 

 トイレからライドが出てきてアキラが帰ってきたことに気付いていた。

 

「お、アキラお疲れ」

「ライドもな」

「ちなみにお前達12217年入隊組はほんと優秀な年らしくて『第二次ライトレイ王国黄金世代』って呼ばれ始めてんぞ。7年前(12211年)の黄金世代と同じ、もしくはそれ以上の逸材揃いらしいな」

 

 7年前の入隊組といえば、シャインやクロスやキング達のことである。アキラとライドはそれを聞いてゴクリを唾を飲む。彼らと比較されると、自身がなくなってしまう。だが入隊時期には6年もの差があるのでこれは仕方無いことだ。すると黙っていたカイラスがテレビを指差して小さく呟いた。

 

「…始まるぞ」

 

 画面には『第九回戦』と大きく表示された。シスキーの試合である。

 

 

*****

 

 金奏城地下五階。目を瞑ってルームへの転送装置の上に立つシスキー。会場のボルテージは最高潮だ。そしてパラオの実況が開始される。

 

『さぁ光軍決闘大会も大詰めの第九回戦! 1年前(12217年)に入隊し、特攻部隊Gから現在の特攻部隊Mへ飛躍的な昇隊を遂げた蛇人族(スネイド)の生き残り! 特攻部隊M隊員シスキー・スネイド!!!!』

「オーイエー!」

 

 ルームに登場しながらシスキーは咆哮する。そしてパラオが続ける。

 

『そんなシスキーが指名したのが、5年前(12213年)に特攻部隊に入隊し特攻部隊DからJ、N、そして現在の特攻部隊Rへ着々と昇隊を続けた《臆病者のバケモノ》! 特攻部隊R隊員パルシッド・リック!!!!』

「こんな舞台に立つの5年前の入隊試験以来で緊張するな~」

 

 シスキーの前に登場したのは23歳の気弱そうな顔をした、金髪の大柄の男パルシッド。彼は現在二流部隊特攻部隊Rの隊員をしている。その右手にあるのは自動装填可能な小型クロスボウ。パルシッドは、殺気溢れた表情でこちらを見つめる男をみて言う。

 

「…へえ。君良いオーラをしてるね」

「オーラ? 何のことか知らねーけど、勝つのは俺だ」

 

 パルシッドが言っているのは魔感で感じ取れたシスキーの強さのこと。魔感をまだ使えないシスキーにとって、目の前にいる男の強さは未知数である。食堂などでたまたま聞いた特攻部隊R隊員パルシッド、という言葉のみの情報で彼を指名したシスキー。この映像を見ていたアキラ達も、特攻部隊Rというこれまでの試合で最も高い実力を持つ部隊の隊員を指名していたことに驚いていた。だがシスキーには自信しかなかった。

 

『シスキーVSパルシッド、試合開始!!』

 

 その実況の合図と共に走り出したのはシスキー。口には既に炎をため込んでいた。彼のその勢いに、動揺を隠せないパルシッド。一瞬で額から汗が噴出し焦ってクロスボウを放とうとしたが、

 

「…あれッ!?」

 

 暴発を防ぐストッパーの解除をしていなかったために不発。急いでストッパーを外そうと左手を伸ばした時、

 

「激しい炎!」

「!!」

 

 目の前に迫ったシスキーから放たれた火炎に包み込まれた。シスキーは素早く後退し、炎を消したパルシッドと距離をとる。パルシッドの全身は軽いヤケド状態。解説のグラナドウの声が響く。

 

『パルシッドらしいミスだな!! まずはシスキーが一歩リード!!』

(くっそ、あんな勢いで迫られたら焦っちゃうに決まってんじゃんか)

 

 パルシッドはクロスボウのストッパー解除を終えると矢先をシスキーへ向ける。それと同時に怒りの表情を見せ、クロスボウに魔力を一気に集結させる。

 

「!」

 

 シスキーはその時確かに感じ取れていた。パルシッドが武器に集めた魔力の量が尋常ではなく、それによって唱えられる魔法の威力は計り知れないものになることを。さらにまるで無意識かのような程滑らかで、流麗で、瞬間の魔力操作技術。怒りの表情を見せたのと同時に明らかに変わったパルシッドの雰囲気。この瞬間こそが、シスキーが魔感に目覚めた瞬間であった。

 

(こいつ…ハンパなく強え! 向こうの本調子(ほんちょーし)が出る前に倒さなきゃぜってー負ける)

 

「イオナズン!」

「!?」

 

 その刹那、シスキーを正面から空気中の大爆発が襲う。全くもって予備動作の無い魔法詠唱は思考を巡らしてしたシスキーにとって不可避の攻撃となっていた。放ったのはパルシッドの左手であり、先程のクロスボウに纏わせた魔力ではない。後方へ吹っ飛ばされたシスキーは、ルームの壁へ背中から激突する。

 

「がはっ」

 

 致命傷になるほどのダメージではないが、不意打ち気味のその爆発魔法がシスキーに与えた精神的ダメージは大きい。そして前へ視界を戻した時、ほんの2メートル程前の空中からクロスボウの矢がものすごいスピードでシスキーの腹部へ向かっていた。咄嗟に1メートル程の蛇へ変身して地を這い、矢をかわす。

 

「え、蛇になった?」

『パルシッド得意の瞬間魔力操作による爆発が直撃したシスキー、今度は蛇人族特有の蛇に変身する能力を使ってクロスボウを回避!!』

 

 かわした矢は壁に突き刺さると先程とは比べものにならないほどの大規模の爆発を引き起こす。恐らく身体に突き刺されば、常人の身体ならば消し飛ぶ程の威力。驚くパルシッドの足元へスルスルと移動したシスキーは、パルシッドの足の周辺を超高速で動き回って攪乱させる。

 

「わっ!」

 

 両足の間をすり抜け、背後に回りながら尻尾を大きくしならせてパルシッドの背中を強く打つ。蛇の鱗は非常に硬く、この一撃は鋼鉄を曲げる程の威力を持っている。吐血しながら前方へ吹っ飛ばされたパルシッドはすぐに振り返り、シスキーに左手の掌を向ける。

 

「マヒャド!!」

 

 そう発したのと同時に蛇となったシスキーをいくつかの鋭利な氷塊が襲う。しかしそれを避け、また頭突きと尻尾打ちで砕きながら飛び跳ねつつパルシッドに迫ると蛇から人間の形へ戻る。それは人間と蛇の中間、尻尾の生えた蛇の鱗を持つ蛇人間であった。

 

蛇人間(リザードマン)

『これは…蛇と人間の間? いや、人型の蛇と言うのが正確ですかね? 新たな形態を見せたぞシスキー!!』

「なんだこのバケモノ!?」

 

 実況のパラオと共に驚いて動きを止めたパルシッド。目の前の空中にいる見たことがない生き物は、全身を蛇の鱗で覆ったシスキー。臆病かつビビりのパルシッドの思考回路を止めるには無理もない光景であった。大きく息を吸い込んだ上に大量の炎をため込んだ蛇人間は、ほぼ零距離で炎ブレスを放つ。

 

 

「超・激しい炎!!!!」

「!!?」

 

 かつてない程の威力の火炎は大きな衝撃波も同時に放ちパルシッドを襲った。それと同時に火炎による爆発が起こり辺りを爆煙が覆い尽くす。自ら放ったブレスの反動によって数歩後退したシスキーは、姿が見えないながらもパルシッドに言う。

 

「バケモノでもなんでもいい。俺は元々ただの人間じゃねーんだ! そして俺は光軍最強(さいきょー)の戦士になってやる! わかったかァ!?」

『シスキーの高威力炎ブレスが直撃! これでパルシッド、ノックアウトか~?』

 

 啖呵を切った蛇人間シスキーは元の姿へ戻ろうとしたが、煙が晴れ始め見えた景色に驚き動きを止めた。彼の視界には、先程のダメージをほとんど受け付けていない様子で仁王立ちしているパルシッドの姿が映っていた。それと同時に少しニヤリと笑みを浮かべていた自分に気付いていた。

 

(まだ楽しめそー、か)

 

「バーハ…!!」

『おお、バーハを唱えて威力を大幅に軽減してやがった!! しかもこれは継続する防御魔法!! 勝負はわからねえぞ!!』

 

 パルシッドが瞬間的に唱えたのはブレス系攻撃防御魔法。彼の全身を薄い魔法でできた衣のようなものが覆っている。これによってシスキーの炎ブレスのダメージをほとんど軽減していたのだ。そして口を開く。

 

「君が決めた感じになってた所悪いけど、俺もバケモノ。光軍トップクラスの魔力操作技術は伊達じゃないよ。さぁ、続けよう」

 

 

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