ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<ライトレイ王国の簡易勢力表>>
  ▽主な序列関係
国王(+側近3人) → 特攻・護衛司令官 → 特殊部隊 → 特攻・護衛部隊(各26部隊)

  ▽国王と側近、司令官と特殊部隊隊員(これらを総称して司令部)
国王兼総司令官:グリウズン・エンバルト  第一側近:パラオ・キャメロン
   第二側近:ソスティーヌ       第三側近:オルフ・リゲイ
特攻司令官:グラナドウ・ゴウメクバード  護衛司令官:キズナ・シノノメ
特殊部隊隊員:シャイン・ロドルフ  :キング・スコードマン
      :ディーン・ロム    :カイザー・グレトニウス
      :クロス・ヴァイトゥス



第三十七話 「感謝するぜ」

 

「君が決めた感じになってた所悪いけど、俺もバケモノ。光軍トップクラスの魔力操作技術は伊達じゃないよ。さぁ、続けよう」

 

 パルシッドはそう言いながら右手のクロスボウを構える。対するシスキーはこの状況を楽しみつつあった。これが二流部隊の隊員の実力。明らかにこれまで見てきた特攻部隊隊員達とは違う。だが迷っている暇などない。

 

「激しい炎!!」

「?」

 

 数メートルの距離からシスキーが放ったのは広範囲に及ぶ火炎。それを見たと同時に炎に向かって走り、ブレス防御魔法による衣によって炎を打ち消すパルシッド。

 

「だからブレスはもう俺には効かないよ!」

(…ってあれ、いない!?)

 

 しかし炎を無傷で振り払ったパルシッドの前にシスキーの姿は無かった。目くらまし。そう彼が気付いた時には、背後からシスキーの声が轟く。

 

「ウオラァッ!!」

「ぐっ」

 

 シスキーの蛇の鱗で包まれた拳がパルシッドの背中を殴りつけた。前方へ転がりながら吹っ飛ぶパルシッド。今のパンチの威力はでかい。元々パワーがあるシスキーに、さらに蛇の鱗の硬度によって全力のパンチが実現できたのだ。起き上がるパルシッドに言う。

 

「ブレスのバリアで俺を完封(かんぷー)したつもりか!? 火炎が効かねっつーんだったら別の戦い方をするだけだ。ナメんじゃねーぞ」

「フフッ…完封したつもりなんかじゃないよ。ただこれで君の攻撃のバリエーションが減ったはず」

『シスキー、戦闘を格闘スタイルに変えたようだな!!』

 

 しかしシスキーの蛇人間(リザードマン)状態はかなりのスタミナを消費する燃費の悪い戦い方となる。打撃攻撃力と物理防御力はかなり上昇するが、魔力を消費して唱える魔法の威力は激減し通常時よりも体力消費が激しくなる。あまり魔法を使用しないシスキーには利点が多いスタイルであるのも事実だが。

 

「つまり、君を近づかせなければ俺が勝てる!」

「?!」

 

 そう言い放ったパルシッドからクロスボウの矢が発射される。魔力を纏っていない事を瞬時に判断できたシスキーであったが、少し反応が遅れて矢が胸部に直撃する。しかし、

 

「そんな矢じゃ俺の鱗は破れねーぞ」

「だよね」

 

 カランと音を立てて弾かれた矢が地面に落下。それと同時に走り出したシスキー。少し後退しながら瞬時に魔法を唱えたパルシッド。

 

(あの鱗の鎧だと、氷魔法はさっきみたいに砕かれる。だとすればこれしかない!)

「イオナズン!」

 

 彼得意の爆発魔法は動作の開始から1秒程度で魔法が発現し、シスキーを直撃。強固な蛇の鱗を全身に纏っているといえど、爆発の衝撃は身体へ直接響くため確実にダメージが通る。吐血しながらその場に跪くシスキーであったが、立ち上がりながらパルシッドを睨む。そして再び炎を口に溜め始めると、その口内に右の拳を突っ込んだ。

 

「イオナズン!! イオナズン!!」

「!!?」

 

 走り出そうとしたシスキーを二度の爆撃が襲う。その強力な爆発魔法は、まるで目の前の空気に押し潰されるかのような衝撃を与える。鱗によってダメージは軽減できていたものの、これまでの傷も蓄積されておりかなりの重傷となってきていた。しかし爆発と同時に舞う煙幕をシスキーは見逃さなかった。素早く小さな蛇に変身すると、煙の最中を縫ってパルシッドの近くへ移動する。

 

「あ、やっべ」

 

 自分が唱えた魔法によって生まれた煙によって再び敵を見失ったパルシッド。晴れつつある煙の中で、すぐ目の前にシスキーの気配を感じた彼は一瞬で魔法を唱える。

 

「イオナズン!」

「……ぐおおお」

 

 爆発魔法はシスキーの顔面に直撃。しかしこの時パルシッドは自分の腰に何か巻き付いていることに気付く。それは蛇人間シスキーの尻尾と、その部分だけ蛇と化した右脚であった。その二本が彼の腰にグルグルと巻き付いており、それによってシスキーは今の攻撃でも吹っ飛ばされずにすんだのだ。シスキーは完全にパルシッドを捕縛した状態で、先程まで口に突っ込んでいた右の拳を振り上げる。

 

(え…拳が燃えてる?)

 

「火炎は効かねーけど打撃は効くだろ? お前(おめー)のおかげで俺は新しい技を手に入れた。感謝するぜ」

 

 シスキーの右手は炎を纏っていた。これは口内に拳を入れそこに炎ブレスを放つことで火炎を纏わせたのだが、この新技の真骨頂は別の所にあった。バーハが防げるのはブレス系の火炎や吹雪、口から放たれた衝撃波のみ。拳に纏った火炎を防ぐことはできないのである。無論この事実をシスキーが知った上でやったことかはわからない。拘束され身動きがとれない状態で、目の前で拳を振り上げる敵に怯えるパルシッド。

 

「や…やめてくれ」

 

 シスキーは右の拳にありったけの魔力を込め、振り下ろす。

 

 

「煉獄パンチ!!!!」

「!!!?」

 

 炎の拳はパルシッドの顔面を横から打ち抜いた。それと同時に尻尾と右脚の拘束が解かれ、勢いよく吹っ飛ばされルームの壁に激突。拳が触れた部分の皮膚は焼け焦げていた。勝負あり。二人を青い光が包み込むと、シスキーは咆哮した。

 

「うおおおおおおおおー!」

『決まった~! 互いの攻撃の防げ合いの接戦を制した、光軍決闘大会第九回戦の勝者はシスキー・スネイドォォォォ!!!!』

『両者良い戦いだったな!! ちとパルシッドのミスも目立ったがな!! ガハハ!!』

 

 グラナドウの解説と共にシスキーはルームの外に転送された。特攻部隊Mの隊員が特攻部隊Rの隊員を倒すという快挙に会場はかつてない程の盛り上がりを見せていた。解説の通り、終始パルシッドの臆病な性格が起因して彼の敗北につながっただろう。しかし実戦では尚更勝負強さというものが必要となるこの時代、シスキーの勝利は絶対的なものと認められる。

 

 

*****

 

 ここは特攻部隊Mの部屋。扉が開き、帰ってきたのはシスキー。するとザンの大声が響く。

 

「うおおおっ! お疲れい! これで特攻部隊M三戦三勝!」

「…うるさい。非常にうるさいぞ」

 

 そんなザンに言うカイラス。部屋の中にいたアキラとライドと目を合わせ、互いの健闘を称えたシスキー。今テレビでは最後となる第十回戦をやっていたが、誰もその映像など見ていなかった。カイラスが口を開く。

 

「…だが天晴だ。アキラ、ライド、シスキー。お前ら三人共よくやった。司令部から今日の夜には部隊異動の話が来る、という情報を得た。楽しみに待っとけ」

 

「よし、ついに昇隊か」

「俺がお前らよりも上の部隊に行ってやる」

「おいおい、一番上行くのは俺だぜ? ライド~」

 

 それぞれ苦戦はしたものの、個々の実力を司令部に確実にアピールできている。そんな彼らの様子を見て、ザンとユースは顔を見合わせて笑う。その時、静かに部屋の入り口の扉が開き二人の男が入ってきた。全員がその二人をパッと見る。するとまず口火を切ったのはアキラ。

 

「え、クロスさん! …とシャイン兄さん!」

 

 部屋に入ってきたのは1年前(12217年)特殊部隊隊員となったクロスとシャインの二人。カイラス達はなぜここにそんな二人が来たのか疑問で不思議そうな顔をしている。ライドとシスキーはシャインを見てこれがアキラの兄さんか、と納得していた。茶色い髪色であったり、緑の瞳と共通する部分が多い。シャインが口を開く。

 

「俺が村を出てからだから、11年振りか? ひさしぶりだな、活躍は聞いてるぞアキラ」

「兄さん久しぶりだよ。今日は何しに?」

「いやこれからどんどん昇隊していくであろう、アキラとライドとシスキー。お前ら三人の能力をクロスが見極めてデータ化して集計したいんだってさ」

 

 するとクロスが言う。

 

「君達ひさしぶり。僕はずっと昔から色んな強い人の能力を、魔感を使ってランク付けして集計してるんだ。そこで君達三人の能力も集計させてほしくて…いいかな?」

「いいっすけど、ランク付けってどうやって…?」

「僕は魔感の鋭さで言ったらライトレイ王国随一らしくてね。身体に触れて目を凝らすだけで君達がどれだけの強さか判断できるんだ。ほんの数分で終わるし、君達も自分が今どれだけの強さかを理解できる。わかったかい?」

 

 クロスは魔感が恐ろしい程に鋭い。そのためアキラ達を特攻部隊に勧誘したように、才能ある者かどうかを魔感によって判断できるためスカウトマンとして活躍しているのだ。クロスの頼みを承諾したアキラ達は、クロスの前に立つ。するとシャインが笑いながら言う。

 

「クロスはあまりに魔感が鋭過ぎて『読心』っていう相手の感情を読み取ることができる特殊体質も持ってる。ちなみにこのクロスによる強さ分析は『クロス式』って言われててなかなか信用できるぞ」

「相手の心読めるとかすげーな」

 

 シスキーが感嘆の声を上げる。魔感を少し扱えるようになった今の彼には、目の前にいるシャインとクロスが自分達とかなり差のある実力を持っている事がすぐわかった。クロスは黙りながらアキラ達三人に触れ、ついでにシャインにも触れる。そして何やら持ってきた紙に書き出し始める。

 

(俺が今どれほど強いのかわかるってんなら良い機会だ)

 

 ライドはそう思いながら結果を楽しみにしていた。アキラもシスキーも同じ思いであった。するとクロスがテーブルの上に書き出した紙を広げ、言う。

 

「まず参考のために、僕とシャインさんのクロス式を出すね。これはあくまでも目安で、その他特技や相性、状況や特殊体質とかもあるからこの数値で強弱をつけるべきではないっていうのは頭に入れておいて」

 

==========

 【クロス式】

評価はS・A・B・C・D・E・F・G・H・Iの10段階。体力(身体レベル)・パワー(腕力レベル)・剣技(剣術レベル)・魔法(魔法レベル)・素早さの5項目とその平均値をとった総合評価の計6項目。ちなみにHが成人男性の平均値である。

○『反撃の騎士』シャイン・ロドルフ24歳 ○『双撃』クロス・ヴァイトゥス23歳

体力:B(8点)             体力:C(7点)

パワ:C(7点)             パワ:C(7点)      

剣技:B(8点)             剣技:B(8点)

魔法:B(8点)             魔法:D(6点) 

素早:C(7点)             素早:C(7点)

総合:B(7.6点)            総合:C(7.0点)

==========

 

「ははは、クロスお前俺の下位互換じゃねえか」

「しかもシャインさんの特殊体質もありますし、実際はもっと差ありそうですね」

「いやお前は『読心』があるじゃんか」

「そうですけどシャインさんの特殊体質はチートですよ、チート…」

 

 その数値をじっと見るアキラ達。後ろからカイラス達も覗いてみている。クロスはこういう数値を集計し、自分の魔感による判断に役立てているのだ。そして次にアキラ達のクロス式ステータスも出す。

 

==========

○『瞬足』アキラ・ロドルフ18歳

体力:F(4点)

パワ:F(4点)

剣技:E(5点)

魔法:G(3点)

素早:C(7点)

総合:E(4.6点)

○ライド18歳   ○『火蛇』シスキー・スネイド18歳

体力:F(4点)   体力:C(7点)

パワ:E(5点)   パワ:D(6点)

剣技:D(6点)   剣技:G(3点)

魔法:D(6点)   魔法:G(3点)

素早:G(3点)   素早:E(5点)

総合:E(4.8点)  総合:E(4.8点)

==========

 

 結果から見れば三人共ほぼ同じ実力。わずかにアキラが総合点で負けているものの、全員同じEランクということとなる。成人一般男性がHランクであるので、それと比較すると三人共超人レベルである。それは特攻部隊に入隊している時点で当然と言えば当然なのだが。

 

「これで各々の足りない事が分かったと思う。協力ありがとね、それじゃ」

 

「あ! そうだ、兄さんに少し話があるんだ」

「ん?」

 

 帰ろうとしたクロスとシャインに言うアキラ。二人にしか聞こえないように部屋から出て話を始める。クロスはそれを聞かないように部屋の中で残る。シスキーとライドはクロス式の結果をじっくりと見つめ、自分の長所と短所を受け止めている。シャインがアキラに言う。

 

「…なるほど。父さんの神隠しの件か。あんま大きな声で言うなよ?」

「うん」

「実は特殊部隊は他国へのスパイ活動や自国にスパイがいないか調査する目的もあんだけど、神隠しについて調査するためにも設置されたんだ。当時大きな戦力だった父さんジオレク、そのタイガーの父さんパンサー、総司令官の息子ベルグの三人をいきなり失ったのは大きくて、その強者三人が殺されるわけない。何か必ず裏があるのは確実だ」

 

 シャインはそう言うとアキラの頭をポンと叩く。

 

「安心しろ。俺は父さんの神隠しの謎を解き明かすために軍に入った。必ず俺が解き明かして見せる」

 

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