『鉄の雨』レイン・リック
性別:男 年齢:23歳 所属:ライトレイ王国
武器:鞭 特技:鞭技
特攻部隊R隊長。5年前(12213年)に特攻部隊に入隊。パルシッドの双子の兄。
類まれなる戦闘センスの持ち主。彼が放つ鞭は雨のように不可避だという。
臆病な弟パルシッドを心配して世話を見ている。
無法地帯出身ブルー盗賊団が占拠する光軍領リバーウォークへ侵入した特攻部隊Rは、街の入り口から真っ直ぐ伸びる道のT字路の突き当たり部分にいた。左右にはそれぞれカーブを描く道が続いている。彼らの正面にある巨大な建物に入口は見当たらず、左右の道どちらかを選択するしかない状況だ。その時、左側の道から10人程度の盗賊達が現れる。
「侵入者だ! 奥には行かせるなァ!」
盗賊達を見て再び鞭を手に取るレイン。その横にいたアキラは太刀を抜き、敵達を見据える。ペドも棍を強く握りしめてその隣に並び立つ。盗賊達が来たということはその奥にアジトがある可能性が非常に高い。この集団を突破していくしか手はない。ライドも3人に加勢しようと長剣を抜いたが、その時パルシッドが叫ぶ。
「わ…こっちにも出てきたよ!!」
振り返ると右側の道からも10人程の盗賊達がゾロゾロと出てくる。それを見るとハルトは素早く槍を掴んで身構える。ライドもハルトの横に立つ。その後ろで怯えながらクロスボウを持つパルシッド。その様子を見ていたレインが言う。
「パルシッド、ハルト、ライド。そっちはお前ら3人に頼んだぞ! こっちは俺らに任せろ」
チームA:レイン・アキラ・ペド → 左の道
チームB:パルシッド・ハルト・ライド → 右の道
「了解!」
特に指示することもなく3人ずつのチームに分かれた特攻部隊R。これは仲間への信頼が厚いからこそできることである。まだ互いに距離を保ったままの特攻部隊Rと盗賊達。ペドはクルクルと棍を回転させ、舌をペロリと出す。アキラは太刀を引き、両足に力を込める。レインが口を開く。
「…ブルー盗賊団だな? ちょっとリーダーがいるアジトまで案内してくんねえかな?」
「ふざけんな侵入者め!! お前ら誰一人この先に通さ―――」
刹那、先頭にいた盗賊の首から血が噴出する。
「?!」
「―――疾風斬り」
首を斬りつけたのは一瞬で目の前まで移動していたアキラ。その一撃を見てペドはニヤリと笑みを浮かべた。激昂し、襲い掛かろうとする盗賊達を見てレインが言う。
「じゃあいいよ。お前らが守ろうとする方向に進んでいくだけだ」
上下の先端が鋼鉄でできた棍に魔力を込めたペドが素早くアキラの前へ移動し、
「足払い!!」
「うお!!?」
残りの全ての盗賊達の足元を一撃で薙ぎ払う。この一撃は棍が届かない位置にいた者さえも巻き込んで空中にすくい上げた。その素早さと威力の強さによって衝撃波を生み出していたのである。アキラはこの攻撃に目を見張った。
(あんな遠くの奴にまで攻撃を届かせるなんて、何て速度で棍を振り払ってるんだ)
何かを感じ取ったペドはアキラの頭に手を置き、自身と共に体勢を低くさせる。そして空中に浮いた盗賊達をレインが
「スパークショット」
光属性を纏った二本の鞭で攻撃。軽い爆発を起こしあらゆる方向へ盗賊達を吹き飛ばした。ペドはこのレインの攻撃を予想してアキラをしゃがませたのである。これこそが連携攻撃。敵に息をつく暇さえ与えぬ連撃だ。3人が進むこの道は右側へカーブしており、その先に複数人の盗賊達の姿が見えた。
「進むぞ」
無言で頷いたアキラとペドは、レインの後に続いて奥へ走り出す。向かってくる3人の姿を捉えた盗賊達は臨戦態勢に入るものの、アキラの速攻とペドの畳みかける連撃、レインの広範囲攻撃によって瞬く間にバタバタと倒れされていく。
「疾風突き!」
「薙ぎ払いッ」
「地走り打ち!」
盗賊達の悲鳴だけがただひたすらに響き、彼らの進撃を許していく。
*****
一方、パルシッドとライドとハルトのチームB。T字路で右側の道に進んだ彼らも圧倒的な強さで盗賊達を薙ぎ倒していく。基本的にライドとハルトが前衛として盗賊と戦い、後衛のパルシッドがクロスボウや魔法で援護するという役割だ。この絶妙なチームワークによって盗賊達は手も足も出ない状態であった。
「火炎斬り!」
ライドの炎を纏った斬撃は、通常の剣よりも太刀筋の長い長剣によって繰り出される事で範囲攻撃として成立し盗賊達をまとめて斬りつける。切り口が発火することでさらなる追加ダメージを与えていく。その隣でハルトは細身の槍を素早く、連続で突き出す事で敵を突き飛ばしていく。
「五月雨突き」
高威力の突きが生み出す衝撃波により、周囲の敵も巻き込んでダメージを与えていく範囲攻撃。盗賊達が持つ剣よりもリーチのある槍でこれを繰り出されるため、ハルトに近づく事さえできない状況であった。そしてその二人の攻撃から溢れた盗賊を
「イオナズン!」
パルシッドが唱える爆発魔法で一掃する。チームA同様どんどんと敵を倒して進んでいく彼らであったが、こちらのチームBにはある欠点があった。数分が経過し、ライド達は現れた全ての盗賊達を撃破することに成功した。一息ついた3人であったがふとハルトが口を開く。
「…私達は今どこに向かっていたんだ?」
「確かにな。ここどこだ?」
気が付けば彼らは入り組んだ道の最中にいた。さらに目の前には二方向に分岐した道が広がっている。どこから盗賊達が現れていたのかさえ誰も把握していなかった。そう、つまりこのライドとハルトとパルシッドの3人組は
「え、てことは俺達迷っちゃったの!?」
「そうなるな」
方向音痴であった。そして全員が異常な程の戦闘狂。戦う事に夢中になり過ぎてどうやってここに来たか記憶していないのである。傍に倒れている盗賊に道を聞こうとするが、意識を失っているため話にならない。どうやってこの先に進むべきか話し合っていた時、彼らの先の二つに分岐した道の片方から1体のメタルハンターが現れる。
「おいおい今度は何だ?」
「私はずっと疑問に思っているんだが、この魔物はラギ帝国の兵器のはず。なぜこのリバーウォークにいる?」
「ハルト、それ気になるけど気になってる場合じゃないよ…」
この街を占拠しているブルー盗賊団は無法地帯出身であるためどの国家にも属していないはず。それなのに無軍の兵器がこの街を彷徨っている事を疑問に感じていたハルトであったが、今はそれを考えている暇はない。
「ピピッ」
センサーである頭部の赤い光がライド達の存在を確認した瞬間、
「一閃突き!」
「ダークスパイク」
ハルトの槍が頭部を、ライドの長剣が腹部を一気に破壊する。何もせずに破壊されたメタルハンターはその場に崩れ落ちた。ふぅとため息をついて冷や汗を拭うパルシッド。ハルトが言う。
「さっきの建物の中から私達を監視していたメタルハンターも、このメタルハンターもラギ帝国が関係しているに違いない。なぜこの街に無軍がいるんだ?」
思考を巡らすハルト。パルシッドも一緒になって考えているが、ライドが口を開く。
「考えるだけ時間の無駄だ。こいつが今来た道を進んで行けば、何かわかるんじゃねえか? もし今この街に盗賊団と俺達以外に無軍もいるとしたら任務に支障も出るだろ。行くしかない」
「まぁそうだよね。どっちにしろ俺らは迷子になってるんだから…」
パルシッドがその意見に同調する。ハルトも頷き、三人はメタルハンターが現れた道へと歩き出した。
*****
ここはリバーウォークの外れにある街を見渡せる高さの建物の屋上。そこには銀色のマントを纏った一人の男が立っていた。名をライジン・アブソリューク。ラギ帝国の第二将軍である。彼は手に通信中となっている通信機を持ったまま、口を開く。
「―――おいハルルド。ついさっきメタルハンター2体目が何者かに壊されたぞ。まだこの街に来て2時間しか経ってないのにこの20分でいきなり2体もやられると思うか?」
『ライジン様、メタルハンターのカメラ映像を見ると光軍の特攻部隊かと思われる6人組が20分程前にこの街に入って来て盗賊達と戦闘を開始しています。恐らく軍の命令でこの街の盗賊を殲滅するつもりかと…』
「成程な。せっかく俺が盗賊達を新技で皆殺しにしてやろうと思って来たのに、光軍が来て俺の遊びの邪魔をしてるんだな? ハルルド、お前とクロムで光軍のやつの任務の邪魔をしてやれや。俺はここから高見の見物でもしてるわ」
『かしこまりました。ライジン様の玩具になる盗賊達を壊そうとする光軍の戦士達を制圧して参ります』
「まぁ…無理すんなよ? さいあくクロムだけに任せてもいいんだ」
『かしこまりました』
ライジンは通信を切断すると大きく欠伸をしながらリバーウォークの街全体を見渡す。右手に装備された鋭利なツメからはポタポタと血が滴り落ちる。
「ん~まだ遊び足りないんだけどなぁ。ティガも面白い光戦士がいるって言ってたし、その観察でもしてから帰るとしますかね」
そのライジンの後ろの足元にはツメによって何度も切り裂かれた、とっくに絶命した状態の血だらけの盗賊が数人倒れていた。その広がった死体の光景を眺めながら、再びライジンは欠伸をした。