『氷撃』ペド・マーカー (2回目)
性別:男 年齢:18歳 所属:ライトレイ王国
武器:棍 特技:棍技・氷魔法(ヒャド系統)
特攻部隊R隊員。アキラと同じく1年前(12217年)に特攻部隊に入隊。
一見挑発的な性格に見えるが、中身は純粋そのもの。光国に対する忠誠心が高い。
魔感の扱いに長けている。入隊試験第三次試験時にはアキラに敗北している。
<<光軍領リバーウォーク北部―ライド/パルシッド/ハルトの3人>>
大きな音を立てて崩れ落ちる機械の魔物メタルハンター。その傍で長剣をしまうライドの後ろにパルシッドとハルトが続く。この3人はリバーウォークの都市の北部へと進んでいた。
「これで合計3体目か?」
「恐らくこの先から湧いてきてるね…任務のためにも始末しなきゃいけない」
薄い淵のメガネをつけたハルトがそう言うとパルシッドが頷く。彼らがこの道を選択してから盗賊達は1人も現れていない。これが盗賊のアジトから遠ざかっている事を意味していたのを三人共気付いていた。しかしもし無軍がこの街にいるのであれば、いずれにしろ殲滅しなければならない。
クネクネと何度も道を曲がりつつ、魔感が扱えるパルシッドの勘を頼りに道を選択していく3人。方向音痴である彼らはもう既にどうやってここまで来たかのルートさえ覚えていなかった。そしてある角を曲がろうとした時、先頭にいたライドが合図をする。
「待て」
「?」
その言葉で動きを止めるハルトとパルシッド。ライドはその角から顔だけを出して、その先の広間の状況を確認している様子。
「…ラギ帝国軍の戦士がいる!」
「やはりか」
ライドの言葉に応えたハルト。三人は曲がり角の寸前で準備を整える。角を曲がった先の広間には数体のメタルハンターと数人の無戦士、そしてマントを着用した2人の無戦士が見える。彼らは何やら話し合いをしているようだ。人数比だけ考えると圧倒的に不利である事をパルシッドは考えていた。
「まず、数を減らさない? マントの2人以外は大した戦力じゃなさそうだし…」
「だな。よし、連携していくぞ」
3人は1分程話し合い、すぐそばの敵陣に突入する作戦を考えた。角を曲がってから無戦士達がいる広間までほんの10メートル程。個々がそれぞれの役割をしっかりと果たさなければ作戦達成は難しくなる距離だ。話し合いを終えた3人はそれぞれ武器を手に取り、深呼吸をする。
ライドが角から少し顔を出し、広間の様子を伺うと長剣を持たない左手で2人にGOサインを出す。それを見たハルトがライドと共に走り出して曲がり、広間から丸見えとなる道に姿を現す。その2人の後ろにパルシッド。ほんの数秒で広間に突入したライド達を見て武器を持つ無戦士達。
「うお、なんだこいつら!!」
「さっき言ってた特攻部隊のやつらか!!」
3人を迎え撃つ構えを見せる数人の無戦士達。それと同時にその両脇にいたメタルハンター数体も起動する。それらの後ろに白マントの無戦士2人が下がる。パルシッドの声が響く。
「マヒャド!!」
その声と共にいくつもの鋭利な氷塊が上空から無戦士達を襲う。頭に直撃した者もいれば、背中を斬られた者もいた。この一撃によって一時的に足を止めた無戦士達をライドとハルトが斬り、突き飛ばしていく。
「ぐああっ」
「イオナズン!」
倒れた無戦士達をさらなる爆撃が追い打ちをかけた。ほんの数秒で残ったのはメタルハンター数体とマントの無戦士2人のみ。
「ピピッ」
「くっ…ダークマッシャー!」
「フンッ」
機械音が聞こえたのと同時にライドとハルトを襲うメタルハンターの矢。数発を身体に受けながらメタルハンター達に迫ったライドとハルトが強力な一撃でまず1体ずつ一瞬で撃破する。残ったメタルハンターは2体。パルシッドがクロスボウに大量の魔力を集結させ、1体に放つ。
「爆裂射ち!!」
矢はメタルハンターの顔面のセンサーに突き刺さったのと同時に大爆発を起こした。その絶大な威力で魔物は跡形も無く消し飛ぶ。残った1体のメタルハンターに迫ろうとしたハルトの前に白マントの無戦士が立ちはだかる。
【ラギ帝国・第二英雄兵団副団長 クロム・バイパー】
「っとお前の相手は俺だ」
白マントを装着したクロムは全身を鋼鉄で覆った改造人間である。彼の場合は防御力を重視して身体を改造しており、身体を覆う鋼に様々な鉱物を混ぜる事で砲撃にも動じない『硬鎧』を手に入れた。ハルトは槍を振り回し、クロムを睨む。
「ここで無軍が何をしている…? 私達の任務を邪魔しないでもらいたい」
「邪魔をしてるのはお前らだ。ライジン様の玩具を狩りに来たんだろ?」
「…玩具?」
「ああ。あいつらはライジン様のものだ。邪魔をするな」
全く意味がわからなかったハルトであったが、クロムの表情とその文脈からおおよその意味を把握する。つまりクロムの上司であるライジンの玩具となる盗賊を狩るな、ということである。横目でライドがもう一人の白マントの無戦士の方へ向かったのを確認すると、槍先をクロムに向ける。
「なるほど。君達の上ってのは相当悪趣味だね」
その言葉に眉間をピクリと動かしたクロムは、重厚な鋼鉄で覆った身体を動かして両手にナックルをはめてハルトを見据えた。
*****
一方の白マントの無戦士を追ったライドは、ハルトとクロムが戦闘を開始した広間から数十メートル離れた建物の屋上にいた。この建物の高さは地上10メートル程でそこまで高くはないが、屋上が30メートル平方程の広さである。数メートル前に立つ白マントの無戦士は武器を持たずにライドを見据える。
「ここでやろうぜってことか?」
そう問いつつ長剣を強く握るライドに、無戦士ハルルドが答える。
【ラギ帝国・第二英雄兵団団長 ハルルド・バーン】
「そういうことですね。あそこだとクロムの邪魔になっていけな―――」
「ふんっ」
ハルルドの言葉が終わる前に斬りかかったライドの長剣を、右腕に仕込まれたナイフで受け止める。そして無言でライドの腹部を左足で勢いよく蹴り飛ばす。口から血を吐き出しながら数メートル吹っ飛び地面を転がったライド。
(なんだ今の重い蹴り!! …そうか、こいつも改造人間か)
「行儀が悪い人ですねぇ。どうです? 鋼鉄の足から繰り出される蹴りは?」
ハルルドはそう言うと右腕の袖の中にナイフをしまい、両手で両足の靴にあるスイッチを押す。すると彼の両足が薄い光を帯び、踵の部分にある穴からエンジン音のようなものが鳴り響く。立ち上がったライドは、パンパンと土埃を払う。
「マナーってもんを誰にも教わってねえもんでな!」
そう言って再び走り出すライドは左腕に魔力を集め、
「ドルクマ」
闇魔法を放つ。それを踵にあるジェットを噴射することで跳躍しかわしたハルルドは、噴射を続行し地面から5メートル程の高さを滞空してみせる。そこに迫るライドは彼に向けて魔力を宿した剣先を向ける。
「メラゾーマ!」
「な!?」
剣先から放たれた炎球は素早く上昇しハルルドに直撃し爆発を引き起こす。舞う黒い爆煙の中から素早く地面に降下したハルルドは改造人間のためそこまでダメージを受けていないが、身体の表面が焦げ付いている。敵の姿を一時的に見失ってしまったライドはハルルドが地面に着地した音を聞いてその方向へ身体を向けたが、
「―――飛び膝蹴り」
「ッ?!」
彼の腹部を高速のジェット噴射によって加速しながら滑空してきたハルルドの膝蹴りが捉え、ライドを大きく吹っ飛ばす。声も出ない程の威力。屋上の端の方まで吹っ飛ばされ、倒れたまま大量の吐血をする。地面に軽やかに着地したハルルドが口を開く。
「我々ラギ帝国軍の兵士には、身体をどこか必ず改造し機械化しなければならない規則があるんです。地位が高い方の方が複数の改造を施す事が可能で強いんですが、僕のような英雄兵団の団長という地位では許される改造箇所は一カ所。僕が選んだのは脚で、ジェット噴射によって飛行能力に似たものもできたり、今みたいに急速に加速することもできます。これは『噴射脚』っていうんですけ―――」
「うるせえんだよ!」
ハルルドの言葉を再び遮ったライド。ふらつきながらなんとか立ち上がると、地面に落ちていた長剣を拾って身構える。ハルルドはその様子を見ても全く表情も変えずに袖から隠しナイフを取り出す。そのナイフは小型であるが、折り畳み式であり広げると切れ味鋭い剣と化す。その剣を振り回すハルルドに、ライドが言う。
「ったく、最近ずっと
それを聞いたハルルドは少し黙る。ライドが言っているのは、以前コロプス山脈で戦ったガルーバー(第29話参照)のことである。彼は『強化腕』という改造能力を持っていたがライドがなんとか勝利した相手だ。すると、ハルルドが少し笑みを浮かべて言う。
「…僕の兄ティガ・バーン率いる第三英雄兵団の団長ガルーバー・トスの事ですね? 彼なら確かについ先日大怪我を負って生還しましたよ」
「生きてたのか」
「しかし残念ですが、僕はこれまでガルーバーとの模擬戦で負けた事は一度もありません。彼を殺せないようなら僕を殺す事は不可能でしょう」
ハルルドは再び両足の『噴射脚』のエネルギーを高める。
「ライジン様に手を下させる様なマネはできません。もう一度言います、あなたは僕に勝てませんよ」