ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  ハルルド・バーン
性別:男  年齢:22歳  所属:ラギ帝国
武器:折り畳み式ナイフ  特技:剣技・足技
 ラギ帝国第二英雄兵団の団長。第二将軍ライジンへの忠誠心が高い。
 噴射脚という改造能力を持ち、高速で滑空できる。


第四十三話 「『暴騎士』ハルト」

 

 

<<光軍領リバーウォーク北部―ハルトVSクロム>>

 

 一方、先程の広場でハルトと第二英雄兵団副団長クロムが戦闘を繰り広げていた。お互い無傷の状態で攻撃を受け止め、避けるという繰り返しである。互いに距離を保ち、槍をクルクルと回すハルトが口を開く。

 

「この数分でわかったことがあるんだけど、君はなかなか動かないんだね」

 

 クロムの改造能力『硬鎧』は圧倒的な防御力を誇るものの、重量もかなりのもので素早い動きは得意としない。両手にナックルをはめたクロムが答える。

 

「この鎧は重いからな。だが、そんなチョコマカと動く必要も俺にはない! 絶対的な防御力こそ最強なのだ」

「…ふーん」

 

 そう小さく呟いたハルトは、槍を強く握るとクロムへ向かって走り出した。迎撃する構えを見せるクロム。眼前1メートルに迫った時、ハルトは素早く槍を連続で突き出す。

 

「五月雨突き!」

「むんっ」

 

 細身の槍はその突き出された速度と威力によって広範囲に及ぶ衝撃波を生み出す。しかしその攻撃全てを鎧によって無傷で受け止めたクロム。表面に多少傷はつき、クロム自信も数十センチ後退したが全く問題はない。両腕のナックルで衝撃波を振り払った彼の目の前には、既にハルトの姿はなかった。

 

(後ろか!!)

「――正拳突きッ」

「?!」

 

 瞬時に振り返り、背後にいたハルトを全力で殴りつける。腹部に拳をもらったハルトは、そのまま後方へ数メートル吹っ飛ばされた。

 

「がはっ…」

 

 地面に跪き、大量の吐血をするハルト。地面に転がった槍を掴み取るとなんとか立ち上がる。彼の様子をじっと見つめるクロムは、両手のナックルをガチンガチンとぶつけながら笑みを浮かべた。

 

「今のは良い所に入っただろ? お前のその弱っちい槍の攻撃なんかじゃこの硬鎧を破ることはできない。その間に俺は超威力のパンチでお前を殴り殺すだけだ」

 

 そう言うクロムの20メートル程後方の建物の影に隠れていた臆病者のパルシッドは、冷や汗を流してハルトを見つめていた。しかし彼には加勢するつもりなど毛頭ない。その理由としては常々ハルトが隊員達に、自分と敵との一騎打ちになった時には邪魔をするな、と言っていたからである。これにはもちろん根拠も存在する。

 

(あー…今の一撃でハルト怒っちまったかな? もう絶対近寄れないよ)

 

 パルシッドはそう思いながら地面に座り込んだ。ため息をつきながらハルトとクロムの戦闘を見守るしかない彼は、そこで静かに観戦を開始した。

 

 ふらふらと立ち上がったハルトは、無言で地面を見つめる。クロムはしびれを切らして口を開く。

 

「おいおい、そんな落ち込むなよ。やる気なくなっちまったか?」

「……」

 

 そう言われてもなお無言を貫くハルトは顔を上げ、クロムを鋭い眼光で睨んだ。槍を持たぬ左手でメガネを外してポケットにしまう。

 

「!」

 

 明らかに変わったハルトの雰囲気。それを感じ取ったクロムは、ふと自分に冷や汗が出てきている事に気付く。するとハルトがこれまでと違う口調で声を荒げて言う。

 

「…悪りぃが、お前は死んだ。せいぜいその最強の防御でガードしてみろ!」

「へっ…な、なんだ? 来いよ、返り討ちにしてやる」

 

 そう言って身構えたクロムは、ただならぬオーラを放つハルトを睨む。ハルトの異常な程の目力が彼の変化を物語っていた。槍を振り回しながらゆっくりとクロムへと歩み寄っていく。一歩、また一歩。クロムがまるで死神が自らに迫ってきているような感覚に陥っていたのも無理はない。それほどの気迫をハルトは放っていた。一瞬で生み出された大量の魔力を全て右腕の槍へ集結させ、

 

 

「―――真・一閃突き」

「!?」

 

 音を超える速度でクロムの腹部へ突き出された。空気を震わせる程の一撃はクロムの鎧と身体を容易に貫き、風穴を開けた。大量の血を噴出しながら数メートル後方へ吹っ飛ばされたクロムは即死。音速を超えたこの一撃の衝撃音は、わずかに遅れて響く。また槍の先端もあまりの威力のため破損し、使い物にならなくなっていた。

 

「弱っちい槍の攻撃だァ? もう一遍言ってみろカスが。骨も消し飛ばすぞ」

 

 そう言い放ったハルト。つい先程まで目の前にいた無戦士クロムは、腹部に空いた風穴から静かに血を噴出する。そこにパルシッドが駆け寄ってくる。

 

「ハルト! 大丈夫?」

「近づくな殺すぞテメェ! おい」

 

 パルシッドに槍を向けるハルト。先程の一撃を見たパルシッドはそれだけで戦慄し、少し後退する。どうやら今のハルトは仲間と敵の分別さえつかないようだ。

 

「ハ、ハルト…眼鏡かけて!」

 

 その言葉に我に返ったハルトはポケットに入れていたメガネを手に取って装着する。すると先程までの表情と打って変わって、いつもの表情に戻った。その様子を見て安心したパルシッドは地面にへ垂れ込んで言う。

 

「もう…そのメガネ外したら人格変わるのやめてよ~。だから『暴騎士』ハルトとか呼ばれるんだよ…」

「悪かったな。いつも言ってるだろ、私は二重人格だと。でもまぁ…」

 

 ハルトは倒れたままのクロムを見て言う。

 

「敵は倒したからいいじゃないか。ライドは上手くやってるかな」

 

 

*****

 

<<光軍領リバーウォーク中心部―レイン/アキラ/ペドの3人>>

 

 ここはリバーウォークの中心部にある大きな屋根付き倉庫。1つだけある扉が勢いよく破壊され、一人の盗賊が倉庫内に吹っ飛ばされてきた。中にいるのは20人程度の盗賊達。その一番奥には最も偉そうな男が黒いソファに腰かけている。

 

「…誰だ」

 

 男がそう言ったのとほぼ同時に、破壊された倉庫の入り口に特攻部隊Rの3人が現れる。

 

「ッス。ライトレイ王国の特攻部隊Rでーす」

 

 ペドのその言葉だけが静かに倉庫内に響き渡った。男が合図をすると盗賊達が武器を持って男の前に立ちはだかる。それを見てアキラは太刀を、ペドは棍を強く握りしめて身構える。二人の後ろで腕組みしながらレインが口を開く。

 

「俺はなんも手出さないから、二人だけの力でやってみろ」

 

「了解です!」

「了解っす!」

 

 アキラとペドが返事をしたのと同時に、奥にいる男も叫ぶ。

 

「行け! この拠点を失ったら団長に会わす顔がねえぞ!」

 

 その言葉に少し疑問を抱いたレインをよそに、アキラとペドが正面から盗賊達と戦闘を開始する。アキラの速攻、ペドの範囲攻撃による連携で次々と薙ぎ払っていく。盗賊達も束になってかかるが、この二人の完璧なまでに息の合ったチームプレーの前になす術はない。

 

「疾風回転斬り!」

 

 アキラの超人的な脚力を生かした回転しながら太刀を振り回しながらの突進。盗賊達は近づくこともできずに倒されていく。攻撃を終えた後、目が回ってしばらく動けないのが難点であるがアキラなりに編み出した範囲攻撃であった。

 

「おらおら、薙ぎ払い!」

 

 ペドの棍が盗賊達の足元をすくい上げる。この攻撃の射程は5メートル程に及び、それは技の速度と威力が巻き起こす衝撃波に起因する。

 

 アキラとペドの2人がアジト内の盗賊達を一掃するのに2分程度しかかからなかった。二人の前に残るのは、ソファに座る一人の男のみ。男は静かに立ち上がると首をゴキゴキと鳴らして双剣を手に取る。

 

 【無法地帯・ブルー盗賊団副団長 ゴイル】

「ここまでやられるとはな…こりゃ団長に怒られるの確定だ」

 

 ゴイルが身構えた時、レインが問いかける。

 

「…お前が盗賊団のリーダーじゃねえんだな。誰だ? リーダーは」

 

「団長は『無法地帯のボス』、マーダイン・ブルーさ。名前聞けばわかんだろ? あの人ならずっと無法都市フリージムにいる」

「マーダイン・ブルー…だと?」

 

 言葉を失うレイン。それを不思議そうに見つめるアキラとペド。ゴイルが続ける。

 

「団長はここ3年間で無法都市を作り上げた。その圧倒的な実力に、全ての無法地帯住人が忠誠を誓ったのさ」

「無法地帯の盗賊なら俺らが全て退治したはずなのに!」

 

 アキラがゴイルに言い放つ。確かにアキラは特攻部隊になる前に無法地帯の盗賊達を全て壊滅させたはずである。

 

「ああ、エルド村の四人組のガキか。確かにお前らによってほとんどの下部組織が潰された。けど生き残りはいるもんでよ、団長が作り上げた無法グループ『ブルー』に集まって来て密かに無法都市は築かれていたのさ」

 

「そのマーダイン・ブルーって有名なやつなんすか?」

 

 ペドがレインに問う。アキラも興味があるようだ。ゴイルはその質問を聞いて鼻で笑っている。数秒の沈黙。静かにレインが口を開く。

 

「マーダイン・ブルー…こいつは3年前に隊員殺しの重罪を犯しながら逃走した、元特攻部隊Z隊長。王国最悪の犯罪者だ」

 

 

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