ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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●物語の時系列①
物語の時系列を整理していきます。

▽時間の経過
12217年(アキラ17歳) 第1話~第24話
12218年(アキラ18歳) 第25話~第48話
12219年(アキラ19歳) 第49話~


第四十九話 「俺達は同志だ」

 

 

 ―――時は経ちガンドラ暦12219年。アキラ達が特攻部隊に入隊してから2年が経過していた。アキラもライドも共に19歳となる。前年と比べるとより一層任務の数は減少し、ライトレイ王国・ラギ帝国・魔連合国の三国間は異常な雰囲気で均衡を保っていた。まるで各国が戦力を蓄え、後に起こる大戦争の準備をしているかのような静寂である。

 

 ライトレイ王国では、2年に一度特攻部隊の入隊試験を行っている。奇数年の今年も入隊試験が行われる。一昨年のアキラ達が受けた入隊試験時の志願者は615人。恐らく今回も同じくらいの志願者数が予想されており入隊試験を1週間前に控えた現在、金奏城内や司令部は慌ただしくその準備に追われている。大陸東部バーク砂漠南部(挿絵参照)に位置するライトレイ王国の第二拠点であり護衛部隊の本拠地『銅爽城』も同様である。主に金奏城・銅爽城の防衛・国境付近と国内の都市の防衛を任務とする『護衛部隊』も、特攻部隊と同じく奇数年に入隊試験を行う。

 

 

「いや、最近まじで任務こねえな!」

 

 午前7時前。特攻部隊Rの部屋でそう嘆いているのはペド・マーカー。以前は各部隊に最低でも三ヶ月に一度は任務依頼が来ていたのだが、最近はパッタリとそれが途切れてしまっている。言い換えれば平和ということなのであるが、いち早く昇隊を望む彼らにとってそれは良い事ではない。

 

「それに入隊してからもう2年経つのか…1週間後には後輩もできるってことだな」

 

 19歳となったアキラ・ロドルフはそう言いながらテレビをつける。入隊試験の準備のため、多くの司令部の人間はスカウトや勧誘のために城から離れている。任務を出している場合でもないというのは事実であった。するとアキラとペドの所に特攻部隊R隊長レイン・リックがやってくる。

 

「まぁそう嘆いても仕方ねえよ。確かに任務は最近来てないがここ数日間、各地で魔物が突然大量発生する事件がいくつか起きてるらしい」

「魔物が大量発生…!?」

 

 ペドが少し食い気味に問う。

 

「ああ。魔物っつーのは人気が無く、空気中に魔力が多く漂ってる場所に発生するらしいんだが、タイミングが不自然でな」

「―――つまり、隊長は誰かが故意的に発生させていると考えて?」

 

 続いてレインにそう聞いたのはハルト。眼鏡を中指でクイッと上げながら答えを待つ。レインは黙ってそれに頷いた。彼が言うタイミングというのは、光軍が入隊試験の準備のため慌ただしくなっているこの時期になってから魔物発生が増えたことを意味している。

 

「魔物の発生は大陸西部ワルファ遺跡、大陸東部バーク遺跡、大陸中央コロプス山脈南部などいずれも俺達ライトレイ軍に影響が出る範囲内に多い。嫌な予感がするな…」

「やめろよレイン…怖がらせないで…」

 

 部屋の隅でガクガクと震えているのはレインの双子の弟パルシッド・リック。その怯える様子を見てげらげら笑うペド。パルシッドは最近他の部隊の隊員と模擬戦をしたが連敗続きで自信をなくし、ネガティブモードになってしまっているのだ。

 

 その時、ガチャリと部屋の扉が開いた。入ってきたのは黒髪の青年ライド。

 

「あ、レイン。司令部が呼んでたぞ」

「オメエは敬語ってもんが使えねえのかいい加減よ…ったく」

 

 レインはそう言いながらも立ち上がり、ライドと入れ違いで部屋を出て行く。自分の部屋へと行こうとするライドの元にペドが急いで駆け寄っていく。

 

「おいライド! お前そろそろ別れただろ!?」

「あ? もうそれ聞き飽きたぞ…」

 

 ライドはそう吐き捨てると自分の部屋へ入って扉を閉めた。扉の前で両膝を床につけ絶望するペド。アキラはそれを見て笑っている。

 

「ライドはイケメンだし裏だと優しいんだ。そう簡単にアリッサと別れないよ(笑)」

 

 それを聞いたペドは素早く振り返ると、ソファに座ろうとするアキラに詰め寄る。

 

「いやアキラお前…1年前の合コンで抜け駆けしやがったくせによ! レンと付き合いやがって! くそ野郎!」

 

 実はこの1年でアキラはレンと、ライドはアリッサと交際していた。言わずもがなペドは独り身である。1年前のあの合コン(第46・47話参照)からずっとシータに言い寄っていたペドであったが、見事フラれてしまっていた。そんなペドにハルトが言う。

 

「見苦しいよ、ペド。恋愛っていうのはそう簡単じゃないし、求めたって始まるものじゃない。待っていればいつか始まる日が来るから、黙ってその時を待っ―――」

「うっせえ! ハルトに何がわかんだこんにゃろー! どうせハルトはずっと独り身だろ!?」

「…ごめんよ。実は故郷に婚約者(フィアンセ)がいるんだ」

「!」

 

 それを聞いたペドはへなへなと地面に倒れ込む。だが部屋の隅に座るパルシッドを見つけるとその横で一緒に体育座りをする。

 

「この部屋で俺の味方はパルシッドだけだよ…一緒に落ち込もうぜ」

「俺は弱い俺は弱い俺は弱い…俺は、弱い…」

 

 ペドの言葉も聞こえていないようで、ブツブツと小さく呟くパルシッド。

 

(…こいつ、まじでネガティブ過ぎだろ)

 

 その狂気にも思える落ち込み具合に、さすがのペドも一歩引いてしまった。するとライドが自分の部屋の扉を開け、広間に出てくる。その手には一枚の手紙のようなものがあった。アキラにそれを差し出して言う。

 

「そうだ忘れてた、これエルド村のザムザとバイスからだ。今日届いた手紙らしい。読んでみてくれ」

「ザムザとバイスから…? そういや全く連絡してなかったな」

 

============

  アキラとライドへ

 

 ひさしぶりだな。今回は言いたいことが3つあってこの手紙を出すことにした。

 まず1つ目、定期的に連絡よこせっつったのに2年間連絡なし! ふざけんじゃねえ。

 次に2つ目、エルド村が『王国境界線防衛エリア』に指定された。これは光軍の護衛部隊の防衛すべきエリアのことで、その中にエルド村が入って村に常に護衛がいる状態になったんだ。無法地帯と行き来自由だったけど、そこに新たに軍によって城壁が作られて、村は前よりかなり安全になったぜ。っていうのを一応報告しておこうかなと。

 最後に3つ目、俺ザムザとバイスはお前らがいなくなったエルド村の用心棒としてこの村に残ってたわけだが、今回の件でその用心棒が要らなくなっちまったわけよ。じゃあどうするかってなった時に俺とバイスが出した答えは『軍に入る』事で一致した。当たり前だよな。だってお前らも入ってんだ、俺らが入らないわけねえだろ? けど俺らが入隊試験受けるのは特攻部隊じゃねえ、護衛部隊だ。理由は色々あるけどよ、お前らと違った視点で俺らなりに2年間この国の現状を見てきたつもりだ。そこを考えると国の防衛力が低いんじゃねえかなって思ったわけよ。あまりにも人手が足りてない。別に特攻部隊がいらねえってわけじゃねえよ? むしろ特攻部隊は強くなってきてると思うし、世間の評判もその通りさ。だからこそ攻撃力に見合った防衛力が無いと判断して、俺とバイスは護衛部隊に入ろうと決めたんだ。なに? 心配してんじゃねえよ。お前ら二人が目指してんのは特攻部隊の頂点、特攻部隊Zだろ? 俺らも目指すのは護衛部隊の頂点、護衛部隊Zだ。お互い頂点についたら酒でも飲んで語り合おうぜ! じゃあな!

 

 ザムザ・レオナルド バイス・リバースより

============

 

 手紙を読み終えたアキラは丁寧に手紙を折り畳む。口元に少し笑みを浮かべていたのは、ライドも同様であった。懐かしさ、安心、期待、闘争心。いくつもの感情が同時に襲ってくるこの状況で彼らはまず笑ってしまう。アキラが言う。

 

「へっ…何が心配だよ。お前らに心配なんかするわけねえじゃん」

「だな。護衛部隊の頂点か、負けてらんねえぞ俺達も」

 

 ザムザとバイスからの手紙を読んで改めて特攻部隊Zになりたい、という気持ちを熱くさせたアキラ。負けてられない。親友達も努力してる、という事実がアキラ達に与えた影響は大きかっただろう。小さい頃に父ジオレクとした、特攻部隊Zになって大陸平和を実現するという約束を果たすために今アキラは気持ちを引き締めた。

 

 気持ちを引き締めたのはライドも同様。7歳の時に初めてできた友達であるアキラ・ザムザ・バイスの三人。この友情の大切さを改めて実感し自分の記憶を取り戻すという目的を踏まえつつ、アキラと共に大陸平和に貢献したいという思いが再び強くなっていた。

 

「なんかお前ら気合入ったみてえだな。俺もアキラとライドと夢は同じだぜ? 俺の故郷ピンファー村は戦争のせいで生活が変わっちまった。早く戦争を終わらせ、平和な世界を取り戻す! そのためにも特攻部隊Zに入って最前線で、俺の手で、必ず戦争を終わらせて見せる!」

 

 夢への熱意ならばペドも負けてなどいない。3人共戦争を終わらせる事への熱意は同じだろう。ここに来てアキラとライドとペド、元々仲が良かった三人の仲がさらに深まったといえる。その様子を微笑ましい表情で見守るハルト。部屋の隅で依然落ち込んでいるパルシッド。だがそんな事は気にせず、ペドがアキラとライドの前に右手を突き出す。

 

「よし。俺はお前らと会って2年経ったけどよ。こうやって同じ部隊に入って同じ夢を抱いてんのもなんかの縁だ! 今、ここに誓うぜ。目指すは大陸平和!」

 

 ペドのその言葉に、お互い顔を見合わせたアキラとライド。突き出されたペドの右手に自らの右手を重ねたライド。

 

「俺は小さい頃の記憶が欲しい。けどよ、そんな事言ってる場合じゃねえ。まずは大陸平和が目標だ! 俺はずっとお前らについていくぜ」

 

 それを聞いてニヤリと嬉しそうに笑みを浮かべたアキラも右手を重ねた。

 

「なんだろ、正直言うと大陸平和なんか実行できるものなのか2年前は少し疑問だった。けど今は違う! こうやって特攻部隊Rまで来て、お前らみたいに強い仲間も出来て。具体的なビジョンはまだ見えないけど、努力し続ければいつか必ず叶う。俺達は同志だ!」

 

 今、ここに3人の19歳の青年が夢を誓った。重ねた手を離した時、部屋にレインが戻ってきていた事に気付く。三人の照れくさそうな顔を見て笑うレインとハルト。レインは部屋の中央にあるテーブルの上に一枚の紙を置く。

 

==========

 任務依頼  対象:特攻部隊R(計6人)

概要:魔物が大量発生との噂、確認次第殲滅せよ。

場所:ベガキ樹海西エリア

難易度:A級

==========

 

「さあ出発は2時間後! 各自万全の準備をしろ」

 

 待ちに待った任務が来た嬉しさに浸るアキラ達。現在午前7時。出発は午前9時となる。喜ぶ彼らの後ろで、体育座りを続けるパルシッドが小さく呟く。

 

「…なんだよ、難易度A級って。そんなの二流部隊に来るもんじゃないでしょ…はぁやだなぁ」

 

 特攻部隊に入隊してから2年が経過。気合を入れなおしたアキラ達であったが、これから起きる事など誰も予期していなかった―――。

 

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