ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  『変身韋駄天』カイザー・グレトニウス
性別:男  年齢:25歳  所属:ライトレイ王国
使用武器:漆黒双剣  特技:変身魔法
 特殊部隊隊員。8年前(12211年)に特攻部隊に入隊したライトレイ王国黄金世代の一人。
 ヘラヘラした態度をしているが、彼の攻撃速度を超える光戦士はいないと言われている。
 変身魔法モシャスの使い手で、スパイとして魔連合国へ送り込まれていた。


第五十一話 「俺は強い」

 

 

「メラゾーマ!!」

 

 ベガキ樹海西部入口にライドの声が轟いたの同時に、炎球が上空のシルバーデビルへ直撃。爆発を起こす。落下した魔物は地面に転がり気絶している。

 

「オララララァ!」

「疾風突き!」

「ふんっ」

 

 ペドとアキラとハルトも必死にシルバーデビルを狩り始める。特攻部隊Rの6人の周囲、上空の至る所に存在するシルバーデビル。鞭を振り回してまとめて倒していく隊長レインであったが、ぼそっと呟く。

 

「…こりゃキリがねえな」

 

 倒しても倒しても次から次へと新たなシルバーデビルが現れる。戦う彼らの中で、唯一何もしていない男が一人。

 

「俺は弱い俺は弱い俺は弱い…」

 

 臆病者パルシッドである。最近敗け続きの彼は現在ネガティブモード。こうなってしまうとなかなか戦意が沸かないのが彼の悪い所である。攻撃してもかわされてしまうのではないか、まずダメージをくらわせなれないのではないか。そういった余計な事に思考がいってしまい、集中できないのだ。そんなパルシッドに一匹のシルバーデビルが上空から襲い掛かる。

 

「ギィー!」

「螺旋打ち!!」

 

 その魔物を撃ち落としたのはレインの鞭。驚きつつもレインの方を見たパルシッド。

 

「兄さん…ありがと」

「おいパルシッド。戦えないなら戦場に来るな。邪魔になるだけだぞ」

「…ごめん」

 

 彼も自分で戦わなければいけない事をわかっていた。しかしなぜか身体が動かない。いつも兄レインに助けてもらってばかりで申し訳なさばかりが募る。実はレインが実力の割に低い特攻部隊Rにいるのも、常に司令部にパルシッドと同じ部隊じゃなければ昇隊しない、と言い続けてきたからなのである。レインも自分無しではパルシッドがやっていけないことに気付いていたのだ。しかし、入隊して6年目。そろそろ独立してほしい思いもあった。

 

「お前いつもすぐ自信無くすけど、一番近くでお前の努力をみてきた俺だから言える事がある」

「え? なに?」

「お前は強い。もっと自信を持て! 一回でいい。自分は強いと思って戦ってみろ」

「…!!」

 

 その言葉に思考が停止するパルシッド。これまで自分が強いなんて一度も思ったことがなかった。ただ周りから特攻部隊トップクラスの魔力操作技術を持つ、などと言われていたがそんなもの大したことないと思っていたのだ。

 

(俺が…強い…?)

 

 頭の中で反復する。俺は強いのか。まだそれは確信となっておらず、疑問の域を出ない。その最中にも、アキラ達は次々とシルバーデビルを倒していく。はじめは数十匹いた魔物も残り数体となってきている。決してこのシルバーデビル達は弱い魔物ではない。しかしここ数ヶ月、鍛錬をさらに積んできたアキラ達。彼らの前ではただの数が多い魔物に過ぎない。

 

「ギギギィー!!」

「くっ」

 

 しかしアキラ達も無傷ではない。複数の魔物に同時に攻撃をされた時などにツメなどの攻撃を受けている。やはり数が多かった事がかなり厄介であった。戦闘を開始してから10分が経過していた。

 

「ダークマッシャー!」

 

 ライドの闇属性を纏った一撃が、最後のシルバーデビルを倒す。

 

「ふぅ…これで一通り倒したか?」

「うお、ここからも血出てた」

 

 彼らの周囲には魔物の亡骸が足場を埋め尽くすほどに転がっていた。10分間ただひたすらに戦い続けた上、多少ダメージを負っていた彼らは思っていたよりも疲弊していた。魔物の上に座り、持ってきた水を飲む特攻部隊R。戦わず、無傷だったのはパルシッドのみ。するとライドが口を開く。

 

「おいパルシッド。情けねえな…お前は魔力を一瞬で纏わせる事もできるじゃねえか。もっと積極的に戦えよ」

「うん…わかってる。わかってるけどよ…」

「何を勘違いしてんのか知らねえけど、お前が戦わないなら俺達が手柄を総取りするだけだ」

 

 ライドはそう吐き捨てると長剣についた大量の魔物の血を布で抜き取る。パルシッドは何とも言えない表情をしたまま自分の両手を見つめていた。ライドの言葉で、少しだけパルシッドの闘争心に火がついたのはこの場にいる全員が気付いている。アキラとペドは地面に寝っ転がって休んでいる。二本の鞭を腰に装備したレインが立ち上がる。

 

「さて、これだけで終わりかはわからない。もう少し樹海の奥に進むぞ」

 

 この樹海まで6時間かけて走って来た上、10分間連続で休む間もない戦闘。少し休憩をしたとはいえ、疲労の蓄積はかなりのものである。しかしこの程度で音を上げていては話にならない。それが二流部隊。一流部隊への昇隊を狙うならばまだまだ成長が必要である。そう実感したアキラとライドとペドであった。

 

 少し樹海の奥へと進んだ特攻部隊R。もう魔物はいないのではないか、そう全員が感じ始めていた時にペドが魔感によって感じ取った。

 

「ん! この先に大量の魔物の反応があるぜ…」

「まじかよ」

 

 ペドの魔感による探索技術サーチによって魔物の居場所を突き止めた。全員武器を構えて少しずつ歩を進めていく。もうすぐ夕方である。少し赤みを増した日差しが樹海の木々の間から辺りを照らす。異常な静けさの中、数メートル先の木々の奥が少し開けて場所になっていることがわかった時点でレインが足を止める。

 

「またすごい数の魔物がいる。二十匹程度か?」

「さっきの魔物の上位種ですかね、色が黄色い」

 

 ハルトの読み通り、この先に集めっているのは黄色い毛で体を覆ったシルバーデビルの上位種デビルロードであった。数は先程よりも少ないとはいえ、個々の魔物の能力は格段に上である。全員息を飲んで突入のタイミングを計る。恐らくこの開けた場所こそが魔物の巣とみて間違いないだろう。殲滅できれば任務完了となる。

 

「いくぞ!」

 

 レインの掛け声に応じて全員がデビルロードの巣に乗り込んだ。全魔物の視線が彼ら6人に集まったのがすぐにわかった。震えるパルシッドは一番後ろで立ち尽くす。ペドは真っ先に棍を振り回して走り出す。

 

「うおおおおおおおおおお!」

「ギィギィ!」

 

 突っ込んでいくペド目がけて集まっていくデビルロード。空中を飛ぶデビルロードをまとめて一気にレインの鞭が襲う。

 

「俺の相手もしやがれ」

「メラゾーマ!」

 

 その横でライドが炎が放つ。アキラとハルトもペドに続いてデビルロードの群れの中へと突っ込んでいく。太刀を素早く振り回し斬りつけるも、魔物はしぶとくなかなか倒れない。

 

「ギイー!!!!」

「!!?」

 

 デビルロードの太い腕から繰り出されるパンチがハルトの背中を襲う。少し吹っ飛ばされたハルトであったが、槍を瞬時にその魔物の顔面へ突き出す。

 

「狼牙突き!!」

 

 その強力な突きは軽々とデビルロードの顔面を打ち抜いた上に、さらに後方にいたもう一体のデビルロードにまで突きの衝撃を伝え吹っ飛ばす。特攻部隊Rとデビルロード達、お互いダメージを与えあいつつなかなか魔物の数は減らない。

 

「ぐあ」

 

 魔物に殴られて吹っ飛ばされたペド。さらに追い打ちをかけるかのように、上空からものすごい勢いで降下したデビルロードのツメの斬撃を腹部に受ける。

 

「ホーリーエッジ!」

 

 アキラの光を纏った一撃がその魔物を斬りつけ、吹っ飛ばす。

 

「大丈夫か? ペド」

「はは、こいつらさっきのやつらより手強いな」

 

 吹っ飛ばしたデビルロードはまだ生きており、羽ばたきながらアキラ達を睨みつける。残る魔物の数は19体。まだまだ先は長い。その近くでライドは一匹ずつ確実に倒していく。

 

「…ハァ、ハァ」

 

 長剣を振り下ろし、倒れている魔物にトドメをさす。個々の戦闘能力が高い魔物であるため、一匹倒す事でさえかなり体力を使う。ふと後方へ目をやると、4体のデビルロードに袋叩きにされているパルシッドが視界に映った。

 

(あのバカ野郎…)

 

 咄嗟に走り出したライドは、長剣に魔力を込める。それに気づき振り向いた一体の魔物を力強く斬りつける。

 

「火炎斬り!」

 

 斬りつけられ発火したデビルロードは羽ばたいて少し距離をとる。血だらけになったパルシッドは、攻撃が止んだことで魔物達から離れた。すると近くにレインが寄ってくる。

 

「おい、大丈夫か!」

 

 ふらつくパルシッドへ声を掛けるレイン。ライドはただそれを見守る。

 

「わりい…なんだか今日は戦えなさそうだ…」

 

 それを聞いたレインは右手で双子の弟の頬をビンタする。驚いた表情で見つめるライドを差し置いて、レインが口を開く。

 

「パルシッド! 目を覚ませ! お前が特攻部隊に入った意味を思い出せ!」

「特攻部隊に入った意味…」

 

 兄レインのこの言葉とビンタによってパルシッドの止まっていた頭が動き出す。元々パルシッドとレインが特攻部隊に志願したのは、誰もの憧れである伝説の戦士ジオレク・ロドルフのようになりたかったからである。アキラの父ジオレクは、かつて最強と言われた光戦士でありどんな任務もこなすという伝説も持っていた。男ならば強い者にあこがれるのは当然のこと。幼かった彼ら二人も、強い男になりなかったのである。

 

「俺は…強くなるために特攻部隊に入った…強くなりたい!」

 

 目に少し涙を浮かべながらしっかりと立ったパルシッド。目の前にいる3体のデビルロード達を睨みつけながら、静かに口を開く。

 

「兄さん、ライド。迷惑かけて悪かった。もう大丈夫。少し下がってて、危ないから」

「…?」

 

 ライドとレインは不思議そうに彼を見つめつつ、パルシッドの後ろへ下がる。三人が一カ所に固まっていたため、パルシッドの前にはどんどんとデビルロードが集まって来ていた。その数、11体。

 

「フー!」

 

 勢いよく息を吐いたパルシッドは、両手を広げると一瞬で魔力を両手に集めて詠唱を開始。

 

(何だこの魔力の出力量は!?)

 

 その魔力量に驚きを隠せなかったのはライドだけではなかった。少し離れた所で戦っていたアキラとペド、ハルトまでもがその瞬間にパルシッドの魔力を感じ取っていた。11体のデビルロード達も少し怖気づいた様子を見せたが、だんだんと彼へと近づいていく。刹那、詠唱を終えたパルシッドは両手の魔力を合わせて一気に前方へ放つ。

 

「イオグランデ!!!!!!!!」

「?!」

 

 デビルロード達を包み込むように巨大な爆発が突然巻き起こった。その爆風によって周囲の木々は倒れ、ライド達も少し後退してしまうほどの超威力。爆音と舞い上がった土煙のせいで全員何が起きたか理解できていなかった。煙が晴れると、彼らの前には身体の飛び散った魔物達の屍が転がっている光景が広がっていた。

 

「…やっとわかった。俺は強いんだ」

 

 

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