『光法天』ディーン・ロム
性別:男 年齢:32歳 所属:ライトレイ王国
使用武器:光杖 特技:魔法全般
特殊部隊隊員。10年前(12009年)に特攻部隊に入隊した。
光軍最強の魔法使いであり、圧倒的な魔力量と使用魔法数を誇る。
現在16時前。辺りを落ちかけたオレンジ色の陽光が包む。ガンドラ大陸北部にあるベガキ樹海、その西部ベガキ遺跡付近に特攻部隊R6人はいた。彼らの周りには無数の魔物の死体が転がっており、木々もいくつか倒れる程の激しい戦闘の痕跡が伺える。
「すごい…」
静寂をアキラの一言が突き破る。最上級の爆発魔法を唱えたパルシッドは、その場に膝をつく。相当疲労が溜まっていたのであろうか。しかしその表情は満面の笑顔。自分を卑下し続けていた男が兄レインの言葉によって目覚め、本来の自分の力を発揮することができたからである。
「やればできるんだ。この感覚を忘れんなよ」
「うん」
特攻部隊R隊長レインの言葉に頷くパルシッド。槍を地面においたハルトが口を開く。
「さて、これで魔物は全部片付いたかな?」
「そのようだな」
ライドも長剣を腰に装備する。彼らが任務を開始してからそこまで時間は経っていないが、全員が相当なダメージを負っている上にかなり疲労が蓄積されている。しばらくここから動けそうにはないだろう。パルシッドもライドもかなりの魔力を消費しているので、しばらく休憩して回復しなければ身体に力も入らない。
「ぷっはー! こりゃ疲れたな~」
水を飲み終えたペドが大声で叫ぶ。だが他5人もそれには同意。レインが時計を確認し、
「そうだな、あと数分経ったら司令部に任務完了の連絡入れるぞ」
「え…休めるのあと数分だけかよ!」
騒ぐペドにレインが言う。
「いいか? ここはベガキ樹海。ラギ帝国と魔連合国の国境に近い。あまり長居するのは得策じゃねえんだ」
彼が言う通り、ベガキ樹海に長くいるとどちらかの見回りの軍に見つかる可能性が出てくる。もちろん見回りなど両国ともしていないだろうが。何よりここから金奏城まではかなりの距離がある。もし何か非常事態が起きた場合に対応ができなくなる、という理由もあって早く帰還すべきとレインは主張した。
特攻部隊Rが通ってきたバーク砂漠やこのベガキ樹海はいわば無法地帯。どの国家の領土でもない地域である。バーク砂漠は光軍の銅爽城があるため光軍の監視下に置かれていると言ってもいいが、このベガキ樹海はまさに無法地帯。それもかなり広い森となっている。『魔界の門』が奥地にあることもあり、稀に魔軍が存在していることも確認されている。現在の彼らの状態を考慮に入れると、なるべく早く城へ帰還することが第一である。
「俺達は一旦銅爽城に寄って休むんだったよな? 銅爽城までも遠いしもう進もうぜ。そんな休んでる場合じゃねえ」
ライドがそう言うと、レインも頷く。まだ休憩が欲しそうなペドとパルシッドも渋々立ち上がり全員ベガキ樹海からバーク砂漠へ向かって南下を始める。ペドが口を開く。
「おい多分この任務で昇隊決まったろ!? 一気に特攻部隊Zまでいけっかな」
「それは無いんじゃない? 一気に8つ飛ばして昇隊なんて…いってもXくらいだな」
そう言ったアキラであったが彼の表情も非常に自信のある顔をしていた。それはライドもペドも同じである。彼ら3人は、特攻部隊Rに1年以上所属しておりお互い切磋琢磨しながらかなりの成長を遂げている。入隊試験で初めて会ったペドと、現在は親友という仲にまでなったアキラとライド。同年代で話も合うし気も合う。そんな仲間ができた事がライドにとっては非常に嬉しい出来事であった。
「まぁ期待して待ってようぜ」
「またライドは何でそうやってちょっと偉そうなんだよ~」
「うるせえ」
ペドの突っ込みにも笑って返すライド。7歳の時にアキラと出会ってからエルド村を出るまで、特に新たな人間関係を築くこともなく生きてきた彼であったが、特攻部隊に入ってからはどんどんと知り合いが増えていく。元々自分の過去の記憶を取り戻す事が目的であったライドだが、今のこの状況が楽しいと段々と思ってきていた。無論、前提としてすべての行動の根底には記憶を取り戻すという動機が存在しているのだが、その目的の優先順位が下がってきている事に本人も気付いていた。
「ピピピピピピッ」
「?!」
突然鳴り響いたのはレインが持つ通信機。通話を受け取ったのだ。画面には『光軍司令部』と表示されている。ちょうど任務完了を報告しようと思っていた時であったので、すぐに通話のボタンを押す。
「はい、こちら特攻部隊R隊長レイン」
『こちら司令部キング・スコードマンだ。特攻部隊R、今どこにいる?』
「つい先程任務を完了させて、今ベガキ樹海西部を南下してます」
『任務は終わったか、よし。大陸座標で位置を教えてくれ!』
電話の相手である特殊部隊のキングはどうやら急ぎの用らしい。大陸座標というのは、ガンドラ大陸を縦に26個、横に26個分けたブロックで位置を表すもの。大陸最北の横一列をA列、その下の横一列をB列という具合で分けており、大陸最南の横一列がZ列となる。同様に大陸最西の縦一列が1列、その右の縦一列が2列という具合で、大陸最東の縦一列が26列となる。例えば金奏城はTの13ブロック、銅爽城はPの21ブロックなどと表記できる。これによってガンドラ大陸を676ブロックに分ける事ができ、凡その位置を伝えることができるのだ。ちなみに大陸座標は通信機に常に表示されている。
「Eの17ブロックにいます!」
『E17か…。J20だから…うん、そうだな丁度いい。特攻部隊Rではレインとペドが魔感を使えるんだよな?』
「え、はい」
『疲れてるとは思うが緊急任務だ! とにかく今は一刻も早くE20ブロックの中心へ向かってくれ! 任務の概要は移動中に伝える! 急いでくれ』
キングの声から伝わる焦りがレインを緊張させていた。只事ではない。一方その周りでレインを見つめるアキラ達は、電話の内容は聞こえないもののレインの様子から同様の雰囲気を感じ取っていた。全員が武器をしまい、いつでも動ける準備を整えている様子だ。それを確認したレインは通信機を顔から離すと、口を開く。
「お前ら、詳細はよくわからないが緊急任務だ。このまま銅爽城へ帰らずにE20ブロックに至急向かうぞ! それとペドと俺で交互に200メートル以上の魔感『サーチ』を行うように。まずはペドから頼む!」
「了解!」
ペドだけでなく全員がそう返事をすると、レインは左手に地図を持ち、右手で通信機を持ちながらE17からE20へと東への移動を開始した。次いで全員も走り出す。先程までの疲労が嘘のように、緊張感を持ちながらも生き生きと走る特攻部隊R。
(魔感『サーチ』)
ペドは魔感を発動させ、自信の半径370メートル程のサーチを開始した。370メートル、それは無論レインの要求を大きく上回る値であった。また、それはペドがサーチをある程度継続できる最大限の範囲でもある。この状態はおそらく30分も持たない。そんな事はわかっていながらペドが自身の最大限の力を尽くそうとしていることは、司令部からの緊急任務という異常事態による冷静さの欠如などではなく、キングから任務を下されたレインがペドを頼りにしてくれているという事実が彼に与えた自信と、仲間のために力を使いたい、という彼の決意に起因していた。
『つい先程、銅爽城が5人の魔戦士に襲撃されたという情報が入った。城内の資料格納庫の強固な金庫の壁を切断し侵入、警備の護衛部隊も首や腕など身体が切断されて対峙した戦士はみな死亡。それから考えると、敵の中には極めて威力の高い剣技を使う者がいるだろう。城の見張り台のカメラによるといくつかの資料を持ち出し、ベガキ樹海方面へ逃走したらしい。資料を持っているためか魔戦士達の移動は速くないが、護衛部隊は追撃は苦手である。銅爽城はP21、敵は北上しJ20方面へ逃走している。ベガキ樹海にあるルートを通るとすれば、魔界へ行くためにはJ20→I20→H20→G20→F20→E20→D21→C22→C23→B24といくのが最短ルート。なので特攻部隊RにはE20へ先回りして、待ち伏せして足止めをしてほしい。現在特殊部隊2名と特攻部隊Zが急いで向かっている』
「わかりました。任せて下さい」
『お前達は連続任務となる、無理はするな。援軍が来るまで魔戦士達を足止めしてくれるだけで構わない』
任務の概要を聞いたレインは通信機を切る。要は魔軍の戦士5人をE20ブロックで待ち伏せせよ、ということである。しかしレインの脳内では、足止めだけで終わる気など全く無かった。
*****
一方、ここはガンドラ大陸バーク砂漠北部。大陸座標はJ20。砂漠を駆け足で進んでいるのは5人の魔戦士達。黒刀を装備した一人の男が資料の入った大きなアタッシュケースを持っている。
「もうすぐI20ブロックへ入るぞ」
彼らは誰一人傷を負っていない。つまり無傷で銅爽城へ侵入し、資料を盗む事に成功したのである。彼らの視線のかなり先にはベガキ樹海の入り口が見える。樹海へ到達するまではまだまだ時間がかかるだろう。
【魔軍・殺人十三人衆 ドロテア】
「ケッ…移動魔法使えるヤツでもいりゃあもっと楽な仕事だったのによォ」
【魔軍・魔界テイガス国直轄第三暗黒騎士団団長 ビワンガル】
「移動魔法使えんのはアステンダーツ国の幹部達だけだろ。ずりいよな」
【魔軍・魔界テイガス国直轄第三暗黒騎士団団員 バルコイ】
「あそこのヴィルヴァンダさんは部下に厳しいらしいし、俺はテイガス国でよかったわ」
魔戦士三人が雑談をする中、黒刀を持った男が言う。
「それは俺がお前らに甘いってことか?」
その言葉に、金槌を持った青年が答える。
【魔軍・殺人十三人衆 スピンスケイル】
「そんなことないですよ。それより、今光軍への潜入部隊から連絡が入りましたよ」
「何て言ってた?」
「『ベガキ樹海で一つの特攻部隊が待ち伏せしてる』そうです。さらに時間はかかりますが『金奏城から数人の強者が我々を追ってきてる』みたいですよ」
どうやら光軍の情報は彼らに筒抜けの様子。スピすけがそう言うと、黒刀を持つ男がニヤリと笑みを浮かべながら言う。
【魔界テイガス国国王・魔界五天王『K』 ケイランセル】
「待ち伏せと追っ手か…どうしようか? 皆殺しか?」