ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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第五十三話 「千載一遇のチャンス」

 

 

*****

 

 ―――同刻。ガンドラ大陸南部に位置するライトレイ軍の本拠地金奏城。その中央塔18階は光軍司令部特殊部隊のフロアである。19階から降りてきた2メートルを超える巨体を持つ男が声を発する。

 

 【光軍・特攻司令官『破拳』 グラナドウ・ゴウメクバード(12007年入隊)】

「今キズナと連絡をとってきたが、取られた資料は『コロプス山脈外形地図』と『コロプス山脈内形地図』の二つ!! これらは一つのアタッシュケースの中にまとめて入れられていたようだ!」

 

 このフロアにいるのはグラナドウと、特殊部隊隊員キングとクロスとカイザー、総司令官第三側近オルフの合計5人。オルフが口を開く。

 

 【光軍・総司令官第三側近『罰筋』 オルフ・リゲイ(12007年入隊)】

「それは特攻部隊と護衛部隊を使って、20年以上かけて集めたコロプス山脈の情報。俺らはしてた重宝。絶対に取り返さなければならない」

 

 現在、特殊部隊隊員シャインとディーンの二人がベガキ樹海へと急行している。それに続いて特攻部隊Zが向かっている、という形だ。そのためにアキラ達特攻部隊Rが魔軍を足止めしなければならない。するとカイザーが言う。

 

「けどよ、特攻部隊Rって連続任務になんだろ? 魔戦士5人が全滅させたのは護衛部隊O。そこまで弱いわけじゃねえ。ってことは敵は相当強い。最悪足止めもできねえかもな」

「もちろんその可能性もあるな。だが、今はこれが最善の策。ベガキ樹海付近にいる光軍は特攻部隊Rしかいなかった。シャインとディーンが到着するまでそこまで時間はかからないはずだ。それまで辛抱してくれればいい」

 

 キングのその言葉を聞くとカイザーは少し不満気ではあったが納得した様子。何より敵軍が光軍の拠点にまで攻め込んできた事自体異常である。仕返しをしなければ示しがつかないのも事実だろう。クロスは無言で夕焼けの外の景色を見つめる。

 

(アキラくん、ライドくん。僕は心配だけど…君達ならきっとこのピンチを大きなチャンスに変えられる気がしてるよ)

 

 

*****

 

 

 一方、ここは銅爽城南部にある魔法研究所跡地。魔法研究所というのは、ライトレイ軍が以前まで魔法の研究のために使用していた施設であるが、数年前に魔軍から侵攻された際に破壊され現在は使用されていない廃墟となっている。この日陰で、休んでいたのは特殊部隊隊員シャインとディーンの二人である。

 

「やっぱ砂漠はあついな…」

「だがのんびりもしてられない。そろそろ行くか」

「またピオリム使おうか?」

 

 ディーンのその問いに、首を横に振ったシャイン。ピオリムというのは対象の素早さを大幅に引き上げる魔法である。

 

「走るのは面倒だろ?」

 

 シャインはそう言うと両手に大量の魔力を瞬時に纏い、詠唱を開始する。

 

「出でよ、召喚魔法『キングスペーディオ』!!!!」

 

 彼の前に出現した巨大な魔法陣から召喚されたのは魔物キングスペーディオ。白く輝く体毛を持つ狼の様な四足歩行の魔物である。シャインはこの魔物にレオンという愛称をつけている。

 

「よ! レオン! 久しぶり」

「…シャイン。またお前、我を足として使う気か?」

「わりい。会いたくなってよ」

「構わん。急ぎの用だろう? さっさと乗れ」

 

 ちなみにレオンは人間と会話が可能である。驚いた様子を見せるディーンをよそに、レオンの背中にまたがるシャイン。彼が得意とする召喚魔法の中でも、最も使用頻度の高いのがレオンの召喚魔法である。シャインに稀に反抗するが、基本的に忠実に命令に従う魔物である。

 

「おいディーン、早く乗れ」

「お…おう。レオンっていうんだな」

 

 ディーンは戸惑いながらもレオンの背中に乗る。というのもディーンも噂には聞いていたが、シャインのレオンを見るのは初めての経験である。レオンが言う。

 

「よろしく頼む。ディーン。どこへ向かえばいい?」

「そうだな…ベガキ樹海だ」

「御意」

 

 レオンはそう言うと、素早く砂漠を走り出した。風を切るそのスピードは人間が走る速度を遥かに凌駕する。シャインは声には出していなかったが、この先で待っている弟アキラの無事を祈っているばかりであった。

 

(アキラ。今どんな状況か知らねえが、無理はすんなよ。すぐ行く)

 

 

*****

 

 

 そしてここはベガキ樹海中心部。大陸座標はE19。特攻部隊Rの6人はかなりの速度でE20へ向かっていた。15分毎にペドとレインでしていた魔感サーチの交代も、ペドの2回目の番が回って来ていた。レインが口を開く。

 

「おいお前ら、いいか? これは緊急任務。つまり異常事態。責任の大きい任務だ」

 

 そう言いながら笑う特攻部隊R隊長レイン。アキラ達は彼が何の事を言っていて、何が言いたいのか全くわかっていなかったが、その笑みを見て

 

「なるほどな」

 

 ライドが呟く。その呟きから上昇志向の強いアキラとペドもほぼ同時にレインの笑みの理由を理解した。パルシッドとハルトはわからない様子だ。眼鏡の位置を合わせながらハルトがライドに聞く。

 

「どういうことだ? 私にはさっぱり…」

 

 その問いに答えるのはレイン。

 

「責任が重い任務。つまりこれを成功させた時に俺達特攻部隊Rがもらう貢献度は計り知れない程大きなものとなるだろ。無論、命令通り足止めで終わってもそれなりの評価は受けるはずだ。でも、特攻部隊Zや特殊部隊の力を借りずに俺達の力だけで任務を達成した場合、足止めの倍以上の貢献度が貰えるだろう。緊急時に要求以上の働きをすればかなりの評価を受けるのは間違いない。つまり―――」

 

 全員が息を飲む。

 

「―――これは千載一遇のチャンスだ。昇隊のな」

「たしかにそうだけど…敵の実力は未知数。護衛部隊一隊を全滅させる強さを持ってるし、やっぱ足止めだけで終えた方が安全だと思うよ俺は」

 

 パルシッドがいつも通り慎重な意見を言った。彼はいつも心配性で慎重すぎていつも出遅れてしまうことは本人もわかっている事実。だがしかし、こういった場面ではそのような慎重な考えも必要となってくるだろう。現在少し自分の力に自信を持てたパルシッドではあるが、根本からの心配性は変わっていない。それを聞いてレインは少し考える。

 

「そうだな。まずは足止めのつもりでいこう。それでもし倒せそうならば全力で倒しにかかる。それでいこう」

「了解!」

 

 しかしパルシッド自身も昇隊の絶好の機会を逃したくはない。以前よりも精神面でかなり成長したパルシッドは、先程の魔物との戦いで完全に目を覚ましていた。隙あらば敵を倒して昇隊を狙う。それは特攻部隊R全員が思っていた事であった。

 

(俺は今日、卒業する。レインがいなければ何もできない俺から卒業するんだ。さっきのデビルロードとの戦いでわかった。俺は強い。俺でも戦える!)

 

 パルシッドの決意。それを横にいたレインも感じていた。全員がやる気に満ち溢れていた。

 

 

「―――もうすぐE20に入るぞ」

 

 レインが言った。大陸座標D19とD20には巨大な岩石の塊であるベガキ山が存在し通過は不可能。さらにE21は木々が隙間なく生い茂っているため、とても歩いて進む事はできない。そのため魔界の門へ向かうためにD21方面に向かうためには、E20を北東へ進んで行く必要がある。つまりこのE20の中心部で待っていれば必ず魔戦士達は現れる。

 しかしE20へ入るとまた一層樹木の背丈は高くなり、日が落ちている事もあるがかなり薄暗くなってきていた。さらに足元の雑草も多くなり、足場も悪い。現在の時刻は17時前。気が付けば全員が足を止めて休んでいた。

 

「ペド、交代だ。森が深い。辺りも暗くなってきたな。とりあえずE20の中心部へ向かうぞ。さっきまでのスピードはいらない。小走りでいこう」

(魔感『サーチ』)

 

 レインはサーチを発動した。その時、ペドははっとする。それは驚嘆、そして感動の体験であった。ペドが魔感を使えるようになったのは1年以上前のこと。魔感を使えるようになってから今まで、何人かの魔感を見てきたペドであったが、今発動したレインの魔感はこれまでのそれを遥かに上回る量であり、サーチの発動速度とサーチ範囲はもはや圧巻であった。

 

(すげえ! 隊長はこんな…)

 

 レインのサーチ範囲はペドの最大範囲半径370メートルを軽々と超越し、1000メートルにまで達していた。それは光軍の中でもかなり上位に入るサーチ範囲である。実はレインはペドに見せつけるために自身の最大限の魔感を使っていたのであるが、そんな素振りも見せずに平然とペドの前を走る。

 

 数分後、特攻部隊Rは大陸座標E20の中心部へ到達する。その時にレインはとあるミスに気が付いた。通信機が圏外の状態になっており、司令部と連絡が取れなくなっていたのだ。恐らくそれはベガキ樹海の中心部にいるため電波が届いていない事が原因と考えられるのだが、隊員達の不安を煽りたくなかったがためにレインは黙ったままでいた。

 

「ん!?」

 

 その時レインは突然足を止めた。全員驚きながら足を止めてレインを見る。

 

「いたぞ。5人だ」

 

 それはレインの魔感サーチ範囲についに魔戦士達が侵入してきた事を意味していた。彼らの位置はE20南部。それはギリギリ彼がサーチで捉えられる1000メートルの距離におり、少しずつ特攻部隊Rの方へ近づいてきていた。もちろん敵の中にも魔感サーチを使える者がいる前提で考えているレインであるが、彼のサーチ範囲を超えた使い手がいる可能性はかなり少ない。それほどにレインの魔感は優秀なのである。

 

「恐らくまだ敵はこっちの存在に気付いていない。俺達も離れすぎないように、E20の北東エリアへ進むぞ」

 

 レインのこの選択は正しい。現在特攻部隊RはE20の中央にいるが、魔界の門へ向かうルートとして次向かうのはD21。つまり北東方向である。サーチで捉えられる距離を保ちつつ、敵を引き寄せて待ち伏せする作戦だ。

 

「敵は5人。こっちは6人いる。足止めは十分対応可能。敵と遭遇した時は、一人が一人に対応する。残った一人は強そうなヤツと戦っている所に助太刀する。それでいいだろ」

 

 ライドはそう分析した。レインのサーチによると、敵との距離は900メートル。まだ余裕はある。少しずつ近づきつつ、特攻部隊RはE20の北東エリアに進む。

 

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