ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  シスキー・スネイド
性別:男  年齢:17歳  性格:明るい、楽天的
使用武器:なし  特技:ブレス
 蛇人族の生き残り。7歳の時に蛇人族の村を魔連合国に襲撃され仲間を殺された。
 襲撃した魔連合国への復讐のために特攻部隊に志願する。
 自在に体長1メートル程の蛇へ変身できる蛇人族ならではの能力を持つ。
 ちなみに言葉を伸ばすクセがある。



第五話 「さて、いこうか」

 

 

 最後の依頼を終えたシスキーとアキラは便利屋へと戻ってきた。シスキーの腹部にはノコギリによる複雑な傷痕があり、アキラが応急処置をしたものの包帯には血が延々とにじみ出ている。扉を開けると、中にはクロスとライド、ドールの姿があった。

 

「ただいま、ドールおばさん。今回の依頼はちょっとてこずっちまったぜ」

 

 ため息混じりの声でそう言ったシスキーは少し固めのソファに腰かけた。その様子をみてクロスが机の上にあった依頼書の内容を見る。目を大きく見開いた。

 

「デリング・ギリング兄弟…!? この都市の犯罪者のトップに君臨する二人ですよね?」

「そいつらならもー手錠(てじょー)もかけて牢獄(ろーごく)輸送(ゆそー)してもらってるんで大丈夫(だいじょーぶ)ですよ」

 

 シスキーのその言葉を聞いてクロスは確信した。この男は強い。王国領内でトップ3には入る治安の悪さを誇るこの都市カボルを拠点とする巨大犯罪グループのトップを軽々と検挙したシスキー。目の前にそんな男がいて、強欲のクロスは逸る気持ちを抑えることなどできるはずもなかった。

 

「ドールさん……いいですね?」

「はい。クロスさん、あなたになら安心してシスキーを任せられます。シスキーを、お願いします!」

 

 シスキーの覚悟、意志、その全てを理解したうえでドールはシスキーの旅立ちを心から祝福していた。シスキーもその言葉を聞いて少し目が潤んでいたことに、本人さえも気付いていなかった。

 

「ドールおばさん、長い間、お世話になりました! 必ず! 世界を平和にして、この都市カボルの治安も絶対よくするから!」

「ああ。行っておいで、シスキー。私はここからずっと応援してるからね」

 

 シスキーの大きな声に反応したのか、奥の部屋から少年ルークが出てきた。

 

「シスキー! 僕、決めたよ。シスキーがいない間、ここで僕が便利屋やる! だから絶対いつか帰ってきて!」

「おう、ルーク! 期待してんぞ。戦争(せんそー)が終わったら絶対かえってくるから待ってろよ」

 

「さて、いこうか」

 

 シスキーはドールから小さなリュックを受け取った。中にはほんの少しの荷物と食料が入っている。ドールとルークに手を振りながらシスキーは便利屋を出た。旅立ちの時。アキラとライドとクロスとシスキーは都市カボルの馬車が放置されている西口へと向かう。もう空は暗い。時刻は午後8時を少し過ぎていた。

 

 

 

 

 都市カボル西口へ到着した四人。停車してあった馬車へ乗り込む。馬車の主である老人が声をかける。

 

「また人が増えたねえ。さて、出発してよろしいかい? ライトレイ王国最強の拠点、金奏城へ」

「お願いします」

「長旅になるよ、お兄さんたち」

 

 馬の鳴き声と共にギシギシと音が鳴り馬車が発進した。馬車の内部は、五人掛けのソファが二つ向き合って置いてあるだけという広さ。四人が入ると、少し窮屈にも感じる。外は夜のため、後部にあるカーテンは全開にしてある。シスキーはそこから遠ざかっていく都市カボルを見つめていた。馬車は東口から北口へ回り込み、さらに西口まで回り込んでから西にある金奏城へ向かう。馬車は今北口を通過しようとしていた。その時クロスがピクリと体を震わせ、馬車の外を見た。

 

「ちょっと馬車を止めて下さい!」

「どうしたんですか?!」

 

 クロスの一声で馬車は止まり、全員がクロスを凝視した。そのクロスは、都市カボル北口からこっちを見ている三人組を凝視していた。その距離10メートル程。馬車を降りたクロスに続いてアキラ達も降りる。アキラ達は全く気付いていなかったが、クロスだけはその三人から放たれている異常なオーラを感じ取っていた。

 

(なんなんだ…あの三人組は!! 感じ取れる魔力量が桁違いだ。一般人ではない、何者だ)

 

 ライドにはその三人組は見覚えがあった。昼間都市の中心部で行われていた闘技場でみた三人だったからだ。銀髪の少年、黒髪で長髪の青年、黒いフードを被った男。その三人もこっちを凝視していた。黒フードの男が銀髪の少年に言う。

 

「クリス様、あそこにいる黒髪。昼間の、リゼルトードに勝ったライドってやつで間違いないですよ」

「だよな。あいつ何て魔力を持ってやがる。目を凝らさなくても『魔感』を感じ取れちまうよ」

「おい、ファルマ! 俺が負けたのまだ言ってんのかよ! 目立ったらダメって言うから手加減してたんじゃねぇか!」

 

 黒フードの男の名はファルマ。銀髪の少年はクリス。この会話はもちろんクロス達のところまで聞こえていた。クリスはクロスの『X』と書かれた腕章とマントを見て言う。

 

「お前、特攻部隊か」

 

「うん、僕は特攻部隊X隊長のクロス。君達、強さがあふれ出てるよ。どうだい、特攻部隊に―――」

「すまない、断る。俺たちは今『遊びに来てるだけ』なんだ。さ、ファルマ、リゼル、帰ろう」

 

 クロスの勧誘を躊躇なく遮ったクリス。おそらく年齢はアキラ達よりも下。リゼルトードとファルマは頷いて返事をした。クロスは頭をボリボリと掻き、彼らを見つめていた。

 

「なぜだか…またお前達には会いそうな気がするよ」

「ルーラ!」

 

 そう言ったクリスを、ファルマが詠唱した移動魔法が包み込み、三人は一瞬で姿を消した。

 

「移動魔法…か。ごめんね、馬車に戻ろう」

 

 勧誘に失敗し落胆するクロスと共に、アキラ達も馬車に戻る。四人が乗ったのを確認して再び馬車は動き出した。人間は鍛錬すれば他人の魔力量を感じ取ることができるようになると言われている。魔法というのは無限の可能性を秘めたものであり、その素となる魔力量が多ければ強いのは間違いない。つまり、相手がどれほどの強さなのかを目視で概算できる。また魔力量の他にもその人間が持つ力、体力、精神の強さなども含めて感じ取ることができ、人間から感じ取ることのできるそのオーラを総称して『魔感』と呼ばれている。もちろんこの魔感を感じ取ることができること自体にも得意不得意が存在し、一概に魔感が正しい強さの基準とはならないが、参考とすることができる。クロスは魔感を察知するのが上手い方であり、アキラ達にその能力はまだない。

 

「あ、そーだ! クロスさんにちょっと聞きたいことがあるんですけど」

「なんだい?」

 

 沈黙が続いた馬車の中でシスキーが口を開いた。

 

「10年前、おれの村を襲撃(しゅーげき)した魔連合(まれんごー)国軍のやつで二人、顔と名前だけ覚えてるんです。ヴィルヴァンダってやつとドスネイゴスっていうやつなんですけど、この二人がどんなやつか知ってますか?」

 

 それを聞いてクロスは少し動きを止めた。おそらくこの二人の名がシスキーの復讐の対象となる名前。ここで止めることができるのなら止めたい。復讐というのはこの世で最も理解できる、どこにでも生まれ得る、愚かな動機である。クロスはドールの気持ちも組んでシスキーの復讐を止めたい気持ちがあった。だが、いずれは知ってしまうこと。

 

「二人共、魔連合国軍のトップクラスの実力者だよ。僕もまだ会ったことはないけどね。まず、君達は魔連合国ってどんな国か知ってるかな?」

 

 クロスの問いに三人は素直に首を横に振った。その様子を見てさり気なく少し微笑みながらクロスが続ける。

 

「大陸の北東部の無法地帯の最深部に魔界につながる魔界の門っていうのがあるんだ。そこを超えると巨大な魔界が広がってる。魔界とこの大陸は別次元にあるのかよくわからないけど、その門を通らなきゃ魔界にはいけないんだ。魔界には五つの小国があって、それぞれを一人ずつ強者が支配してる。この五人は『魔界五天王』と呼ばれているんだ。この魔界五天王をまとめ上げるのが『魔王』でその補佐として『側近』もいると言われてる。魔界五天王の下には多くの兵士達が仕えていて、兵力はライトレイ王国よりも多いと言われてるんだ」

 

「それで、ヴィルヴァンダとドスネイゴスはどこの地位にいるんですか!?」

 

 必死に問いただすシスキー。アキラとライドは初めて聞く事ばかりで頭の整理が追い付いていない様子だ。クロスが答える。

 

「ドスネイゴスは魔王の側近の一人と言われてるけど、未だ謎が多い人物だよ。ヴィルヴァンダは魔界五天王の一人でとても厄介な魔法使いだと聞いてる」

「…なるほど」

 

「シスキーくん、君の目的もわかるよ。けど、復讐に囚われていたら必ず任務で失敗する。特にこの二人はとても危険な人物だ」

 

 クロスのその言葉に黙り込むシスキー。だがすぐに口を開いた。

 

「わかってますよ。復讐(ふくしゅー)第一じゃない。ただ、最終目標(さいしゅーもくひょー)として何か目標(もくひょー)があった方がやる気も出る気がして…」

 

 それを聞いて少し安心したクロス。だがアキラとライドは、そのシスキーの目に宿っている深く、濁りのない、澄み切った黒い意志を見逃していなかった。夜も更けてきた。アキラがあくびをしたのを見て、クロスが言う。

 

「さ、今日は疲れたろう。もう寝よう。入隊試験まであと10日だし、今の内にしっかり休んでおきな」

 

 そう言ってクロスは馬車の後部のカーテンを閉めた。

 

 

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