ドラゴンクエスト ―AKIRA―   作:軍艦ryn

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<<登場人物紹介>>
  グラナドウ・ゴウメクバード
性別:男  年齢:34歳  性格:大雑把、正義感が強い
使用武器:ナックル  特技:?
 特攻司令官。2メートルを超える巨体の持ち主。基本的に声が大きい。
 国王グリウズンへの忠誠心が高い。



第八話 「アクセル全開」

 

 しばらく睨みあう少年ストルスと魔物オーク。アキラとライド、シスキーは固唾をのんでその様子を見守る。出会ってまだ数十分。正直にいって彼らはストルスの実力を過小評価していたのは間違いない。彼が持つ木製の杖が振り回されたことによって、持ち手の部分から魔力が発生。ストルスの両手は透き通ったような綺麗な魔力によって包み込まれた。

 

「どういうことだ…? 俺が出す魔力となんか違う気がする」

 

 ライドが違和感を抱いたのはごく当然の流れである。魔力というものは基本的に紫色をした気体と液体の中間のようなエネルギーであるが、ストルスが生み出した魔力はまるでピンク色。この原因は彼が使う杖にあった。これはただの木の棒などではなく、列記とした戦闘用武器として生み出された杖。武器としての杖は、ほとんど例外なく振り回すことによって微量ではあるが魔力を生成することが可能である。杖によって生み出された魔力は通常の紫色ではなくピンク色をしており、これは通常通り魔法の詠唱にも問題なく使用可能。さらには消耗した魔力を回復するために自らの身体に取り込むことができるといった利点がある。基本的に一度身体から出した通常の紫色の魔力は再吸収することはできない。杖を使用する利点はその他にも、詠唱した魔法の狙いを定めやすいこと、魔法の威力が微量であるが上昇することなどが挙げられる。

 

「ブツブツブツブツ…」

 

 ストルスの詠唱は実は数十秒前から密かに開始していた。そのことにアキラ達は全く気付いていなかった。突如変化したストルスの覇気に、オークも思わず後ずさりをする。カッと見開いた目の先と両の掌はオークへと向けられた。

 

「メラ!」

「!?」

 

 小さな火の玉がオークの顔面を襲った。ダメージはほんの少し、といったところだろうか。アキラ達はポカンと口を開けていた。あれだけ時間をかけた詠唱がこの程度なのか、と目を疑っていたのだ。激昂するオーク。槍を振り回しストルスへ向かって走り出す。だがストルスの魔法は終わっていなかった。

 

「メラ! メラ! メラ! メラ!」

「グオッ!!?」

 

 続けて四発の火の玉。オークの顔、肩、腹などに直撃する。目に火が入り動きを止めたオークに、追撃するストルス。

 

 

「いけっ! メラストーム!!!!」

「グアアアッ! グオオオオオオオオッ!!」

 

 両手から放たれたのは十発以上にも及ぶ小さな火の玉。その放つ光、音、熱は想像を絶するものであった。オークの体の至る所へ着弾し発火する。それはまるで花火。顔や腹を中心に黒い焦げ跡がついたまま倒れたオークはそのまま消滅した。数にして計17発。一発一発の威力は小さいものの、避けることが困難となるこの技。ただの怯えるだけの少年では無理な芸当である。アキラ達は再びぽかんと口を開けたままであった。

 

「ごめんなさい、時間かけちゃって…」

 

 そう謝るストルスを見る目は、確実に変わっていた。返答しようとしたその時、彼らの間にあった透明な壁も消滅。それと同時に大きな音を立てながら部屋の中心に下の階へ降りる階段が出現した。

 

「まだ終わりじゃないのか」

「「オーク四匹の殲滅を確認しました。下の階へ降りてください」」

 

 四人はハイタッチを交わすと、機械音声に従い中央の階段を下る。降りたフロアは同じような白い壁がある小さな部屋。だが今回は正面の壁に隣の部屋へつながる扉がある。再び機械音声が流れる。

 

「「このフロアは、迷宮となっています。同じような部屋が全部で200個以上存在し、どこかの部屋にある1つの鍵を回収した上でゴールとなる部屋を見つけ、正面の扉の鍵をあけた先の部屋に全員がゴールした時点で終了となります。鍵は5つ存在し、そのどれか1つを使用するだけでクリアとなります。ちなみに制限時間は残り37分48秒となっています」」

 

 それを聞いて顔を見合わせた四人。何はともあれ急がなければならない。

 

「200個以上の部屋のどこか5箇所の内1箇所を見つけた上にゴールの部屋も見つけるってことか…なかなか厳しいがスピード勝負だな。行くしかない!」

 

 ライドがそう言うと、四人はまず目の前の扉を破り隣の部屋へ出た。そこには正面と左右の三つの扉が存在。一瞬迷って四人は足を止めた。

 

「もしかするとどっかに罠とかあるかもしれねーけど、時間との戦いなら手分けするしかねーな! 誰か一人ここに残って、三人は鍵かゴール部屋を見つけたら道順を覚えつつ大声(おーごえ)で合図するってのどーだ?」

「賛成ですよ、シスキーさん。多分圧倒的に足が遅いの僕なので、僕がここに残ります」

 

「おっけ! じゃあとりあえず散ろう!」

 

 このシスキーの冷静な判断は正しい。ストルスはこの部屋に残り、アキラ達三人はそれぞれ別の扉を開けて探索へ進んだ。スピード勝負、という言葉を聞いた時からアキラは自分の得意分野であると確信していた。小さい頃から足の速さ、動きの速さだけでは誰にも負けたことはない。それはまだ戦えない頃にエルド村を出て無法地帯に行ってしまった時に、盗賊などから逃げるために鍛えられたものであった。幼い頃から死の恐怖から逃げ回っていたアキラの瞬足に勝つのは相当困難であろう。

 

「アクセル全開でいくぜ!」

 

 そう独りで言ったアキラは、扉を足で蹴り飛ばし次の部屋へ進む。次の部屋にも扉は三つ。考えれば考えるだけ時間の無駄。自分のスピードを生かして全ての部屋を回ればいいだけの話。アキラは右へ、左へ、次々と部屋を駆け抜けていく。

 

 

********

 

 

(確率的に40個の部屋を回ればどこかに鍵はある。鍵はそのうち見つかるが、ゴールの部屋はどこだ? おそらく格子状に広がるこのフロア。端にあるとも限らない。虱潰しでいくのが得策なのか…?)

 

 ライドは思考を巡らせながら部屋の扉を破壊し進んでいく。そうして踏み込んだ部屋は、これまでの部屋と少し様子が違った。正面の扉がなく、左右の二つの扉しか存在しない。そして左の部屋に進めば、右側の扉が存在せず、正面と左側の二つの扉があるのみ。フロア全体の端の部屋へ到達したのである。

 

(ここが端だとすると、ずっと正面に進んでいけばいずれフロアの角の部屋につく。そうやって虱潰しに行くしかないか)

 

 この試験では、時間との戦い。その中で同じ部屋へ再び訪れることは時間の無駄となる。つまり、端の部屋から順々に巡っていくことが最も効率的。かつゴール部屋は鍵をあけてさらに奥の部屋に進む、と言っていたことを思い出したライド。

 

(この方法で探せば、いずれ一方向からしか入れない部屋が見つかる。そこがゴールとなる部屋に間違いない。まぁそれはフロア全体が格子状に広がっていて、端以外の部屋の扉は四つあると仮定した場合、なんだけどな)

 

 そう考えながら頭をボリボリと掻き、部屋を巡っていくライド。その時であった。かなり遠くの方から耳障りな大声が聞こえた。

 

「おーい! 鍵のかかった扉見つけたぞー!!」

 

 シスキーである。先を越された、と少し悔しい気持ちもあったが嬉しさが勝った。だが、まだ鍵が見つかっていない。シスキーはその部屋に目印として留まるとして、アキラとライドで鍵を探さねばならない。ストルスはシスキーがいるゴール部屋に向かったはずだ。ストルスがそこに到着すれば再びシスキーは鍵の捜索に迎えるだろうか。そう思考を巡らせていた時、再びシスキーの声が響いた。

 

「うおー! アキラが鍵も見つけたってよ! ライド、ストルス早く来いよー!」

 

 安堵。ライドは急いでシスキーの声がする方へ向かう。部屋の扉を長剣で斬りつけ、次の部屋へ進んでいく。騒ぐシスキーの声がだんだんと大きくなっていく。そうやって40以上の部屋を駆け抜け、辿り着いた部屋にアキラとシスキーとストルスの三人がいた。

 

「全員揃いましたね。アキラさん、その扉の鍵開けちゃってください!」

「おう」

 

 その扉には金色の錠がされており、残りの制限時間も表示されていた。残りは17分15秒。意外と余裕で四人は安心していた。アキラの手には同じ金色の鍵。錠に差し込み回すと、カチャリと音がして錠は地面に落下した。

 

「開けるぞ」

 

 そう言って扉を開けたアキラ。その部屋には何もない。まるで最初のオークと戦っていた部屋と同じ部屋のようだ。全員がその部屋に足を踏み入れた時、機械音声が流れた。

 

「「パーティ全員のゴールを確認しました。これで第一次試験は終了です! 制限時間の終了までこの部屋で待機をお願いします。制限時間は残り16分49秒となっています」」

 

「っしゃああー! クリアああー!」

 

 シスキーの歓声と共に四人は再びハイタッチをした。無事、第一次試験をクリア。だがまだあと二つ試験が残っている。ライドとストルスはシスキーのあまりの声の大きさに両手で耳を覆い隠す。アキラも目をつぶって耐えていた。

 

 

 

 

 ―――制限時間が終了した。それと同時に機械音声が流れる。

 

「「制限時間終了です。第一次試験の結果を発表します。ガンドラ暦12217年特攻部隊入隊試験第一次試験、受験者総数615名。ゴールに辿り着き第二次試験へ進んだのが156名。パーティが組めずに不合格が3名。制限時間内にゴールまで辿り着けずに不合格が456名。全153パーティでゴールしたのが39パーティとなります。ちなみにあなた達のパーティは39位中7位でゴールしています」」

 

 実は、この一次試験の様子は特攻部隊採用係も映像で全員分見ていた。特攻部隊入隊が決まった時に配属される部隊も同時に発表されるのだが、それは試験内容の評価によって決まる。つまり試験内で良い行動をした者には良い評価が与えられ、それが最初に配属される部隊に影響するのである。

 

「7位って結構早い方だよな? だとしたら良い評価もらえてんじゃねえか?」

「っしゃあー! ぜってー良い評価(ひょーか)もらえてんじゃん!」

 

 ライドの言葉も、またもやシスキーの大声によってかき消された。

 

 

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