side一夏
ニクスプロヴィデンスの装甲より射出されたドラグーンは縦横に飛び回り、
俺を包囲するように展開される。
しかし、この程度ならばドラグーンを運用するにあたっては、初歩中の初歩、対処法など幾らでもある。
例えば・・・。
「こんな感じにな。」
一番手近にあった一基のドラグーンに向け、
ビームライフルショーティーのビームを撃ちかけ、破壊したと同時にその隙間に飛び込む。
その直後に、俺が元いた場所を幾条ものビームが貫く。
ドラグーンやビット系の兵装には、
展開から発射までに僅かなタイムラグが生じる。
それをカバーするためには乗り手が波状攻撃を仕掛けるなり、
数基を牽制に用いて本命へのマークを薄くさせる等、気を配らねばならない事は多い。
だが、今回の様に何の捻りもなく、
ただ全方位に配置するだけでは抉じ開けられるのも無理はない。
「避けられた!?バカな・・・!?そんなことがあるわけが無い!!」
どうやら、俺が余裕を持って回避した事が信じられんらしい、
束は叫びながらも再びドラグーンを飛ばしてくる。
愚かしいことこの上無い、
俺は最強のドラグーン使いを知っている、
この程度の攻撃など、彼女の猛攻の前では小雨が降っている様にしか感じられない。
「この程度で俺を殺すと粋がっていたのか?
ちっぽけな自尊心にすがっているとは、天災とやらも堕ちたものだなぁ?」
「ッ!!だ、だまれぇぇぇ!!」
この感覚は、俺が殺したくーとやらを相手にしていた時に感じだ物と同じだな。
感情に身を委ねるだけで理性で戦わない、
逆上した人間がよくやる事だ。
理性の無い攻撃など、
避けてくれと言っている様なものなんだけどな。
つまらん、必要とは言えど、
この程度を相手にするのは極めて怠い。
さっさと墜としてやるとするか。
右手に保持していたビームブレイドを格納し、
ストライク専用ビームライフルを呼び出す。
「配置する場所が分かり易い、
この程度で俺を殺せると思うな。」
振り返り様にドラグーンを二基撃ち抜き、
空いたスペースに移動しながらも他のドラグーンを次々に撃ち抜く。
本体自体に手持ち兵装を持たせていないニクスプロヴィデンスを選んだのと、
この俺を敵に回したことがお前の運の尽きだったな、篠ノ之 束!
「これで終わりだ!!」
ノワールストライカーのレールガンも併用し、
一気に四基のドラグーンを落とす。
「そ、そんな・・・!?」
「残るはお前だけだぜ?束さんよぉ?」
ビームライフルを格納し、再びビームブレイドを引き抜きながらも、俺は一気に束に迫る。
「ま、まだだぁッ!!」
奴はドラグーンストライカーよりユーディキウム・ビームライフルを右手に保持し、左肩より複合兵装防盾システムを左腕に装着、ビームソードを発生させながらもこちらに向かってきた。
俺の間合いに飛び込むか、上等、受けて立ってやろう。
ビームブレイドとビームソードが切り結ぶ時、
閃光が迸る。
「出力は高いが、乗り手の技量は低い、
それに機体の完成度も低い、よくこんな機体を最高傑作と呼べたな?」
「黙れ!!お前に何がわかる!!私が創ったISを好き勝手に弄って!!お前はISを汚したんだ!!」
俺の言葉に激昂しながらも、
奴は怨嗟の叫びをあげた。
どうやら、うまくいかない鬱憤を、
全て俺のせいにしたい様だ。
あぁ、実に滑稽だよ、お前って奴はな。
「ならば、何故宇宙開発用のISを兵器とした?
俺達の使っているISはただ戦争するための道具、
それ以上でもそれ以下でも無いんだぞ?」
「・・・ッ!!」
俺はISのことを兵器として運用している、
ハナからこう言う物だと認識していたからな。
コイツは自分のやったことを認識してないんだろうな、
それ故に人に押し付ける、まるで子供の駄々の様にな。
まぁいい、コイツの役目は既に終わっている、
後は絶望と共に消えてもらおうか。
奴が動揺した一瞬の隙にユーディキウム・ビームライフルをビームブレイドで切り裂き、
胴を蹴って体制を崩させる。
「面白い事を教えてやろう、
ミラージュ、ゴールド、そしてペル・グランデ、
コイツらのデータをお前にくれてやったのは、この俺さ。」
「なっ・・・!?嘘・・・、嘘だッ!!」
「哀れ、お前はくーの右腕を切り落とした俺を憎み、
俺を殺すためにデータを使い、ダガーを作った、
だが、それでは俺を殺せないと知ったお前は、
アクタイオンからデータを盗もうとした、
そして、ミラージュ、ゴールド、ペル・グランデのデータを手に入れる事に成功した、つもりだった。」
そう思わせたのは、コイツの慢心、そしてそこに付け入ったルキーニの手腕だろう、
普通ならば罠と疑うなりなんなりするはずだが、
コイツはそれをしなかった。
実に愚かしい事だと思わないか?
俺は可笑しすぎて笑いそうだったよ。
「ところがどっこい、あのデータはアクタイオン社で失敗作として廃棄されるデータだったのさ、
それに気付くことなく、お前は俺の策略にはまったのさ。」
「嘘だ・・・、嘘だよ・・・!そんなことが、この束さんがそんなモノにはまる訳なんて・・・ッ!!」
動揺した隙に、左腕をビームブレイドで切り落とし、
最後の兵装を奪い取る。
「ウアァァァァァ!!?」
「お前達は俺が望む未来には不要の存在でな、
出来るだけ正当に消せる理由を考えていたのさ、
そして、お前達はまんまと俺の思惑に乗せられ、
世界に侵略戦争を仕掛けてくれた、お前達は実によく働いてくれたよ、俺の計画の為にな。」
本当に操り易かったさ、
俺の望みを叶える為の手駒としては最高の、な。
そんな事を考えながらも、
俺は再びビームブレイドを振るい、右腕と右脚を切り落とす。
「アァァァァァッ!!!?」
「お前は実に有益な手駒だったよ、
世界に悪意をばら蒔いてくれたんだ、後は俺が有効活用させてもらう、
だが、これから俺が作る世に、お前達の居場所は無いんだよ、
あるとするならば、地獄だけさ。」
コアがある部分にビームブレイドを突き立て、
ISの機能を停止させる。
さぁ、仕上げと行こうじゃないか。
ビームブレイドの刃を首筋に近付けながらも、
俺は束の髪を掴み、離すことは無い。
この一太刀は終わりの為では無い、
真章の幕開けの一太刀だ!
「ありがとう、そしてさようならだ、
世界的大犯罪者、篠ノ之 束、地獄の湯の加減を、お前自身で味わうといい!」
ビーム刃を発生させ、束の首を切り落とす。
首と離れた身体は、装甲の重量と相まって、
引力に引かれ、瞬く間に氷の大地へと落下していく。
地表に激突した瞬間、
奴の身体は投げつけられたトマトの様にひしゃげ、
辺りに赤い液体を撒き散らした。
哀れなものだな、世界を掻き回した天災の末路が、
この様な極寒の地で終わるとは・・・。
そんなことはどうでもいい、
この戦争での目的の内の一つを果たせた。
後はセシリアとシャルに任せておいた事が終われば、
ほぼミッションコンプリートだ。
いや、そういえばまだ、
やることが残っていたな。
「ガンダム各機に通達、
只今、この戦争の首謀者、篠ノ之 束の殺害に成功、
亡國企業構成員を完全抹殺後、ナナバルクに帰艦せよ。」
俺は全機に向け通信を入れ、
最後の命令を出した。
命令は至ってシンプル、敵の完全抹殺だ。
それが済めばこの戦闘の目的は達した事になるからな。
「まぁいい、残るはアイツだけだな・・・。」
さぁ、お前の親友は死んだぞ?
親友と同じ様に新世界への生け贄になってもらおうか。
織斑千冬。
sideout
noside
ラウラと真耶を相手に、
千冬は防戦一方の状況に陥っていた。
怒りを爆発させたラウラと真耶は、
防御をかなぐり棄てて攻め立てているために、
彼女が反撃する隙が全くと言って良いほどに無いのだ。
「くっ・・・!!やめろ二人とも・・・!!
私は一夏を止めねばならないんだ・・・!!」
「黙れ!!この偽善者がァ!!」
「お前は、私がここで討ちます!!」
一夏に束を殺させない為だけに、
彼女はこの戦いに参戦したのだ。
他の者を討つ覚悟など出来ていないに等しい。
それ故に、かつての教え子と同僚に、
武器として刃を振るう事が出来ないのだ。
撃ちかけられる弾丸を回避し、
突き立てられる刃を捌き続け、どれ程の時がたったのだろうか。
オープンチャンネルで一夏の声が響いた。
『ガンダム各機に通達、
只今、この戦争の首謀者、篠ノ之 束の殺害に成功、
亡國企業構成員を完全抹殺後、ナナバルクに帰艦せよ。』
無慈悲な一夏の声に弾かれる様にして、
彼女は一夏と束が戦っていたと思われる方向を仰視した。
そこには、絶望に染まりきった束だった物の首を持った、返り血で黒い機体を赤く染めた一夏が佇んでいた。
一瞥しただけで分かる、
束は一夏に傷一つ与える事も出来ずに殺されたのだ。
「一夏・・・!!お前は・・・!!お前という奴は・・・ッ!!」
その姿に憤慨した千冬は、
ラウラと真耶から攻撃を受ける事を無視し、
一直線に一夏へと機体を走らせる。
「お前は何をやっているんだ!?
何が望みだ!?一夏ァッ!?」
「俺のやっている事が理解出来んか?
哀れだな、織斑千冬?アンタにもここで消えてもらわなければいけないんでね、姉だとしても殺す。」
振られるビームブレイドを、
彼は同じ様にビームブレイドを振るい、受け止めた。
「殺すだと!?どの口がほざくか若造が!!」
「お前より実年齢は上さ、それに、
お前ごときが俺に勝てる道理は何処にも無い。」
ビームブレイドを巧みに振るい、
千冬の体制を崩し、すかさず蹴り飛ばす。
そこに一切の無駄な動作はなく、
洗練された技だけが光っていた。
「ぐっ・・・ッ!!一夏・・・!!
良いだろう・・・、私が修正してやる・・・!!」
「来いよブリュンヒルデ、いや、世界的大犯罪者、白騎士、織斑千冬、俺が引導を渡してやろう!」
束の首をラウラに投げ渡し、
自分はI.W.S.P.に換装し、千冬へと向かっていく。
「ラウラ、ソイツの首は絶対に無くすなよ?いいな?」
「は、はい・・・!!」
一夏から束の首を投げ渡されたラウラは、
おっかなびっくりながらもしっかりと受け取り、
一足先にナナバルクへと戻っていった。
真耶は彼女を護衛するかの様に追従し、
ラウラがナナバルクへ着艦した事を確認した後、
単機でダガーを相手にしていた鈴の援護に回った。
(さぁ、織斑千冬、地獄を楽しみな!!)
凄絶な笑みを浮かべながらも、
一夏は対艦刀を振り抜いた。
sideout
noside
『ガンダム各機に通達、
只今、この戦争の首謀者、篠ノ之 束の殺害に成功、
亡國企業構成員を完全抹殺後、ナナバルクに帰艦せよ。』
オープンチャンネルで響いた一夏の声に、
マドカとの戦闘後、ナナバルクへと向かう気配を見せたダガーを相手にしていた秋良は、
何処と無くやるせない様な表情をしながらも、その通信を無味乾燥な心地で聴いていた。
もうどうでもいい、今はただ、
やれる事だけをやろう。
そう自分を無理矢理納得させ、
彼は無心に、ただひたすらにシシオウブレードを振るっていた。
しかし、何か、
背中を冷たい氷でなぞられる様な感覚に襲われ、
彼は反射的にナナバルクが佇む方へと目を向ける。
ダークグレーの戦艦は、
出撃前と変わらない姿で佇んでおり、
何も変わらない様に見える。
だが、彼にはどうしても拭い切れない違和感があった。
まるで、誰かに呼ばれている、
そんな感覚がしたのだ。
「・・・ッ!!」
自分が行かなければならない、
反射的にそう考えた秋良は、ゲイルストライクのスラスターを吹かし、ナナバルクへと機体を走らせる。
「秋良!?どうしたの!?」
彼の近くでプロトン・セイバーを二刀流で使用し、
向かい来るダガーを相手にしていた簪は、
秋良の唐突な戦線離脱に驚きながらも彼に問いかける。
「誰かに、誰かに呼ばれた気がしたんだ!
悪いけど俺は先にナナバルクに戻る!」
「待って!秋良!!」
何か取り憑かれたかの様に急ぐ秋良に違和感を覚えた簪は、
ダガーを薙ぎ倒しつつも彼の後を追った。
その先に、何があるのかも分からぬまま、
二機は大空を駆けた。
sideout
次回予告
道を違えた姉弟の結末は、
血濡れの未来への序曲か・・・。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
悪鬼羅刹
お楽しみに。