インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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悪鬼羅刹

side一夏

 

ビームブレイドを構え、

猛然と迫ってくるアストレイノワールに対し、

俺は対艦刀を構え、迎え撃つ。

 

一応I.W.S.P.の対艦刀は、俺が使うことを前提にラミネート装甲でコーティングしている。

 

切り裂かれる心配はそこまで無いが、

相手は堕ちたとはいえども世界最強となった女だ、

取り越し苦労とも思える位の用心はして正解だろう。

 

「一夏ァッ!!」

 

「熱くなりすぎだ、もっとクールに行ったらどうだ?」

 

振られるビームブレイドを対艦刀でそらしながらも、膝蹴りを叩き込んで弾き飛ばす。

 

悪いが如何に最強だったとは言えど、

俺の力量には及ばんよ、特に格闘戦についてはな。

 

男女の筋力の差、身体能力、そして機体の完成度、

すべてにおいて、俺は千冬の上に立っている。

 

この差は何かしらの策を用いねば埋められる事の無い差ではあるが、

生憎目の前の千冬は頭に血が上ってる状態だからな、

そんな高度な事ができようはずもない。

 

ならば、油断せずにかかろうじゃないか、

こんな所で死ぬ訳にはいかないからな。

 

「くっ・・・!まだだッ!!」

 

弾き飛ばされたビームブレイドの代わりに、

千冬は左手でソードピストルを引き抜いて切りつけてくる。

 

だが、この程度の斬撃など、

俺にはスローモーション再生をしているかの様にしか見えない。

 

しかも、この程度の細剣など、

ある部分に強烈な力を加えれればいとも簡単に折ることが出来る。

 

機体のパワーアシストをフルに使い、

腕にかなりの力を込めて対艦刀を振るう。

 

激突と同時に、ソードピストルの刀身は拮抗する事もなく真っ二つに折れた。

 

「ば、バカな・・・!?これ程までの力があったのか・・・!?」

 

「脆いな、やはり天災はお前を利用する心づもりでいたようだな、そうでなければこれほどずさんな機体を親友に渡す筈も無い。」

 

「違う!!束は・・・、束はそんな事をするヤツじゃない・・・ッ!!」

 

俺の言葉に、千冬は動揺しながらも叫んだ。

 

哀れなモノだな、親友の本性を見ないまま、

利用され続けていた事に気付かないとはな・・・。

 

「ならば何故、この戦争を仕掛けた?誰かを利用するつもりが無いのならば、この様な無駄な殺傷もしないはずだ、貴様は自分の都合の良いところしか物事を見てねぇんだよ。」

 

そう、自分の目的を成そうとするならば、

誰かを利用し、踏み台としなければならないだろう。

 

利益を得る者がいる一方で、

逆に利益を得られず消えていく者も当然ながら存在する。

 

万人が得をする政策など無いのと同じで、

万人が得をする目的など無いのだ。

 

コイツはその事実から目を背けている、

自分の都合の良いところしか捉えず、

都合の悪いものは考えないように、見ないようにしている。

 

それが物事の偏りを生み、歪みの原因となっていく。

 

コイツはそれを理解せずに束と結託し、

世界を乱した、その罪は重い。

 

「ならば聞いてくるといい、篠ノ之 束にお前が直接な。」

 

これ以上相手にするのも徒労だ、

さっさと終わらせて、次のステップに進ませてもらおうか。

 

リミッターを解除し、

攻撃力を飛躍的に向上させる。

 

右手に保持されていたビームブレイドを弾き飛ばし、

そのままの勢いで対艦刀を振るい、右腕を切り落とす。

 

「ぐぅあぁぁぁぁっ!!?」

 

悲鳴をあげ、怯んだ隙に右腰に残ったソードピストルを破壊、

そのまま首にワイヤーアンカーを巻き付け、絞め上げながらも背後に回る。

 

「ガッ・・・!いち、か・・・!!」

 

「さようなら、千冬姉、この十六年間世話になったな、

せめてもの報いだ、俺がこの手で殺す。」

 

腰を蹴りつけ、ワイヤーで首を絞めあげながらも、

リミッターを外したパワーを使い、斜め後方に捻りながら引っ張り上げた。

 

これならば、ワイヤーアンカー程の太さならば、

首に食い込み、肉を裂き、骨をも砕ける。

 

案の定、千冬の首はそのままもげ、

繋がっていた部分からは血が噴水の様噴き出していた。

 

さようならだ、織斑千冬、

アンタの事は忘れねぇさ。

 

千冬の首を右手で掴みながらも、

ビームライフルを呼び出し、アストレイノワールのコアを撃ち抜いた。

 

下手に何処かの国に回収されても面倒だ、

ここで消しておくに越したことは無い。

 

さて、ミッションコンプリートだ、

ダガー達も拠点に戻って行くのが確認できた。

 

どうやらセシリアとシャルが上手くやれた様だな、

敵も消えたことだしな。

 

そう思い、ナナバルクへと帰艦しようとした時だった・・・。

 

「兄さん・・・!!アンタは、アンタは何をやってるんだぁぁぁ!?」

 

遥か彼方より、秋良の怒号が響き渡り、

アイツが凄まじい勢いで此方に向かってくる。

 

「チッ、耳障りな声をあげる・・・、何の用だ?」

 

「実の姉を殺すなんて・・・!!アンタは本当に人間なのかよ!?」

 

振られるシシオウブレードを対艦刀で受け止め、

少しでも距離を開けようと後退する。

 

面倒な事になったな・・・、

まぁいい、裏切りは確定、ならば殺すことも致し方無しだ!

 

sideout

 

side秋良

 

俺は一夏の首を目掛けて、

一心不乱にシシオウブレードを振るう。

 

頭に血が上りきっているのか、

熱で頭がガンガン痛むけど、そんな事はお構い無しに攻め続ける。

 

「何故だ!!何故アンタは実の姉を殺したんだ!!

答えろよッ!!おいぃッ!!」

 

何故ここに姉さんがいたのかは分からないけど、

アイツはなんでこうも簡単に実の姉を殺せるんだよ!?

 

怒りに身を任せながらも、

何時もの何倍もの力でシシオウブレードを振るい続ける。

 

「チッ!よく聞け、織斑千冬は俺達を裏切り、

亡國側に着いていた、それに俺は言っただろう、

裏切りを働いたのなら、喩え誰が相手であろうと殺すとな!」

 

アイツはシシオウブレードを対艦刀で払い、

俺の腹に蹴りを入れてくる。

 

あまりの衝撃に胃液を吐き出しそうになるが、

何とか堪え、ウィングソーも引き抜き、二刀流で迫る。

 

「だからって!アンタは血肉を分けた姉を殺せるのか!?

アンタの血は何色なんだよ!?おいぃッ!!」

 

刀一本と二本では攻め手に大きな差が表れる、

それに、一夏は姉さんの首をその手に抱えてる分、

片手しか使えて無い。

 

「お前まで俺を裏切るのか?秋良!!」

 

そう思ったのだが、一夏は対艦刀一本で俺が振るう刃を全て凌ぐ。

 

いや、それどころか此方に反撃しようとしてくる。

 

何処にそんな余裕があるんだ・・・!?

 

「裏切ったのはアンタの方だろうが!!

俺達を手駒として使ってたんだろ!?アンタはぁ!!」

 

突き出したシシオウブレードの斬撃は、

ストライクEの左肩の装甲を抉り取るけど、

一夏は構わずに突っ込み、ウィングソーを対艦刀で叩き折った。

 

「お前がそう思うならそうなんだろうよ、

お前の中ではなぁッ!!」

 

「・・・ッ!!」

 

その言葉は、俺の胸に深々と突き刺さり、

頭に上っていた血が、サッと引くような感覚を覚えさせた。

 

一夏・・・!!アンタは何を考えているんだ!?

どうしてそんな事を平然と行えるんだよ!?

 

「俺の考えに賛同しないのは勝手だが、

この攻撃は敵対行動と見なし、お前を排除する!」

 

俺が動揺して止まってしまった僅かな隙に、

リミッターを解除したであろう突きを、俺の心臓目掛けて打ってきた。

 

「・・・ッ!!」

 

咄嗟にバックブーストを行って後退するけど、

やはり相手の突きの方が幾分か速かった。

 

対艦刀が装甲を突き破り、

ゲイルストライクのコアを貫いた。

 

「ガハァッ・・・ッ!」

 

何とか後退してたからか、

薄皮一枚が抉られる程度の傷で済んだ。

 

だけど、PICが切れ、

俺は真っ逆さまに堕ちて行く。

 

なんでだよ・・・ッ!!一夏ッ!!

 

sideout

 

noside

 

秋良を追い、彼より少し遅れてナナバルク付近の空域に戻ってきた簪は、

目の前で繰り広げられられている戦闘に絶句した。

 

一夏と秋良が凄まじい形相をしながら戦っている事では無く、

何故一夏の手に千冬の首が収まっているのかが理解出来なかったのだ。

 

(何がどうなってるの・・・!?なんで・・・!?)

 

理解が追い付かない簪を他所に、

彼等の戦いに終わりが近付いた。

 

一夏が秋良の胸を突いた後、

PICが切れたのか、ゲイルストライクが落下を始めた。

 

「秋良ぁッ!!」

 

その瞬間、我に返った簪は懸命にスラスターを吹かし、

地表に堕ちて行く秋良を何とか受け止めた。

 

「秋良!!大丈夫・・・!?」

 

「なんとかね・・・、でも・・・。」

 

胸部を見やると、ゲイルストライクのコアが、

見るも無惨に砕けていた。

 

起動はおろか、修復も不可能であると一見して判別できた。

 

「何故だよ・・・!!何故殺さないんだ!?」

 

「戦う力を持たない雑魚など、殺す価値もない。」

 

冷たく言い発った一夏は、

もはや眼中にも無いとでも言うかのごとく、

彼等に背を向けナナバルクへと戻っていった。

 

「どうして・・・?なんでこうなっちゃったの・・・?」

 

どうして仲間同士で争う事になったのか?

どうして彼等は戦うのか・・・?

 

簪は自問自答するも、

答えが出る気配は一向に無かった・・・。

 

sideout

 

noside

 

一夏が千冬と戦闘を行っていた頃、

亡國企業実働部隊拠点に突入したセシリアは、

逃げ惑う構成員を殺害しながらも中枢部へとたどり着いた。

 

シャルロットはダガーを引き付けるため、

外部でミーティアを駆り、奮戦していた。

 

「ここが中枢部ですわね・・・、案外近い場所にありますこと。」

 

コントロールルームにいた構成員の頭部をリトラクタブルビームガンで寸分違わず撃ち抜きながらも、

彼女は悠然とコンソールに近付いた。

 

だが、そこであることに気付く。

コンソールの画面に表示されている数字がみるみる内に減少していくのだ。

 

「これは・・・、自爆シークエンスという訳ですか・・・。」

 

敵に情報を与えない為に、

拠点ごと自爆し、データを送信した経歴を残さない事は、非常に覚悟のいる決断であると言えるだろう。

 

だが、そんな事は、彼女の前では無駄にも等しかった。

 

「もっとも、無意味なのですがね、フリーズ(止まりなさい)。」

 

彼女がそう呟いた途端、

モニターの表示がerrorという文字に変わり、

自爆シークエンス自体が中断された。

 

「流石はミラージュコロイドウィルスですわね、

この程度の端末を支配下に置くなど、お手の物と言うわけですか。」

 

セシリアが先程使用した物、

それはアクタイオン社が開発した特殊なウィルスである。

 

ミラージュコロイドを媒介に、

端末を制御下に置き、自由に操作できるというものである。

 

これを敵機に対して使用すれば、

敵機がウィルスに対する対策を施していない限り、

自身の機体の姿を敵機のモニターから消し、

存在を気取られる事が無くなる。

 

つまりは真実を歪める力を持っていると言うことだ。

 

「ですが、今は真実を知るとさせていただきましょうか。」

 

コンソールをそのピアニストの様に細く美しい指で叩き、

次々に情報を呼び出していく。

 

「これは・・・、世界各地にある拠点、及び構成員の情報、それに融資していた政治家までの情報が・・・。」

 

開示される情報を読み上げる彼女の目が、

驚愕に見開かれる。

 

なるほど、一夏が欲しかったのはこれだったのかと・・・。

 

「ふ・・・、ふふふ・・・、やはり一夏様には敵いませんわ・・・、それでこそ、私達を支配する殿方ですわね。」

 

楽しげに呟いた後、

再びウィルスを操り、ダガー達に拠点内へと戻るコマンドを送る。

 

「あなた達には手駒として役に立ってもらいますわよ、

一夏様が成される、エルドラド(黄金郷)の礎になりなさい。」

 

愛しき男の成す事の先を思い浮かべ、

彼女は高らかに笑った。

 

まるで、何かに取り憑かれたかの様に・・・。

 

sideout

 

noside

 

篠ノ之 束が引き起こした最悪の侵略戦争は、

アクタイオン・インダストリー社所属の織斑一夏を中心とするガンダムタイプの機体のみで編成された14機の遊撃隊によって、僅か数日で鎮圧された。

 

この戦争により、全世界で死者七七万九千五百人、

行方不明者は約三百万人にのぼる惨劇となってしまった。

 

また、遊撃隊の頭目と目される織斑一夏の手により、

戦闘に参加した亡國企業の構成員及び篠ノ之 束が殺害された為、

情報がなかなか集まらないという事態を招いた。

 

その為、国家群は織斑一夏を呼び出し、

情報を聞き出そうと躍起になったが、

織斑一夏はセシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、及び彼に協力するガンダムチームの構成員と共に行方知れずとなっていた。

 

世界中の国家が血眼になって彼等の行方を追っている。

 

後に、この戦争はIS大戦と呼ばれる様になり、

物議を醸す事になる。

 

また、織斑一夏が率いたとされる遊撃隊は、

ガンダムタイプのみで編成されていたと言うこともあり、親しみを籠め、ガンダムチームとして語り継がれる事となった。

 

 

アクタイオンレポートNo.0<IS大戦>より一部抜粋。

 

sideout




次回予告

失意の内に沈む秋良を見かねた簪は、
彼に戦う意味を問う。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
誰が為に

お楽しみに~。
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