インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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天空の宣言

noside

 

IS大戦が終結して早十日、

世界はISに対しての不信感を募らせていた。

 

その勢いは留まる所を知らず、

日に日に勢いを増していった。

 

それもその筈だ、

国家、国民を護るための軍事力として配備されていたISが、正しくはISを使用する女達が、

この戦争に参加する事なく隠れていたこと、

または、敵側に着き、甘い蜜を啜ろうとしていた事。

 

更にはISを使用しての無差別殺戮が行われたと、

次々にあってはならない事が露呈していった。

 

国家は当然対応に追われる事となるのだろうが、

今は女尊男卑の時代、今だISを盲信する者達からの反発を受け、事実を隠蔽するという愚行に出た。

 

ところが、その甲斐も無く、

何処から情報を入手したのかは定かでは無いが、

テレビやラジオ、新聞などのメディアは事ある毎にISの危険性、問題点、国家の管理のずさんさを連日連夜報道し続けた。

 

その為、各地で男性の権利保護団体や、

親い男性が冤罪等の被害に遭った一部女性を中心に、

暴動やデモが巻き起こった。

 

世界の情勢が悪化の一途を辿る中、

世界に対して宣言をする者が現れた。

 

sideout

 

noside

 

『私の名はロンド・ミナ・サハク、

何処の国家にも属していない思想家だ、

この放送を見ている諸君らの前に、この様な形で現れた非礼を先ずは詫びたい。』

 

その日、全世界同時刻にゲリラ放送が流された。

 

画面に映し出されたのは、

膝裏まで届きそうな黒髪を持った、190㎝はある長身の女性、ロンド・ミナ・サハクであった。

 

彼女はアクタイオン社の援助を受け、

自身の思想を説く思想家である。

 

『私は、今この放送で、

ある事を諸君らに伝えたいと思う。』

 

毅然とした態度で、同時に凛とした声で、

彼女は世界に向けて言葉を紡ぐ。

 

『諸君らの中にも既にこの事を知っている者も多い物と思う、しかし、敢えて知らないと言うことを前提に語らせてもらいたい。』

 

ロンド・ミナは、相手の中を見透す様にすんだ目を、

画面の向こう側にいる市民達に向ける。

 

『今回、篠ノ之 束が行った侵略戦争の事はまだ記憶に、いや、その身に新しいものと思う、

腐りきった国家からの解放と唱いながらも、

奴等は戦う術を持たぬ諸君らに銃を向けたのだ。』

 

彼女の背後に設置されたスクリーンに、

宣戦布告を行う篠ノ之 束の姿や、

都市や人に次々と襲いかかる無人機が映し出された。

 

瓦礫に押し潰されひしゃげる人間、

無人機のビームに焼かれる者、バルカンでズタズタに撃ち抜かれる者、

見るも無惨な映像がノーカットで流され続けた。

 

放送を見ている者達は、

自分達は何とか免れたモノに対して、

口許を抑え、或いは堪えきれずに嘔吐する者もいた。

 

彼等の心に刻まれた傷は、

深く、大きすぎる物だった。

 

『今回の大惨事、いや、人災と呼んだ方が良いだろう、この戦争において、首謀者達を制圧したのは何者か、諸君達は知っているだろうか?

国家のIS部隊ではない、今だ年端もいかぬ少年少女達だったのだ。』

 

事実を押し付けるでもなく、

ただ現実を語るかの様にして、彼女は真実を提示していく。

 

この放送を見ている者達は、

既にある程度知っていた為に驚愕こそしなかった物の、

やはりかという風に憤慨する者も多くいた。

 

当然だろう、今までの生活を壊され、

中には大切な存在を喪った者もいるだろう。

 

それだけに、怒り、憎しみが彼等の中に渦巻く。

 

それを知ってか知らずか、

ロンド・ミナは言葉を更に紡いでいく。

 

『彼等は国家の拘束を嫌い、他者に踊らされる事を良しとせず、独自に行動を興し、見事侵略者を討ち取ってくれた、

諸君らにも見てもらいたい、彼等こそが我々を護ってくれた救世主なのだ。』

 

彼女の背後に設置されたスクリーンに、

アラスカで行われた戦闘の映像が映し出される。

 

そこには、特徴的なブレードアンテナを持ち、

人間の様な姿を持った十四の機体があった。

 

『各々の形状は異なれども、

彼等が駆る機体はガンダムと呼ばれる機体だ、

誰にも止められることなく、ただ正義の為に戦い続けた者達の姿なのだ、

どれ程深い絶望の中にも、諸君らを照らす光は在るのだ、

今回は、ガンダムチームを率い、我らを救うために戦ってくれた英雄を招いている。』

 

ロンド・ミナが手を差し出すと、

漆黒の機体、ストライクノワールが画面に姿を現した。

 

その機体はロンド・ミナの隣まで歩みより、

機体を解除した。

 

『私の顔を知っている方々は多いだろうが、

今日この場で再び名乗らせてもらおう、

ガンダムチームのリーダー、織斑一夏だ。』

 

黒髪の青年、織斑一夏はその瞳に強い眼光を宿し、

画面の向こう側にいる者達にその視線を向ける。

 

『私が今回の戦争で見てきたこと、

そして知ってしまった事を話そう。』

 

僅かな憤りと、哀しみを籠めた口調で、

彼は言葉を紡いでいく。

 

『この戦いには最悪のテロリスト、亡國企業だけではなく、国家のIS部隊も私達に対して銃を向けてきたのだ、

私は世界を、この放送を御覧になっている皆様を護るために、仕方無く応戦し、彼女達を制圧しました、

当然、手加減など出来る状態では有りませんでした・・・。』

 

一夏が手を掲げると、モニターに表示されていた映像が切り替わり、

彼等の母艦、ナナバルクを攻撃する打鉄やリヴァイヴを纏った少女達の姿や、

それを排除しようと戦うストライクノワールの姿が映し出された。

 

『これだけではない!モンド・グロッソ第一回大会優勝者、ブリュンヒルデである私の姉であった織斑千冬も、亡國側に着き、破壊活動を行いました。』

 

彼の発言に、世界中は凍り付く。

 

最強のIS乗りと唱われた織斑千冬も、

自分達を殺そうとしていたのかと・・・。

 

『私は何かの間違いであって欲しいと思いました、

しかし、その想いも虚しく、彼女は私に刃を突き立てようとしました、

私は生きるために、無我夢中で応戦しました、

結果は私が彼女を殺める結果となってしまった。』

 

悲しみをその整った顔に滲ませながらも、

彼は拳を握り締めた。

 

『何故こんな事になってしまったのか!?

私は憤り、亡國企業の拠点にて、

せめて、彼女達を戦争に駆り立てた理由を探ろうとしました・・・、そして、知ってしまったのです・・・!!

織斑千冬はかつて、この世界を乱した白騎士の操縦者であった事を・・・!!

そして悟ってしまったのです・・・!

彼女は私利私欲の為に動いていたのだと・・・!!』

 

悲しみと怒りを交えた叫びを発する彼の姿に、

放送を見ていた者達は驚愕に軽く目を見開いた。

 

ブリュンヒルデと称えられた織斑千冬も、

所詮は私利私欲に支配された俗物であったのだと。

 

この放送を見ている者達の中にも、

今でこそISの存在を疑問に思ってはいるものの、

嘗てはISを盲信していた者もいるだろう、

その者達は一様に、頭を叩かれる様な衝撃に襲われた。

 

『この戦いを望んだのは、

何も篠ノ之 束や亡國企業だけでは無かったのだ、

諸君らは亡國企業の実態を知らぬだろう、

だが、彼は知ってしまったのだ。』

 

悲しみに表情を歪ませる一夏の肩に手を置き、

宥める様に微笑んだ後、ロンド・ミナは言葉を紡ぐ。

 

『亡國企業は己の利益の為に争いを産み出すように、

国家の政治に干渉してきたのだ、

それはこの十年で始まった事ではない、

遥か昔から、奴等はこの世界に争いを、差別を産み出し続けたのだ。』

 

『それだけでは無い!亡國企業に荷担するのは、

自らの私利私欲の為に、この放送を御覧になっている皆様の命を脅かす者と、諸君らの国の政治家は手を組んでいるのです!!』

 

何処までも冷静に事実を提示するロンド・ミナと、

悲しみと怒りを湛え、語調を強めた一夏が交互に言葉を紡ぐ。

 

『我々が生き残る方法はただひとつです!!

この世界に蔓延る悪を、忌まわしき体制を葬る事です!!

さもなければまたしても、今回の様な悲劇が何度も起こる事でしょう!!』

 

『その為には、この忌まわしき体制を続けようとする者達を討つ以外に、この悪き連鎖を止めることなどできないと断言しよう。』

 

一夏の心に突き刺さる言葉を、

ロンド・ミナの涼やかな声が民衆達の心に染み渡らせていく。

 

『さぁ、悲しみに閉ざされた目を開き、

諸君らの真の敵を見よ。』

 

『これが我らの敵だ!!』

 

ロンド・ミナと一夏が全く同時に手を振り上げると、

背後のモニターに一斉に切り替わり、

百人以上もの人物達の顔写真が写し出された。

 

それは世界各国の政治家、実業家、

そしてIS委員会にパイプを持つ者達の者であった。

 

よく見ればそれぞれの写真の下に、

丁寧に実名や所属する国家まで記載されている。

 

『この者達が諸君らを弄び、自身の富の為に世界を混乱させる権化だ、

我々はその体制を崩すべく、今こそ立ち上がる時だ!』

 

『私達一人切りではこの体制は変わることはないでしょう、

ですが、私達一人一人が手を取り合い、支え合うことが出来れば、どれほど深い闇やエゴも、必ずや打ち払える事でしょう!!』

 

『さぁ、永遠の終わり、無限の希望への道へと、

共に歩もう、恐れる必要はない、

諸君らは独りではないのだから!』

 

放送を見ている者達を鼓舞する様に、

強く、強く語りかける彼等の姿は、

この混沌の世界に舞い降りた救世主の様にも写った。

 

「そうだ・・・!!俺達の命は俺達で護るんだ!!」

 

民衆の一人が立ち上がり、

周囲を見渡すようにしながらも叫んだ。

 

「ロンド・ミナと一夏は俺達の味方をしてくれるんだ!」

 

「私達も戦いましょう!!」

 

民衆達は口々に叫び、

一つの奔流となりて、何処かに向けて進み始めたのであった・・・。

 

sideout

 

noside

 

「こ・・・、こんな事が・・・。」

 

アクタイオン社の食堂にて、

一夏とロンド・ミナの共同声明を目にした秋良達は、

一様に驚愕の表情をしていた。

 

行方を眩ましていた一夏が、

突然全世界に対しての声明を発したのだ、

予想しきれている筈もなかった。

 

「一夏君・・・、何が目的なの・・・?」

 

全くもって、行動理由が理解できなかった楯無は、

口元を手で押さえながらも呆然と呟いた。

 

「こんな晒しみたいな事をして、

一体何の意味があるんだ・・・?」

 

楯無と同じく、放送の意味を理解できなかった雅人は、

怪訝そうな表情で答えを探るかの様に思考を巡らせる。

 

しかし、依然として何が答えかも出ない様で、

二人は顔を見合わせて首を傾げていた。

 

だが、ただ一人、

一夏の思惑に近付いた者がいた。

 

「くそっ・・・!!そう言う事かよっ・・・!!」

 

悔しそうな表情を浮かべながらも、

彼は力いっぱいテーブルを叩いていた。

 

「ど、どういうことなの・・・?」

 

彼の雰囲気に気圧されながらも、

簪は秋良にどういうことなのかを尋ねた。

 

「全て一夏の策略さ・・・!!

アイツは、自分の手を汚さずに事を進めようとしているんだ・・・!!」

 

「落ち着くんだ秋良、どういうことか教えてくれ。」

 

熱くなる秋良を宥める様に、

雅人は彼の肩に手を置きながらも話しかけた。

 

「・・・、あの放送の意味は、

表向きは放送を見ている人に対する事実の呈示だけだと思う、

だけど、本当の目的は違うところにあるんだ。」

 

「どういうこと?私にはただ何かを宣言している様にしか見えなかったけど・・・?」

 

彼の説明を訝しんだ楯無が尋ねるが、

秋良の表情は更に沈鬱な物となる。

 

「そう、宣言だよ、でもよくよく考えて見てくれ、

今、この放送を見ている人の殆どは、

あの戦争で大なり小なりの被害を被っている、

言ってみれば、晴らし様のない恨みと、怒りをその心に抱えているのさ。」

 

「・・・!!お、おい、それってまさか・・・!?」

 

秋良の説明に何か思い当たる節でもあったのか、

雅人は顔を青くしながらも彼に問う。

 

「そう、恨みと怒りを晴らすために、

人々は敵を求める、だけど肝心の敵が何処にいるのかが分からないから晴らし様のない、

だけど、そこに敵をちらつかせたらどうなる?」

 

「人々は敵を求め、その怒りを晴らす・・・。」

 

秋良の問い掛けに答えるかの様に、

雅人は震える声で答えた。

 

「そう言うことさ、でも、それだけで済めばいい方かもね、いや、それだけで済ませる筈もない、か・・・。」

 

頭を振る秋良の表情は、

何処か諦めに近い様な色が見受けられる。

 

「権力を持った人間というのはね、

その地位から堕ちることを嫌う、

喩え他の人間を、その命すら踏みにじっても、

その地位にしがみつく。」

 

独り言の様に、彼は自分の考えを口にする。

 

「ISを使って自分の身を護る、

しかし、相手はISによって被害を被った人達だ、

最悪、権力者だけではなく、ISに対しての憎しみを抱く。」

 

「そして人々を護るように一夏達が降り立ち、

ISを消していく、か・・・、くそっ、本当に出来すぎてるな・・・。」

 

そうなれば、今、アクタイオン社に残ったメンバー以外のガンダムチームは、

民衆を護る守護神の様な物だ。

 

憎むべき敵を廃し、ISを消し去ることで男女間の差別を終わらせる。

 

何もかもが出来すぎていた。

 

「行動を興してからでも止められると思ってたけど、

どうやら、そんな甘い物でも無かった、ね・・・。」

 

そう、彼等は反抗する理由を封じられた、

一夏が亡國に成り代わっての行動、つまりは力での征服を目論み、侵略戦争という行動を起こしたのならば、

秋良達は自身の正当性を盾に民衆を味方に着けることも出来たであろう。

 

しかし、その目論見は、一夏によって封殺され、

逆に、協力しない自分達が逆賊として追い込まれ兼ねない状況に陥った。

 

彼等は、戦う前に、勝負に敗れたも同然であった・・・。

 

sideout




次回予告

動き始めた一夏の野望、
果たしてそれが世界に何をもたらすのか・・・。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
真の狂気

お楽しみに
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