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ロンド・ミナ・サハクと織斑一夏が行った宣言は、
直ぐ様全世界に対して、大きすぎる波紋を産み出した。
各国のメディアは誰かに操られるかの様に、
後に天空の宣言と呼ばれる宣言について、
肯定的、もしくは民衆の怒りの炎に油を注ぐ様な報道を繰り返し放送した。
国家、いや、天空の宣言において顔、名を曝された者達は暴徒と化した民衆を止めようと躍起になった。
しかし、民衆の怒りは留まる所を知らず、
なお昂り、次々と亡國企業、IS委員会と関わりが深かった者達の邸宅に雪崩れ込んだ。
如何に警備を厳重にしていたとは言えど、
武装した暴徒を止めるにはあまりにも貧相な戦力という他無かった。
我が物顔で権利を振りかざしていた者達は、
次々と暴徒の私刑の餌食となり、断末魔を響かせていた。
だが、中には資産を使い、
ISをボディガード代わりに使う者もいた。
ISを使う道を選んだ事で、自身の身を立てた者が大半な中、
ISの優位性を押し立て、自分達に都合のいい様にしてくれる権力者を護る事で、自身の未来を護ろうとしたのだろう。
しかし、その行為は民衆に対して、
ISは民衆の敵というイメージを植え付ける事になる。
暴徒から権力者を護る為に民衆に銃を撃つという行為は、
傍目から見れば虐殺にも等しく、阿鼻叫喚、地獄絵図をそのまま再現した物になる。
だが、どれだけ悲惨に見えようとも、
それが現実での力の差である、
これでは民衆は手も足も出さず、虐殺されていくだけだった。
だが、虐げられる以外無かった民衆を護るように、
ガンダム達はその姿を現す。
アメリカで巻き起こる暴動を鎮圧すべく、
民衆に銃を向けるラファール・リヴァイヴを中心に組織されたIS部隊の前に、ソードカラミティが降り立った。
「が、ガンダムだ・・・!!ガンダムが助けに来てくれたんだ!!」
「私達を本当に護ってくれるのはガンダムよ!!
こんな腐った奴等なんかじゃないわ!!」
民衆は歓喜の叫びをあげ、
声援をソードカラミティに向けて送った。
彼等の目の前で、ソードカラミティは背中に装備されていたシュベルト・ゲベールを二本とも抜き放ち、
二刀流の要領で構える。
「・・・ッ!!」
「が、ガンダム・・・!!」
対するIS部隊は、あまりにも強力すぎる脅威の出現に、完全に怖じ気づいていた。
前大戦において、国家の拘束を物ともせずに、
たった14機で世界征服を目論んだ者達を討ち取ったのだ。
単機の戦闘能力も、自分達とは段違い、桁違いだと直感で察知した。
「な、何を怖じ気づいてるの!これが終われば報酬が待っているのよ!!それに相手はたったの一機、数で押すわよ!!」
恐怖を押し殺し、リーダー格の女が僚機に激を飛ばすと、
周囲に展開していたIS部隊のメンバー達は、
ハッとしたような表情を浮かべ、ソードカラミティに銃口を向ける。
数で押せば問題ない、そう判断した様だ。
(バカな奴等だ、己の力と相手の力すら計れない癖に、よくこんなモノを扱えるもんだな。)
ソードカラミティの搭乗者であるダリルは、
IS部隊の練度の低さ、そして富目当てで引き際を見失った滑稽さを鼻で笑っていた。
まるで、金に群がる亡者達を嘲る様な雰囲気だ。
(だがよ、ここで死んだ方が、後々死ぬよりも楽かもな。)
彼女の盟主、織斑一夏から聞かされた計画の一端を知る彼女は、憐れな敵に対して、同情的な思いを伺わせた。
「撃て!!撃てぇ!!」
四機のラファール・リヴァイヴが構えた銃口から、
多数の弾丸がソードカラミティに向けて発たれた。
しかし、ソードカラミティは弾丸を避ける事すらせずに、
自身の背後に立つ民衆を庇うかの様に腕を広げた。
「な・・・!?」
避ければ良いものの、何故動かなかったのかを理解できなかったIS部隊は驚愕し、動きを止めてしまう。
いや、よくよく考えてみれば分かる事だ、
ソードカラミティの背後には無防備な民衆がいる、
もし、ソードカラミティが避ける様な事をすれば、民衆は容赦ない銃弾に晒される。
つまり、IS部隊は民衆を撃ったも同然なのだ。
そう理解するよりも速く、
ソードカラミティは地を蹴り、一機のラファール・リヴァイヴをパイロットの少女ごと切り裂いた。
「キャアァァァッ!?」
僚機が一瞬にして切り殺されたのを見せ付けられたIS部隊のメンバーは完全に取り乱し、浮き足立っていた。
『逃がさない。』
ソードカラミティより、ボイスチェンジャーで加工された機械質な音声が響いた。
それはまさしく、現世に舞い降りた無慈悲な告死天使の宣告だった。
瞬く間に手近な二機を、
シュベルト・ゲベールを振り抜き、真っ二つに切り裂いた。
「あ・・・、あぁ・・・!」
残されたリーダー格の女は、あまりの恐怖に動くことが出来なかった。
段違い、桁違いなんて物ではない、越える事の出来ない壁が目の前に立ちはだかっている様な物だ。
遠くから民衆の歓声が聞こえてくる、
彼等は口々にガンダムを称える言葉、もしくは自分を貶す様な言葉を叫んでいる。
「や、やめて・・・!来ないで・・・!!」
戦意を完全に喪失し、逃げることすらままならない女は、
ソードカラミティに向けて震えた声で命乞いの様に叫んだ。
『終わりだ。』
しかし、無慈悲な刃は止まることなく、
機体もろとも彼女を切り裂いた。
全てを終えたソードカラミティは、
シュベルト・ゲベールの切っ先を、民衆が雪崩れ込もうとしていた権力者の邸宅に向けた。
その姿はまるで、民衆を導く様にも見えた。
「そ、そうだ、俺達が戦うんだ!!」
「よし!行くぞ皆!!」
その堂々とした姿を見た民衆は、
更に勢いを増し、邸宅に雪崩れ込んでいく。
程なく、邸宅内部から銃声が鳴り響き、
それが暫くの間、断続的に続いた後、パタリと銃声が止んだ。
恐らくは目的を討ち果たしたのだろう。
(コイツらも、か・・・、誰かに利用されてる事も知らないで・・・、いや、アタシも同類だな・・・。)
自嘲するかの様に考えた後、
ダリルはソードカラミティを飛翔させ、
民衆の前より忽然と姿を消した。
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天空の宣言から僅か一週間の内に、
公表された権力者の大半が民衆の手によって殺害され、世界は一つの意志の基に、急速度的に統一に向かって進んでいた。
だが、いくら憎しみの矛先が権力者に向いていたとは言えど、
ISが民衆の前に立ちはだかる度に、男達は自身達を虐げ、我が物顔でふんぞり返っていた女達に対しての怒りを再燃させ、報復へと走る者も現れた。
状況が悪いと判断したIS乗り達は、
公表された権力者達を護衛する事を放棄し、
ガンダムに破壊されずにいた機体、研究用として研究所にあったコアも機体に搭載、織斑一夏に対しての反抗の準備を着々と整えていた。
しかし、肝心の織斑一夏が何処に潜伏しているのかが分からないのでは、何処を攻撃すれば良いのかが分からない。
八方塞がりになりかけていた所に、
ある情報がもたらされた。
その情報とは、アラスカにある元亡國企業実働部隊の拠点に、ガンダムチームの旗艦、ナナバルクが入港している映像だった。
この情報に、IS乗りの女達は歓喜した、
織斑一夏も所詮は世界征服を企んでいる、
ならば奴を倒し、再び我々が利益を得ることが出来る世にしてやれば良い。
そう考えたIS乗り達は、まるで申し合わせたかの如く、全く同時にアラスカを目指した。
だが、彼女達は気付いていない、
その事すらも、一夏の計算の内だと・・・。
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その頃、アラスカでは・・・。
「クックックッ・・・、憐れな物だな、
与えられた情報に踊らされているとは、な?」
世界を動かした者、織斑一夏は、
揺れ動く世界を眺めながらほくそ笑んでいた。
自らの思惑通りに事が進むのが、
実に愉快で堪らないとでもいうかの表情であった。
「一夏、作業も終わったから、
私達はアクタイオンに戻るわ。」
「ご苦労様でした、後は俺が使わせてもらいますよ。」
彼は自分に話しかけて来るエリカに対し、
労いの言葉をかけつつもコンソールを操作していた。
幾つかの単語、記号が表示された後、
OKの文字がモニターに表示される。
「これで俺の指一つで運命が決まるという事だな、
奇妙な物だな。」
「・・・、ここまで来てしまった以上、
私は貴方を止めるつもりはない、でも、どうかその身体を大事にしてね?」
手持ち式のスイッチを掌で弄んでいる彼に、
エリカはまるで息子の身を案じる母親の様に話しかけた。
「ご心配なく、目的の完遂までは、
俺も命は惜しいんでね、そこまでは何がなんでも生き抜いて見せますよ。」
彼女の心配に礼を述べつつも、
彼は不敵に笑った。
「だから早く、貴女はここから逃げて下さい、
後の事は全部俺に任せてね?」
「・・・、分かったわ、それじゃあ、ね・・・?」
自分は大丈夫だ、という彼の笑みに押されるように、
彼女は今だ後ろ髪を引かれる様な思いを胸の内に秘めたまま、彼に背を向けて歩き去った。
「そうさ、俺はまだ死ぬ訳にはいかない、
その瞬間を見るまでは、な・・・。」
何処か憂いを帯びた表情を見せる彼は、
何かを悟っている様にも見える。
「それまではアンタにも付き合ってもらうぞ?ダリル?」
「分かってるっての、最初からそのつもりでお前に着いてきたんだ、手伝わせてもらう。」
いつの間にかやって来ていたダリルに向け、
彼は不敵に笑いながらも言いはなった。
「その言葉、有り難いな、
では、ナターシャと真耶を、離脱するナナバルクの護衛に回す、
残りのメンバーは手筈通りに配置させる。」
「分かった、アタシはアタシの出来る事をするだけだ、それに、お前の破壊の先とやらも見てみたい事だしな。」
一夏の命令に頷き、ダリルはその整った顔を歪めて笑い、コンソールルームを後にした。
「頼もしい限りだ、・・・、セシリア、シャル、ダガーの準備は出来ているな?」
『準備完了ですわ。』
『何時でも発進させれるよ。』
「ご苦労、お前達も手筈通りに動け、俺もすぐに動く。」
『かしこまりましたわ。』
『先に配置に着いてるね。』
セシリアとシャルロットとの通信を終えた彼は、
コンソールルームから出ていく。
その足取りは悠然たるものであり、
全てを司る覇王の様にも見えた。
「クックックッ・・・、まもなくだ、
新世界の扉が開く、この俺が握る鍵でな。」
掌の内にあるスイッチを眺め、彼は愉しげに呟く。
その笑みは、そのスイッチを押し込む事で起こる光景を知っているかの様でもあった・・・。
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織斑一夏が拠点を置くアラスカを攻めるため、
アラスカ沖には既に何隻もの軍艦や空母が航行していた。
今や空母は戦闘機の移送の為では無く、
IS乗り達に脅されての送迎用の船と化してしまっていた。
ISが登場する以前より、軍艦に乗り込み、
国防の一翼を担ってきた者達は、
当然ISに、其れを操る女に対しても良い感情を持っておらず、今回も女の私利私欲の為に利用されている形だ。
艦に乗り込んだ船乗り達はそれを不服としながらも、
心の内に圧し殺して任務に当たっていた。
その内の一隻、空母<タケミカヅチ>の艦長を務めるトダカは、
艦内で溜まり続ける鬱憤に対応しつつも、
ISに脅されている国家の対応に内心憤慨していた。
「艦長、IS全機発艦しました。」
管制官を務める若い兵士からの報告を聞き、
彼はそれで漸く一息ついた。
何せ、気紛れなIS乗りの事だ、
何かにつけて無理難題を押し付けて来ないとも限らない、用心しておいて損は無い。
「よし、タケミカヅチはこの海域に固定する、
あまり陸に近付き過ぎるなよ。」
『いや、艦隊諸君は直ちに転進したまえ。』
トダカの指示を否定するかの様に、
ブリッジ内に何者かの音声が響き渡った。
あまりにも唐突だったため、艦橋内にいた者達は警戒するかの様に辺りを見渡した。
その時、モニターにさざ波の様なノイズが走り、
黒髪の青年の顔を映し出した。
『こんにちは、私の名は織斑一夏だ、まずは不躾な通信を許していただきたい、この艦の責任者はどなただ?』
「私が艦長のトダカです、お初にお目にかかります、英雄、織斑一夏殿。」
突然の一夏の登場にも動じず、
トダカは敬礼しながらも名乗った。
流石は一隻の艦長と言うべき姿勢が、
彼には備わっていた。
『トダカ艦長、いきなりで申し訳無いが、
IS部隊が発艦した後、すぐに転進したまえ、この海域は危険区域内だ。』
「・・・!!」
突然の言葉に、艦橋内に衝撃が走る。
危険区域とはどういう意味だ?
何故彼は敵である自分達を助けようとしているのか?
全てが謎に包まれている為に、
トダカは即答する事が出来なかった。
『諸君らにも分かっている事だろう、
ISの時代はまもなく終焉を迎える、諸君らは新しい時代に必要な者だ、だから私は諸君らを助けようと思う、
さぁ、早く他の艦にも教えてやれ、
私は気が短いぞ?それでは、諸君らの無事を祈る。』
何処か脅すような口調で言い放った後、通信は途切れた。
暫くの間、艦橋内に重苦しい雰囲気が漂った。
困惑が支配する空気を、トダカの一喝が破る。
「各艦に連絡を取れ!!IS部隊を送り出した艦は、直ぐ様アラスカより転進せよとな!!」
「・・・!!ハッ!!」
トダカの指示を瞬時に理解したクルーは、
他の艦に連絡を取るべく慌ただしく動き始めた。
それから程なくして、
艦隊は転進し、アラスカより離れていった・・・。
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次回予告
拠点に攻め入る女達の運命すら、
彼の手に弄ばれる・・・。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
真の狂気 後編
お楽しみに。