side楯無
旧IS学園に向かうため、私達はそれぞれの機体を駆り、空を駆けていた。
IS学園跡地を指定したと言うことは、
その場所で一つの時代の終焉を迎えようという彼なりの皮肉なのだろうか?
いや、今はそんなことを考える必要なんてない、
彼がやろうとしている事を止める、ただそれだけを考えればいいんだ。
ブルーフレームセカンドリバイを操縦しながらも、
私は心の内の不安を圧し殺して、前に向かって飛び続けた。
その時、突然アラートが鳴り響き、前方から突如として大出力ビームが飛来してきた。
咄嗟に散開するする事でやり過ごし、
ズーム機能で前方に目を凝らすと、そこにはビーム砲を構えたデスティニーインパルスとグリーンフレームが佇んでいた。
「ファイルス先生・・・!山田先生・・・!!」
どうして貴女達まで彼の蛮行に加担するのですか!?
一体、何が貴女達を駆り立てたのです!?
「ここから先には進ませません。」
「どうしても通ると言うならば、私達を踏み越えて行きなさい!」
各々の武器を構えつつ、彼女達は私達に通信を入れてきた。
流石に知り合いが敵に回っているとは言っても、
やっぱり私はまだ躊躇いが有るのかもしれない、
だけど、今はやるしか無いという事は分かっている。
いや、それよりも前に、
私達が倒すべき本命は織斑一夏、彼を倒せばこの動乱は終結し、世界は再び違う方向へと動き始める。
今ここで無駄な力を消耗してしまっては、
ただでさえ少ない勝率が更に少なくなってしまう。
彼に勝つには、現状で持てる最高戦力、
秋良君のスターゲイザーのフル稼働状態をぶつける以外に無い。
こんな所でちんたらと時間を浪費する訳にはいかない・・・!
やっぱり、露払いは私の役目、ね・・・!!
私はタクティカルアームズⅡをガトリングフォームに切り換え、二機に牽制射撃を行う。
「三人とも聞きなさい!!ここは私が引き受ける!!
早く先に進んで、彼に引導を渡しなさい!!」
「お姉ちゃん!?」
「分かりました、必ず追い付いてくださいね?」
簪ちゃんが不安げな声をあげるけど、
秋良君は既にスラスターを全開にして、先に進んでいた。
「ッ!!待ちなさい!!」
「行かせない!!」
二人が先に進もうとする秋良君に気付き、
ビームライフルを撃ちかける。
だけど、彼は速度を落とすことなく進み、
ヴォワチュール・リュミエールでビームを弾きながらも、二機のビームライフルをすれ違い様に切り裂いて行った。
「何してるの!?秋良君は行ったわよ!?
雅人も簪ちゃんも、早く行きなさい!!
彼等を止められるのは貴方達しかいないの!!」
悔しいけど、私が彼に挑んだって、勝てる確率なんて何万分の一以下、機体の相性も、技量も差が開きすぎている。
だから、私に出来るのはこうやって未来を託す事だけ、想いの強さなら、誰にも負けないから!!
「楯無・・・!!絶対に後で会おうぜ!!
俺も生き残る!お前も生きろ!!」
「雅人、簪ちゃんの事をお願い!絶対にまた会えるから!!」
雅人は簪ちゃんの腕を引き、
戦域から離脱していった。
「貴女達の相手はこの私よ!!この世界を乱す敵!!」
「彼の真意を知らない哀れな敵に・・・。」
「私達が引導を渡してあげるわ!!」
対艦刀やビームサーベルを引き抜いて向かってくる二機に、私はタクティカルアームズⅡをソードモードに切り換え、斬りかかる。
私の決戦は、こうして始まった・・・。
sideout
noside
楯無が囮となった事で、
戦域を無傷で脱した秋良達は、
暫く飛び続けた後、IS学園跡地上空にたどり着いた。
もう間も無く、彼等は雌雄を決する戦いに身を投じる事となる、そこに怯えや不安がない訳ではない、
むしろ、本当に勝てるのか?自分達が正しいのかという想いは胸の内にある。
だが、それを思考の隅に追いやって、
なお有り余るのは、蛮行を繰り返す一夏達への憤怒だった。
その怒りを晴らす為と言ってしまえば、
ただのヤクザの様な理由と一蹴されてしまうだろう。
だが、彼等はそれでも別に構わない心づもりでいた。
自分の正義を通すならその理由も致し方無し、
その思いが彼等の中にあったのだ。
「行こう、これが最後の決戦だ。」
雅人と簪を交互に見つつ、秋良は毅然として言った。
もう迷う必要など無い、自分達がやらねばならない事と理解しているのだ。
「おうよ、俺達三人でやってやろうぜ、
この世界の未来を護るためにもな!」
「戦おう、どれだけ苦しくても、私は最後まで足掻いてみせるから。」
雅人と簪は、彼の言葉に表情を明るくし、
戦闘にかける覚悟を見せていた。
「それじゃあ、行こうか!!」
気合い十分、後はやるだけだと言わんばかりに、
秋良は機体を加速させ、地表に流星の如く降りていく。
雲を突き抜け、IS学園跡地を視界に捉えた彼等は、
その変わり果てた光景に絶句した。
手入れの行き届いていた外観は跡形もなく吹き飛ばされ、
アリーナや寮のいたる所には抉られた様な跡が残り、
自分達が過ごした校舎には大きく穴が空くなど、
見るも無惨に荒れ果てていた。
まるで、強大な力を有した何かが戦った後の様に、
IS学園は破壊されていた。
「一体何が・・・!?」
「ようやく来たか。」
驚愕により硬直してしまった秋良達の前に、
一夏、セシリア、シャルロットの三人が降り立った。
一夏の手には、何やら球状に近い物握られている。
「一夏ッ!!アンタって奴は・・・ッ!!」
仇敵の姿を確認した秋良は、
ストライク専用ビームライフルを呼び出し、一夏に向けて構える。
何時でもお前を撃ち抜く用意は出来ている、
彼が纏う殺気が雄弁に語っていた。
しかし、当の一夏はそんな物などどこ吹く風と言わんばかりに、腕を広げながらも笑う。
「スターゲイザーに乗り換えたのか?
そうか、だから俺の計画が此処まで楽に進んだのだな、もっとも、些か退屈だったがな。」
「・・・ッ!!」
秋良達の遅さを嘲笑うかの如く、
彼は口許に薄い笑みを浮かべる。
いや、事実嘲笑っているのかもしれない、
ここまでスムーズに事が運んでしまえば、
彼の気質を考えれば退屈して当然であろう。
「貴様らがあまりにも遅いせいで、コイツらが犠牲になってしまったぞ?」
不敵な笑みを崩さぬまま、彼は手に持っていた何かを秋良達の前に掲げた。
それは、特徴的なブレードアンテナと、ツインアイを持つ形状の頭部、ソードカラミティの頭部だった。
秋良達は、全身の血の気がさっと引いていくのを感じた。
よく見てみれば、アリーナの外壁にはフォビドゥンブルーが、
校舎にはハイペリオンが、そして、寮の壁にはソードカラミティの身体がめり込んでいた。
レッドフレームは確認出来なかったが、
彼等は直感的に、この場所で起こった事を導き出した。
「・・・ッ!!貴様は・・・、協力してた仲間まで殺ったのか!?」
怒りに打ち震えながらも、
なんとか絞り出した秋良の声は掠れ、血を吐くような切実さが含まれていた。
「仲間?あぁ、確かにそうだったよ、だが、俺の目的の為には、どうしてもやらねばならなかったのさ。」
秋良の言葉を肯定しつつも、
彼は腕に力を込め、ソードカラミティのヘッドを握り潰した。
「俺の望みはな、この世界で最も強ぇ存在になることさ、
戦闘能力、戦略、策略に長けた最強としての名が欲しいのさ、その為なら、俺はなんだってやるぜ?」
快晴が一転、黒雲が立ち込め始めた空に手を掲げ、
彼は言葉を紡いだ。
「それを成してどうする?この世界を支配する気か!?」
「そんな下らん事に興味はない、この世の頂点に立つだけで全てに片が着く、頭の悪いお前達にも分かるだろう?」
「一夏・・・!貴様という奴はっ・・・!!」
秋良の問いに然も当然の様に答える一夏に、
遂に怒りが噴き出した雅人は彼に飛び掛かろうとするが、
一夏の右隣に控えたセシリアが動き、それを阻む。
「それを拒むと言うならば、俺を踏み倒し、望む物を掴んでみろ、お前の欲望のままにな、それしか俺を止める方法は無いぞ?」
「上等だ!!俺は貴様を討つ!!その為にここに来た!!」
一夏の言葉に吼えた秋良は、
スターゲイザーのスラスターを吹かし、一夏へと迫ろうとした。
その時、六機のモニターに警告表示が表れた。
その方角をズームしてみると、
三機のISが編隊を組み、彼等の方に向かってきていた。
「ふむ、生き残りがいたようだな、
数は三機・・・、見たところ特攻覚悟か・・・、
セシリア、シャル、コイツら見張ってろ。」
「畏まりました。」
「あんな雌豚なんて、すぐに終わるよね?僕達は僕達で始めてるよ?」
「っ!!待て!!」
セシリアとシャルロットに指示を出しつつ、
向かってくるIS三機の編隊に向け、一夏は飛翔する。
それを追おうと秋良と簪は動くが、
シャルロットが発ったビームやミサイルに阻まれる。
「無粋な真似はやめてよね、一夏の戦いには水を射すことは僕達が許さないよ。」
「もっとも、駆けつける前にあの三機は撃墜されるでしょうがね!!」
シャルロットとセシリアは己が武器を展開し、
秋良達目掛け迫る。
「くっ・・・!!お前達に構ってる訳にはいかない!!」
秋良はビームライフルを撃とうとするが、
雅人と簪がそれよりも速く動き、セシリアとシャルロットとそれぞれ激突する。
「秋良!!一夏を追いかけて!!」
「ここは俺達に任せろ!!お前の手でケリを着けて来い!!」
「ふふっ、雅人さんが相手ですか、良いでしょう、
どちらがドラグーン使いとして上手か、ここでハッキリとさせましょう!!」
「簪が相手なんだね?オールラウンダーとして、
どっちが強いか勝負しようよ!!僕が勝つけどね!!」
雅人と簪が交戦の意思を示した事に反応し、
セシリアとシャルロットは道を開けるかの如く動き、
二人に襲い掛かる。
「行きなさい!!ルーヴィアドラグーン!!」
「行けよ!プリスティス!ドラグーン!!」
ブルデュエルデーストラより八基のドラグーンが、
ドレッドノートより二基のプリスティス、
及び、四基のドラグーンが射出され、オールレンジ射撃の応酬が繰り広げられる。
「ほらほら!!最後の宴だよ!!楽しもうよ!!」
「そんな暇は無いのよ、シャルロット!!」
ハイパービームサーベルを引き抜いたシャルロットと、プロトン・セイバーを二刀流で構える簪は、
それぞれが装備しているミサイルで弾幕を張りつつ切り結ぶ。
「秋良!!速く行って!!」
「簪・・・!!雅人・・・!!ありがとう!!」
簪の叫びを受け、
秋良は彼等に礼を叫びつつ、一夏が翔んでいった方向へと機体を駆った。
全てのケリを着けるため、
自分の責任を果たす為に・・・。
sideout
noside
接近する残党機に対し、
一夏はアナザートライアルランチャーに換装、
向かってくる三機にアグニを撃ちかけた。
リヴァイヴ三機はなんとか反応し、回避しようと試みたが、最も反応が遅かった左側の一機がインパルス砲の奔流に呑まれ、跡形もなく消し飛んだ。
「お前達もこの世に残ってはならん存在だ、
下卑た雄どもの慰み物とならぬ様に消してやる。」
直ぐ様アナザートライアルソードに換装し、
一夏は手近な一機にビームブーメランを投擲する。
「ッ!!」
そのリヴァイヴは、ビームブーメランをシールドを犠牲にする事でやり過ごし、パイルバンカーを構え、一夏に向けて一気に迫る。
反対方向からも、パイルバンカーを構えたもう一機のリヴァイヴが迫っていた。
前後同時にパイルバンカーを喰らえば、
如何に一夏と言えども轟沈するだろうという目論見の基、彼女達は刺し違える事を覚悟の上で迫っていく。
しかし、一夏は右腕に何やら巨大な武装を呼び出し、
左手にシュベルト・ゲベールを保持し、前後より迫る敵機を殴り飛ばした。
「攻めは良いが、陽動が無ければ成功せんよ!!」
左手のパンツァーアイゼンを射出し、
後方から攻めてきていたリヴァイヴの首元を捉え、引き寄せつつもシュベルト・ゲベールを一閃、パイロットごと切り裂いた。
「なっ・・・!?このぉッ!!」
弾かれたリヴァイヴの内、前方から攻めてきた一機は、まさしく捨て身同然で彼に迫る。
「命を捨ててでも俺を殺すか、上等だ、その意気に敬意を表し、俺は貴公を倒そう!!」
右腕に装備された巨大な武装、一見してパイルバンカーの様にも見えるが、その形状は異様の一言に尽きた。
通常のパイルバンカーは腕の側面に取り付けられている様なモノだが、彼が装備しているのは、六本の杭が腕を取り巻いている様に配置されているのだ。
腕がまるごと覆われている為に、他の武装を使うことは出来ないだろうが、それでもその威圧感は推して測る事は出来るだろう。
少女のパイルバンカーがヒットするよりも速く、
一夏の右腕が唸りをあげる。
「ひっ・・・!?」
「穿て!墮天使が鉄槌!!ルシファーズ・スマッシャー!!」
彼の右腕に装備された巨大な武装が、
轟ッ!!という唸りをあげ、少女の上半身を跡形もなく吹き飛ばした。
一夏がルシファーズ・スマッシャーと呼んだ武装は、
パイルバンカーではあるが、その括りに留めて良いのかも分からぬモノだった。
ルシファーズ・スマッシャー
見た目は6連装のパイルバンカーだが、
これはバンカーを打ち出すための炸薬が6連装なのではなく、文字通り杭が6本円を描く様に配置されているという意味の6連装。
ただし、あまりにも重量があるため、
喩え機体のパワーアシストが有ろうとも重心が大きく狂う。
その為、エースパイロットを超えたスーパーエースですら扱いきれない武装と化し、並のパイロットではその場から動くことすら困難となる。
しかしそれに見合った威力は持ち合わせてお り、
一回引き金を引くと6本の杭が全て同時に打ち出され、第二世代までなら絶対防御を貫通し、操縦者すらミンチにしてしまうほどの威力を発揮する。
だが、当然反動は尋常ではなく、一回打てば保持していた腕の骨が粉々になり、ISの腕部装甲も砕け散る。
そんな兵器を使用したにも関わらず、当の一夏は薄い笑みを崩さぬまま、ルシファーズ・スマッシャーを軽々と振り回す。
「クックックッ・・・、ハーッハッハッハッ!!ハーッハッハッハッハッハッ!!
最高だぜ!!この破壊力!!ゾクゾクする!!」
何故彼が平然としていられるのか?
それは至極単純な理由だ、
彼の肉体の頑丈さ、そして、ルシファーズ・スマッシャーを両腕で支え、衝撃を分散させた為である。
だが、それでも衝撃は腕を襲い、
ストライクEの腕部装甲は所々亀裂が走り、
一撃でも攻撃が当たれば砕けそうな様子だった。
「やはり、衝撃だけは防げなかったか、
まぁいい、本命へのちょうどいいハンデだ。」
そう呟きつつも、彼はゆっくりと振り向き、
少し遠い場所に佇む秋良を見る。
「それにしても、俺の技を盗み見するために、
護ろうとしているモノを見捨てるとはなぁ?」
「・・・。」
嘲る様に言い放つ一夏の言葉は、実に的を射た発言であった。
秋良がこの空域に入ったのは、三機の内、二機目が落とされた直後であったのだ。
如何に仲間ではないにしても、
それはまさしく一夏のやり方に通ずる物があった。
「お前も俺と同類だよ、でなければ、間に合わないと分かっていても助けに行こうとした筈だよなぁ?」
「あぁ、そうだよ、貴様と俺はよく似ている、
戦闘を楽しんだのも、どんなことをしても相手の技を見ようとする所もね。」
一夏の指摘を肯定しつつも、
秋良は射殺すような視線を彼に向ける。
「でも、俺は貴様みたいに虐殺はしない、
ただ戦闘を楽しむだけさ、人間は殺さない、
だが貴様は何様のつもりでこんな事をするんだ!?
自分が神にでもなったつもりなのか!?」
「俺は神に選ばれたのさ、この世の頂点に立つ事を許され、その力を与えられた存在、そうとも、俺がやろうとしていることはこの世界の意思、この世界を創った女神の意思だ!!」
両手を広げ、天を仰ぐ様にしながらも、彼は言葉を紡いだ。
自分こそが世界の意思、そう言い切ったのだ。
「違う!!貴様は自分の凶行の理由を世界や女神の意思とすり替えて、自分の責任から逃れているだけだ!
貴様の罪を、この俺が断つ!!」
「世界の意思、女神の意思、
それはこの戦いの後に立っていた者にある、
その意思を問うてみるとしようか!!」
「望むところだ!!俺か貴様か!ここで決着を着やける!!」
一夏はビームライフルショーティーとビームブレイドを構え、
秋良はシシオウブレードを正眼に構えた。
その体制のまま、彼等はピクリとも動かない、
まるで、飛び出すタイミングを見計らっているようでもあった。
時計の針が何周した頃だろうか、
黒雲立ち込める空より、一筋の雷が落ちた。
「「ハァァァァッ!!」」
その瞬間、彼等は全く同時に飛び出し、
己の得物を振るい、切り結ぶ。
ここに、雌雄を決する最後の戦いが始まった・・・。
sideout
次回予告
雷鳴鳴り響く空の下、
六つの魂のロンドが繰り広げられる。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
最後の力 中編
お楽しみに。