side雅人
戦闘が始まってからどれぐらいの時間が経ったのだろうか、
俺はセシリアのブルデュエルデーストラから浴びせかけられるビームを回避しつつも、
俺は本気で迷いを振り切れ無かった。
セシリアが言う事は事実だ、
それも俺がわざと見ないようにしていた現実・・・。
確かに殺された奴もいたが、
それは所詮、女尊男卑を続けさせようとした連中、
もしくは私利私欲を貪った連中だけだ。
だけど、それでも俺は親しかった友人が人を殺める事が赦せなかった。
たとえ、相手が何れ程の悪人だろうと、
法の下、もしくはそれに近い環境で裁くべきだと俺は考えている。
しかし、良く良く考えてみれば分かることだ、
そいつらは表面的には法を犯してはいない、
いや、むしろその法を作った奴もいるのだろう。
そんな奴等を裁くのに法は必要ない、
むしろ必要なのは法外、外道をやってのける力だ。
それを分かっている、必要だとも思っている、
なのに、俺はそれを受け入れられていない。
それは甘さなのか、それとも迷いなのか・・・?
「貴方は現実から目を背けています、
それをお分かりなのですか!?自分はのうのうと守られていた事を棚に上げて、汚れを被った一夏様を責めるですって!?図々しいにも程がありますわよ!!」
ブルデュエルから発たれるビームが、
ドレッドノートの肩部装甲に突き刺さり抉り取っていく。
俺のビームは一向にセシリアの機体を捉える事が出来ない。
迷いが射線を鈍らせている事は分かってる、
だけど、俺はセシリアを討つことが本当に正しいのか決められていない。
確かにアイツらを放っておいても、
前までの世界よりは遥かにマシな世界が築かれる事は確かだろう。
だが、その世界で全ての人間が平和に、平等に生きられるかと問われれは首を傾げざるをえないだろう。
確かに一定の平和はあるだろう、
しかし、それは支配と抑圧による偽りの平和だろう。
俺は到底そんな世界では生きられないし、
受け入れられない。
世界は平和になれない事は避けられない現実だ、
その中で抗って戦って生きていくからこそ、
人間は新しい叡智を持つことが出来ている。
それが善か悪かは俺にだって、誰にだって分かるわけが無い、
使う人間によって善悪の判断は決まる、だからこそ世界は回っているんだと俺は思う。
だが、アイツらのやり方は、善悪を完全に定義し、
それを淘汰していく事を是としている。
それは刃向かう者は全て消す、殺すと動議だ、
これは独裁者がやることと何ら変わりは無い。
だから、俺はアイツを止めたいと思った、
たとえアイツを、仲間だった奴等を殺めたとしても、
世界を誤った方向へは持っていきたく無かった。
「俺はっ・・・!俺はお前達に殺しをさせたく無かった・・・!!
それの何がいけねぇんだ!!」
「私たちにはありがた迷惑ですわね!
やらねばならぬ使命と分かっておりましたもの!!」
「それがお前の本心か!?一夏の事を疑って無いのか!?
自分が殺されると、不安は無いのか!?」
ビームサーベルで切り結びながらも、
俺とセシリアは舌戦を繰り広げている。
俺は頭が良くないから、相手を丸め込むなんざ不可能だ。
だけど、それでも相手の心に問いかける事で、
セシリアの心中を知りたかった。
それが、俺が唯一出来ることだから・・・。
sideout
sideセシリア
「一夏様を疑う?何を世迷い言を仰るのですか?」
ビームサーベルで切り結ぶ雅人さんから、
何やら問いの様な叫びが届きました。
言いたい事は分かります、
何故私が一夏様に加担するのか疑問に思っているのでしょう。
「疑っているなら、最初からあの方の隣になど立っておりませんわ!この身体を捧げてはいませんわ!!」
そう、あの方の為される事を聞かされた時は、
正直言いまして途方もない事だと目眩がしましたわ。
それでも、一夏様の悲し気な笑みは、
私達の事を案じて見せてくださった物なのだと、
その時に察する事が出来ました。
あの方は、人を騙すことは出来ても御自身を偽る事は出来ぬ御方、
無意識の優しさが私とシャルさんの前に零れた瞬間だったのでしょう。
そこで、道は分かれていたのでしょう、
一夏様とお供するか、それとも離れるかの道は・・・。
私は一夏様に変えて頂いた存在、
身も心もあの方のモノにされてしまっていた。
ならば、この身が滅んでも、私は一夏様に着いていく、そう決めたのです。
「それでも、私は一夏様を愛していました!!
一夏様も私を愛してくださりました!!
私はそれだけの理由で充分だったのです!!」
拮抗状態から離れつつ、
ルーヴィアドラグーンを乱舞させ、ドレッドノートのドラグーンを落とそうと試みます。
しかし、やはりと言うべきでしょう、
一筋縄で落ちてくれる訳もなく、逆にこちらのドラグーンが落とされる状況にも陥りそうです。
「愛してる方の為ならば、私はどんな事でも致しましょう!一夏様が望まれるなら、この手をどれ程汚しても構いませんわ!!」
八基から六基に減らされたルーヴィアドラグーンを使い、
バーストショット、スパイク、フレキシブルショットを立て続けに撃ちますが、
彼は私の先を読むが如く回避していきます。
何故ですの!?先程までの動きとは何か違いますわ・・・!!
「ふざけてんじゃねぇぞセシリア!!アイツがそんな事、望む訳がねぇだろうが!!」
sideout
side雅人
セシリアの言葉を黙って聞いていたが、
俺は遂に我慢の限界が来てしまった。
セシリアがどれ程一夏の事を信じ、愛しているのかは痛いほど伝わってきた。
その想いの深さは、流石と言うべきものだろう。
だが、だからこそセシリアはひとつ、大きな勘違いをしている。
それが、俺が何よりも許せない!!
確かにアイツはスゲェ男だよ、
一人で世界を敵に回して、それでいて、勝っちまうんだから尚更だ!
俺や秋良なんかじゃ一生かかっても越えられねぇ程のな!!
そんな一夏に惚れ、着いていこうとする事も、
アイツの為に何かをしたいと言う気持ちも痛いほど分かる!
だがな・・・!!
「愛って奴は相手に着いていくだけじゃねぇんだぞ!!
時には否定して、ぶつかって違うことも出来ると分からせてやるのが本当の愛ってもんだろうが!!」
ドレッドノートの形態をイータに変更し、
大型ビームソードで自分のドラグーンを薙ぎ払いつつ、セシリアのドラグーンを落とす。
もう構うものか、アイツの歪みを俺は見つけた!
たとえ独善的な言いがかりだと言われようが、
俺はその歪みを赦せねぇ!!
「貴方に何が分かるのです!?人を愛して間もないのに!私達の事を分かる筈がありませんわ!!」
「分からないさ!だけどな!アイツの本当の願いを、お前は知らねぇのか!!
同じ男として!愛してる女に幸せになって欲しいと思ってるに違いないんだよ!!」
あぁ、お前達の絆なんて俺がどうこう口出し出来る領域じゃねぇのは分かってる!
だが、それだからこそ!一夏がセシリアとシャルロットを思いやっていた事ぐらい分かる!!
そんなアイツの本当の願いを知らずして、
それが愛と呼べる筈がねぇ!!
「分かりました、貴方と私、どちらの愛が強いか!
ここで決着を着けましょう!!」
「望むところだ!!」
セシリア、お前の愛が歪んでいることを、
この俺が分からせてやる!!
sideout
noside
リミッターを解除したトリコロールと蒼の二機は、
先程までとは比べ物にならない動きでぶつかり合う。
火力は高いがエネルギー消費の悪いイータと、火力面では劣るブルデュエルデーストラは、
互いの持てる全ての力を全面に押し出しての短期決戦を決めた様だ。
大型ビームソードがブルデュエルのルーヴィアドラグーンを切り落とし、
リトラクタブルビームガンが間髪入れずにドラグーンを落としていく。
先程までの戦いが、まるで小競り合いだったかの様に、二機は必殺の意志を籠めた攻撃を繰り出す。
「オォォォォッ!!」
「ハァァァァッ!!」
咆哮の如き叫びをあげつつ、
二機は目にも止まらぬ早さで動き続けた。
エネルギーを節約する事も、
機体へのダメージも気にすることなく、
互いに攻撃を止めなかった。
その結果か、二機には至る所にビームで抉られた様な痕が無数に刻まれ、
それが常識を外れた高速機動の為にひび割れ、
機体のボディ全体に亀裂を走らせた。
幾度目になるかも分からぬ激突の際、
ブルデュエルのリトラクタブルビームガンが焼き切られ、ドレッドノートのビームソードが半ばから断ち斬られた。
「チィッ!!」
周りに聞こえるほど大きく舌打ちしつつ、
雅人はブルデュエルの腹を蹴り、距離を大きく取る。
「くぅっ・・・!!」
蹴り飛ばされたセシリアは呻きつつ、
残ったビームサーベルを引き抜き、体勢を立て直した。
(エネルギー的には次が最後の一撃になりそうだな・・・、最後の武器はビームソードただひとつ・・・、か。)
(もう後がありませんわね・・・、最後の一撃を入れる以外、戦いは終わりませんわね・・・。)
(ならば、この一撃が最後だ・・・!!)
両者残り少ないエネルギーを使い、ビーム刃を展開する。
その一撃に全てを賭ける、
その意思が二人からは見てとれた。
全く同時に地を蹴り、目にも止まらぬ速さで距離を縮めていく。
二機の距離は瞬く間に縮まり、
凄まじい激突光を生み出した。
激しい激突音が周囲に響き渡り、
それが止んだと同時に、何か液体が流れ落ちる音が響いた。
「ふ・・・、ふふっ・・・、どうやら、ここまで・・・、ですわね・・・。」
地に倒れたのは、腹から下を大きく抉られたセシリアだった。
セシリアのビームサーベルは雅人の胸を突いているものの、途中で出力が弱まったせいか、
ドレッドノートのコアを破壊するだけで終わった。
「セシリア・・・お前、まさかわざと・・・?」
ただの枷にしかならぬ装甲を脱ぎ捨て、
雅人は友だった者を抱き起こす。
「お優しいのですね・・・、でも・・・、残酷な方・・・、あのまま振り抜いてくだされば・・・、
楽に、死ねましたのに・・・。」
自身を抱き起こす雅人に向け、
痛みを堪えつつも笑う。
彼女の言葉通り、雅人がビームソードを躊躇うことなく振り抜いていれば、彼女は逆袈裟に切り裂かれ、苦しむことなく即死していた。
それ故に、セシリアは彼を残酷と言ったのだ・・・。
「セシリア・・・、どうして本気で刺さなかった・・・?お前が競り勝ってたのに・・・?」
「・・・、それは、一夏様が教えてくださいますわ・・・、私は、もう・・・、助かりませんから・・・。」
彼女の死を悟った様な表情に、
彼は痛ましくなり思わず顔を背け、嗚咽を洩らす。
「敵の為に、泣いてくださるのですね・・・、
楯無が惚れるのも、分かりますわ・・・。」
「セシリア・・・!」
「そんなお顔を、しないでください・・・、
貴方は、憎むべき敵を、討ったのですよ・・・?」
「お前は敵なんかじゃない・・・!!
ずっと、ずっと俺達の仲間で、友達じゃないか・・・!!
それだけは認めてくれよ・・・ッ!!」
雅人の端整な顔は哀しみに歪み、
その頬を涙が伝い、セシリアの顔に落ちる。
その様は、仲間の死を悼む者のそれだった・・・。
「ありがとうございます・・・、雅人さん・・・、
楯無とお幸せに・・・。」
「言うな・・・!!それを言うなら、結婚式で言ってくれよ・・・!!今は聞きたくない・・・!!」
最後の力を振り絞り、雅人に向けて微笑みかけつつも、
彼女はゆっくりと瞼を閉じる。
(あぁ、・・・、一夏様・・・、シャルさん・・・、
セシリアは、ここまでですわ・・・、
愛しておりましたわ・・・、私は、あの世で御待ちしております・・・。)
彼女の脳裏に、優しく笑いかける彼の顔と、
彼の反対側で自分に笑いかける彼女の笑みが浮かび上がり、自分の名を呼ぶ。
そうだ、自分はこの幸せの為に戦っていたんだ、
だからこそ、汚れも痛みも受け入れられた・・・。
独りじゃ無かったから、戦えたのだ・・・。
雅人の声が遠ざかっていく・・・、
あぁ、これが死なのかと、彼女は何処か清々しい気分で理解していた。
もう戻れない・・・、でも、恐れる事はない・・・、
愛する人達を置いていく訳ではないから・・・。
雅人の頬に触れていたセシリアの手が、
力なく地面に落ち、動かなくなった。
「セシリア・・・?おい・・・?冗談だろ・・・!?
目を開けてくれよ・・・!!」
彼はセシリアの身体を揺すり、
目を開けるように叫び続けるが、反応は返ってこない。
「そうだ・・・!一夏が待ってるぞ・・・!シャルロットも・・・!三人で幸せになるんだろ・・・!?だから、目を開けろよ・・・!セシリア・・・!セシリアァァ・・・ッ!!」
嘘だ、信じたくないと言う思いで友の名を呼ぶ彼の声に、返事を返す声は、二度と聴こえる事は無かった・・・。
sideout
えー・・・、不測の事態で、後編がその1とその2に分かれてしまう事になりました・・・(汗)
これも一重に私めの力量不足です・・・(汗)
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
最後の力 後編 其ノ2
お楽しみに。