推奨IBGM BAD AGAIN~美しき反逆~
music by 聖飢魔Ⅱ
noside1
秋良達を先に行かせ、
デスティニーインパルスとグリーンフレームを相手にしていた楯無の体力は、
最早限界に近付きつつあった。
如何に元国家代表とは言えど、
教員クラス、それもテストパイロット、元代表候補生の二名が相手となると苦戦を強いられるのは必然だった。
長時間の戦闘の影響で、
ブルーフレームの装甲は所々抉られ、
欠けた様な痕が見受けられた。
「かはっ・・・!ま、まだよ・・・!私は、まだ戦うんだから・・・ッ!!」
疲労困憊といった表情を浮かべつつも、
楯無はその戦意をたぎらせていく。
まだ死ぬわけにはいかない、
愛する人との未来を築く為に、自分はこの戦いに身を投じたのだから。
だが、そんな明るい希望とは裏腹に、
現実は暗く、生き残れる確率すら低い。
「楯無さん、降参してください、私達は貴女を殺せと命令された訳ではありません、どうか、一夏君の思いを分かってあげてください・・・。」
楯無と距離を取った真耶は、
何処か、悲嘆に暮れた様な表情をしつつ、彼女に降参を勧告する。
「そんなの出来るわけないじゃないですか・・・!
彼がやろうとしてることに抵抗も出来ずに受け入れる位なら、私は、生きていく価値なんてない・・・!!」
自分が信じることの出来ない一夏に着く真耶の言葉に耳を貸さず、楯無はタクティカルアームズⅡを構え、
一直線にグリーンフレームに向けて突進する。
「やめなさい更識さん、私達の話を聞きなさい、
彼は、世界征服なんて考えていないわ。」
彼女達の間にナターシャが割り込み、
二本のエクスカリバーでタクティカルアームズⅡを受け止める。
まるで、もう戦う気は無いと言うか様に・・・。
「じゃあ・・・、何をしようって言うんですか!?
あれだけ虐殺を繰り返して、まだ殺したりないんですか!?」
「分かったわ、命令違反な気もするけど、
これはこれで構わないでしょう、着いてきて、向こうも、決着が着く頃だから・・・。」
ガンダムフェイスの裏で涙を流しつつも、
ナターシャは先導するかの様に、IS学園跡地に向けて飛翔した。
今だ怪訝の表情を浮かべている楯無に、
真耶が近付き、涙声で話しかけた。
「彼は・・・、死ぬつもりなんです・・・!」
sideout
noside2
その頃、IS学園跡地上空では黒と白の機体が凄まじい攻防を繰り広げていた。
白の機体、スターゲイザーは、
漆黒の機体、ストライクノワールを追い、
ヴォワチュール・リュミエールの刃を繰り出す。
触れれば何もかもを切り裂く光の刃に対抗する術を持たぬストライクノワールは、
距離を取るべく機体を動かし続けていた。
「逃がすか!貴様だけは、ここで仕留めてやる!!」
「ちっ・・・!流石はアクタイオンか・・・!
エネルギー容量を増やしやがったか・・・!!」
激昂する秋良の気迫に呼応し、
光の刃は激しさを増し、黒き機体へと迫る。
一夏は直撃を避けるために、
機体を縦横に動かし、光の刃から逃れる。
それがどれぐらい続いた時だったのだろうか、
ストライクノワールのウィンドウが新しく開かれた。
<ブルデュエル、シグナルロスト>
<ヴェルデバスター、シグナルロスト>
全く同じタイミングで、僚機の撃墜を表す表示が表れる。
それは、彼の隣に立っていた少女達の死を意味していた。
(セシリア、シャル、お前達は逝ってしまったのか・・・、俺を置いて・・・?)
彼は彼女達が戦っていた方向に目を向け、
何処か寂しそうに目を細めた。
だが、その一瞬を突くかの如く、
ヴォワチュール・リュミエールの光刃が、
彼の左腕を切り落とした。
「・・・ッ!!」
通常ならば激痛で動きを止める所だが、
一夏は顔をしかめるだけで、次の回避運動に移る。
彼とて痛覚がない訳ではない、
痛みを感じつつも、それを圧し殺して戦っているのだ。
彼にも、最早や余裕と言う物は失せ、
ただ刃から逃れるべく動き続けた。
しかし、余裕が無いのは秋良も同様であった。
ヴォワチュール・リュミエールを使用するだけのエネルギーが、尽きかけていたのだ。
もし、ヴォワチュール・リュミエールが消滅すれば、
逆にストライクノワールに反撃の機会を与えてしまうことになるのだ。
「(くそッ・・・ッ!!エネルギーがヤバイ・・・!
だけど・・・、だけど・・・ッ!!)
貴様だけはァァァァッ!!」
エネルギーを使い果たす事すらお構い無しで、
秋良はヴォワチュール・リュミエールの刃を一夏に向けて飛ばした。
その一撃は回避運動を続けていたストライクノワールの胸部装甲を抉り、コアを露出させた。
「くっ・・・!!」
「逃がさない!!」
体勢を崩したストライクノワールに対し、
追撃をかけるべく迫る。
だが、ここでスターゲイザーの周囲に展開していたヴォワチュール・リュミエールの光刃が消えた。
「くそッ・・・!エネルギー切れか・・・ッ!」
「この瞬間を待っていたぜ・・・!
お前の敗けだ、秋良!!」
攻め時を見付けたりと言わんばかりの勢いで、
一夏は残った右手にビームブレイドを保持し、
秋良へと猛然と迫る。
「まだだッ!!俺はまだ、戦える!!」
シシオウブレードを構え直し、
一夏のビームブレイドと切り結ぶ。
腕一本と二本の張り合いの筈だが、
徐々に秋良が押し込まれているのが見てとれた。
「くそッ・・・!これでも押されてるのか・・・!?
なんて力だ・・・!!」
「クックックッ・・・、そろそろフィナーレといこうか、お前の全てを奪ってな。」
秋良の体勢を崩し、地面へと蹴り落としながらも、
一夏はスラスターを全開にし、流星の如く降っていく。
「そんなことはさせない!!俺は、生きる!!
生きて明日を掴むんだ!!」
自分は奪われる為に生きている訳じゃない、
明日を見るために戦っている。
秋良が獲た答えは刃に宿り、一夏に向けて突き出された。
「浅はかな、そんな物は絶望に呑まれ、消える!
お前を消すことで証明してやろう!!」
間合いに入るより先に、彼はビームブレイドを振りかぶった。
頭でもかち割ってやる、そんな強い念が見てとれる。
「ッ・・・!!ガァァァッ!?」
だが、一夏の右腕がひきつったかの様に止まった。
(しまった・・・ッ!!ルシファーズ・スマッシャーの反動が、今頃来やがった・・・!!)
墮天使の名を持つ兵器、その威力の絶大さ故の反動は、高い耐久力を誇る彼ですら耐えきれるモノではなかった。
そのダメージは肉体に蓄積され、
疲労と共に増幅され、遂には彼の腕を麻痺させたのだ。
しかし、急降下の速度は止める事が出来ず、
急速に秋良との距離は縮まっていく。
「これで、終わりだァァァァッ!!」
避ける事すらままならぬ一夏の胸に、
必殺の意志が籠められたシシオウブレードが突き刺さる。
ストライクノワールのコアを砕き、
彼の身体を貫通した刃は、植物の様に彼の背中から突き出ていた。
下から突き刺した為、秋良には彼の身体から流れ落ちる鮮血がかかる。
「・・・、ミッション・・・、コンプリート・・・、
よく、やった、秋良・・・。」
「ッ・・・!?」
普段の、仲違いする前の声色で呟いた一夏に、
秋良は驚いたような表情を浮かべる。
既にシシオウブレードは一夏の身体から引き抜いている為、彼は地面に倒れ伏していた。
「どう言うことだよ・・・!?おい!?」
「まだ気付かねぇのかよ、やっぱりお前は鈍い男だな。」
スターゲイザーを格納し、一夏を抱き起こす秋良に向け、
ソードカラミティを纏ったダリルがやれやれと言った風な口調で話し掛けた。
彼女の後ろには、秋良との戦闘の直前まで一夏と戦っていたメンバーが何かを堪えるかの様な面持ちで立っていた。
「お前ら・・・、出てくるなと、言った筈だ・・・。」
彼女達の姿を認めた一夏は、首だけを動かし、
痛みを堪えるかの様な口調でダリル達に向け、言葉を発した。
「悪いな、だがよ、秋良にこの放送を見せるために出てきたんだ、それぐらいは許してくれよ。」
「・・・、そうかよ・・・。」
何時もは何処かおどけた様な口調のダリルが、
なんとも真面目な口調で言葉を紡ぐため、
一夏はその顔に呆れた表情を浮かべ、短く返した。
そこへ、デスティニーインパルス、グリーンフレーム、そして、ブルーフレームの三機が舞い降り、
彼等を囲うように立つ。
「どう言うことなんだ・・・!?
アンタは何がしたかったんだ・・・!?」
何がなんだか、状況を呑み込めていない秋良は、
全員を見渡しつつも叫ぶ。
「チャンネル・・・、0652・・・、それが、真実だ・・・。」
一夏の声に反応し、秋良は怪訝の表情を浮かべつつも、
計器を操作し、チャンネルを合わせた。
sideout
noside3
その日、世界中にある映像が流された。
『ごきげんよう諸君、もう知っているとは思うが、改めて名乗らせて貰おう、
私の名はロンド・ミナ・サハク、何処の国家にも属さない思想家だ。』
先日、天空の宣言を織斑一夏と共に行った、ロンド・ミナの姿が、再び画面に映し出された。
『諸君らの力によって、この世界に蔓延る悪は駆逐され、平和への道が拓けつつある、実に喜ばしい事だ。』
画面の前にいた民衆は、
その言葉に、彼女の姿に沸き立った。
彼女と織斑一夏の導きがなければ、
自分達は立ち上がることが出来なかった。
そう理解している民衆にとっては、
彼女の姿はこの世に降り立った女神の様にも映っているのだろう。
『だが、諸君らにはまだ、知ってもらわねばならない事がひとつだけ残されている、
それを知らねば、未来へは歩めないだろう。』
彼女の口から発せられた言葉に、民衆は一様に首を傾げた。
彼女は何を告げようとしているのか?
その真意を読み取れなかったのだ。
『まずは、この映像を見てもらいたい、
先日、アラスカで行われた織斑一夏率いるガンダムチームと、IS軍の戦闘映像だ。』
画面に映し出されたモノは、
アラスカでの戦闘の一部始終であった。
アラスカの拠点に対し、総攻撃を仕掛けるIS連合の機体が、
サイクロプスの威力により、パイロットの身体が弾け、機体と共に爆散していくさまが、何にも遮られることなく、ありのままで流された。
そのあまりにショッキングな光景に、
見る者全てが口許を押さえていた。
『織斑一夏、我等が英雄と思っていた存在は、
我等が滅ぼした存在と同じく、自分の私利私欲を追い求め、この世界を牛耳ろうと邪魔者を全て排除していったのだ。』
ロンド・ミナが手を掲げると、
次に映し出されたのはガンダム同士が、
周囲の建造物を破壊しながらも同士討ちを繰り広げる映像であった。
何故英雄同士が争うのか?
彼等は守護神では無かったのか?
混乱する民衆に、ロンド・ミナの涼やかな声が降り注ぐ。
『彼等は自分達が戦う相手を求め、
それが無くなれば遂には同士討ちを始めた、
諸君らには分かるだろう、どれ程の偉業を残す英雄も、我等となんら変わることの無い人間だということを。』
そこで民衆は、頭を叩かれたかの様にハッとした様な表情を見せた。
そうだ、英雄も所詮は人間、
自分達と同じく、自分の望み、ひいては欲望を持っていて当然だと言うことだ。
しかし、人間はそれを忘れがちだ、
思い通りにならない事があれば他者を否定し、
憎悪し、差別や理不尽な暴力の根源となる。
言われてみれば、直ぐに思い着く、
だが、それを認める事は非常に難しい。
彼等は今、それを非情なる現実と共に突き付けられたのだ。
『英雄は、自らのエゴが他の者に評価されて初めて英雄と呼ばれる存在となる、
全ての人間が英雄にも、そして悪にもなれる要素を抱えているのだ。』
民衆の反応を分かっているのか、
ロンド・ミナは言葉を紡ぐ。
『だが、独りではやり遂げられぬこともある、
越える事の出来ぬ壁もある、
我等は所詮は弱く、儚い存在だ、
それでも、彼等が強く在れたのは、独りではなかったからだ、
個人の力では乗り越えられぬ者も、志を同じくする者と手を取り合えば、必ずや乗り越える事が出来るだろう、
さぁ、英雄達が示した道に進むか、それともこれ迄と同じ様に、誰かに支配されたままで良いのか?
選ぶのは諸君らだ、我等は今、選択の時を迎えたのだ。』
そこで放送は途切れ、残されたのは静寂と、
そして画面の前に立つ民衆だけだった。
困惑している者も中にはいるだろう、
だが、大半の者が、これから成すべき事を理解していた。
「そうだ、俺達が必要なのは英雄なんかじゃない!
俺達全員が力を合わせていく事なんだ!!」
「私達が生きる世界は、私達が創るのよ!!」
天空の宣言と同じ様に、進むべき道を示された民衆は、その道に自らの意志で進む。
それが、どれ程厳しく、困難な道であろうとも・・・。
sideout
noside4
アクタイオン社のとある部屋にて、
放送を終えたロンド・ミナ・サハクはカメラの前から身を翻し、歩き去ろうとしていた。
彼女の瞳の端には僅かながらも涙の粒が溜まり、
今にも零れてしまいそうだった。
「お疲れ様、ロンド・ミナ・・・、
貴女の放送で、もう世界は動き始めてるわ・・・。」
世界の動向をデータを通して見ていたエリカ・シモンズは、
震える声でミナに報告する。
「そうか・・・、だが、それは一夏に言ってやって欲しかったな・・・、この計画の全てを考えたのも、実行したのも彼だ・・・。」
ミナは、何処か痛みを堪えるかの様な口調で、
報告したエリカに返した。
それはまるで、全ての真相を知っているかの様な口調にも取れる。
「一夏のしようとしたこと・・・、
ISや権力者だけじゃなく、英雄すら不要のモノと定め、
人類が互いに手を取り合う様に促す・・・、そこに自分はいられない、だから、それを証明する為に、わざと誰かに討たれる・・・、だったわね・・・。」
「そうだ、英雄が世界に存在し続けてしまえば、
民衆は自らの意志で進む事が出来なくなる、
それでは、今までと同じ様に世界は流れてしまう、そう思ったのだろうな、彼は・・・。」
そう、一夏の思惑とは、
人類の完全なる平和と自立の為に、英雄すら必要としない社会の構築だったのだ。
これまでの彼の行動は、全てその為だけにあった様なモノだ。
世界を乱す者を討った英雄は当然の事ながら持ち上げられ、
民衆を導くよう求められるだろう。
だが、それは果たして民衆は本当に自由を得た事になるのだろうか?
その問いに、一夏は否と言う答えを出した。
たとえ自由、平和、平等を得られたとしても、
それは与えられ、押し付けられた様なモノだ、
それを操る者がその気になれば、いとも簡単に塗り替えられてしまう危うい存在だ。
その危うい足場を磐石な物にするために、
彼は人々に争いへの嫌悪感、英雄の否定観を植え付けたのだ。
それは、英雄と呼ばれた彼自身の存在を、
否定したのも同然の行為だ。
「あぁ・・・、一夏・・・、貴方は世界を変える代償として、その命を捧げるのね・・・、
どうしてそこまで出来るの・・・?命が惜しくないの・・・?」
彼の事を、実の息子の様に案じていたエリカは、
その若すぎる命が散ることに憤り、
また、そうでもしなければ変わらない世界を恨み、悲しみ、後悔、様々な感情が混ざりあった涙を流す。
「英雄は必要とされないが、彼と言う人物が必要とされない訳はない・・・、
彼は、答えを急ぎすぎたのだろう・・・、
それ故に、自らを生け贄に差し出したのだ・・・、
一夏、約束は果たしたぞ・・・。」
世界に反逆し、世界を協和の道へと歩ませた者へ、
彼女は目を閉じ、涙した・・・。
その心に秘めた痛みを、少しだけ明かすかの様に・・・。
sideout
noside5
「そんな・・・、アンタは・・・、アンタは最初から死ぬつもりだったのか・・・!?なんで俺に一言も相談してくれなかったんだ!?」
放送の真意を悟った秋良は、
愕然としながらも一夏に問うた。
たった今、自分が刃を突き刺した存在は、
自分を偽っていた者ではないか・・・?
「英雄は、この世界に存在してはならない・・・、
歪みも、また同じだ・・・、
この二つを、同時に葬るには・・・、これしかなかった・・・。」
「だからって・・・!アンタが死ぬ事なんてないだろ・・・!?どうしてだよ・・・!?」
事実を淡々と、否、他人事の様に話す一夏に対し、
秋良は訳が分からない、ちゃんと説明してくれと言わんばかりの勢いで叫ぶ。
なぜ?どうして彼がこんなことをしなければいけなくなったんだ・・・?
そんな気持ちが、今の彼からは見てとれた。
「女神に、頼まれたのさ・・・、彼女が創った最高傑作である、俺達が転生した当時の、世界に戻す事を・・・、
世界の浄化、それが、俺に与えられた役目・・・。」
「・・・ッ!!」
一夏が話した内容に、秋良は絶句した。
まさか、彼が言っていた女神の意志とは、
世界の浄化と言う意味とは思わなかったのだろう。
そうだ、そう考えれば筋は通っている、
彼が世界に反旗を翻す事も、殺戮を行う理由もなかった、
ならば、その理由が女神からの頼みだったとくれば、
そこで彼の戦う理由が出来上がっていたと言うわけだ。
「どうしてなんだよ・・・!?
どうして俺じゃ無いんだ・・・!
なんでアンタに押し付けられたんだよ・・・ッ!!」
「転生者は、女神の意志を遂行する、人形だ、
ソイツの感情を無視し、ただ、女神が望むままに動かされる・・・、
そう、俺は、その時から人形になった・・・、
自分の感情を持たず、ただ目的遂行の為に動く存在に・・・。」
感情を持たぬ人間はいない、
だが、彼はあえてそれを捨て去り、人形となって動いていたのだ。
それ故に、迷うことなく殺戮を、人の運命を狂わせる事を遂行できたのだ。
しかし、秋良には到底受け入れきれるモノではない。
遺される者の悲しみを、彼は今、一身に受けている。
「バカ兄貴・・・ッ!!アンタはずっと俺達の事を、セシリアとシャルロットの事を気遣ってくれてた・・・!
アンタがその優しさを持ってたから、セシリアとシャルロットもアンタに着いていこうって気になって、アンタを愛していたんだ・・・!!
アンタはそれも否定して人形だって言うのか・・・!?
アンタは、十分人間じゃないか・・・ッ!!」
「俺の事を、まだ兄と呼んでくれるのか・・・?
秋良・・・、お前は優しいな・・・、
そんなお前だから・・・、俺は後を任せられるんだ・・・。」
涙を流しながらも、自身の兄に向けて叫ぶ秋良に、
一夏は笑いかけながらも右手で秋良の頭を乱暴に撫でる。
しかし、その手にはもう既に、力強さは一切なく、
最早風前の灯火の様な弱々しい手付きだった。
その事実が、秋良の胸に棘の様に突き刺さる。
「そんな事言うなよ・・・ッ!生きろよ・・・!
世界を変えた責任を果たしてからだろ・・・ッ!!」
「死ぬことが、責任さ・・・、これから後の事は、
お前と雅人の役目だ・・・、この世界を頼んだ・・・。」
秋良の頭から手を離し、一夏は自身に挑んだ四名を見やる。
「俺の最後の頼みだ・・・、お前達も生きて、
この世界を見守ってくれ・・・。」
「分かった・・・、アタシはお前に負けた、逆らう理由もない、それにお前の遺言なら、聞かねぇ訳ねぇよ。」
箒達を代表するかの様に、ダリルは深く頷きながらも、顔を伏せた。
「楯無・・・、鈴に伝えてやってくれ・・・、
戻ってきてやれず、すまないと・・・。」
「・・・ッ!!自分で戻って、ただいまって言ってあげなさいよ・・・ッ!!
そっちの方が、嬉しいに決まってるじゃない・・・!!」
自身が妹の様に思ってきた者に対して詫びる彼の言葉に、楯無は痛ましい気分になり、
彼に背を向けながらも叫んだ。
自分が憎んだ彼は、自身を偽り続けた存在であった事に憤り、また、それを察する事が出来なかった自分を責めているのであろう。
何故理解してやれなかったのか、
彼はここまで友人を想っていたというのに・・・。
そんな感情が彼女の中で渦巻いていた。
「じゃあな・・・、この世界、任せたぞ・・・。」
「兄さん・・・ッ!!死ぬな!!」
穏やかに笑み、目を閉じた一夏に向け、
秋良は意識を途絶えさせぬ様に叫ぶ。
(セシリア・・・、シャル・・・、待っていてくれ・・・、俺もすぐにそっちに逝く・・・、
三人で一緒だからな・・・、愛してるぜ・・・。)
自分に寄り添い、幸せそうに微笑む愛しき彼女達の表情が彼の脳裏に浮かんでいく。
そうだ、自分はこの笑顔を護りたかったから、
二人がいてくれたから戦えたんだ・・・。
死に向かう中、彼は満ち足りた気分でそれを受け入れていた。
何も怖れる事などない、
先に逝ってしまった愛しき者達の所に逝くだけだなのだと・・・。
秋良に握られていた彼の手から力が抜け、
地面に垂れ落ちた。
「兄さん・・・、兄さん・・・ッ!!」
もうその肉体に、彼の魂が無いと分かっていても、
秋良は彼の身体を抱き締め、声を殺して泣き続けた。
同じ世界に転生し、同じ時代を駆け抜けた兄弟の軌跡は、分かれたまま混ざり会う事はなかった・・・。
sideout
noside6
「秋良・・・、アタシらの最初の務めだ、
この世に残しちゃいけねぇモノと一緒に、一夏達を送り出してやろうぜ・・・。」
ソードカラミティから抜け出し、
何やらスイッチを手に持ったダリルが、秋良の肩に手を置きつつ話し掛けた。
彼が一夏の亡骸から顔を離し、
全員を見渡していくと、困惑する楯無以外の全員が機体から抜け出し、
ダリルと同じ様にスイッチを手に持っていた。
「何をする気なんです・・・?」
「ISを、つってもガンダムだがな、
この世から消す、コイツらには世話になったが、これからの世界には必要ねぇよ。」
秋良の疑問に即座に答え、彼女は左手に握っていたスイッチを彼に手渡す。
「せめて、コイツの死を政治家共に知らせねぇ為にも、ここでアタシらが弔ってやろうぜ・・・、
アイツらも一緒にな・・・。」
ダリルが指した方向には、セシリアの亡骸を抱えた雅人と、
アウトフレームのパワーアシストを使用し、
シャルロットの亡骸を抱き抱えた簪が立っていた。
彼等の頬には涙の跡が残り、今もまだ、泣き出しそうな表情をしていた。
彼等も知ってしまったのだろう、
一夏達が目指した事を、そして、自分達が早まってしまったことも・・・。
「秋良・・・、俺達の手で、けじめを着けよう・・・、一夏もそれを望んでるさ・・・。」
今にも泣き出しそうな震える声で、
雅人は秋良に向けて言った。
「分かってるよ・・・、雅人・・・、
三人を離れ離れにさせない為にも・・・、俺達が送り出してあげよう・・・。」
彼の言葉を聞き、雅人はセシリアを一夏の右側に、
簪はシャルロットをその反対側に横たえた。
それは何時も、三人が並び立っていた時の立ち位置だった・・・。
残った九機のガンダムは、彼等の亡骸を囲む様に並べられ、
秋良達は少し離れた場所に立つ。
「音頭はアタシが取る、それで良いな?」
ダリルが全員を見渡しながらも問い掛け、
スイッチを全員が見える様に頭上に掲げた。
全員が異論は無い、そう言うかの様に頷き、
彼女に倣い、スイッチを掲げた。
「我等が友、織斑一夏、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、彼等の冥福を祈り、この送り火を掲げよう!」
彼女の宣言と共に、全員が一斉にスイッチを押し込んだ。
直後、九機のガンダムに取り付けられていた自爆装置が起動し、盛大に爆ぜた。
その炎は一夏達の亡骸を包み込み、
天高く煙を上げながらも燃え盛った・・・。
空一面に立ち込めていた黒雲の切れ間より、
鮮やかな黄昏が覗き、まるで天界に魂を迎え入れる様にも見えた。
「さようなら・・・、兄さん・・・、
今までお疲れ様、もう戦わなくていいんだ・・・、
セシリアとシャルロットと三人で楽しく過ごしてくれ・・・。」
その言葉の途中で彼は涙ぐみ、
言い切ると同時に膝から崩れ落ち、声を張り上げて泣いた。
彼の隣にいた簪は膝を折り、
彼の背中に手を置き、静かに涙を流していた。
他の者達も口許を手で押さえたり、
目元を覆って、悲しみの涙を流していた。
自分達の友を、教え子の死という悲しみを分かち合いながらも・・・。
ここに、英雄が巻き起こした動乱は終結し、
世界は新たな道へと歩き始めた。
英雄が必要とされない世界へと・・・。
sideout
次回予告
彼が求めた理想に近付くために、
残された者達の戦いは続いていく。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
最終話 明日への扉
お楽しみに。