sideラウラ
「うっ・・・?ここは・・・?」
身体に走る鈍い痛みに叩き起こされ、
私は自分が保健室のベッドに寝ていた事を理解する。
私は・・・、一体何を・・・。
「気が付いたかい?」
呼び掛けられた声に目を向けると、
そこには織斑・・・、
「・・・、どっちだ。」
兄か弟か分からなかったので思わず聞いてしまうと、
奴はずっこけていた。
「お、俺は一夏だよ。」
・・・、怪しい、凄まじく怪しい。
私が記憶している限り、織斑一夏はこんなに軽薄な男では無いはずだ、
寧ろ常に不敵な微笑を浮かべている。
「ふぅ、秋良の真似も疲れるな。」
訂正、弟の真似をした本人だった。
何故真似をしていたのか謎だ。
「まあ良い、取り敢えず事情説明だ、
秋良はテメェの代わりに事情聴取を受けてるから代わりに俺が説明する。」
そうだ・・・、私は何をしていだんだ・・・、
織斑弟に蹴り飛ばされてからの記憶が無い・・・。
「質問から始めるが、VTシステムは知ってるよな?」
「ヴァルキリー・トレースシステムの事か・・・?」
「ああ、それがテメェのISに登載されていた、
だが、物の見事に秋良が壊してくれたから解析が出来なくなったがな。」
「そうか・・・。」
そうとしか言えなかった。
ヴァルキリー・トレースシステムは機体の損壊レベルと、
搭乗者の精神状態、つまりは願望が発動のキーとなる。
つまりこの事件は私が引き起こしてしまった。
教官に、織斑千冬に成りたかったから・・・。
兵器として生まれ、育てられ、
そして落ちこぼれの烙印を押された私を救ってくれた教官に・・・。
「もう一つ質問させて貰う、お前は誰だ?」
「私か・・・?私は・・・。」
質問されて、私は自分をラウラ・ボーデヴイッヒだと言えなかった。
何故かは判らないが・・・。
「言っとくが、お前は織斑千冬には成れん、
つーか成るな、あの駄姉みたいな奴が増えたら世界が困る、
家では何も出来ん粗大ごみだ、いるだけスペース取るしな、
掃除も料理も最低限すら出来ん、確実になにかが壊れる上に、
俺達の仕事が増える、それから・・・。」
「分かったもういい、頼むからそれ以上は止めてくれ。」
今ので何となく分かった、コイツらは教官の事をあまり好いていない様だ。
実の姉に対してここまで辛辣に成れる奴がいるのか・・・?
「いるぞ?俺の周りに後二、三人は。」
「今さらっと思考を読んだな?」
「そんな事はどうでもいい、駄姉を目指すのは結構、
だが、お前はお前のままで強くなれば良い、それが人間だ。」
人間・・・、そうだ、私は兵器である前に人では無いか、
私が教官に憧れたのも、コイツらを憎んでいたのも、
人間だから出来た事ではないか・・・。
「ま、俺はお前の考えをどうこう言うつもりは無い、
どうやって生きるか、どうやって歩くかはお前次第だ。」
そう言いつつ、一夏は席を立ち、
保健室から出ていこうとする。
「だが、期待はさせて貰うぜ?お前がこれからどうやって過ごすのかをな。」
そう言い残し、奴は出ていった。
「は・・・、はは・・・、はははっ!」
無意識に笑ってしまっていた、
だが、止めることは出来ない、本当に愉快だから・・・。
「ズルいではないか・・・。」
一夏にしろ、秋良にしろ、大事な事を言ってる癖に、
後は自分で何とかしてみろと言わんばかりの態度。
「これが・・・、敗北か・・・。」
初めて味わった敗北の味は、
この上無く新鮮だった。
sideout
side一夏
保健室から出た俺を待っていたのは、
セシリアとシャルだった。
二人ともどこかからかうような笑みを浮かべつつ、
俺の方に歩みよってくる。
「あの様な答え方でよろしいんですの?」
「良いさ、ヒントさえ与えとけばアイツはなんとかなる。」
意地悪く聞いてくるセシリアに答えつつ、
俺は歩き始める。
「示された道を歩くのは簡単だ、
だがな、自分で何とかして歩くからこそ、人は成長できるんじゃないかと、
俺は思っている。」
「深い言葉だね、なんだか重みが違うよ。」
「気にするな。」
やれやれ、本来なら秋良の役目なんだがな、こう言うのは。
ま、嫌いじゃないから良いんだが。
「そう言えば一夏様、学年別トーナメントがタッグマッチ形式に変更されたことをご存知ですか?」
「いや、初めて聞いた、誰が言っていた?」
「一年生の女の子達だよ、皆僕と組もうって来ちゃってね。」
あー、あの場面な。
なんか俺あからさまに舌打ちしてそうだったな。
そんな事はどうでもいいとして・・・。
原作なら一夏がシャルと組むんだが、
如何せん、イレギュラーが多いこの世界じゃあどうなるか判らん。
「僕はセシリアと組むって言ったら皆帰っちゃってね。」
「何?」
あまりに唐突に言われた為、柄でもなく軽く驚いてしまった。
「良いのか?セシリア?」
「はい、私もシャルさんも、一夏様と戦いとうございますから。」
そう言う事かい、俺に敗れたからこそ、
俺を倒したいねぇ・・・。
悪くない考え方だ。
「そう言う所がお前達の良いところだ、分かった、
誰と組むかは分からんが、俺も本気で行かせてもらうぞ?」
「勿論だよ、寧ろ、手加減なんかしたらダメだよ?」
「私達は貴方様に勝ちますわ。」
俺の好戦的な笑みを受け、セシリアとシャルも笑う。
それは慈愛ではなく、俺と同じ好戦的な笑みだ。
心意気は良し、
なら、ちょいとサービスしてやりますか。
「セシリア、ブルー・ティアーズの意味を探せ。」
「ブルー・ティアーズの意味を・・・、ですか?」
「それを見付けた時、お前はまた一つ強さという階段を昇るだろう。」
これはフレキシブル(偏向射撃)を行うのに重要なポイントだ。
それを見付けられたら上々だ。
「次、シャルは観客を湧かせる戦いをしてみろ。」
「観客を、湧かせる?」
「お前はどうしてもサポートに回りがちだ、
お前自身の能力が高ェのに勿体ねぇぞ?」
戸惑う二人を残し、歩き去る。
我ながらカッコいいんじゃね?
「さてと、誰と組むかな・・・。」
当面の問題はそれだな。
sideout
side秋良
無駄に長い事情聴取を終えて、
俺は外で待っていてくれた鈴と簪と合流した。
「待たせちゃってゴメンね、二人とも。」
「気にしてないよ、それより大丈夫なの?」
「大丈夫も何も、俺はただ暴走を止めただけだからお咎め無しだよ。」
「本当に本当よね!?」
簪の質問に答えると鈴が涙目で聞いてくる、
ネガティブって心配性って意味だっけ?
鈴のお蔭で意味を勘違いしそうだよ。
「大丈夫だって、鈴は心配性だな。」
鈴に笑いかけながら頭を撫でると、
彼女は嬉しそうな表情をしていた。
それとは反対に簪は面白くなさそうにしていたので、
簪の頭も撫でておく。
「むふぅ~♪」
「はふぅ~♪」
二人とも何処か小動物の様な耳と尻尾が見えるんだけど気のせいだよね?
兄さんは反応しないだろうけど、俺結構こう言うの好きだからマジでヤバイ。
現に俺以外にも少し離れた物陰にいる誰かさんが鼻血流しながらこっち見てるし。
いい加減出てきたら良いのに、
一生ストーカーでいる積もりなのかな?
まあ俺は別にそれでも良いと思うけどね。
「はっ、秋良、学年別トーナメントがタッグマッチ形式に変更されたって知ってる?」
「えっ?初耳なんだけど?」
「クラスの皆が言ってたの、アタシは簪と組むから。」
へぇ?
簪と組むのか・・・、
その目的ってやっぱり俺を倒す事だよね?
「勝ち負けなんてどうでもいい、私達は秋良と戦いたいから。」
へぇ、二人ともいい心構えだね。
そう言うの好きだな。
「なら、俺を楽しませてね?」
二人にそう言って、俺は背を向けて立ち去る。
「さてと、誰と組もうかな・・・?」
当面はこれを考えなきゃね。
sideout
sideセシリア
一夏様に宣戦布告致しました翌日、
シャルさんと一緒に第三アリーナで訓練をする事にいたしました。
「ブルー・ティアーズの本来の意味だっけ?
どういう意味なの?」
ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを展開したシャルさんが尋ねてこられました。
「ブルー・ティアーズは元々、ビットのレーザーを屈折させる事が出来るのです、
ですがそれは高稼動状態でないと撃てないのです。」
恐らくイメージが足りていないのでしょう。
いくら撃てども一向に曲がりはしませんでした。
だから一夏様は私にイメージをしてみろと暗に言ったのでしょう。
「なるほど・・・、どうすればいいんだろうね?」
「どうすればいいのでしょうか・・・?」
シャルさんと揃って首を傾げてしまいました。
ブルー・ティアーズの本来の意味・・・、
それはブルー・ティアーズの本質・・・。
「ブルー・ティアーズ・・・、蒼い雫・・・。」
「蒼い雫・・・、・・・!!」
シャルさんの何気無い言葉に、突如としてなにかが閃きました。
水面に落ちる水の一滴、それがブルー・ティアーズ!!
「そうですわ!!見えましたわ!!」
ほぼ無意識にスターライトMk-Ⅲを呼び出し、
トリガーを引くより僅かに早く流れる水をイメージする。
すると放たれたレーザーがほんの僅かですが屈折しました。
「凄いよセシリア!!出来たね!!」
「シャルさんのお蔭ですわ!ありがとうございます!」
まるで自分の事の様に喜んでくださるシャルさんに感謝しながら、
私は一夏様と出逢えた事に深く歓びました。
あの方のお蔭で私は新たな高みへと行けるから・・・。
sideout
sideシャルロット
セシリアが一夏から出された課題をクリアしたのは嬉しいけど、
まだ僕の課題は終わっていない。
観客を湧かせる戦いをしてみろ。
一夏はそう言っていたけど、どうすれば良いのかさっぱり判らない。
確かに僕にはラピッド・スイッチがあるけど、
それ以外に特出した物なんて何もない。
器用貧乏ともとれるんだよね・・・。
「シャルさん、心のままですわ。」
「えっ?」
「誰かのサポートではなく、自分の心のままに戦う事こそ、
貴女らしさが見えてくる筈ですわ、
貴女の愛機、ラファールの様に。」
ラファール、
疾風の名のままに戦えって事?
「自分勝手と、仲間を信じた上での自由気ままは違いますわ、
それだけは理解しておいて下さいな。」
なるほど、僕は無意識に仲間の補助しないといけないと勝手に思ってたんだ、
それはそれで良いかも知れないけど、どうしても陰に隠れてしまう、
なら、仲間を信じた上で、自分の心のままの戦い方をすれば良いんじゃないか。
「うん、分かったよセシリア、ありがとう。」
セシリアに感謝しつつ、僕は一夏の顔を思い浮かべていた。
あの意地悪な表情を少しでも崩せたら良いな♪
sideout
はいどーもです!
最近少し忙しくなってきて連日投稿が出来なくなりそうです。
最悪三日に一話は上げますんで暫く御待ちください。
次回予告
学年別トーナメントに向け、
一夏はある人物とタッグを組む。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
一夏と秋良の相方探し。
お楽しみに!