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試合を終えた一夏はセシリアとシャルロットを抱えてピットに戻って来た。
二人とも機体のエネルギー切れで動けなかった為に、
一夏が気をきかせたのだ。
「身体の方は大丈夫か?」
「大丈夫だよ、ちょっと背中が痛むけどね。」
「同じくですわ。」
シャルロットとセシリアを床に降ろし、
一夏は二人の身体の調子を尋ねながらストライクを解除する。
「ならいい、怪我でもされたら寝覚めが悪いからな。」
そんな事を言いつつ、一夏はピットの隅の方に置いていた自前のクーラーボックスの蓋を開け、
中で冷やしておいたモナカアイスを取り出して食べる。
「♪」
実は、一夏は激しい戦闘の後、無性に甘い物が食べたくなるらしく、
この大会中は何時も購買で買ったアイスの類いをクーラーボックスに入れて持ち歩いていたらしい。
「一夏ってさ、何時も甘い物食べてるのによく太らないね。」
「殿方だからでしょうか?羨ましい限りですわ。」
次々にアイスを平らげていく一夏を見て、
セシリアとシャルロットは自分の体型と一夏の体型を見比べながら呟いた。
「いやいや、普通これぐらい食べても太らねぇだろ?
それに気にしたら余計に太るぞ?」
「イヤァァァ!それ以上言わないでぇぇぇ!!」
「聞きたくありません!!聞きたくありませんわぁぁぁ!!」
一夏が二人の下腹を指しながら言うと、
二人は頭を抱えて踞った。
女性にとって体重、体型とは永遠の悩みであるようだ。
因みに一夏が太らない理由、それはエネルギーの消費が常人より多い為、
少々食べ過ぎても大丈夫なのだ。
「さてと、そろそろ行くとするか。」
合計六個目のアイスを口に放り込んだ後、
手をはたき、カタパルトの方へと歩いていく。
「行くぞラウラ、気が変わった、お前にも少し戦ってもらう。」
「!分かりました!」
半ば空気と化するところだったラウラの表情がパッと輝く。
人間忘れられる事程悲しい事は無い。
一夏は先立ってストライクを起動、展開させる。
「あれ?一夏、I.W.S.P.はどうしたの?」
「珍しいですわね、起動時からエールストライカーを装備なさるなんて。」
起動したストライクの姿を見たシャルロットとセシリアが一夏に尋ねる。
「さっきの戦いで修復不可能な状態になっちまってな、
予備のI.W.S.P.は無いから仕方なしにな。」
一夏は自分の落ち度を自嘲するかの様に言い、肩を竦める。
「だが、いくら装備が悪かろうが、勝つのはこの俺だ、
お前達を倒した男の戦いを見ていてくれ。」
首だけで振り返り、何時もと同じ不敵な笑みを浮かべながら言う。
「うん、ちゃんと見てるよ。」
「ですから、必ず勝ってくださいませ!」
「当たり前だ、お前達の想いも一緒に背負って戦うんだ、
無様な事など出来るかよ。」
シャルロットとセシリアの言葉にうなずき、
一夏はストライクをカタパルトに固定する。
『進路クリアー、ストライク、発進どうぞ!』
「織斑一夏、エールストライク、行くぞ!」
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一夏がセシリア達と話している頃、
秋良は反対側のピットで準備をしていた。
「ん~、さっきのあの爆発・・・、
間違いなくI.W.S.P.を盾代わりにしたね。」
秋良はルージュの待機形態から先程の一夏の試合を見ながら呟く。
「間違いなく次の戦いにI.W.S.P.は使ってこない、
ならこっちもソードストライカーに換装して行くかな。」
そう言いながら購買で買ったケバブ(チリソース+ヨーグルトソースがけ。)をかじる。
因みに彼の脳内には、グラサン男と金髪ガサツ娘に困ったような顔をしているスーパーコーディネーターの顔が写ったとか・・・。
まあそれはどうでも良いとして。
「秋良、そろそろ行かなくて良いのか?」
箒が秋良に近付きながら話し掛ける。
「ん、そうだね、ちょっと待ってて。」
そう言いつつ、秋良はケバブを食べきり、
ルージュをソードストライカー装備状態で展開させる。
「I.W.S.P.は使わないの?」
秋良達と共にピットにいた簪が何時もと違うルージュの姿を秋良に尋ねる。
「ん?兄さんはたぶんエールストライカーで来るからね、
高機動を相手にするからには、なるべく小回りの利くソードの方が良いからね。」
「何故そうだと思うのだ?」
秋良の説明を疑問に思った箒が尋ねるが、
秋良はさも当然と言った風に答える。
「あの時、兄さんはI.W.S.P.からエールストライカーに換装した、
何も無かったならI.W.S.P.のまま勝負をつけても良かった筈だ、
なのに何故エールストライカーに換装したと思う?
答えは簡単、I.W.S.P.が破壊されたからだよ。」
「よく見てるね、全然分からなかった・・・。」
「しょうがないさ、俺も今の今まで分からなかったんだ、
映像を見直さないと分からないレベルだったよ。」
簪の呟きに答えながらも、
自身の兄が行った行為を瞬時に読めなかった自分を嘲る様に肩を竦める。
「それじゃあ行ってくるとしますかね。」
「あ、秋良!絶対に勝って!」
「必ず勝ってね。」
カタパルトに行こうとする秋良に、
鈴と簪が応援の言葉を送る。
「任せてくれ、君達の気持ちも全部背負って戦ってみせるさ。」
二人に返した後、秋良はカタパルトに機体を移動させ、
発進体勢を調える。
『進路クリアー、ルージュ、発進どうぞ!』
「織斑秋良、ストライクルージュ、行くよ!」
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side一夏
俺と秋良はほぼ同時にアリーナに飛び出した。
なるほど、ソードストライカーでやり合う気か、
そう来なくちゃ面白くない。
「よう秋良、久しぶりだな。」
「そうだね、大会中はなるべく会わない様にしてたからね。」
「まったくだな。」
そうじゃないと気持ちが鈍るからな、
戦いに情を持ち込まないのは鉄則だからな。
「本気の本気でやり合うぞ?恨みっこ無しだ。」
「当然、そうじゃないと面白くない。」
俺はビームライフルを構え、秋良はシュベルト・ゲベールを構える。
既にラウラと箒もアリーナに出てきている、
ブザーさえ鳴り響けば、何時でも戦闘を始められる。
『両チーム開始線まで移動してください!
試合開始まで―――』
カウントダウンが始まる中、
俺は何時でもトリガーを引ける様にしながらも、
ある別の行動を行える様に程よく力を抜く。
「(ラウラ、俺が投げるシールドをレールガンで撃て。)」
「(了解しました!)」
プライベートチャンネルで通信をした直後、
『試合開始!!』
試合開始を告げるブザーが高々と鳴り響いた。
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試合開始のブザーが鳴り響くと同時に、
観客席から盛大な歓声が発生する。
その中で先に動いたのは紅い機体、ストライクルージュを駆る秋良だった。
対艦刀<シュベルト・ゲベール>を構え、ストライクを駆る一夏に迫る。
それに対し一夏は身体を捻り、
コンバインドシールドを秋良目掛けて投げつける。
秋良はシュベルト・ゲベールを横薙ぎし、
シールドを叩き斬ろうとする。
対艦刀<シュベルト・ゲベール>の刀身は実体剣とビームソードで形成されているため、
対ビームコーティングが施されたシールドですらその威力を殺しきれない。
だが・・・、
秋良がシールドを斬ろうとした直前、
何処からか飛来したレールガンの砲弾がシールドを撃ち抜き、爆散させた。
コンバインドシール内部のエネルギージェネレーターが爆発し、
辺りを爆煙が覆う。
その中からビームが数発飛来し、ルージュの機体を襲う。
「なっ・・・!?」
あまりに予想外な出来事に回避もままならず、
二発程被弾してしまう。
「ガァッ・・・!!兄さん!!」
「誰がサシでやり合うって言った?
今の俺の装備じゃあお前を正攻法では倒せんしな。
ラウラ、攻め立てろ!!」
「了解しました兄貴!!」
秋良に追撃をかけるかの如く、
一夏はビームを撃ちかける、それと同時にラウラもプラズマブレードを両腕に展開し、
秋良を攻め立てる。
(クッ!なんて策士なんだよ兄さんは、完全にサシだと思ってた裏をかかれた!)
秋良は自身の思慮の甘さを痛感しながらも、
被弾を避けるべく機体を動かす。
「ハアァァッ!」
ラウラはプラズマブレードだけではなく、
ワイヤーも加えた攻撃を繰り出す。
一つ一つの攻撃力は高くないが、
連続して続くことによりヘタな攻撃よりも通算ダメージ量は増える。
「グゥッ!!」
「もらった!!」
ラウラの猛攻にてこずっていたところに、
一夏がビームサーベルを引き抜き迫る。
「そうはさせない!」
だが、ショットガンを撃ちながら割り込んで来た箒のリヴァイヴに反応し、
一夏とラウラは一旦距離をとる。
「ちっ、後ちょっとで秋良を墜とせたんだがな、
ま、割り込んで来るのも計算の内だ。」
一夏はボヤきながらもビームライフルを格納し、
右手にビームサーベルを持って箒に肉迫する。
「よぉ箒、調子良さそうじゃねぇか?」
「お前達程ではないさ、だが!」
繰り出されるビームサーベルを捌きつつ、
箒は機体を後退させ、ブレッドスライサーを三つ呼び出し、
一夏目掛けて投擲する。
投擲した直後、グレネードランチャーを呼び出し、
狙いを定める。
「ヤバッ・・・!?」
一夏はそれを視認すると身体を捻り、
投擲されたブレッドスライサーの一つを人差し指と中指の間に挟み、
身体を更にもう一捻りし、箒に投げ返す。
それは発射されたグレネード弾に直撃し盛大に爆発した。
「なにっ!?」
「オォォォッ!!」
まさかの対処に怯んでしまった箒は一夏の無慈悲な斬撃の嵐に襲われる。
そして、遂にリヴァイヴのエネルギーは底をついた。
「くっ・・・!力及ばなかったか・・・。」
「だが、良い攻撃だった、さてと、秋良を倒しに行くとするか。」
悔しそうに項垂れる箒に声をかけた後、
一夏は秋良とラウラの戦いの中に飛び込んで行った。
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side秋良
クッ!流石に前の様にはいかないか!
両腕にプラズマブレードを発生させて俺に斬り込んで来るラウラをいなしつつ、
俺はシュベルト・ゲベールとマイダスメッサーを使い攻め立てるが
中々喰らってくれない。
左目のヴォーダン・オージェを解放しているせいか、
前回より遥かに反応も良い。
兄さんめ、一体何を吹き込んだんだよ、
お陰で俺は苦戦中だよまったく!!
まずいな・・・、
最初の不意討ちでエネルギーの4分の1が削られちゃったから、
これ以上戦いが長引いてしまったらたとえラウラを退けられても、
兄さんを相手にすれば確実に負ける。
ここは攻めてみますか!
シュベルト・ゲベールを大振りして、
ラウラとの距離を離す。
その隙にマイダスメッサーを投擲し、
回避した所をパンツァーアイゼンのロケットアンカーで捕らえる。
「・・・!!」
「もらったよ!!」
ケーブルを巻き取りながらこちらも動き、
シュベルト・ゲベールを横薙ぎした。
だが・・・。
「ラウラァァァ!!」
「兄貴!!」
「何!?」
兄さんが俺とラウラの間に割り込んでシュベルト・ゲベールをビームサーベル二本で受け止めた。
あら~、もうちょっと止めててよ箒・・・!!
って!?なんでランチャーストライカーに換装してんだよ!?
まさか・・・!!
「ラウラ!!トリガーを引け!!」
「はいッ!!」
こんな至近距離でアグニを撃つつもりなのかよ!?
ヤバイ!!あれを喰らったら一貫の終わりだ!!
「「オォォォォォッ!!」」
sideout
side一夏
――ズドォォォォンッ!!――
ゼロ距離でアグニを撃った反動で、
俺とラウラは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。
ラウラを庇った為、予想以上のダメージを喰らってしまった。
「大丈夫ですか兄貴!?」
「ああ、なんとかな。」
あーあ・・・、ランチャーストライカーまで駄目にしちまったな・・・、
こりゃ開発部にどやされるな。
あー嫌だ嫌だ。
「だが、これでアイツも動けんだろ・・・、っ!?」
勝ちを予想した俺の目に、シュベルト・ゲベールを杖の様にしながら立ち上がる秋良の姿が写る。
左半分の装甲と、バックパックが失われていたが、
シュベルト・ゲベールを保持する右腕だけはしっかりと残っていた。
(まさか・・・、あの一瞬でバックパックを排除して目の前まで持って来たのか・・・!?)
だとすれば恐ろしいことこの上無い。
あれで決めるつもりだったんだ、こっちにもエネルギーはほとんど残っていない。
だが、秋良とてエネルギーはもうゼロに近いだろう、
その証拠に、シュベルト・ゲベールにはビーム刃が展開されていない。
つまり、戦いを挑むにしても実体剣だけで挑んで来る。
なら、俺も覚悟を決めるか。
ランチャーストライカーを排除しアーマーシュナイダーを取り出す。
「ハァ・・・、ハァ・・・ッ!!兄さん・・・、これが俺の、
最後の一撃だ・・・!!」
秋良が息も絶え絶えに叫びながらも、
シュベルト・ゲベールの切っ先を俺に向けて来る。
「あぁ・・・、俺もこれが最後だな・・・、勝負だ!!」
「上等!!」
俺と秋良はほぼ同時に走り出した。
お互いに相手を打倒するため、己が持てる全てをぶつける。
けどなぁ、アーマーシュナイダーごときでシュベルト・ゲベールと打ち合えるなんざ思わねぇ、
だから、俺は別のやり方で戦う!!
「「オォォォォッ!!」」
雄叫びと同時に秋良はシュベルト・ゲベールを横薙ぎし、
俺の首を狙ってくる。
俺はそれを身体を沈める事で回避する。
シュベルト・ゲベールは大型故の強大な威力を秘めているが、
素早さで攻められればひとたまりも無い。
「ウオォォォォッ!!」
逆手に持っていたアーマーシュナイダーを残っていた装甲部分に突き立てる。
これで終わり・・・、っ!?
「アァァッ!!」
「ぐぁっ!?」
アーマーシュナイダーを突き立てたのと同時に、
秋良が背中でシュベルト・ゲベールを持ち変え、俺の脇腹に一閃を叩き込んできた。
技の発動直後だった為、回避する事も出来ずにまともに喰らってしまった。
強烈な衝撃の後、俺の身体は宙に浮き、
ストライクは強制解除された。
「兄貴!!」
ラウラの声が聞こえ、気がついたら俺はラウラに抱き抱えられていた。
なんか情けないな・・・。
「・・・、俺は・・・、どうなったんだ・・・?」
身体を起こしてみると、ルージュが解除された状態で秋良が倒れていた。
「相討ちか・・・、って事は・・・。」
「私達の勝ちです!」
勝つには勝ったが、釈然としねぇ勝ちだな・・・。
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『学年別トーナメント、優勝は織斑一夏、ラウラ・ボーデヴィッヒチーム!!』
決勝戦後、すぐに表彰式がおこなわれた。
「あーしんど・・・、早くシャワー浴びて眠りてぇ・・・。」
「兄貴、優勝したのに全然嬉しそうじゃありませんね。」
「バーロー、俺はもっとスタイリッシュに勝ちたかったんだよ、
あんな相討ちで勝ちなんて認めるか!」
一夏はラウラと並びながらもボヤく。
本人にとってはこの優勝は素直に喜べないのだろう。
因みに秋良は気絶していた為、医務室に運ばれていった。
「そういやぁ、優勝賞品は何なんだ?」
「確か、本人の希望品が送られるそうですが、兄貴は何が欲しいのです?」
「ほぉ?良いこと思いついたッと。」
自身の質問に答えたラウラの言葉に、
一夏は悪どい笑みを浮かべた。
「それでは、織斑君!希望品は!?」
「それはですね・・・。」
マイクを持って尋ねて来る真耶に、
一夏は浮かべていた笑みを更に深い物にする。
彼の望みは・・・。
「俺に、生徒会長と同等の権限を与えて頂きたい。」
『!?』
彼の発言に、アリーナにいた全ての人間が一様にざわめく。
生徒会長と同等の権限を持つ、
つまり、一夏は新たに自分の生徒会を創ろうとするようなものである。
「それは・・・。」
「許可できないとか言っちゃ駄目ですよ?
優勝賞品は優勝者の意向なんですよね?」
「そ、それはそうですけど・・・。」
渋る真耶に向け、一夏は威圧的な雰囲気を醸し出す。
その雰囲気は真耶だけではなく、彼の近くにいたラウラですら震え上がった。
「ま、駄姉と相談してください、俺の望みは以上です。」
一夏はそう言ってラウラを前に立たせる。
会場の空気は困惑一色に包まれていた・・・。
因みにラウラの望みは一夏の望みを叶える事になったらしい。
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はいどーもです!
いやー、一夏さん結構調子に乗り始めました。
まぁ書いている私めが言うことでは無いのですが・・・。
さて次回予告
医務室で目を覚ました秋良に一夏の真意を問う簪、
一夏の真意とは?
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
第二生徒会
お楽しみに!