インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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想いの強さ 前編

side一夏

「先程、日本政府より米軍用IS、シルバリオ・ゴスペル、

通称、福音が米軍の管理下に離れ、

日本近海を目指し飛行中、これを迎撃、捕縛、もしくは破壊せよという命令が下った。」

 

旅館の広間に設けられた仮設の指令室で、

俺達専用機持ちと箒は日本政府からの通達を聞いた。

 

だが、やはり何か引っ掛かる物がある。

と言うのも、前世での知識を吟味してみると、

何故俺達IS学園の生徒が迎撃しなければならないのだろうか?

 

俺が行き着いた理由は酷く単純、

あのアホ兎がただ単に紅椿を活躍させたいと言う目論見の下、

福音を暴走させ、日本政府、もしくはアメリカ政府の通達が歪められた形でここに届いたのだろう。

 

ハッキリ言って、迷惑この上無いな。

 

「まあ迎撃しろと言われれば参加はするが、

その前にスペックカタログの詳細を開示していただきたい。」

「良かろう、だが、決して口外はするな、もし情報の漏洩が確認されれば、

諸君らには査問会と最低でも二年の監視が着くことになる。」

 

おうおう、御大層なこって。

まあ破る気も無ければ、ベラベラと喋る気も無いんだけどな。

 

俺達は一斉に開示されたデータに目を通す。

 

ふむ、やはり原作同様、機動力はかなり高い、

エールストライカーの出力と同等かそれ以上と言う度合いか。

 

それに火力も高い、このシルバーベルと言ったか?

一発一発がI.W.S.P.のガトリングのレーザー版と言ったところだな。

 

ああ、厄介だ、俺にはエールストライカーとライトニングストライカーしか装備がない。

 

エールで出撃しても良いんだが、

帰りのエネルギーが心許ない。

 

「セシリア、追加パッケージのインストールは終わっているか?」

「はい。高機動強襲用パッケージ、ストライクガンナーの準備は万端、

何時でも参りますわ。」

「シャル。」

「勿論終わってるよ、防御用パッケージ、ガーデンカーテン、防御なら任せて。」

 

セシリアとシャルは準備万端、他はどうだろうか?

 

「簪。」

「一応、追加スラスターのインストールなら終わってる。」

「ラウラ。」

「砲撃用パッケージ、ブリッツのインストールは終わっています。」

「鈴。」

「お、終わってる!・・・、多分・・・。」

 

さて、鈴以外はアテになりそうだ。

 

ま、もう少し情報を集めとくか。

「因みに織斑先生、福音はどの辺りを通過するんだ?」

「敬語を使え、通過地点はここから沖合い二キロの所を通過する、

しかし、通過速度が剰りにも速い為、なるべく速度の出せる機体が望ましい。」

 

成る程な、まあそんな事をせずとも、

引き留めさえすればなんとかなるな。

 

「分かった、エールストライカー装備の秋良が先行し、

その後にセシリア、簪が鈴とシャルを運んでこい、

ラウラはここからブリッツでの狙撃で援護しろ。」

 

俺は全員を見回しながら言い、最後に箒を見る。

 

こいつがISを嫌っているのは百も承知だ、

だが、今は戦力を出し惜しみしている場合じゃ無い。

 

「箒、お前はどうする?ここに来ちまった以上、

作戦に参加するか、それとも、降りるか、このニ択以外無い。」

 

酷な言い方だが、流石にハッキリしない奴を戦闘には参加させたくない、

出て死なれちゃ寝覚めが悪すぎだ。

 

「無理に、とは言わん、だが、出来ることならお前の力を借りたい。」

 

この場にいた全ての人間の視線が俺に向けられる、

そこには驚愕の色が見てとれる。

 

まあ当然だろう、素人をいきなり戦場に放り込もうとする事自体間違いと言う事は俺も承知している。

 

「私は・・・。」

俯き、拳を握り締める箒は、嫌悪する物を使う事に抵抗を示している。

 

無理にとは言わん、と言ったはずなんだがな?

 

「一夏、答えてくれ。」

「何を?」

不意に、箒が口を開く。

何を答えれば良いのかさっぱりだが。

 

「力は、ただ相手を傷付ける物なのか?」

成る程な、そう言う事を聞きたかった訳か、

道は自分で見付ける物だが、手助け位はしよう。

 

「俺はそう思う、だが、力は使い方次第では何にでも使える、

秋良、お前はどうする?どう思う?」

 

「ん~、俺はどちらかと言えば兄さんに近い思考だけど、

力は守る事にも使えると思うよ。」

俺のパスを上手いこと繋げてくれた秋良の言葉に、

箒は握り締めていた拳を開き、掌を見つめる。

 

「力とは振るう者の心で決まる、お前はあのアホ兎の様子を見て、

自分は他人を傷付けないと誓ったんだろ?」

 

あの時の箒の様子を見て、そして、今、この質問を受け、

この結論に至った。

 

「その心意気は上等だ、その心さえあれば、

お前は決して人を傷付けない、俺が確約してやる。」

「一夏・・・。」

 

俺は仲間だけは必ず助ける、

敵やその他は知らんがな。

 

「もう一度聞く、お前は来るか?それとも、来ないか?」

俺は立ち上がり、箒に手を差し出す、

友人として、そして、戦友としてこれぐらいはするさ。

 

「私は、戦いたい!!この力で誰かを守れるなら、私は喜んでこの力を使う!!」

「分かった、その心意気、この織斑一夏が受け取った。」

 

俺の手を取り、箒は決然と立ち上がる。

これで専用機が八機、上等な戦力じゃねぇか。

 

「全員注目!!これよりIS学園第二生徒会長として指令を出す!」

俺の言葉に、全員が立ち上がる。

 

「秋良と箒は先行し、福音の足を止めろ!

セシリア、簪はシャルと鈴を連れて後発、戦線に参加!

俺とラウラは長距離狙撃パッケージで砂浜より狙撃する!」

『了解(ですわ)!!』

 

全員から了解の意を受け、俺は踵を返し旅館の外へ出る。

 

sideout

 

side秋良

兄さんの指示を受け、俺と箒は砂浜に立っていた。

 

「一夏の戦術、まるで隙が無いね。」

俺達の後ろに控える簪が兄さんの下した陣形に驚嘆していた。

 

確かに、あれが最も確実且つ、効率の良い作戦だからね。

 

「各機に通達、これより、作戦を開始する、

尚、全員の帰還を以て作戦の成功とする!」

兄さんらしいな、全員の帰還を以て作戦の成功か、

良いねぇ、なら、その気持ちに応えるとしますかね。

 

「織斑秋良、ストライクルージュ、行くよ!!」

「篠ノ之 箒、紅椿、参る!!」

 

空を切り裂き、俺は箒と飛んだ。

 

sideout

 

side一夏

秋良と箒が飛び、俺とラウラは長大なレールガンを構える。

 

「一夏、私達もそろそろ出撃する?」

「いや、まだだ、俺とラウラが第一射を撃ってからだ。

後少し待ってろ。」

 

俺はライトニングストライカーの補助を受け、

スコープを覗き込む。

 

まだ福音は見えない、だが、近付いて来るのが分かる。

 

何故かは分からないが、物の数秒で秋良達と接触するだろうという気がする。

 

そんな時だった。

 

『こちら秋良、福音を目視した、これより攻撃体勢に入る!』

「了解した、セシリア、シャル、簪、鈴、頼んだぞ。」

 

秋良からの通信を受け、

待機していたセシリア達に出撃を促す。

 

四人とも、決然たる意志を込めて頷き返し、

秋良と箒に加勢すべく飛び立った。

 

「ラウラ、俺達も援護射撃を開始する、用意は良いな?」

「はい!!」

 

ラウラの言葉を受け、俺はカノン砲のトリガーを引いた。

 

圧力を掛けられた砲弾は、音速の三倍以上のスピードで、

福音目掛けて飛んでいく。

 

秋良達と交戦していた福音は、

予想外の攻撃に対処できず、カノン砲とレールガンをもろに喰らっていた。

 

スコープの向こうで、体勢を崩した福音に秋良達が一斉に襲いかかる。

リンチの様だが、気にも留めない。

 

これで良い、後は何事も無ければ、俺達の勝ちだ。

 

・・・、待てよ、何か引っ掛かる。

何か忘れている様な気がする・・・。

 

この作戦の成否に関わる大切な事を・・・。

 

「・・・!!しまった・・・!!」

 

失念していた!!あいつらが戦ってる真下の海域に、

密漁船が入り込んで来るんだった・・・!!

 

不味い!!このままでは要らん犠牲が出る!!

 

「クソッ!!要らん手間をかけさせやがって!!」

言うが速いか、俺はライトニングストライカーを解除し、

直ぐ様エールストライカーに換装する。

 

「ラウラ!このまま撃ち続けろ!」

「は、はい!!」

「間に合ってくれよ・・・!!」

 

ラウラに命じ、俺はスラスターを吹かし一気に跳躍した。

 

sideout

 

side秋良

兄さんに通信を入れた直後、俺はエールストライカーの大型スラスターの出力を上げ、

一気に福音に迫る。

 

ビームサーベルを抜き放ち、福音の翼を狙い斬りかかる。

 

俺の動きに気付いたのか、福音は後方宙返りでビームサーベルの刃を回避する。

やるね、けど、それぐらい読んでるさ。

 

兄さん達がいる方角からカノン砲と、レールガンの砲弾が飛来し、

回避直後の福音に直撃する。

 

「よしっ!箒!!攻めるよ!!」

「勿論だ!!」

 

兄さんが造ってくれたこの好機!!

無駄にはしない!!

 

俺と箒は多角から攻め入り、

福音になるべく攻撃する暇を与えない。

 

「ハアァァッ!!」

シュベルト・ゲベールのみを呼び出し、

福音に迫る。

 

「秋良っ!!」

 

簪達も合流し、一気に攻める!

この調子なら勝てる!

 

そう思った時だった。

 

『秋良!!そこから即刻退避しろ!!』

「どうしたんだ兄さん!?」

 

突然、兄さんからほ通信が入る。

 

『失念していた!!真下に密漁船が入り込んでる!!』

「・・・!!」

 

しまった・・・!!

なんでそんな事を忘れてたんだ・・・!!

 

真下を見てみれば、やはりそれらしき船が見えた。

 

不味い!!このままじゃ、余計な被害が出る!

どうする!?どうすれば良い!?

 

『直ぐに合流する!!箒に言って船を退避させろ!!』

「り、了解!!」

 

有り難い!どんな状況でも兄さんは冷静だ。

お陰で俺もなんとか冷静になれる。

 

「箒!!真下の海域に密漁船が入り込んでる!!

君が彼等を逃がしてくれ!!」

「なっ・・・!?」

 

俺の指示に、箒達が愕然と真下を見る。

やはり気付いていなかったか、恐らく今目視出来る場所に入ってきたのだろう。

 

「頼む!」

「わ、分かった!!」

 

箒は俺の頼みを受け入れ、漁船の方へと向かう。

それに気付いた福音が箒の方に行こうとする。

 

「させるか!」

ビームライフルを呼び出し、俺は福音へと迫る。

 

当たらなくても良い、今は箒達を逃がす事だけを考えろ!!

 

「La~♪」

突如、福音がシルバーベルを乱射してくる。

 

「っ!!」

回避する事に精一杯で、

俺達は攻撃の手を緩めてしまった。

 

その僅かに出てしまった隙の内に、

福音は箒の方へ急速に接近していく。

 

「箒ぃぃ!!」

間に合わない!!

 

そう思った時、箒の前に影が割り込んだ。

 

sideout

 

side箒

何が起きたか分からなかった。

 

秋良の叫びが聞こえ、福音が接近してくることが分かった。

 

なんとか船を守ろうと、身体を盾にしようとした。

 

奴の腕は、私の身体を貫くコースだった。

思わず目を瞑り、来る痛みに備えた。

 

―ザシュッ―

肉を切り裂く様な嫌な音が聞こえた、

しかし、いつまで経っても痛みが来ない。

 

まさか剰りにも激痛なせいで、

脳が痛みを認識出来ないのか・・・?

 

恐る恐る目を開くと、翼を背負った白い機体が映った。

 

私達の中で白い機体を使うのは一人しかいない。

間違いない、あれはストライク・・・。

 

「一夏っ・・・!!」

 

彼の右脇腹に福音の腕が突き刺さっている

本当なら腹のど真ん中を貫通するコースだったが、

彼の根性で方向を逸らしたのだろう。

 

だが、やはり重傷なのは目に見えている、

つき出している福音のアームの先から血が滴り落ちている。

 

「ぐっ・・・、ほ、箒・・・、

さっさと、離脱・・・、しろ・・・!!」

「だが!!」

 

掠れた声で言うが、私の身体は動かない。

恐怖、ただそれだけに支配されていた。

 

「命令だ!離脱しろ・・・!!」

「っ!!了解・・・!!」

 

確かに、今は一夏が福音を止めているが、

いつまでもつかわからない・・・。

 

クソッ!!私は、無力だ・・・!!

 

私は後ろ髪を引かれる思いで船を押し、

一気に浜まで戻った。

 

sideout

 

side一夏

離脱していく箒を見送り、俺は渾身の力を籠め福音を殴り飛ばした。

 

その瞬間、福音の腕が脇腹から抜け、今までに感じた事の無い激痛が襲いかかる。

 

「・・・っ!!グゥ・・・!!」

 

意識が飛びそうだ・・・、いつまで意識を保てるかは分からない。

 

だが、今の俺では、間違いなく福音を倒せない・・・。

どうする・・・?

 

脇腹を押さえ、荒い呼吸をする俺目掛け、

福音がシルバーベルの発射体勢に入ろうとする。

 

不味いな・・・、避けきれない・・・。

 

「兄さん!!」

秋良が瞬間加速<イグニッション・ブースト>で福音に接近し、

ビームサーベルで斬りかかるが、福音はヒラリとそれを避け、

俺達に興味を無くしたかの様に飛び去っていった・・・。

 

「お待ちなさい!!」

「逃がさない!!」

 

セシリアとシャルが追撃しようとするが、

やはり福音の速さには追い付けないらしく、

一撃も撃てなかった・・・。

 

「ぐっ・・・!!あぁ・・・。」

それを認めた瞬間、目の前が闇に包まれ、

自分が頭から墜ちていくのが判る。

 

「兄さん!!」

 

俺を呼ぶ秋良の声を最後に、

俺の意識は途絶えた・・・。

 

sideout

 

side秋良

「作戦は失敗、兄さんは意識不明・・・、

俺達のボロ敗けだね・・・。」

 

姉さんに報告しに行った後、

俺は兄さんが眠る部屋にやって来た。

 

兄さんの傍らにはセシリアとシャルロット、

それに兄さんに救われた箒がいた。

 

「「「・・・。」」」

三人とも何も言わず、兄さんを見詰めている。

 

セシリアとシャルは自分が力に成れなかった事を、

箒は自分の不甲斐なさを悔やんでいるのだろう・・・。

 

かく言う俺も悔しくて堪らない、

俺は兄さんと同等の力を持っている。

 

それなのに、何も出来なかった・・・。

 

それが悔しくて堪らない。

 

だけど、俺はこの位で終わる気は無い。

 

さっきラウラに頼んで、福音の捜索をして貰っている。

 

後少しで見付かる筈だ・・・。

 

「秋良、見付かったぞ、ここから二十キロ離れた沖に滞空している。」

「ありがとうラウラ、そろそろ機体エネルギーの回復も終わる、

行けない事はないか・・・。」

 

俺は外で待機しているだろう簪達にも聞こえる様に言う。

 

「俺達はこれより、兄さんの弔い合戦に出る!

行ける奴だけ着いてこい!!」

『!!』

 

全員の顔が驚愕に染まる、

そりゃそうか、ろくな休憩もせずに挑むもんだからね。

 

「秋良さん!!一夏様は亡くなってませんわよ!!」

「そうだよ!!勝手に殺さないでよ!!」

 

え?驚く所ってそこ?

確かに弔い合戦はおかしいか。

 

では言い直そう。

 

「ごめんごめん、言い直すよ、

俺達はこれより、兄さんの仇討ちに出る!着いてこい!!」

『了解!!』

 

箒も立ち上がり、決意を籠めた視線を送ってくる。

兄さんが落とされて悔しい気持ちはあるだろうけど、

俺達はこんなことで立ち止まれないんだ!

 

「さあ行こう!」

 

sideout

 

side一夏

暗闇の中・・・。

 

俺は頭から墜ちていく・・・。

 

指先一つ動かない。

まるで自分の身体ではない様だ・・・。

 

何も考えられない・・・。

何も・・・。

 

ただ、眠りに墜ちていく・・・。

 

sideout




次回予告
一夏の仇討ちの為、
出撃する秋良達、その時一夏は・・・。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
想いの強さ 中編

お楽しみに!!
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