side一夏
どうしてこうなった。
セシリアとシャルが俺の誕生日の為に腕時計を贈ってくれる事となり、
今日は俺の意見も聞きたいからと、デートがてら時計店に行く筈だった。
だが、待ち合わせ場所に行ってみればどうだ?
楯無と簪がかち合っちまうわ、面倒だわでかなりイライラしている。
で、現在俺達は待ち合わせ場所の近くにあったコーヒーショップに入り、
面と向かい合って座っている。
俺や雅人の様なイケメンに加え、
セシリアやシャルの様な美少女が六人も居ると来た、
店内の俺達を見る目はかなり多かった。
それは良い、美男美女を見る羨望の眼など、
とうの昔に馴れきった。
問題は目の前にある、
現在進行形で仲が冷えきっている更識姉妹だ。
このコーヒーショップに入った際、
秋良と雅人は何とかして二人を隣り合わせに座らせようとしたが、
あの姉妹はどちらからともなく離れた席に座った。
ある意味、意志疎通が出来てる事に驚いたが、
これは仕方無いと思う。
流石に喧嘩してる最中の奴等を隣り合わせに座らせる等、
愚の骨頂としか言いようが無い。
だが、見ている限り、どうも簪が避けていると言うより、
楯無が及び腰になっているのが分かる。
恐らく、簪は同じ様に姉が居る俺や秋良の姿勢を見ている内に、
楯無に怯えるのが馬鹿らしくなったんだろう。
それに、避けている原因も、
楯無の変態的趣向に依るものだと言えよう。
それは置いといて、
俺は一刻も早く、この辛気臭い場所からおさらばして、
セシリアとシャルの為に時間を有意義に使いたい。
なので、問題解決を秋良と雅人に押し付ける事にした。
「秋良、雅人、悪いが俺達はこれで失礼する、
こんな要らん事で時間を潰したくないからな。」
秋良にここでの飲食代として諭吉を一枚渡し、
セシリアとシャルを連れてさっさと店を出た。
「二人とも、胃は大丈夫か?」
「はい、何とか・・・。」
「僕は寧ろ頭が痛くなりそうだったよ・・・。」
ギリギリだったみたいだな・・・、良かったな。
俺の事はいい、
セシリアとシャルの安寧が最優先だからな。
「さてと、気を取り直して行くとするか、
今日はお前達に任せるよ。」
「はい♪お任せくださいませ。」
「僕達に任せてね♪」
俺の頼みに、二人は笑顔で頷いて俺の腕にしっかりと腕を回してきた。
さてと、楽しむとさせていただくか。
sideout
side秋良
さてどうしたものだろう・・・。
なんと言うか凄まじく気まずい・・・。
よりにもよって同じ日に出掛けるなんて思ってもみなかった。
いや、その前に雅人がここまで楯無と進展してたなんて思わなかったよ。
で、現在俺は雅人達と向き合って凄く気まずい時間を過ごしている。
「さて・・・、何から話をすればいいのやら・・・、
なんでこの残姉さんがここにいるのかから説明せにゃならんか。」
「雅人まで言うの!?」
雅人の辛辣な言葉に楯無は涙目になるが、
一々気にしていられない。
「楯無に誘われてここに来ただけだ、
彼女もストーキングしようと言う気はない。」
雅人が弁護してるけど、
前科が前科だけに非常に信頼性に欠ける。
「信じてやってくれ、頼む。」
明日は土砂降りかなと思えるね、
雅人が人に頭下げるなんて見たこと無いし。
「酷く貶されてる気がしないでも無いが、取り敢えず楯無を睨むな。」
なんで俺って思考を読まれるんだろ?
兄さんや雅人ならまだしも、簪達にも読まれてる事があるしね。
まぁ、良いや。
「分かった、信じるよ、変態行為だけは本当に勘弁してね?」
「うっ・・・!わ、分かったわ・・・。」
おい、思いっきり苦渋の決断を迫られたみたいな雰囲気を出してんじゃないよ。
もう良いや、俺達もそろそろ行くとしますかね。
立ち上がろうとすると、雅人が凄い眼でこちらを見てくる、
どうやらアイコンタクトのつもりらしいが、睨まれてる様にしか感じない。
「(どうしたんだい雅人?怖いから睨まないでよ。)」
「(睨んでるつもりは無いんだがな・・・、少しヘコむぜ・・・。)」
「(そんなことはどうでもいいから、用件だけを話してよ。)」
兄さんじゃないけど、早くこの辛気臭い場所からおさらばしたい、
それもかなり切実に。
「(いや、折角の機会だし、楯無に簪と話をさせてやりたいんだよ。)」
「(なるほどね、それについては俺も賛成したいけど、
あんなに雰囲気悪いのに大丈夫なのかい?)」
「(うっ・・・、だが、何とかなる筈だ!!)」
根性論だけはやめて欲しいんだけどなぁ・・・、
でも、そろそろ仲直りさせても良い頃だと思うし、
何とかしてみるかな?
とは言うものの、
どうやって会話をさせるかだよね?
無理矢理と言うのも流石に駄目だしね。
「(そうだ!俺が会計している内に、楯無をけしかけてよ!
そうすればあの残姉さんも一念発起するよ!)」
「(おぉ!その手があったか!分かったぜ、やってみるか!!)」
よし!これで何とかなりそうだ!
絶対に今日で仲直りのきっかけを掴ませるよ!!
sideout
noside
秋良と雅人が楯無と簪の仲を何とか取り持とうとしていた頃、
さっさと退散していった一夏達は・・・。
「一夏様、これは如何ですか?」
「こっちも良いと思うよ?」
当初の予定通り、
レゾナンス内の時計店に立ち寄り、一夏用の腕時計を選んでいた。
セシリアが蒼の装飾がなされた銀色に輝く時計を薦め、
シャルロットはホワイトゴールドが美しい時計を薦めていた。
「う~む・・・、どっちも良いな、二つとも好みに合うな。」
一夏は自分の好みにバッチリ合わせてきた二人の感性に驚き、
どちらにすべきか悩んでいた。
流石に二つともとは言えない、
彼とてそこまであつかましい訳では無い。
「あー・・・、駄目だ決められん、
スマンがお前達が決めてくれないか?そっちの方が愛着も沸きそうだしな。」
結局、決めきる事が出来なかった彼は、
決定を二人に委ねる事にした。
「ふふっ、そう言われると思いまして・・・。」
「僕達二人の意見で選んだのもあるよ♪」
一夏の何処か困った表情を可笑しく思ったのか、
セシリアとシャルロットは微笑みつつ、
店員に頼んで、もうひとつ腕時計を出してもらう。
ホワイトゴールドの外装を持ち、針に蒼の装飾が施された美しい腕時計であった。
先程、彼女達がそれぞれ選んだ物の特徴を併せ持った腕時計である。
「おぉ!コイツは良い!さっきの二つの特徴を巧いこと併せ持っている!
気に入ったぜ!これにさせてもらおう!」
気に入った品を見た一夏は、即座に購入を決めた様だ。
「ふふっ、気に入ってくれて良かったよ♪」
「店員さん、この腕時計をプレゼントでお願いしますわ。」
「かしこまりました。」
シャルロットは嬉しそうに微笑み、
セシリアは表情を綻ばせつつ、店員に購入の意思を示した。
「ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております。」
綺麗にラッピングされた包みを受け取り、
一夏達は店員に見送られ店を後にした。
「セシリア、シャル、ありがとな、大事に使わせてもらうぜ。」
一夏は何時も以上に二人を己の身体に密着させつつ、
感謝の言葉を述べていた。
「ふふっ、身に剰る光栄ですわ♪」
「その気持ちだけでとっても嬉しいよ♪」
愛しの男の謝辞に表情を綻ばせ、
二人は一夏に甘える様に身体をすりよせる。
彼女達にとって、一夏の謝辞、賛辞程悦ばしい事は無い。
「そろそろ昼飯時だな、昼食は俺が奢ろう、何か食べたい物は無いか?」
「そんな!悪いよ・・・。」
「そうですわ!なんだか申し訳ありませんし・・・。」
一夏の申し出に、彼女達は少々慌てつつ、
彼の申し出を断ろうとする。
彼女達は国家代表候補生であり、一応それなりの給料は入って来ている、
代表候補生でもない一夏に払わせるのは悪いと思ったのであろう。
「気にするな、俺は惚れた女達に出資出来ん様な甲斐性無しか?
今日の事の礼も兼ねてるしな、ここは俺に甘えておけ。」
だが、当の一夏は彼女達の心配を他所に、優しく微笑んでいた。
ここだけの話、実は一夏達はアクタイオン社から給料が出ており、
その額は並の国家代表すら上回る物である。
更に付け加えるなら、
彼は秋良との賭け事に全勝しているため、秋良の給料の半分弱をせしめているらしい。
因みに、雅人も一夏とポーカー対決を挑んだが、
手も足も出ずに敗北、賭け金を全てせしめ獲られた事が有るらしい。
まぁ、それは置いといて・・・。
つまり、一夏の稼ぎは凄まじい物があり、
普通の高校生が持っている筈もない額を所持している。
「じゃあ・・・。」
「宜しくお願いしますわ・・・。」
流石に自分達の為と言われてしまえば断り辛いのか、
セシリアとシャルロットは小さく首肯していた。
「おう、何が喰いたい?」
「えっと・・・、パスタが良いかな・・・?」
「同じくですわ・・・。」
まだ申し訳ないのか、二人は歯切れの悪い返事しか返すことしか出来なかった。
「分かった、行こうぜ。」
「「はいっ♪」」
三人は何時もの様に目的の店まで歩きだした。
sideout
side雅人
さて、勢いで言ったのは良いんだが、
冷静になって考えてみれば本当に実行して良いのか不安になってきた。
どんだけ気まずい時間を送ったかは知らないが、
流石にそろそろこの店を出ていきたい。
なので、秋良とアイコンタクトを取り、
そろそろ店を出る事にした。
そこで先程の作戦を決行する事にしよう、
でないと、この気まずい時間を無駄にしちまうからな。
「さ、皆そろそろ出ようか、何時までも居座ってたら迷惑だしね。」
秋良に促されるまま、俺達は席を立ってレジに向かう。
秋良の手には一夏から渡された諭吉氏が握られていた。
一夏のヤローは給料も良いし、俺達から賭けで奪い獲った金があるからこれぐらいはしても良いと思ってんのかね?
まぁ、有り難くご馳走になっとくけどな。
って、そんなことはどうでもいいとして・・・。
今は楯無をけしかけねぇとな。
「(おい、楯無!お前このままさよならで良いのか!?
会計している内に、一言でも良いから話しろ!!)」
「(ええっ!?何よその無茶振りは!?私に死ねって言ってるの!?)」
「(そこまで酷くねぇだろうが!!ストーキングするぐらいならちゃんと話せた方がお前も幸せだろうが!!)」
まったく、この残姉さんは変な所でヘタレてるな・・・。
「(頑張れ!ここでの頑張りが後の幸せに繋がるんだ!)」
少々言い過ぎな気もしなくは無いが、
これぐらい言っておけば発破にはなるだろう。
「(よしっ!分かったわ!やってみせるわ!!)」
あ、コイツちょろいな・・・、
まあ良い、頑張ってもらわねぇとな。
そんな事を考えている内に、楯無はゆっくりと簪の方へと近付いて行った。
「かっ、簪ちゃん!あのね・・・!」
いいぞ!その調子なら話せるぞ!
頑張れ!
「!」
行けると思ったのだが、簪は何故か顔を背けてさっさと店を出ていってしまった。
おい、完璧に俺らの苦労が報われてねぇじゃねぇか。
で、当の楯無はと言えば、今にも泣きそうな表情で床に膝をつけていた。
なんか・・・、凄く不憫だな・・・。
「うぅ・・・、簪ちゃん・・・。」
可哀想に・・・。
sideout
side秋良
コーヒーショップを後にした俺達は、
雑貨屋に立ち寄り、誕生日プレゼントの品定めを行っていた。
流石にさっきの簪の行動は咎めておきたくなった、
いくら仲が冷えきっているとは言えど、無視は良くない。
「ねぇ簪、なんで話してあげなかったの?」
俺が少し強めの語調で言ってみると、
簪は何故か顔を紅くしていた。
・・・、まさかな・・・。
「まさか、恥ずかしかったのかい・・・?」
「・・・。」
簪は小さく、そして可愛らしく首肯した、あらら・・・。
「だって・・・、何を話せばいいか分からなかったし・・・。」
「いや、流石にあれは楯無殿が可哀想だぞ、後で会いに行ってやれ。」
簪がモジモジしているのをラウラがツッコんでいた。
ラウラって、この三人の中では長女ポジションだよね。
鈴は末っ子で。
まぁ、それは置いといて・・・。
「ラウラのいう通りだよ?後で会いに行ってあげなよ。」
「うん・・・。」
「分かってくれて嬉しいよ、そんな簪が好きだよ。」
分かってくれた簪の頭を撫でてあげ、
ラウラと鈴の頭も撫でておく。
そうじゃないと後で煩いからね。
さてと、今からあの時間を取り戻しますかね。
sideout
はいどーもです!
照れ屋かんちゃんでました。
ちょっと楯無が不憫でしたね・・・。
さてと次回予告
キャノンボールファストを目前に控え、
一夏達は各々の機体の調整に勤しむ。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
弾丸よりも速く
お楽しみに!