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時は流れて、9月27日。
キャノンボールファストの開催日となった。
今回はIS学園内のアリーナではなく、
市内にあるIS専用のスタジアムで行う事になった。
IS競技以外にも多くの行事に使われており、
一度に二万人以上を収用出来るらしい。
一度新人アイドルがコンサートを開いたが、
結局満員にすることは出来ず、それ以来一度たりともコンサートの類いでは使用されていない。
因みに、『よっぽど人気無かったんだな、そのアイドル。』
と、一夏は辛口な発言を残している。
そんな事はどうでも良いとして・・・。
そのスタジアムが、今回のキャノンボールファストでは満員御礼になったのだ。
「おーおー、満員御礼だな、俺達はアイドルより人気があるのか。」
その様子を控え室から見ていた一夏は、ちょっとした優越感に浸っていた。
普段の彼なら少々鬱陶しそうな表情をするだろうが、
今日の彼は妙に機嫌が良さげだった。
まるで、今日という日に、何か良いことが起こる事を知っているかの様でもあった。
「さてと、今日は新しい物語の始まりとなるか、それとも・・・。」
そんな独白を残し、彼は更衣室から去って行った。
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side雅人
さてと、キャノンボールファストの当日になった訳だが・・・、
凄い人だかりだな・・・、二万人は居るだろうな。
それほど注目されているとは思うが、
一大イベントとは言えども流石に多過ぎるだろう・・・。
こんな所を襲撃でもされたら確実に大惨事だろうな。
っと、今のは洒落にならんな。
「雅人、何をしている?そろそろ時間だぞ。」
「箒か、すまない、今行こう。」
箒に促され、俺はピットの中へと引っ込んだ。
流石に出番がまだの奴が居ても邪魔なだけだしな。
「にしてもよぉ、なんで一年が最後なんだよ、暇すぎて死んじまうぜ・・・。」
「私に言うな、一夏か教員に言ってくれ、
まぁ、期待されていると思っておけばよいではないか?」
「まぁ、その通りなんだがな。」
こんなところで愚痴っても順番が変わる筈も無いしな。
そんな事はどうでも良いとして・・・。
「なんにせよ、頑張るとしますかね。」
「うむ。」
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side一夏
俺達がピットで待機し始めてから一時間後、
漸く二年のフライトが終わり、俺達の出番がやって来た。
「暇だったな、後二分遅ければ寝てたな。」
「兄さん、生徒会長がそんな事を言わないでよ。」
「民意だ。」
何の民意だよ!とつっこんでくる秋良を無視し、
俺は開きつつあるシャッターを睨む。
さて、行くとするか。
『さぁ、皆様お待ちかね!!世界初の男性IS操縦者!織斑一夏生徒会長率いる一年生の専用機持ち組が入場してきました!!』
黛薫子のアナウンスと共に、俺達はスタートラインまでゆっくりと機体を持っていく。
おーおー、凄い歓声だな、自分がスターか何かと勘違いしちまいそうだ。
「さて、いい試合にしようじゃないか。」
「勿論ですわ、一夏様。」
「本番は僕達が勝つよ!」
俺の掛け声に答えるように、セシリアとシャルは闘志を伺わせる様に言い、
簪達も静かに闘志を燃やしていた。
上等だ、何処までやれるかは知らんが、楽しませてもらおう。
『さぁ!それではカウントダウンを開始します!
5・・・、4・・・、3・・・、2・・・、1・・・、0!!』
カウントが0になった瞬間、俺達は一斉にスタートした。
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最初に先頭に立ったのは、
漆黒の機体、織斑一夏駆るストライクノワールだった。
出力と妨害力のバランスを考え、
真後ろにも攻撃可能のノワールストライカーを選択したのだ。
だが・・・。
「そのストライカーで先頭が取れるかよ。」
加賀美雅人駆るドレッドノートイータがストライクノワールを追い越して行く。
「甘いな。」
しかし、一夏は抜かされる事すら予想していたのか、
すかさずワイヤーアンカーを射出、ドレッドノートに絡み付かせ、
そのまま大きく振り回す。
「しまっ・・・!?うおっ!?」
ストライクノワールにワイヤーアンカーが装備されていた事を忘れていた雅人は、
驚愕の表情を浮かべながらも地面に叩き付けられた。
「お先に行かせて頂きますわ。」
「ゴメンね~。」
「ドンマイ雅人。」
そんな彼を尻目に、セシリア、シャルロット、秋良達は次々に一夏を追うべく駆ける。
「捉えましたよ!兄貴!」
二位集団から少し抜け出したラウラが先頭を走る一夏目掛け、レールガンを撃つ。
「この砲撃はラウラか!上等!」
一夏はサークルロンドを行い、飛来するレールガンの弾丸を回避しつつ、
反撃とばかりにリニアガンを後方に向けて撃つ。
「くっ!」
「みにぇっ!?」
一つはラウラ目掛けて飛ぶが、
もう一つは運悪くラウラの近くを飛んでいた鈴の甲龍に向かって行く。
「鈴っ!」
あわや直撃という時に、簪が飛び出し、
夢現を高速回転させてリニアガンを弾くという荒業に出た。
「流石だな簪!私も行かせてもらう!」
箒の紅椿が飛び出し、秋良目掛けてレーザーを撃ちかける。
「俺かよ!なんで先頭を狙わないんだよ!!」
「近くにいたお前が悪い。」
「ヒデェ!!」
文句を辛辣な言葉で返され、
秋良は悲鳴をあげつつも回避行動を怠らない。
「一夏様!捉えましたわよ!」
「僕が勝つんだからね!」
後続の集団がごたついているのに乗じ、
セシリアとシャルロットが一夏に迫り、彼目掛けてレーザーや弾丸を撃ちかける。
「くっ!もう追い付かれたのか!流石だな!」
驚嘆しつつも、ノワールストライカーよりフラガラッハ3ビームブレイドを抜き放ち、
後方を飛ぶセシリアとシャルロット目掛けて投擲する。
「その様な物で!」
「僕達は落とされないよ!!」
だが、そんな事を物ともせず、彼女達はビームブレイドの柄を掴み、
遠心力をつけて一夏へと投げ返した。
「やるな!」
一夏は振り向きもせず、後ろ手にビームブレイドを二本とも掴み取った。
「だが、レースはまだこれからだ!」
愉快と言わんばかりに吼えた一夏に応える様に、
各機はスピードをあげた。
大きな順位変動も無く、ファイナルラップに差し掛かろうとした時、
先頭を走っていた一夏目掛けて、上空から青紫のレーザーが撃ちかけられた。
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side一夏
撃ちかけられたレーザーをサークルロンドを用いて回避し、
飛来した方向を睨む。
「また来やがったか、そんなに俺に墜とされたいか!マドカ!!」
視線の先に、サイレント・ゼフィルスを纏ったマドカと、
ストライクダガーの大軍が展開していた。
ざっと50以上はいやがるな。
どうやったらこんだけ量産出来るのかが疑問だが、
今気にしてる場合では無さそうだ。
半端ねぇ数だが、問題はなかろう。
「各機に通達!亡國企業の連中が攻めて来やがった!
一機たりとも客席に向かわせるな!!」
『了解!!』
俺が通達し終えた直後から、
サイレント・ゼフィルスを含めた敵からビームやレーザーが浴びせかけられる。
「ちっ!こいつは少々面倒だな。」
臨戦体制に入り、
ビームの隙間を縫って飛び、手近なダガーをビームブレイドで切り裂く。
脆い、絶対防御が施されて無いのか、
それならこの量産性にも納得がいくな。
かと言って、状況はあまり良く無いがな・・・。
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「サイレント・ゼフィルス!逃しませんわよ!」
「今日こそ君には墜ちてもらうよ!」
ストライクガンナーを量子格納し、フォルテストラを装備したセシリアのブルー・ティアーズと、
バスターストライカーを装備したシャルロットのリヴァイヴカスタムⅡが、
仇敵に出逢ったと言わんばかりにサイレント・ゼフィルスへと向かっていく。
「ちっ!」
先日、自分を圧倒した者達に攻められるのが癪なのか、
マドカは忌々しげに舌打ちし、二人から距離をとる。
マドカを護る様に、ストライクダガーが間に割り込み、
セシリアとシャルロットの行く手を阻む。
「邪魔を・・・!!」
「しないでよ!!」
邪魔をしてくるダガーを次々に撃ち落としながらも、
二人は中々先に進めない事に苛立ちを隠せない。
そんな二人に、マドカは先日の仕返しとばかりにレーザーを浴びせかける。
「くっ!集団戦法ですって・・・!?」
「本気で僕達を潰す気だね・・・!!」
ビームやレーザーは機体を動かす事で回避し、
近付いてくるダガーをビームサーベルで斬り倒すが、
やはり多勢に無勢、二人は徐々に追い詰められていく。
一夏は一手に多くのダガーを引き付けているため、
二人の援護に回れない。
「チェックメイトだ!!」
ダガーもろとも大出力レーザーで焼き払いながらも、
セシリアとシャルロットを狙う。
「「しまっ・・・!?」」
直撃はしなかったものの、運悪く同じ場所に回避してしまい、
衝突してしまったのだ。
そして、彼女達を取り囲んでいたダガーは、
その隙を見逃さなかった。
ダガー数機が、右マニピュレータに保持していたビームライフル下部に装備されていたグレネードで、二人を狙い撃つ。
体制を崩していた彼女達は回避する事が出来ない。
盛大な爆発音と共に、土煙がもうもうと立ち込めた・・・。
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side一夏
盛大な爆発音が聞こえてきた為、
俺はダガー十機から距離を取り、その方向に目を向ける。
サイレント・ゼフィルスがいるということは、
さっき攻撃されたのはセシリアとシャルだな。
土煙が立ち込めてるから二人の安否は確認出来ない。
だが、俺は知っている。
彼女達が非常に負けず嫌いで、俺に着いてこようとしていることを。
だから、この程度の事でくたばるハズがない。
「おねんねには早いぜ?マイレディズ?」
俺の言葉が届いたのかどうか分からないが、
土煙の中から黒い闇の様な物が溢れだした。
「クックックッ・・・、新な扉が開く時だ・・・。」
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「ここは、何処なのでしょうか・・・?」
「何処なんだろうね・・・。」
何処までも続くような白い空間に、
セシリアとシャルロットは佇んでいた。
おかしい、先程まで自分達はサイレント・ゼフィルスとストライクダガー数機を相手にしていた筈だ。
なのになぜ、自分達はこんな訳も分からない場所にいるのだろうかと、
二人は同じ事を考えていた。
「あー、そう言えば、僕のせいでセシリアを捲き込んじゃったんだよね・・・。」
「そんな!シャルさんのせいではありませんわ!私の不注意が原因です!!」
相手の非を否定しつつ、自分のせいだと互いに言い張るセシリアとシャルロット。
一夏がいなくとも仲はかなり良い。
まぁ、それは置いといて・・・。
「ここって、地獄かな?」
「だとすれば最悪ですわね。」
シャルロットとセシリアは苦い表情をしながらボヤく。
ただ負けた事が悔しいだけではない、一夏に追い付けなかった事が最も悔しいのだ。
―セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア・・・―
「だ、誰!?」
「何処にいますの!?」
自分達を呼ぶ声に驚き、辺りを見渡すが見えるのは果てなく続く白、
―一夏に選ばれた君達に問いたい―
「何を問おうというのですか?」
「僕達が質問したいぐらいだけどね。」
―貴女達が愛している織斑一夏は、闇へと向かっている、
何処までも果てしなく、何処までも深い闇へと―
「「・・・。」」
言われるまでもなく、一夏の隣にいる彼女達が良くわかっている。
彼と共にいれば、闇へと誘われる事は身を以て知っている。
―本当に着いていくの?光の住人だった貴女達が?―
自分達に語りかけてくる声に返答する事無く、
彼女達はただ押し黙っていた。
答えられないのではない、言うべき事はもう決まっているのだ。
「愚問ですわ、一夏様の隣で歩く事こそ私の至上の悦び、
喩え闇に墜ちる事があろうとも、それは承知の上ですわ。」
「一夏の隣こそ、僕の居るべき場所なんだ、
そこが光か闇かなんて関係無い、一夏に尽くす事が僕の幸せなんだ。」
決然たる意志を籠め、二人は自分達に語りかけてくる声に答えた。
―それが、貴女達の覚悟?―
「ええ。」
「その通りだよ。」
―なら行き着く所まで、彼の隣にいてあげてね―
その言葉を最後に、語りかける声は途切れた。
突き放した訳でも無く、ただ進めと背を押したのだ。
「シャルさん、そろそろ参りましょうか。」
「うん、行こっか。」
セシリアとシャルロットは互いに微笑み合い、
その瞳に強き意志を宿す。
その視線の先に、愛する男がいると知っているから。
「「闇よ!!」」
叫んだ二人を包み込む様に、
闇のベールが彼女達を覆い、消えていった。
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「何っ!?」
セシリアとシャルロットを墜としたと思っていたマドカは、
突如として発せられた闇の様に黒いオーラに弾き飛ばされた。
同じ様に、周囲に展開していたダガーも弾かれ、
大きく飛ばされてしまう。
「まさか・・・!?このタイミングでセカンドシフトだと!?」
有り得ないと言わんばかりに、
マドカは驚きに目を見開いていた。
「先程はよくもやってくれましたわね?」
「乙女の柔肌に傷がついたらどうしてくれたのかな?」
なんとも呑気な、だが、何処か得体の知れない圧力を籠めた声で、
セシリアとシャルロットが姿を現した。
だが、彼女達の機体は、先程までとは大きく変わっていた。
セシリアのブルー・ティアーズは、
何処と無くストライクに近いフレームを持ち、
堅牢な鎧に覆われながらも、鈍重さを伴わないスタイリッシュなフォルム、
右肩にはストライクの物とも同型のシールドを装備し、その裏側にはリニアガンの様な物が見て取れる。
極めつけは背中に装備された四対の翼の様な装備であった。
対してシャルロットのリヴァイヴカスタムⅡは、
ストライクに近いフレームを持ちながらも、
砲撃主を連想させる様な力強いフォルム、
右肩にはガンランチャーが、左肩にはビームライフルが装備され、
腰部サイドスカートには、何やら大型ビームライフルの様な物が見て取れ、
背後には大型ビームサーベルが装備されたバックパックが装備されている。
「なんだ・・・!?その姿は・・・!?」
マドカは目の前の状況が理解できずに叫ぶ。
セカンドシフトは機体形状の変化は若干あれど、基本的なフォルムはファーストシフト時と変わる事は無い。
だが、目の前の二機はその常識を真っ向から否定していた。
「分からないのも仕方ありませんわね。」
「でも、これから先も知ることは無いよ。」
二人はそれぞれ妖艶な笑みを浮かべつつ、
得物をしっかりと保持する。
「セシリア・オルコット、ブルデュエルデーストラ、参ります!!」
「シャルロット・デュノア、ヴェルデバスターシーストラ、行きます!!」
新な愛機の名を叫び、
二人は敵機に向かっていった。
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はい!どーもです!!
セシリアとシャルロットの機体がセカンドシフトしました。
基の機体はファントムペインのあの二機ですが、少々仕様変更しました。
因みに、デーストラとシーストラは、それぞれイタリア語で右と左という意味です。
それでは次回予告
セカンドシフトした力を使い、
セシリアとシャルロットは戦う。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
進化する者達 後編
お楽しみに!