インフィニット・ストラトス・アストレイ   作:ichika

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チーム総当たり戦

side一夏

 

キャノンボールファストから一夜明けた月曜の放課後、

俺はセシリアとシャルと共に書類作成を行っていた。

 

襲撃事件の被害、観客の負傷者数、亡國企業の戦力規模、

報告しなければならない事は山の様にある。

 

だが、そんな事は直ぐ終わる、では何故忙しいのかって?

 

理由は簡単、キャノンボールファストが終了した翌月に、

専用機持ちのみで行われる試合の取り決めがあるからだ。

 

こんなもんは普通教師がやるべき事なのだろうが、

どういう訳か俺がやる羽目になっているんだ。

 

愚痴を言っても仕方がないとは分かっているが、

ボヤいてないとやる気が削がれるんだよな。

 

「あー・・・、どうするかねぇ・・・。」

 

キャノンボールファストの書類を纏め終えたセシリアが出してくれた紅茶を啜りつつ、

専用機持ちの試合形式を決める書類を睨みつける。

 

睨んだ所で問題が解決する筈もない事は百も承知、

それでもイラついた気持ちを書類にぶつけたいという衝動は収まる事がない。

 

まぁ良い、こんな事をしてても何時まで経っても終わらんからな、

さっさと終わらせて二人を抱きたい。

 

「えーっと・・・、一年の専用機持ちは、俺、セシリア、シャル、箒、秋良、鈴、簪、ラウラ・・・、それから・・・、あぁ、雅人もいたな、忘れる所だった。」

 

やれやれ・・・、九人もいるのかよ・・・、

こりゃ振り分けが難しそうだ。

 

「シャル、二、三年の専用機持ちは何人だ?」

 

楯無だけは覚えてるんだが、

如何せん、20年近く前に読んだ小説の内容を細部まで覚えてられないってのが実情だ、

大まかな出来事、主要人物、敵対勢力は覚えられてもな。

 

「えーっと・・・、二年の元生徒会長の更識楯無と、同じ二年のフォルテ・サファイア、

そして三年のダリル・ケイシーの三人だよ、詳しい事は知らないけど、

三人とも中々の強さらしいよ。」

 

俺に聞かれたシャルは、手帳を開いて情報を読み上げてくれた。

 

三人、ってことは合わせて十二人か・・・、多いな・・・。

 

「十二人っていう大人数で、一々一対一方式でやってたら日が暮れないか?」

 

「確かそうですわね、トーナメントならいざしらず、

リーグ戦は約一週間は最低でもかかりますわ。」

 

「参ったな・・・、そんなに時間は取れねぇな。」

 

いくら目玉イベントとはいえ、授業に差し障りのある様な事はあってはならない。

 

学校教育とはそんなもんだ。

 

まあそれはおいといて・・・。

 

「通常のトーナメントでも時間がかかりすぎる・・・、

リーグ戦は論外・・・、二対二はどうだ?」

 

「確かに相対的な試合数は減るけど、学年別トーナメントでも同じ事しなかった?」

 

「そう言えばそうだったな・・・。」

 

確かにこの世界での学年別トーナメントはVTシステム事件が前倒しになった為、

なんの問題もなく開催されたんだよな・・・。

 

二番煎じ感は流石に拭えないな・・・。

 

何をするにしても、前例がない事をやってみたい、

それが俺の望みでもあるしな。

 

どうしたものか・・・。

 

「一夏様、差し出がましいとは思いますが、

三人チームの総当たり戦にしてみてはいかがですか?」

 

「!その手があったか!」

 

確かに三人制にすれば丁度4チーム作る事が出来る、

試合数もリーグ戦ならば妥当だな。

 

「考え付かなかった、ありがとなセシリア。」

 

「至極恭悦ですわ♪」

 

優雅にお辞儀するセシリアに微笑みかけ、

俺は早速書類作成を開始する。

 

さてと、大まかな事は元から書いていたし、

備考を書くだけだからすげぇ楽だ。

 

「ねぇ、一夏、それにセシリアも、今回は僕達三人で組もうよ、

僕達の機体は三機連携の為にあるんだし。」

 

「確かにそうだな、お前達さえ良ければそれで行きたいが?」

 

「私も賛成ですわ、皆さんに真の恐怖を教えて差し上げる為ですもの。」

 

「やり過ぎるなよ、ま、好きにしろ。」

 

ふっ、この世界でのファントムペインの御披露目だな、

派手にかますとするかな。

 

sideout

 

 

side秋良

 

キャノンボールファストから二日が過ぎた火曜日、

専用機持ち全員に専用機持ちチーム総当たり戦の告知が届いた。

 

三人一組でそれぞれの組と対戦するという事らしい。

 

「なんとまぁ・・・、無茶な企画を考えた物だよ。」

 

「確かにな、流石にISの小隊編成での試合など、

誰も見たことがないしな、良い出し物にはなる。」

 

俺が呆れている横で、ラウラが感心した様に呟いていた。

 

「出し物だったら確かに物珍しいけど、実際にやるのは私達だよ?

コンビプレーならまだしも、流石にチームプレーになるとちょっとキツいよ。」

 

簪の言う通り、

俺達は二対二のコンビプレーでの模擬戦しか経験がないんだよね、

だからかなり不安と言えば不安なんだよね。

 

まぁ・・・、それは良いけど、どうやって組もうかな?

 

「はーい、皆集合~。」

 

取り敢えず、まだチームを組んでいないと目される専用機持ちの面子を集め、

どのメンバーで組むかを話し合う事にした。

 

案の定、兄さんとセシリア、そしてシャルロット以外のメンバーが集まった。

 

「えーっと、俺達六人、どういう風に組むかを今から話し合いたいんだけど、どういった風に組む?」

 

「一応、バランス的には、俺、箒、ラウラと、

秋良、鈴、簪のチームに分けた方が良いと思うぞ。」

 

「確かにそれが一番バランスが良いね、変に戦力も偏ってないし。」

 

そこまで言って気付いた。

兄さん達は三人でもう組んでるんだよね?

 

って事は・・・、ファントムペインが本当にこの世界で実現されてるのか?

 

いや、ただの偶然だよね?

いくらなんでも兄さんが汚れ仕事をやってる訳無いし。

 

「じゃあそのチームで行ってみるかな?」

 

「俺はそれで賛成だ。」

 

「私も異議はない。」

 

雅人と箒が一同を代表する様に答え、

簪達も異存はないと言うように首肯していた。

 

「決定だね、じゃあ用紙に学籍番号と名前を書こうか。」

 

申込用紙にそれぞれ名前を書いて、

後は兄さんの所に持っていけばOKだね。

 

さてと、どうやって訓練しようかな?

 

sideout

 

side簪

 

告知を受けて、専用機持ちの皆はそれぞれ訓練に勤しんでいる。

 

だけど、私は今、独り整備室に籠って機体のバランスと、

武装類のチェックを行っている。

 

私の機体、打鉄弐式は遠距離兵装主体の機体、

それは良いんだけど、近距離戦闘の能力が決して高くない事が悩み。

 

ミサイルとかの攻撃よりも、もっとマルチな戦い方が出来たら良いんだけど、

近接装備と中距離装備が貧弱なのは否めない。

 

刀剣類の装備と手持ちライフルとかがあればまた別なんだけど、

今現在はそれも望み薄なの。

 

せめてストライカーパックが使えればと思うんだけど、

あれはアクタイオン社の専売特許だし、何より私が使うには一夏か秋良の許可がいる。

 

まぁ・・・、無いものねだりしても意味が無いことは分かってる、

だから今は私が出来る事をやるだけ。

 

整備も終わった事だし、秋良の所に行こっと。

 

そう思い、私は打鉄弐式を待機形態に戻して、

整備室を後にした。

 

sideout

 

sideラウラ

 

秋良との模擬戦の後、

私は機体データのチェックを行っている。

 

悩み所は多々あるが、

その中でも一番の悩みはAICにある。

 

AICは実弾や衝撃砲ならば防げるが、

兄貴や雅人の機体装備、主にビーム兵装には効き目がなく、

発動させている際は行動に大きな制限がかけられてしまうのだ。

 

相手を拘束しようにも、兄貴は遠距離から攻めて、機会がくれば容赦なく斬り込むし、

秋良は私がAICを発動させるより速くウィングソーで斬り込むし、

雅人は色々と相性が悪すぎる。

 

よくよく考えてみれば、AICはこれから先の戦闘に本当に必要なのか疑問に思う。

 

キャノンボールファストの際に襲撃してきた無人機は、

一様にエネルギー兵装を装備していた。

 

動きを停められない事も無かったが、

集団戦法で来られてしまえば、私のシュヴァルツァ・レーゲンはひとたまりもない。

 

事実、私達は雅人や秋良にフォローしてもらいながら戦っていた。

 

そう考えれば、セシリアとシャルロットはたった二機で二十機近いダガーを墜としたと聞くし、

サイレント・ゼフィルスを退けた力量は兄貴に匹敵する様な物がある。

 

おっと、他人の事はどうでも良かったな・・・。

 

いっその事、AICを取り払って、アルミューレ・リュミエールを装備出来れば一番良いんだが、

あれはアクタイオン社の専売特許だろうし、何より無関係な私が使うには兄貴か秋良の許可がいる。

 

まぁ良い、今はそんな事よりも自分の腕を磨かねばな。

 

そう思い、私は着替えに取り掛かった。

 

sideout

 

noside

 

「あー・・・、暇だなぁ・・・、一夏達いないから尚更だよぅ・・・。」

 

一夏達がIS学園にて頑張っている頃、

アクタイオン社の社長室ではミーアが椅子に座りながらグルグルと回っていた。

 

彼女は社長とは言うものの、実際の仕事は根回しと懐柔しかないため、

正直言って、それらの必要がない時はかなり暇なのだ。

 

で、今、丁度その退屈な時間に突入しているのだ。

 

「あー・・・、暇だなぁ・・・。」

 

何度目になるだろうかわからないボヤきをした時、

備え付けられていた電話が鳴り響いた。

 

「あーい、こちら社長~。」

 

『久しぶりだな、退屈社長。』

 

「あー、一夏じゃないか~、暇だよぅ・・・。」

 

電話の相手が一夏だと分かった途端、彼女はなんとなく声のトーンを明るくする。

 

「ところで何の御用かな?」

 

『報告したい事と頼みたい事がある。』

 

「何々~?私が出来る事なら何なりと~。」

 

社長と社員の立場が逆転しているが、

この二人にとってそんな事はどうでも良いのだろう。

 

『夏休みに連れてきたメンバーの機体に、ストライカーパック対応の機体が出現した、

ドラグーンストライカーとドッペルホルン、そしてソードストライカーを送ってほしい。』

 

「それだけでいいのかい?シルエットが幾つか出来上がったし、

ウィザードといっしょくたにして送るよ?」

 

『それぐらいあれば上々だな、まずひとつ目の頼みは終わった、

こっからが本題だ。』

 

まだあるんだと思ったミーアだったが、

一夏の次の言葉が来るのを待った。

 

『ミラージュとゴールド、そしてペルグランデ、

この三機のデータをルキーニを通じてリークしてほしい、亡國企業にな。』

 

一夏が発した言葉は、常人が聞けば間違いなく耳を疑う事だろう、

しかし、神の遣いに等しいミーアは眉をひそめるだけで特に驚きもしなかった。

 

「別に良いけど、なんでその三機なの?あれは失敗作も良いところなのに?」

 

『こちらの嫌がらせさ、自分達で手に入れたと思っていた情報が、

俺に与えられた物だと気付いた時の奴等の顔を見てみたいんだよ。』

 

「ふふっ、君も悪だね、良いよ、ルキーニにも言っておくね。」

 

『恩に着る、それじゃあな。』

 

何かの密約の様に見えなくない様な言葉を交わし、

一夏は電話を切った。

 

「一夏、君がこれから成す事を楽しみにしているからね?」

 

受話器を戻したミーアはコンピュータを弄り、

あるデータを呼び出した。

 

それは・・・。

 

「ガンダムアストレイゴールドフレーム・・・、ミラージュフレーム・・・、

ペルグランデ、君達には礎になってもらうよ。」

 

sideout

 

side一夏

 

「クックックッ・・・、これで良い。」

 

ミーアとの電話を終えて、

俺は自室に戻るべく歩みを進める。

 

これで御膳立てはほぼ完璧に整った、

オータムを殺し、くーの腕を切り落とした事で愚かなアイツらは俺を殺すために同盟を組む事は予想していた。

 

そして最後の詰めが、データのリーク。

これでアイツらは俺と同等の戦力を手に入れたと勘違いするだろう。

 

更に数さえ揃えれば勝てると勘違いし、必ず世界に挑もうとするだろう。

その先にあるものは、俺に切り殺される未来のみ。

 

「クックックッ・・・、ハーッハッハッハッ!!

躍れ!俺の掌で躍るが良い!!ハーッハッハッハッ!!」

 

sideout

 




はいどーもです!

一夏氏がどんどん主人公に見えなくなってきた・・・。

さて次回予告
リーグ戦に向けて用意を進める一夏のもとに、
弾からあるんだ電話が届く。

次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
番外編 残姉さん再び

お楽しみに!
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