side一夏
無人機襲撃が去った翌日、
学園内の被害を調べる為と、修理の為に一日臨時休校になった。
だがしかし、俺達専用機持ち組はそれぞれ報告書を纏める作業を延々と続けていた。
その為、俺とセシリア、そしてシャルは何時もの如く生徒会室に籠り、
黙々と書類作成を行っていた。
はっきり言って、此処まで報告する必要があるのかという所まで報告しなければいけないため、
正直言って、かなり肩が凝る。
しかも、俺は昨晩に山田先生や駄姉を脅して、
理事長に頭下げまくって時間の無駄と思ってる事情聴取を無くすために根回しを続けてたんだよな・・・。
あぁ、面倒だ、極めて面倒だ・・・。
なんで俺がこんな事をせにゃならんのだ。
そんな事を思っている内に、俺の報告書は書き上がってしまった・・・。
さてさて・・・、後は他の専用機持ちの報告書を待って、
担当に届ければいいな・・・。
「一夏様、私の報告書は纏まりましたわ。」
「僕の分も終わったよ~。」
やはりと言うべきか、俺が書き終えたすぐ後にセシリアとシャルが報告書を持ってきた。
「ご苦労さん、やはり手際が良いな。」
案の定と言うべきか、
まず最初に持ってきたのはセシリアとシャルだった。
他の専用機持ちに比べれば、割と報告すべき事は多い筈なのだな?
まあそんなことはどうでも良いか・・・。
「さてさて、次は誰が持ってくるかね?
賭けてみるか?ラウラに一票。」
「では、私は楯無さんに一票入れますわ。」
「僕は雅人と楯無に一票かな。」
何の気無しに賭けをやってみるが、
暇潰し以外の深い意味は無い。
金とかは賭けないのかって?
そんなもん賭けても面白くない、後で話し合って決めるさ。
そんな事をしている内に、生徒会室の扉がノックされる。
「どうぞ。」
「失礼します。」
そう言って生徒会室に入ってきたのは、
セシリアが予想した楯無だった。
「負けたなぁ・・・。」
「負けちゃったねぇ・・・。」
「久し振りに勝てましたわ♪」
久し振りに負けたな・・・、後でお願いでも聞いてやるとするかね?
「一体何の話をしてたの?」
「気にするな。」
怪訝そうに聞いてくる楯無を軽くあしらい、
俺は報告書を受け取る。
俺が確認する事は特に無いみてぇだし・・・、
帰ってもらうとするかね。
「ご苦労さん、今日は一日ゆっくりと身体を休めてくれ、
どうせ明日からまた大変なんだからな。」
「ありがと、一夏君も頑張ってね♪」
そう言って、楯無は生徒会室を後にした。
さてと?これで後八人か・・・。
次は誰だろうな?
「失礼するぞ一夏。」
ノックされた直後に、箒が扉を開けて入ってきた。
「ご苦労さん、だが、せめて入室の許可があるまで入って来るなよ?」
「すまない、私の分は完成した、拙い部分もあるだろうが・・・。」
そんな申し訳無さそうな顔をするな、
別に何とも思ってないからな。
「いや、気にしなくて良い、それよりも無事で何よりだった。」
機械や備品、建物の替えは利いても、
人間の替えは利かない。
だから、無事が何よりなんだよ。
ところが、箒は何故か浮かない顔で黙りこんでしまった。
「・・・、その事で頼みたい事がある・・・、
一夏!私を鍛えてくれ!!」
叫ぶように言い、箒は俺が座る生徒会長席の机に手をおく。
理由は分からなくも無い、
無人機を操っている黒幕に気が付いたのだろう。
だが、俺は怨恨に根ざした戦いを推奨はしない、
そんなもん、ただ虚しいだけだからな。
「篠ノ之 束への怒りを理由にしているのなら、
俺は何も教えられんぞ?」
「姉さんへの怒り、憎しみは確かにある・・・、
だが、それよりも、力を持っていても仲間を護れない自分が憎い!!
昨日の戦い、私は何も出来ず、ただ一夏達に護ってもらう事しか出来なかった!」
俺が冷静に言うと、彼女は拳を握り締めて唸る。
見ていて分かる、かなり悔しいのだろうな・・・。
「だから頼む!私に戦いを教えてくれ!!」
本気で頭を下げる箒の姿を見て、
セシリアとシャルは俺の方に目配せをしてきた。
ったく、これで断れば俺が悪いみてぇじゃねぇか。
「良かろう、明日から俺が模擬戦で相手になろう、
だから、今日は休んでおけ、良いな?」
こいつの気持ちは本物だ、
だから、俺はその気持ちに応えてやりたい。
それだけだ。
「あ、有り難い!それではよろしく頼んだ!!」
言うが早いか、箒は礼を述べた後、
直ぐに部屋を出ていってしまった。
「ふぅ・・・、やる仕事も多いな・・・。」
「仕方ありませんわ、一夏様程のお方なれば、
望む望まないに関わらず、何かが舞い込んで来るのですわ。」
そう言いつつ、セシリアはいつの間にか用意していた紅茶を俺に差し出してくれる。
芳醇な香りが辺りを包み、ちょっとした疲れを吹き飛ばしてくれる。
「良い香りだ、頂くとさせてもらうよ。」
さてと・・・、後数人分届いてねぇな・・・。
さっさと終わらせて帰りたいんだながぁ・・・。
だんだん待ってるのも退屈になってきた頃、
漸く三組めの訪問者が扉をノックした。
「居ますよ、どうぞお入り下さい。」
気配で分かる、秋良達ではない、
その前に気配が二人分しかないところから、おのずと入ってくる人間が断定出来る。
「失礼するぜ?」
「失礼するっスよ~。」
案の定、部屋に入ってきたのは三年のダリル・ケイシーと、
二年のフォルテ・サファイアだった。
やはり秋良達が一番遅いか・・・。
こりゃ一回咎めとく必要がありそうだな・・・。
「お二人ともご苦労様です、お怪我はありませんか?」
「一応な、怪我は無いが・・・。」
「何の役にも立てなかったんスけどね・・・。」
そらな・・・、つい半年前までは学園最強の一角を担っていた自分達が、
今は後輩たちを援護することも出来ず、自分達ですらいっぱいいっぱいになっていたんだからな。
だが、それは仕方がない事かも知れない、
なんせ、今までこんな事は一度もなかったのだから・・・。
「悔しいのは分かります、ですが、そこで立ち止まる貴女達では無いでしょう?」
この二人も、自分達なりの意志を持っている、
ならば、この程度で挫ける程では無いだろう。
「もしもの時は、俺が手を貸しましょう、
だから、挫けないで頂きたい。」
「へっ!後輩に言われるとは、アタシらも堕ちたもんだぜ!なぁフォルテ!?」
「そーっスね、まぁ、油断しないことっスね!」
そう言って、二人は不敵な笑みを浮かべ、
生徒会室を後にした。
良いねぇ~・・・、あの気迫、心地い。
あわよくば、こちらに引き込みたいねぇ・・・。
ああいうのは敵になれば確実に手強いからな。
「ふふっ、一夏が敬語を使うのって、やっぱり似合わないね。」
「うるせぇ、似合わねぇのは百も承知だっての。」
シャルが笑うのを堪えながら話しかけてきたので、
軽くしかめ面で返しておく。
「これで七人分は出来上がったな・・・、
後は・・・、やはり秋良達と雅人か・・・。」
ったく、こっちはさっさと部屋に帰りたいんだ、
とっとと持ってきやがれ。
まぁ、取り敢えずは報告書が届くまで待つとしますかね。
この調子なら昼までには終わりそうだしな。
「あーあ、暇だ、特に書くこともねぇし、
待っているだけってのもつまらん物だな。」
さてと、何をしますかねぇ・・・。
だが・・・、この考えが大きな間違いになるとは、
この時の俺達には気付く事が出来なかった・・・。
sideout
noside
夕刻、
IS学園の一年生食堂には大勢の生徒が、
各々の夕食を採る為に集まっていた。
如何に休校になっていたとは言え、そこは人間、
一日をどの様に過ごそうが空腹からは免れる事は出来ない。
まぁ、一日動かなかった者は、
体型管理の為に夕食を採らないらしいが、
今はそれは置いとくとして・・・。
食堂の一角にて、
一年の専用機持ち、秋良、雅人、簪、ラウラ、鈴が、
同じテーブルに集まって食事を採っていた。
「にしても・・・、あの無人機は一体何の目的で俺達を攻めてくるんだ・・・?」
食事の最中、雅人がふと無人機の話を引き合いに出した。
その場にいた者は手を止め、一様に考え込む表情を見せる。
「確かにね・・・、俺達の機体データだけが目当てじゃなさそうだね、
だけど、だからといって襲われる謂われなんて無いよね?」
秋良が雅人の言葉を反復するように答え、
全員に問い掛ける。
データ目的の為ならば襲われる道理は通る。
だが、それだけが目的ではない事に、彼らは薄々気付いたのだ。
しかし、分からない事の方が圧倒的に多い、
何を目的としているのか、そして、誰を狙っているのかが判らないのである。
「何にせよ・・・、物騒になってきたのは確かだな・・・。」
「そうだね・・・、これからどうなるんだろうね・・・。」
これから先に興りうる何かに憂うかの様に、
雅人と秋良は溜め息を吐いた。
「溜め息なんぞ吐いて、一体どうしたのだ?」
そんな一同に、たまたま近くを通った箒が声をかけた。
「おぉ、箒か、飯は食い終わったのか?」
「ああ、今しがたな。」
雅人に促され、箒は彼等と同じテーブルに着く。
「箒は今日一日何をやってたんだい?」
「うむ、午前中は報告書を纏めて、一夏の所に持っていって、
午後はまぁ、素振りとかをやっていたぞ?」
箒は本当に何と無く言った気分だったのだろうが、
言われた秋良達の反応は・・・。
『えっ・・・?』
「ん?どうしたのだ?」
五人の呆然とした表情に、
箒は訝しみながらも尋ねる。
「ほ、報告書って・・・、提出期限は何時までだったっけ・・・!?」
「私は午前中に出したが・・・、確か・・・、午後3時までだったぞ?」
箒に確認を取り、慌てて時計を見てみると、
針は既に午後6時を回った所であった・・・。
「ま、まずい・・・!!」
「か、書けてねぇ・・・!!」
秋良と雅人は顔を真っ青にし、
簪達もガタガタと震えていた。
全員が、黒き龍の怒りに満ち満ちた表情を思い浮かべたのだろうか・・・?
それは本人達にしか判る物である。
「い、急げ!!急がないとマジで兄さんに殺される!!」
「冗談に聞こえねぇ!!と言うか、そんな気がしてきた!!」
「ま、まぁ、ドンマイ・・・?」
焦る秋良達の様子を、箒は苦笑で顔をひきつらせていた。
sideout
noside
それから二時間後・・・、
秋良達は大急ぎで報告書を書き上げ、
生徒会室へと急いだ。
几帳面な簪や、軍人であるラウラまで忘れていた為、
全員が焦りに焦っていた。
それと同時に、昨晩に一夏に言われた言葉がフラッシュバックした。
『良いか?明日の午後3時までには提出しろよ?
面倒な取り調べを無くしたんだ、それぐらいは努力しろよ?良いな?遅れるなよ?』
数回に渡って念を押されたのにも関わらず、
自分達は疲れですぐに寝てしまった為に全くといっていいほど、頭の中からスッポ抜けていたのだ。
そんだこんだしている内に、
秋良達は生徒会室の前に到着した。
だが、どういう訳か、皆扉の前で立ち尽くし、
中に入ろうとしない。
それもそうだろう。
生徒会室の扉の隙間より、何やら黒いオーラの様な物が洩れだしているためだ。
「ど、どうする・・・!?絶対にまずいって・・・!!」
「だ、だが、どう考えても今回は私達が悪い!
ここは諦めるしかない・・・!!」
死刑宣告を受け、処刑台に上がる罪人の様な表情をしながらも、
秋良達は恐る恐る生徒会室の扉を開けた。
生徒会室の内部は、灯りがついていない事もあり、
尚且つ黒いオーラのせいで余計に見通しが効かない。
「兄さん・・・?いるかい?」
恐る恐る生徒会室の中を歩くと・・・。
『ナニヤッテンダオマエラ・・・?」
『ヒイッ!?』
背後から凄まじいドスの効いたひくいこえが響き、
秋良達は飛び上がる。
振り向いた場所にいたのは、暗闇の中でも判る程、
瞳が爛々と怒りの焔で輝く一夏だった。
あまりの恐怖に、秋良達は腰が抜けたのか、
床にへたりこんでしまう。
『ヨクモマァオメオメト・・・。』
『コンナニオクレテコレタネ・・・?』
『ひいぃっ!?』
更に追い討ちをかけるかの如く、
ハイライトが完全に消えたセシリアとシャルロットが現れ、
五人の退路は完全に絶たれた。
いや、そもそも、完全に身体が震えている為に、
動くことすらままならないのだ。
「今日は報告書を貰うだけだがなぁ・・・、
冬休み返上でその根性を叩き直して来やがれ!!」
『ええぇっ!?』
キレた一夏を止められないのは、彼等がよく知っている為、
ただ叫ぶ事しか出来なかった。
勿論、断れる筈も無い。
「分かったな!?」
『はい・・・。』
この夜の出来事が、
異世界との出会いとなる事を、秋良達はまだ知る由もなかった・・・。
sideout
はいどーもです!
この度、アリアンさんの小説、IS~凶鳥を駆る者への出張(コラボ)が決定いたしました。
主人公の一夏ではなく、秋良達があちらへお邪魔させて頂きます。
また近い内にお知らせ致しますので今しばらくお待ちください。
それでは次回予告
冬休みを目前にしたある日、
一夏は箒の特訓につき合う。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
刃の重み
お楽しみに!!