side秋良
「よっと。」
あのぐにゃぐにゃして気持ち悪い転移空間を通り抜け、
俺達は元の世界に戻って来た。
ちょっと高いところから落とされたけど、なんとか着地出来たね、
行きの時みたいに押し潰されて無いから気分はだいぶん良いけどね。
どうやら、帰りはIS学園に直接戻してくれたみたいだね、
辺りは夜だから暗いけど、潮の匂いと建物で判断出来る。
「いや~・・・、本当に色々あったよなぁ・・・。」
「そうだねぇ・・・、でも、良い経験だったよ。」
お陰で、俺は自分に足りなかった物を見付けられ、
新しい力も手にする事が出来た。
もう悩む必要は無い、俺は俺の道を進むだけだから。
「秋良、兎に角早く戻ろ?多分、明日が始業式だと思うの。」
「え!?もうそんなに経ってるのか!?」
いや・・・、分かってた事とは言えど、
なんだか少し残念かな・・・。
簪達の着物姿とか見てみたかったしなぁ・・・。
まぁ、それは来年の楽しみに置いておこう、
今は、取り敢えず眠ろうかな。
「じゃあ皆、行こっか。」
俺達はIS学園の寮に向けて歩き出した。
けど、この時に俺は気付くべきだったのかも知れない・・・、
強い潮の匂いに微かに混ざった、鮮血の匂いに・・・。
sideout
side一夏
始業式が終わった直後の授業は、
いきなりのISを使った実習と相成った。
「それでは、織斑兄弟、お前らがクロスレンジでの近接格闘の手本を見せろ、
駄姉に指示され、俺はストライクノワールを展開し、
秋良はゲイルストライクを展開して向かい合う。
だが、秋良の手に握られていたのはウィングソーではなく、
何やら日本刀の様に、鞘に納められた長大な刀だった。
一見ガーベラストレート系の刀の様だが、
装飾、そして刀身の幅が僅かに細い為、違う刀だと理解できた。
「秋良、その刀はなんだ?」
「あぁ、これはね、向こうで貰った刀だよ、
その名もシシオウブレード!!普通の刀じゃないよ~?」
ほぅ、粋な事をしてくるな、面白い、
異世界の武器の力、改めて感じたいものだ。
ノワールストライカーよりビームブレイドを一本引き抜き、
左手にショーティーを構える。
「来い、秋良、お前があっちで何を掴んだのか、この俺が見極める。」
「上等、前までの俺じゃないと分からせてあげるよ。」
「それでは、始め!!」
駄姉の合図と同時に、
俺達は弾かれた様に飛び出し、己の刀を振るう。
俺のビームブレイドと秋良のシシオウブレードがぶつかり、
周囲に火花を散らす。
「ほぅ、大分腕を上げたようだな、腕の振り、踏み込み、
以前を遥かに凌いでいる、それにその刀、よく見ればビームを弾いている。」
一太刀受けただけでここまで悟らせるとはな、
流石と言うべき鍛え方だな。
それにシシオウブレードもガーベラ系の刀を上回る切れ味だ、
ビームブレイドを完全に止めきれる実体剣は、中々存在する物じゃ無いな。
「いや・・・、受け止めきれてる兄さんにだけは言われたくないよ・・・。」
苦笑する秋良を他所に、俺達は一度間合いを開ける。
「そこっ!!」
「なにっ!?」
秋良は瞬時にビームライフルを呼び出し発砲、
俺のビームライフルショーティーを撃ち抜いた。
あの野郎・・・!
射撃の腕まで上がってやがる・・・!
実に素晴らしい。
これならば俺の望みも叶うと言うものだ。
「ハァァッ!!」
烈迫した気合いと共に秋良がこちらに向かってくる。
お前がどれ程強くなったのかは知らないが、
俺をすぐに倒せると思うなよ!!
「ハァッ!!」
秋良が振るって来る刀を二本のビームブレイドを引き抜いて止め、
再び拮抗状態に突入する。
無理矢理ビームブレイドを押し込もうとしても、
秋良も負けじと押し返して来る。
なんてパワーだ・・・!!
以前も秋良はパワープレイヤーだったが、それを上回る力だ・・・!!
この俺が押し負けそうになっているとはな・・・!!
だが、この高揚!!たまらねぇ!!
このゾクゾク感!これが戦いの醍醐味なんだよ!!
「ハァッ!!」
「オォッ!!」
互いに力を込め、相手を斬るべく刃を押し込み、押し返す。
身体のスイッチが切り替わり、本気で戦おうとした時だった・・・。
「そこまで!!」
駄姉が制止の号令をかけやがった。
畜生め、良いところで止めやがって。
まぁ良い、楽しみは後に取っておくかな。
「腕を上げたな秋良、流石は俺の弟だ。」
「まぁね、俺は俺だけどさ。」
以前よりも良い顔をするようになったな、
上等、お前はお前の道を行け。
その道が、俺の道と決して交わる事が無くともな。
sideout
noside
午前の授業が終わった後、
一夏達専用機持ちは食事を採るべく、連れだって食堂を目指していた。
「大変だったぞ~?最初はボコボコにされまくってな・・・。」
「大変だったな。」
仰々しく大変さを語る雅人に、
一夏はどうでもいいと言わんばかりの態度で受け流していた。
「ちゃんと聞いてくれよ・・・。」
「大変だったのはお前達だけでは無いんだよ。」
少し涙目になる雅人を他所に、
一夏は受け流しながらもさっさと進んでいった。
「あれ・・・?なんだか少し違う・・・。」
その一行の内の一人、簪が今までと違う雰囲気に困惑していた。
「どうした簪?誰かに見られてるのか?」
彼女の隣にいたラウラが、簪の事を心配しながら声をかける。
だが、簪は何故かもどかしそうに辺りを見渡し続けていた。
「ううん、その逆、あの人の視線を感じないの、
この前まではずーっと見られてる感じはしてたのに・・・。」
簪のいうあの人とは、当然の事ながら、
彼女の実姉、更識楯無の事である。
だが、何時もは感じられる筈の視線を、
今日に限って感じられない事に違和感を感じているのである。
「あぁ、アイツならセシリアがボコしたからな、
当分は出てこないと思うぞ。」
「え!?何やったの!?」
思い出した様に語る一夏に、簪は驚いた様に叫ぶ。
「簪さんに執着される理由を聞きましたので、
少し苛めてしまいました。」
セシリアは少しはにかみ、
顔の辺りで親指と人指し指の間を少し開ける。
「・・・、セシリア、ちょっと良い?」
「はい?よろしいですが、どうしました?」
セシリアの言葉から何かを察したのか、
簪はセシリアの腕を引き、人目に着かない場所に移動して行った。
「あ、簪?」
鈴が二人の姿に気付き、呼び止めようとするが、
一夏に止められる。
「鈴、新しいスイーツが出るみたいだ、奢ってやるよ。」
「ホント!?わ~い!!」
(それで良いんだ・・・、鈴・・・。)
いくら兄の様に慕う存在からの誘いとは言えど、
気になっていた事から即座に切り替える鈴を、
秋良は苦笑しながらも眺めていた。
「取り敢えず、先に行って席を取るぞ、出ないと立ち食いだ。」
一夏の号令の下、セシリアと簪を除いた一行は、
再び歩き始めた。
sideout
sideセシリア
簪さんに腕を引かれ、
私達は少し人目の着かない場所にやって参りました。
私は何か、簪さんの気を損ねる様な事を申しましたでしょうか?
いくら日本語を話せるとは言えど、生まれ育った文化が違うため、
何処で他国の方の機嫌を損ねているのか分からないのが怖いですわね・・・。
「セシリア、お姉ちゃんが私の事、
なんて言ってたのか全部教えて・・・。」
あらあら、簪さんの後ろに黒い魔物が見えていますわね・・・。
それほど楯無の事が頭に来ているのでしょうか?
「構いませんが、一体どうされるおつもりですの?」
別にお教えしても構わないのですが、
ただ聞くだけというのはつまらないですからね。
何か面白い行動を起こしていただきませんと、
私の教え損ですわ。
「別に、何かすぐにしようなんて思ってない、
でも、私はお姉ちゃんの考えを知りたい。」
あらあら、特に何もしない、ですか・・・。
それではあまり面白くありませんわね・・・。
さて、どうした物でしょうか。
・・・、そうですわ、
面白い事を思い付きましたわ。
これなら、私も、そして一夏様もシャルさんも退屈せずに済みそうですわ。
「分かりましたわ、私が聞き出せた範囲だけですが、
慎んでお教え致しましょう。」
さぁ、簪さん、貴女の怒りに満ちた表情を、
私に見せて頂けませんこと?
「楯無は、姉という立場を勘違いし、
貴女を縛り付けようとしているのですわ、
そう、護ると言いながらも、貴女の上に立つ事で優越感に浸っているのですわ。」
嘘は言っていませんが、少し誇張してお送りしております。
だって、有りの侭をお教えしても面白くもなんともありませんもの。
みるみる内に、簪さんの表情に怒りの色が見てとれる様になりましたわね、
さぁ、もう一押しして差し上げましょう!
「簪さんは、私の後ろに隠れ、ずっと震えていれば良い、
私が護ってあげる、私の影になっていれば良い・・・、と・・・。」
「・・・!!」
トドメには、まだ一押し足りませんわね、
では、もう一手、手札を切りましょう。
簪さんに歩みより、
わざと簪さんの耳元に口を寄せます。
「貴女は、こんな事を許せる筈もありませんわね?
貴女はお強い、その力を楯無に刻み着けて差し上げるのはいかがですか?」
一夏様の真似をさせて頂きましたが、
中々に使えますわね。
「セシリア、教えてくれてありがとう、
私、ちょっと用事が出来たから先行くね。」
「いえいえ、お気をつけて。」
私の返答を聞くよりも早く、簪さんは私に背を向け、
何処かへ走って行ってしまわれました。
ですが、これで楽しい事が起こるでしょう。
「ふふっ、簪を焚き付けるなんて、
面白い事をするね、セシリア。」
「あら、見ていたのですか?シャルさん?」
「途中からね。」
まぁ、私も途中で気付いてはいましたが、
シャルさんも乗り気だと言うことは、一夏様もそういう事なのでしょう。
「確かに楽しそうだよね、実の姉妹での対決、
それにガンダム同士の真剣勝負、面白そうだよね。」
「そうですわね、
一夏様と秋良さんの決勝以来、久方振りのガンダム同士の正式な戦いですものね。」
「そ、話題性としては申し分無いけど、気掛かりが有るんだよね。」
「やはり、内通者の事、ですか・・・。」
以前から分かってはいる事ですが、
この学園には亡國企業の内通者以外にも、他の国のスパイの類いがうろうろしているのです。
その中でも、特にある国のある人物が活発に活動している事は、
とうの昔に一夏様から聞き及んでおります。
私たちがすぐに始末してもよろしいのですが、
一夏様は何故かまだ消すなと言われるばかりです。
躊躇っているのでは無いかと伺いを立てたいのですが、
どうもそうでも無い様で、余計に謎は深まる一方なのです。
「!!まさか・・・!!」
「どうしましたのシャルさん?」
急にシャルさんが驚いた顔になりましたので、
少し内容が気になりましたので訊ねてみることにしました。
「ふふふ・・・、僕達が今までやって来たことより、
ずっと惨くて、凄絶な事をするかもね、一夏は。」
もっと惨いこと・・・。
そういう事でしたか・・・。
「ふふっ、なら、楽しみにしていましょうか、
私達が主様の為す行いを。」
「だね♪それじゃあ行こっか、皆待ってるよ。」
「はい♪」
シャルさんと並んで歩き始め、
一夏様が待たれている食堂まで向かいます。
近い内に訪れる、
心踊る宴を期待しながらも・・・。
sideout
はいどーもです。
次回予告
楯無の考えに、我慢の限界が来た簪は、
楯無に決闘を申し込む!
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
姉妹喧嘩 前編
お楽しみに!!