noside
一夏達、ガンダムチームが搭乗する母艦、ナナバルクに迫っていたISの正体は、
日本の代表候補生数名を含めた操縦者達であった。
彼女達は完璧な女性至上主義者であり、
篠ノ之 束、及び織斑千冬の狂信的な信者である。
IS以外の兵器は使い物にならず、
最強の兵器を操る事が出来る自分達こそが最強なのだと思い込んでいた。
今回の亡國企業の宣戦布告に、篠ノ之 束が関与していると知り、
彼女達は国が決断を下すより早く、
IS学園や、軍事施設より打鉄やラファール・リヴァイヴを強奪し、
亡國企業の潜伏先を目指した。
日本国内からアラスカまではかなりの距離があるが、
ISの航行距離内のため、一足飛びに向かおうとしているのである。
その途中に、単独でアラスカを目指すナナバルクを発見、
最初は亡國企業所属の戦艦かと思った。
だが、装甲のいたる場所に、
アクタイオン所属であると示すマーキングが施されている事を確認した。
アクタイオンに所属するのは、男性IS操縦者の三人が知れ渡っている。
しかも、その内の一人、織斑一夏には、
篠ノ之 束と敵対しているという噂が立っている。
彼女達は噂の真相を知っている訳では無いが、
個人的な感情として、男性IS操縦者の事を快く思っていない事と、
篠ノ之 束への服従の意志を示すために、ナナバルクを落とそうと決めたのである。
戦場では、取り入ろうとする為に何か戦果を手土産にする事は珍しい事ではない、
寧ろ、寝返りを働く際には当然必要となる物だと言えるであろう。
しかし、彼女達はこの艦に乗っている者の戦力を過小評価しすぎていた・・・、
この艦には、ただ一人で全てを破壊できる男がいるのだから・・・。
ナナバルクの船隊前方のハッチ、
ではなく、その間の装甲が開いていく。
本来ならば、両サイドのハッチからISが発艦していく訳だが、
今回は、それよりも大型の何かが発艦するために、
中央カタパルトが展開されるのだと伺い知ることが出来る。
「何か出てくるわ!撃ち落とすわよ!!」
リーダー格と思われる女が僚機へと警戒を促す。
やはり、伊達に代表候補生として訓練を受けてきた訳では無いのだろう、
身のこなし、判断力はそれなりに高い様だ。
そんな彼女達の前に、
ナナバルクより白い影が飛び出してきた。
「な・・・、何よあれ・・・!?」
本来ならば、先制攻撃を仕掛けるなりすれば良いのだろうが、
彼女達は驚愕で硬直してしまう。
何故ならば、飛び出して来たのは異形と呼ぶに相応しい物であるからであった。
全長15メートルは優に越えると推測出来る巨体、
ISにしてはあまりにも巨大であり、船と呼ぶには小さい・・・。
しかし、その巨体は威圧感を兼ね備えており、
見る者全てを戦慄させる。
そのモジュールは急激に速度を上げ、
彼女達の方へと突っ込んでいく。
「・・・ッ!?こっちに向かってくる・・・!!」
硬直から立ち直った彼女達は、
凄まじい速度で突っ込んで来るモジュールをなんとか回避した。
しかし、発生するソニックブームにやられ、
大きく吹き飛ばされた。
『キャアァァァッ!?』
悲鳴を上げながらも、
PICを使って体制を立て直す。
「な、なんて速さ・・・!!あんなの、人間が耐えきれる筈が無いわ・・・!!」
『並の人間はな、だが、お生憎様、俺は普通じゃないんでな。』
「お、男の声・・・!?まさか、織斑一夏ね・・・!?」
オープンチャンネルで響いた声に、
打鉄に乗っていた少女が僅かに表情を歪める。
まるで、獲物がわざわざ捕まりに来てくれたと言わんばかりの、
下卑た笑みだった。
『御名答、篠ノ之 束に着こうとする愚か者共、
俺の首が欲しいんだろう?取ってみろよ?自分が強いと思うんならな。』
対する一夏の声は、何処までも余裕綽々、
寧ろ、軽い侮蔑も含んでいる声だった。
「良いわ!!貴様の首を差し出せば、
私達は篠ノ之博士に受け入れてもらえる!!」
「篠ノ之博士が創る、新たな時代の礎になれることを、誇りに思って死になさい!!」
一夏の言葉に、待っていたと言わんばかりの勢いで、
彼女達は得物を彼に向けた。
自分達が、破滅への道に入った事に気付かないままに・・・。
sideout
side一夏
クックックッ・・・、
本当に脊髄反射で男を嫌い、虐げたい女の典型例だな。
自分の頭で真に正しい事を考えるよりも先に、
女尊男卑の感情で行動する。
実に愚かしい事この上無い、
だが、これで良い・・・。
こういう愚か者がいてくれるからこそ、
俺の計画も益々捗ると言うものだ。
一機のラファール・リヴァイヴを纏った女が、
ミーティアのメインスラスターを狙い、アサルトライフルやマシンガンを撃ちかけてくる。
機動力を奪う、それは悪くない判断だ、
だが、この俺が駆るストライクノワール+ミーティアを舐めるな!
スラスターを全開にし、
凄まじい加速をもってして、弾丸の雨を全て回避する。
「そんなッ・・・!?あの巨体でどうやって・・・!?」
女どもが狼狽えているが、
俺が知った事では無い、俺はただ、駆けるのみ!!
「今度はこちらから撃たせてもらうぞ!!」
ほぼ直角に近い形で旋回し、同時にミサイルポッドを全門開く。
だが、旋回時にかかるGは想像を絶するもので、
身体の上から何かに押し潰される様な錯覚を覚える。
この俺が苦しむ程のGだと・・・!?
良い、良いぞ・・・!!
この加速!この追従性!!
全てが俺の要求を満たしている!!
血が騒ぐ、全てを破壊しろと俺に命ずる!
ならば、俺はただ、それに従うまで!!
「これを避けてみやがれよ!!クソどもが!!」
トリガーを何の躊躇いもなく引き、ミサイルを発射する。
全門開放した際の弾数は百に迫り、
弾幕と言うよりも、壁と呼ぶに相応しい迫力を持つ。
「なっ・・・!?」
「なんて数よ・・・!?」
女共は驚愕しつつも、機体を動かしながらも、
ミサイルを撃ち落とそうとする。
だが、この壁と呼ぶに相応しい、隙間なく迫るミサイルが相手では、
全てを撃ち落とせる筈もなく、被弾し、大きく体制を崩す。
「その程度か?つまらん、消えろ!!」
俺はビームソードを展開し、
手近な打鉄を纏った女に対し一閃する。
「避けられない・・・!?キャァァァァァッ!!!」
ビームソードがもろに直撃し、
打鉄を纏った女は断末魔の叫びをあげながらも、
一瞬の内に肉片一つ残らずに機体と運命を共にした。
良い威力だ、
これでこそ使う意義があるというもの。
「こ、こんな馬鹿な事が・・・!?」
「絶対防御があるのに、どうして・・・!?」
クックックッ・・・、怯えろ、竦め!!
そして恐怖を片道切符に、行ける所に逝け!!
すべての兵装を開き、カーソルを合わせる。
マルチロックオンシステムによるフルバーストショット、
ミーティアの全兵装を使用して発つ最強の技だ。
その威力は絶大、広範囲殲滅に使用出来るが、
今回は愚か者に鉄槌を下す意味を込めて使用するとしようか!!
ロックオンカーソルが全て重なった瞬間、
俺は何の躊躇いもなくトリガーを引いた。
sideout
noside
ミーティアの全砲門及び、ストライクノワールのレールガンより、
ビーム、ミサイル、レールガンが発射される。
それらは寸分の狂いなく、
恐怖に囚われ、硬直していたISに直撃した。
無論、武装を奪うためでは無い、
ISコア、そして搭乗する者を破壊する目的が籠められている。
ビームがコアと共に心臓を貫き、
ミサイルが肉片一つ残さずに焼き尽くした。
断末魔をあげる隙すら与えない、
一瞬の内に事は終わっていた。
まさに圧倒的と形容するに相応しい破壊力であった。
「ば、化物・・・!!あんなの人間じゃ無いわ・・・!!」
ただ一機、リヴァイヴを纏った女が生き延び、
一目散に空域から離脱しようと試みる。
有り得ない、織斑一夏が強いのは承知していた、
しかし、多対一になればさしもの彼も一たまりも無いと思い、
集団戦を仕掛けたのだ。
だが、その目論みは脆くも崩れ去り、
味方は自分以外全員殺されてしまった。
「あんなのに勝てる訳がない・・・!!
殺されるだけだわ・・・!!」
本能的に死の恐怖を感じ取り、
彼女は振り向かずに一心不乱に機体を走らせる。
だが・・・。
「データを見せた敵を生かしておく訳にはいかんのでな、
このまま塵に還してやるよ。」
ミーティアの推力に物を言わせ、
どんどん間合いを詰めていく。
それに気付いた彼女は、
速度を上げるものの、とても振りきれるものでは無かった。
「ゆ、許してぇ!!私達が悪かったわ!!お願い!!命だけは・・・!!」
「命乞いならば、俺より優しい奴にするんだな、
俺は、戦いの中では情をかけるつもりは露程にも無い。」
懇願する彼女の声に、
一夏は全く抑揚の無い声で一蹴し、
ミーティアの大出力ビームソードを発生させる。
「地獄とやらを、先に逝って楽しんでおけ、
どうせ俺も、後でゆっくりと逝くことになるからな。」
何の感慨も無く、ただ平淡な声で呟いた彼は、
ミーティアのビームソードを振り下ろした。
「い、イヤァァァァァッ!!!」
sideout
side秋良
ナナバルク艦内のブリーフィングルームにて、
最後の一機が切り裂かれ、爆発光をあげるのを、
俺は何も言えずに見ている事しか出来なかった。
兄さんの行動は善悪の観点から見れば、
艦を護り、敵を駆逐した行為は称賛されるべき正義なんだとは分かっている。
「ひ、酷い・・・、何も彼処までやらなくても・・・!!」
「やり過ぎだ・・・!!殺すこともないだろうに・・・!!」
楯無は拳を握りしめ、
雅人は唇を噛み締めていた。
それもそうだ、いくら正しい行いだと分かっても、
命乞いをする相手を殺すのはやり過ぎだと思う。
今、俺は比較的冷静でいられるのは、
殺された相手がこの艦を落とそうとし、尚且つ篠ノ之 束に着こうとしていた事と、
完全な女性至上主義者だったから、兄さんに対しての憤りは二人よりは軽かった。
俺だって殺しを推奨する訳じゃない、
だけど、ここまで何の感情も沸かないのは、
ただ現実逃避してるだけなんだと、自分でもドライな思考が働いてるんだと思う。
「もう・・・、兄さんは変わってしまったんだな・・・、
変われない俺を置き去りにして・・・。」
俺は昔から何も変われていない、
それはつまり、ずっと立ち止まってしまっていると言うことになる。
割り切れない、ただそれだけの事で、
俺は足を絡めとられている・・・。
俺は、この戦いで何をすればいいんだ・・・?
誰と戦えば良いんだ・・・?
俺は、どうすれば良いんだ・・・?
迷いが足枷になり、
俺はまだ、歩けそうにもなかった・・・。
sideout
noside
一夏達、ガンダムチームがアラスカを目指している頃、
亡國企業実働部隊拠点に、一機の航空機が着陸した。
無論、旅客機ではなく、亡國企業所有の機体である。
その航空機から降り立ったのは、
普段のスーツの上に、防寒着を着こんだ織斑千冬であった。
「ち~~~~~~ちゃ~~~~~ん!!」
そんな彼女を、世界に戦乱の渦を巻き起こした張本人、
篠ノ之 束が出迎えた。
「束・・・。」
「来てくれるって信じてたよ~!
やっぱり力が欲しいんだね~?」
今だ、何か思い詰めた表情を見せる千冬に対し、
束は彼女の顔を覗き込みながら尋ねた。
「・・・、あぁ・・・。」
「だよね~!用意してるよ~!大好きなちーちゃんが喜ぶ機体をね~!」
千冬を建物の内部、
ISを保管してある格納庫まで案内しながらも、
誇らしげに語っていた。
そして、暫く通路を進んだ所で、
一つの部屋にたどり着いた。
「さぁさぁ!!御対面~!」
束の言葉と共に、扉が開き、
奥で鎮座する一機のISがその姿を現した。
通常のISとは異なり、
人型を維持し、特徴的な翼を背負う漆黒の機体・・・。
「その名もアストレイノワール!!
いっくんが好きで堪らないちーちゃんへのプレゼントだよ~!」
「アストレイ・・・、ノワール・・・、
私の新たな翼か・・・。」
宣う束とは対照的に、
千冬はアストレイノワールに近付き、
装甲に手を触れる。
「お前となら、答えを探せるのか・・・?
私は、一夏を止められるのか・・・?」
物憂げに問い掛ける千冬の言葉に、
無機物である機体が答える事は無かった。
それが肯定か、否定かは定かではない事しか、分かる事は無い・・・。
sideout
次回予告
アラスカにたどり着いた一夏達は、
遂に亡國企業と接触する。
次回インフィニット・ストラトス・アストレイ
始まりの砲火
お楽しみに。